2025年大阪万博による経済効果は?不動産市場への影響まで解説
- 更新:
- 2023/07/12
2025年に大阪万博の開催が予定されています。1970年に大阪で開催された大阪万博や2005年に愛知県で開催された愛・地球博では、開催施設や宿泊施設の建設が相次ぎ、多くの来場者による大きな経済効果がありました。
今回も大阪万博をきっかけとした日本経済全体の盛り上がりが期待でき、不動産市場にも影響を与えると考えられるでしょう。ただし、愛知県での万博から20年ぶりの開催となり、世界情勢の変動やSNSの進化など、前回の万博からは異なる点も多く見受けられます。
この記事では、2025年大阪万博の開催による経済効果を予想すると共に、不動産市場に与える影響や注意点を解説します。
大阪万博による経済効果
アジア太平洋研究所の「アジア太平洋と関西~関西経済白書2022」によると、大阪万博とその周辺で行われる大規模なイベントや国際会議の開催を踏まえれば、経済効果は2兆9,182億円にも及ぶとしています。具体的にどのようなことから経済効果が生まれるのでしょうか。ここでは、大阪万博の開催に伴って生まれる経済効果について解説します。
建設ラッシュ
万博やオリンピックなどの大きなイベントが開催されると、開催施設や関連設備などの建設ラッシュが起こります。大がかりな建設が予定されることで雇用が生まれ、多種多様な建材の需要が高まり、現地への人の流れが出来、幅広い経済効果を生み出します。
大阪万博の会場予定地となっている夢洲(ゆめしま)は、大阪湾に浮かぶ埋め立てによる人工島で、本州からはトンネルや橋で繋がっています。また、2023年3月現在、基本的には徒歩での入場はできません。大阪万博会場へのアクセスは地下鉄である大阪メトロ中央線を延伸させる他、シャトルバスの運行が計画されています。
このような鉄道や道路の整備計画、会場内のパビリオン、広場など、大阪万博開催のためには様々な建設計画が予定されています。
多数の来場者
2025年日本国際博覧会協会の「大阪・関西万博 来場者輸送具体方針(アクションプラン)初版」および「来場者輸送基本方針」よると、大阪万博への来場者数は約2,820万人と予想しており、うち国内の来場者は88%、海外来場者は12%と想定しています。尚、国内来場者のうち63%は近畿圏内からの来場者で、37%が近畿圏外から来場するとの想定です。前回の「愛・地球博」の最終公式入場者数は約2,205万人だったことを踏まえると、前回よりも更に多くの来場者を見込んでいることになります。
更に、東京オリンピックの来場者数がおよそ1,000万人で約6,000億円の経済効果だったことを踏まえると、大阪万博に向けられた期待はより大きいものだと言えるでしょう。
人が動くことで交通が活発になり、遠方から集まる人のためには宿泊施設や飲食店等の需要が高まります。来場者のうち約41%が鉄道を利用すると想定されているため、混雑緩和のための鉄道の運行や、テレワークの推奨による波及効果なども起こるでしょう。多くの来場者が集まるほど、直接的にも間接的にも大きな経済効果が期待できます。
高級ホテルの開業
大阪は東京と比較すると、これまで高級ホテルは少ないとされてきました。しかし、大阪万博をきっかけとして多くの外資系高級ホテルが開業します。
2023年1月には、大阪の老舗ホテル「リーガロイヤルホテル大阪」の土地と建物の信託受益権などがカナダ系のベントール・グリーンオーク・グループ(BGO)に売却されました。新しいホテルとして大規模なリノベーションを行い、高級ホテルとして2025年3月以降のリニューアルオープンを目指しています。他にも、タワーマンションと合体した「フォーシーズンズホテルズ&リゾーツ」、アメリカのヒルトン系列の最上級ホテル「ウォルドーフ・アストリア大阪」、アメリカのマリオット系列の「オートグラフ コレクションホテル」、シンガポールのカペラホテルグループ「パティーナ大阪」など、多くの外資系高級ホテルの開業が相次いでおり、日本初進出となるホテルも少なくありません。
