50%はウソ!?不動産投資の適正な返済比率を完全解説!
- 更新:
- 2022/10/28
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物件を購入して得られる家賃収入に対して、毎月発生する融資の返済額から返済比率を求められるのをご存知でしょうか。返済比率は物件を購入する際の、出口戦略を立てる上でも重要な数値です。収入や属性に対して、どのくらい融資を受けられるのか、そしてどのぐらい毎月返済すべきなのかという指標にもなります。この記事では不動産投資する上で重要となる返済比率について様々な角度から解説していきます。
不動産投資に適切な返済比率は〇%?
不動産投資における返済比率の適切な数値を見ていきましょう。
返済比率(総返済負担率)とは?
返済比率とは投資物件から得られる家賃年収に占める、全ての借り入れの年間返済額の割合です。不動産投資によって得られる収入額のうち、どれくらいの割合を金融機関へ返済しているかを示す値なので、返済比率が低いほど、安定した不動産経営といえます。
物件購入時には必ず収入と支出から、その物件へ投資した際のキャッシュフローのシミュレーションをしますが、その際、あわせて返済比率を算出し、収支バランスが健全であるかを判断しましょう。
また、実際に経営中の投資物件では、いつも満室であるとは限りません。むしろ、常に満室状態で経営ができる方が稀です。そのため空室リスクがあることも考慮し、物件購入前に様々な経営状態を想定して各状況に応じたシミュレーションをしましょう。
不動産投資の返済比率の目安
では、不動産投資初心者が目指すべき理想的な返済比率はいくらでしょうか? 一般的に目標とされる返済比率は、40%~50%と言われています。ただし、これは「家賃収入のうち半分が手元に残る」ということではありません。金融機関への返済後の金額からさらに経費を差し引いたり、先述したとおり、空室が出た場合の収益減に備えた準備が必要です。だからこそ、安全に不動産投資をするために、返済比率を50%以下に抑えるというのは非常に重要です。
しかし、銀行から借り入れをする場合は、融資の条件として返済比率が35%以下であることが目安にされています。
返済比率が高くなると、年間の収入に対して返済の割合が大きくなり、そうなると実際に返済可能かどうかも怪しくなり、融資を受けづらくなる可能性があります。金融機関が求めるのは“確実な返済”であり、家賃収入の利益より安定性が重要です。そのため問題なく返済可能な返済比率35%を目安にしている金融機関が多いといえます。
返済比率の計算方法
返済比率は、の算出方法は下記の計算式で求められます。
- 年間のローン返済額 ÷ 満室時の年間家賃収入額 ✕ 100 = 返済比率(%)
算出期間は、年間でなくとも月々の返済額と収入額でも同様の返済比率になります。
例として、満室時の年間家賃収入を1,000万円、金融機関への年間返済額を450万円とした場合の返済比率を見ていきましょう。
この場合の計算式は以下になります。
- 450万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 45%
返済比率は、45%となります。
ここで注意して欲しいのは、返済比率は投資物件が満室で経営している場合の割合である点です。
物件の購入前には、金融機関への返済期間や金利などが確定していません。また、満室時の家賃収入額が想定より少なくなることもあります。金融機関への返済額については、各金融機関などが提供するローンシミュレーターを活用しましょう。家賃収入額については、空室が出た場合の部屋数と期間についてゆとりをもって計算しておくことをおすすめします。また、賃貸する金額を下げた場合についても考えておくと、より良いといえます。
例えば、先ほどの例で入居者が付かなくて賃貸金額を1万円下げたとしましょう。それに加え、賃下げした投資物件の部屋数が3部屋あったとします。すると1万円 × 3部屋 × 12カ月 = 36万円も少なくなったという結果に。先ほどの例より、一年間当たりの収入が減ることが分かります。
この場合の実際の返済比率を算出してみましょう。金融機関への返済額は変わらないため以下の計算式となります。
- 450万円 ÷(1,000万円 - 36万円)× 100 ≒ 46.7%
満室時の返済比率と比べ、わずかに1.7%の上昇となりました。しかし、実際の経営で賃下げをするということは空室の状態が一定期間あるということです。このような状況下でも赤字経営とならないように、返済比率は前提として満室時での収入額から算出していることを念頭に置いて、余裕のある経営を目指しましょう。
どんなに利回りが良い物件でも、返済比率を高い水準にしている場合は、赤字経営になりえることも十分考えられます。
そのため、もちろん金融機関の融資の基準である、返済比率35%を目指しながらも、40%~50%で計算しておくのが安全であるといえるでしょう。
そして目標にした返済比率を、自分の経営状況を想定し算出してみることが重要です。
返済比率が高い場合に起こること
自分の借り入れも少しでも早く完済するため、返済比率を高く設定する方も多いと思います。では、例えば返済比率を60%に設定するとどのようなことが起こるのでしょうか。
月々の収入(満室の場合)を、100万円の収入だとして
- 経費20%
- 空室15%
- 返済比率60%
上記の数字で設定すると、月々の収入はわずか5万円という計算になってしまいます。確かにローンを減らすことはできますが、これは事業の利益としては少なすぎると言えるのではないでしょうか。万が一の時に備えて、キャッシュフローの余剰分(利益)は大目に手元に残しておくべきです。返済金を少しでも早く完済させたい、という気持ちは誰しもが持っている気持ちですが、それよりも“安全な投資”を目指すべきだと考えます。
もしも手元にキャッシュフローが少なく、尚且つ本業の収入と合わせてもギリギリの状態となってしまった場合、どのような事態が考えられるのでしょうか。
予想外の修繕等の費用に対応できない
不動産を所有すると経年劣化による修繕の必要性が出てきます。物件は現物資産となるため、想定外の修繕や修理が必要となる事があります。
例えば、急にエアコンが壊れてしまった場合や排水管の不調、賃借人が退去した際のクリーニングなどもオーナー負担となります。返済比率を高くし、手元に残る金額が少ないとこういった急な修繕などに対応できなくなる可能性があります。
そのため、資金は、ある程度の余剰のある状態にしておくことがベストです。
参考失敗しないエアコンのベストサイズの選び方!畳数より小さめでも大丈夫?
