【2024年最新版】介護保険制度の概要や仕組み・対象サービスをわかりやすく解説!
- 更新:
- 2024/09/01
介護保険制度は、介護が必要な状態になった場合に、徴収された介護保険料を元に介護に使われた金額の一部を給付する仕組みです。40歳以上が対象で、社会保険や国民健康保険と同じく強制加入となっています。介護保険料を支払う一方で、介護保険の使い道や利用方法をよく知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、介護保険制度の仕組みや概要、受給要件や受給方法についてわかりやすく解説します。対象サービスや支給の上限額、今後の改正方針についても解説。本記事を読むことで、わかりづらい介護保険制度の仕組みや概要を理解できるでしょう。介護保険制度の概要や利用方法について知りたい方は、最後までご一読ください。
- 目次
- 介護保険制度とは保険料を介護費用の一部として支給する仕組み
- 介護保険料の金額と納付方法
- 介護保険のサービス対象者
- 介護保険で受けられるサービス
- 介護保険の自己負担割合と利用限度額
- 介護保険制度の改正と今後の見込み
- まとめ
介護保険制度とは保険料を介護費用の一部として支給する仕組み
介護保険制度は、40歳以上が支払う介護保険料を財源とし、介護が必要となった方に介護に使った金額の一部を給付する仕組みです。市区町村や広域連合が運営主体の公的保険で、運営主体は「保険者」、加入者は「被保険者」と呼ばれています。65歳を境に被保険者の種類が変わり、65歳以上の場合「第1号被保険者」、65歳未満は「第2号被保険者」です。
介護保険制度では、徴収した介護保険料から介護サービスに必要な費用の7〜9割が被保険者に給付されます。給付による利用者の実質負担額はサービスの1〜3割です。第1号被保険者は全員サービス対象者です。第2号被保険者は、老化に起因する「特定疾病」により介護が必要となった場合のみ対象となります。
介護保険制度ができた背景
介護保険制度は2000年より施行されました。ベースは、1997年に成立した介護保険法です。「高齢者の自立支援」と「利用者の選択によりさまざまな主体からサービスを総合的に受けられること」を基本として運営されています。
介護保険制度の背景にあるのは、高齢化や核家族化の進行、介護離職問題などです。家族構成も変化し、従来の老人福祉や老人医療制度による対応では限界があることから「高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み」として、介護保険制度が制定されました。
介護保険は40歳になった月から加入が必須
介護保険は40歳になった月から加入必須となり、同月より保険料の徴収も開始されます。40歳から64歳までは「第1号被保険者」です。65歳になった月から「第2号被保険者」に切り替わり、介護保険料額も変わります。
介護保険料の金額と納付方法
介護保険料は、社会保険や国民健康保険、年金からの天引きです。第1号被保険者と第2号被保険者では、金額と納付方法が異なります。では、第1号・第2号被保険者それぞれの、介護保険料と納付方法を見ていきましょう。
金額
介護保険料は、第1号・第2号被保険者で違います。2024(令和6)年から2026(令和8)年における、第1号被保険者の介護保険料基準額は月額6,225円。前クールである令和2(2020)年から2022(令和4)年に比べると、3.5%増加しました。厚生労働省の分析では「高齢化の影響や介護職員の処遇改善など」が理由で増加したとされています。
第1号被保険者の介護保険料は、基準額に所得段階に応じた割合をかけて算出。所得が低い場合は減額され、所得が多い場合は多く徴収される仕組みです。なお、前述の基準額「6,225円」は、全国平均となります。地域により3〜9千円台と幅があるため、正確な金額は住んでいる自治体のホームページなどで確認してください。
第2号被保険者は、2024(令和6)年における平均額の見込みが月額6,276円。2023(令和5)年は6,216円だったので、わずかながら上昇がうかがえます。
第2号被保険者の介護保険料は労働者と企業が折半するので、半分は会社負担です。「標準報酬月額 × 介護保険料率 ÷ 2」で算出されます。標準報酬月額は、4月から6月までの給与の平均額を「標準報酬月額表」に当てはめて算定。保険組合ごとに保険料率が変わります。
納付方法
介護保険料の納付方法も、被保険者の種類や加入している保険により違います。
第1号被保険者の場合、年金支給額が年額18万円(月額1万5千円)以上であれば、介護保険料は原則として年金から天引きとなります。年額18万円(月額1万5千円)未満の方は、口座振替か納付書による納付です。
第2号被保険者で社会保険に加入している場合、介護保険料は給料からの天引きとなります。国民健康保険加入者は、口座振替か納付書での納付です。
介護保険料 (介護保険料基準額) |
納付方法 | |
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第1号被保険者 | 月額平均6,225円 |
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第2号被保険者 | 月額平均6,276円※ |