尚、万博をきっかけとした高級ホテルの開業は大阪だけに留まらず、訪日外国人からの人気が高い京都でも競争が激化しています。このように外資系高級ホテルの進出が相次いでいることから、大阪万博をきっかけとした経済効果が続くと世界的に期待されていることが分かります。
周辺イベントの開催
大阪万博による経済効果は、大阪万博単体のものだけではありません。大阪万博に合わせて関西各地で大規模なイベントや国際会議が予定されています。このような周辺イベントが開催されることにより、延泊を行う来場者が増え、経済効果は更に高まると考えられています。
また、大阪ではカジノも含めたIR事業が予定されており、関西経済活性への起爆剤となることが期待されています。
大阪万博後の経済はどうなるのか
大阪万博に向けての建設ラッシュなどにより、関西の経済が上向きになることは多く予想されていることです。しかし、万博終了後の経済が後退しては意味がありません。ここでは、大阪万博開催後の経済の動きを、過去の万博などを参考に予測します。
過去の万博による経済効果
2005年日本国際博覧会協会によると、愛知県で行われた万博の経済効果は広域幹線道路や空港等関連交通基盤まで含めると約3兆5,000億円にも上る大きな経済効果があり、その後の株価の上昇にも繋がるなどのプラスの影響が多く見られました。
このグラフからは、愛・地球博の開催から東海を中心に景気が伸びており、全国の景気を牽引している様子が見られます。この後の景気も、2009年のリーマンショックによって一時的に落ち込むまで、上昇傾向が続きました。
具体的には、愛知を中心とした東海地方の宿泊施設の稼働率や百貨店の売上が上昇し、更に、鉱工業生産指数や有効求人倍率も、愛・地球博が終了した以降も上昇したことで、万博をきっかけにその後も景気が向上したと言えます。
また、過去にカザフスタンや韓国など、他国で行われた万博についても、万博開催後の株価は上昇する傾向にあります。
万博後も経済効果は続くのか
過去のデータから見ても、大阪万博開催をきっかけに経済にプラスの影響があると考えられるでしょう。ただし、世界情勢や市場の個別の事情など、様々な外部要因が経済を左右するため、確実な予測は不可能です。
それでも、大阪万博は、景気が上向きになるきっかけとして期待できることには間違いないでしょう。
全国の景気への影響
万博が開催されるのは大阪ですが、景気への影響は関西だけに留まりません。実際に、過去の万博の経済効果を見ても、愛知県を中心とした経済効果が全国に波及しました。
2005年日本国債博覧会協会と株式会社UFJ総合研究所の報告書によると、愛・地球博をきっかけに、日本全体のGDPを0.2%前後押し上げる規模の影響がありました。
2025年の大阪万博でも、開催地である大阪から全国まで経済効果が波及し、東京を中心とした関東の景気にまで好影響を与える可能性は十分にあります。
大阪万博による不動産市場への影響
景気の動向と不動産市場は密接な関係にあるため、大阪万博をきっかけとした不動産市場への影響が気になる方も多いでしょう。ここでは、大阪万博による不動産市場への影響を解説します。
地価の上昇
高度経済成長期に整備されたものの活用されず、これまでは更地だった夢洲に大阪万博のための大規模な施設が建設されました。また、周辺でも高級ホテルの開業が相次いでおり、広範囲の土地が活発に取り引きされています。
更に、大阪ではこれまで注目されていなかった地域の再開発が行われています。以前は1泊1,000円から2,000円程度の簡易宿泊所ばかりで地価が安く、高級ホテルのイメージとは遠かった大阪の新今宮駅周辺では、2022年4月に「OMO7大阪 by星野リゾート」が開業しました。周辺相場と比較した宿泊料金は高額なものの、週末の「OMO7大阪」は若い世帯やファミリー層などによる満室が続き、大成功を納めています。