空室に対処できない
入居者が退去した時の、空室リスクが発生することも想定しておきましょう。先述したシミュレーションでは、空室リスクを15%に設定しましたが、想定以上の空室が出来る可能性も十分考えられることです。ギリギリの状態でキャッシュフローを回している場合、予想外の空室によって経営状態が赤字になる可能性もあります。それが続いて、更に赤字の状態が続いてしまうと、金融機関への返済が滞る場合があります。なんとしてもそれは避けたい部分です。そのためにも、返済比率は適切な数字で計算しておく必要があります。
返済比率が低い場合に起こること
返済比率が低いとどのようなことが起こるのでしょうか。シミュレーションしながら見ていきましょう。
先ほどと同じように月々の収入(満室の場合)を、100万円の収入だとして
- 経費20%
- 空室15%
- 返済比率35%
にします。すると、手元に残るのは30万円となります。返済比率60%と比べると、金額に大きな差があることが分かります。
想定外の修繕の対応や退去対応もしやすくなるでしょう。このように、返済比率を35%に設定すると余裕のある経営状態にすることが可能です。そのため、購入物件を検討する時も返済比率を考え、35%~40%まで抑えられる優良物件を選ぶことが重要です。
キャッシュフローに余裕を持たせることで、2件目、3件目と物件を買い増ししていくことも可能です。そのため購入物件の選定の段階で、しっかりと返済比率も視野に入れておきましょう。
参考不動産投資、初心者の知識がグッと一気に広がるおすすめの勉強法
返済比率を下げる方法
返済比率を下げる方法をいくつかご紹介します。
自己資金を入れて返済金額を減らす
物件を購入する際の頭金として自己資金を使いますが、この自己資金を増やすことで融資額を減らすという方法もあります。合計の融資額が減ることで金利も減り、月々のローン返済額を減らすことも可能になります。
しかし、これは自己資金に余剰があり、尚且つ想定外に起こる補修・修繕に対応できる自己資金を残している場合に限ります。ギリギリのキャッシュフローの状態で、自己資金を投入することは賢明な判断とは言えません。
万が一に対応できる金額は残しながら、それでも余剰がある場合に考えた方がいいでしょう。
繰り上げ返済
繰り上げ返済するのも、返済比率を下げる方法の一つです。しかし、これも自己資金の投入と同様に、余剰金がある状態で使える方法です。
繰り上げ返済は、ローンを返済している期間内に、前倒してローンを返済することです。月々のローン返済額を減らせれば、返済比率を抑えることもできます。しかし、繰り上げ返済には手数料がかかる場合があるので、注意しましょう。
返済期間を延長する
返済期間を延ばすことで、月々の返済額を下げることで返済比率を下げる方法もあります。しかし、これは金融機関による購入した物件の評価によって決定されるものです。そのため返済期間を伸ばせるかどうかは確実とは言えませんが、一つの方法として覚えておきましょう。
金利が低い金融機関を選ぶ
月々の返済額に大きく関わる金利です、出来る限り金利が安い金融機関を選ぶことで返済比率を抑えることも可能です。そのため、様々な金融機関でローンの金利を比べ、一番低い所に申し込むというのも一つの手です。
また金利の交渉を金融機関にするのも一つの手。交渉材料として、預金額も重要なポイントになるので、計画的に貯金しながら預貯金を貯めておくことも大切です。
返済比率は変化する。あくまでも目安として
返済比率について、事前に理解すべきことがあります。それは「返済比率は変化する」という点です。
どういうことかと言いますと、例えば物件購入前に算出した返済比率と実際に購入する時の返済比率に差が出る場合がある、という点です。返済比率を計算してから金利が上昇し、家賃が下落するといった事態も十分考えられることです。また、予想外の空室が発生する場合もあります。そのため、元々空室として計算していた数値が大きくズレることも考えられます。
返済比率はあくまでも計算した時点での数値です。こういった想定外のことが起こりえることも考えながら、返済比率を一つの参考にして安全かつ、健全な不動産投資をめざしましょう。
まとめ
今回は、全ての借り入れの年間返済額の割合を計算する返済比率について解説しました。返済比率を計算することで、物件を購入してから売却までの出口戦略を立てる上でも非常に分かりやすくなります。あくまでも返済比率は目安であり、返済計画の中で変わることも十分考えられます。まずは安全な返済計画を立て、確実に完済できることを目標にしましょう。その上で返済比率を使いながらよりよい、返済計画を立てるべきと言えます。早目に完済できたからいい、というわけではなく、安全で確実に返済できることが大切です。そのための一つとして、この記事で紹介した返済比率を役立ててください。