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※労働者と企業が折半するので、加入者の実質負担は半額となる
介護保険料を支払わないとペナルティが科される
介護保険料を納付期限後に支払う場合、督促にかかる手数料と延滞料の支払いといったペナルティが科されます。さらに、介護保険料の支払いを滞納している間は、本来介護保険で支払われる費用も全額自己負担です。
滞納期間が1年半以内であれば、自己負担額の返還請求が可能です。しかし、1年半以上滞納すると、返還請求ができなくなるだけでなく、以下のペナルティが発生します。
滞納期間 | ペナルティ |
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1年半~2年 |
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2年以上 |
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介護保険のサービス対象者
介護保険のサービスは、介護保険の被保険者で介護保険被保険者証を有し、かつ要介護(要支援)状態である認定を受けている方が対象です。ただし、被保険者全員が対象となるわけではありません。第1号被保険者は、自動的に全員が対象です。第2号被保険者は老化に起因する「特定疾病」による要介護、要支援状態である認定が取れたときのみ対象となります。特定疾病は、全16種類。がん、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症などの内臓や脳疾患だけでなく、骨折を伴う骨粗しょう症や初老期の認知症も対象です。
介護保険では、要介護(要支援)状態のレベルを「要介護度」と呼んでいます。要介護度は、要介護と要支援に分かれ、全部で7段階。要介護が1〜5、要支援が1と2になります。介護保険制度を利用するにあたっては、要介護もしくは要支援のいずれかに認定される必要があります。
介護保険被保険者証の交付方法
介護保険に加入しているだけでは、要支援(要介護)認定は受けられません。認定を受けるには、介護保険被保険者証が必要です。
介護保険被保険者証の交付方法は、被保険者の種別により異なります。第1号被保険者は全員が自動的にサービス対象者となるので、特別な申請は不要です。65歳を迎える誕生月になると、市区町村より郵送で交付されます。第2号被保険者は、要介護(要支援)状態であることが認定された後で交付されます。
要介護(要支援)認定の申請方法
要介護、要支援状態である認定を「要介護認定」と呼びます。要介護認定の申請窓口は、市区町村もしくは包括支援センターです。申請から承認までは、次のような流れになっています。
介護保険のサービスを利用するには、介護保険被保険者証を取得し、被保険者が要介護(要支援)状態であることを証明する「要介護認定」を申請しなければなりません。要介護(要支援)認定の申請窓口は、市区町村もしくは包括支援センターです。
申請から承認までは、次のような流れになっています。
- 市区町村の窓口もしくは包括支援センターで「要介護(要支援)認定」の申請(介護保険被保険者証が必要)
- 認定調査、主治医意見書の作成
- 審査、判定
- 結果通知
要介護(要支援)認定が出された後、利用するサービスを決めて、ケアマネージャーと「ケアプラン」を作成します。介護サービスは、作成されたケアプランに沿って提供されます。ケアプランとは、利用者や家族の意向、援助方針、生活全般の解決すべき課題、サービスの目標、サービス提供時の留意事項などが記載された書類です。
ケアプランは、認定により名称が変わります。要介護の場合は「介護サービス計画」です。要支援では「介護予防サービス計画」となります。
介護保険で受けられるサービス
介護保険制度は、多くのサービスが適用対象です。自宅利用、施設利用どちらも対象となります。ここからは、サービスごとに、種類や内容を簡単に解説します。
自宅で利用するサービス
介護保険制度を活用して自宅で利用するサービスの代表例は、訪問介護、訪問看護、福祉用具の貸与などです。「居宅支援サービス」「居宅系サービス」とも言われています。
訪問介護 |
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訪問看護 | 自宅において、看護師等が清潔・排せつケアなどの日常生活の援助や、医師の指示のもと必要な医療の提供を行う |
福祉用具貸与 | 日常生活や介護に役立つ福祉用具のレンタル |
施設を利用するサービス
施設を利用するサービスとは、自宅外の施設で受ける介護サービスです。本記事では、毎日通うか宿泊を伴うかを基準に分類します。
日帰りで利用する通所サービス
日帰りで利用する通所サービスは、デイサービスやデイケアのように施設を日帰りで利用するサービスです。
デイサービス | 食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するための機能訓練、口腔機能向上サービスなどを提供 |