このように、大阪では今まで活用されていなかった土地の価値が再認識され、これまでとは違う地域の地価の上昇に繋がっています。
民泊などの需要増加
大阪では多くの高級ホテルの開業が相次いでいますが、万博の来場者全てが高級ホテルに宿泊する訳ではありません。人の流れが増えたことで、民泊などの需要も増加するでしょう。
これまでは賃貸物件としてのみ活用されていたワンルームマンションも、民泊など他の用途で利用できる可能性が高まっています。
全国の不動産市場への波及効果
大阪の不動産の価値が上がることで、東京の不動産にも相乗効果が期待できます。2040年ごろには全国的なリニア鉄道開通が予定されており、東京・大阪間の移動時間がこれまでの半分以下に短縮されます。日本人だけでなく、訪日外国人による移動が容易になることからも、大阪と東京の不動産市場は相互に影響し合うことが考えられるでしょう。
大阪万博の経済効果に対する注意点
大阪万博は日本経済の起爆剤として期待されていますが、決して楽観視だけはできません。ここでは、大阪万博の経済効果に対する注意点を解説します。
インフレによる建設費高騰
2022年に起きたロシアによるウクライナ侵攻などをきっかけに、世界的なインフレが進んでいます。建築に関してもインフレに大きな影響を受けており、大阪万博施設建設にも、当初の予定よりも多額の建設費を要する見込みです。
このような建設費高騰などによる懸念から、建築工事の入札では不落が相次ぎました。元来、万博の施設を建設することは企業イメージアップにも繋がるものですが、コストを度外視してまで請け負いたいという企業が現れなかったということでしょう。
入札の予定金額を最初の計画から引き上げるなどして、落札は進んでいるものの、今後、コスト削減とデザインの両立が出来るのかなど、世間からは厳しい目が向けられています。
感染症などのリスク
世界的な問題となった新型コロナウィルスによる影響はひと段落したように見られますが、今後予想外の変化を遂げる危険性もあります。
また、東京オリンピックでは開会式を目前にして、SNSをきっかけとした「炎上」による重要な担当者の解任が続くなど、現代ならではのリスクも無視できません。
長期的な視点の必要性
大阪万博により大きな経済効果が期待できるものの、万博の成功はそれほど簡単に達成できるものではありません。
様々なニュースが飛び交うなか行う投資は、短期的な動きに一喜一憂するのではなく、長期的な視点で投資対象を見極めることが大切です。例えば、日本の人口減少が深刻化するなかでも、東京の人口は今後も増加傾向にあり、インバウンド需要の高まりからも安定した成果が期待できます。
大阪万博をきっかけとして全国的に与える経済効果についても、長期的な視点を持って今後の資産形成を進めていきましょう。
まとめ
この記事では、2025年の大阪万博による経済効果や不動産市場に与える影響について解説しました。
大阪万博をきっかけとした経済効果は全国に波及することが期待され、不動産市場にも良い影響を与える可能性があります。ただし、世界的なインフレなどによる様々なリスクも無視できません。
激動する時代の資産形成を考えるのであれば、ぜひ当社コンサルタントまでお気軽にご相談ください。
この記事の執筆: 丸岡花
プロフィール:宅地建物取引士・FP検定2級を持つ主婦ライター(2児の母)で、300本以上の不動産関連記事の執筆実績を有する。得意ジャンルは不動産・税金・英語・育児。不動産が大好きで、不動産関連のニュースや法改正、市況のチェックが日課となっている。豊富な知識に裏付けされた独自性の高い切り口と、公的機関や学術論文などの1次情報に基づく正確性の高い文章に定評がある。元バックパッカーで旅行・キャンプをこよなく愛し、過去に20か国以上を訪問した経験を持つ。保有資格は宅建士・FP2級に加え、TOEIC895点(米国居住経験あり)、秘書検定1級、保育士など多岐に亘っている。
ブログ等:シュフリーランス