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デイケア | 施設や病院などで、日常生活の自立を助けるためのリハビリテーションを行う。心身機能の維持回復が目的 |
宿泊を伴うサービス
施設での宿泊を伴うサービスには、ショートステイ、特定施設入居者生活介護、特別養護老人ホーム入所、介護老人保健施設が挙げられます。
ショートステイ |
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特定施設入居者生活介護 |
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特別養護老人ホーム |
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介護老人保健施設 |
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地域密着型サービス
地域密着型サービスとは、高齢者が地域で今まで同様に生活できるよう、地元住民に対して提供されるサービスです。市区町村と連携したサービスを提供。代表例として、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型通所介護、グループホームなど、市区町村と連携したサービスが挙げられます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
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小規模多機能型居宅介護 |
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認知症対応型通所介護 |
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グループホーム |
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参考介護保険制度について(40歳になられた方(第2号被保険者)向け:令和6年3月版)|厚生労働省
予防給付
予防給付とは、要支援認定で使えるサービスです。都道府県や政令指定都市、中核市が指定・監督を行う「介護予防サービス」と、市町村が指定・監督を行う「介護予防サービス」に大別されます。要介護にならないよう予防する観点から「介護予防サービス計画(介護予防ケアプラン)」に沿って実施。代表例は、訪問介護、デイサービス・デイケア、ショートステイなどです。
訪問介護 |
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デイサービス・デイケア |
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ショートステイ |
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介護保険の自己負担割合と利用限度額
介護保険は、上限なく使えるわけではありません。自己負担割合や月ごとの利用限度額が決まっています。
介護保険の上限額はサービス内容や要介護度により決まります。例として、居宅サービス利用額の上限と、介護保険施設入所者に対する補足給付をみてみましょう。
自己負担はサービス利用額の1〜3割
介護保険の被保険者が介護サービスを利用する場合、自己負担は利用額の1〜3割です。原則は1割負担ですが、次表の条件にすべて当てはまる場合、2割もしくは3割負担となります。
収入・所得項目 | 2割負担 | 3割負担 |
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本人合計所得 | 160万円以上 | 220万円以上 |
「年金収入とその他の合計所得額」の合計 |
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参考厚生労働省老健局介護保険計画課「介護保険最新情報 Vol.158」
居宅サービスの利用額には上限がある
居宅サービスの月額利用額には要介護(要支援)度ごとに上限があり、限度額を超えた部分は、全額自己負担です。要介護(要支援)度別の居宅サービス利用上限額は、下表をご覧ください。
要支援1 | 50,320円 |
---|---|
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
介護保険施設の入所者に対しては「補足給付」がある
介護保険制度には、介護保険施設の入所者に対して一定額以上の負担分を支給する「補足給付」制度もあります。所得や資産等が一定以下の介護保険施設入所者に対しては、介護保険より負担限度額を超えた居住費と食費分を支給。下図にある第1段階〜第3段階に認定されると、補足給付の対象となります。
介護保険制度の改正と今後の見込み
2000年より開始された介護保険制度は、3年ごとに事業が見直されます。2024(令和6)年4月に、「第9期」の改正が実施。以下3点を中心に改正されました。
- 介護報酬が1.59%引き上げられた
- 介護予防支援が居宅介護支援事業所でもできるようになった
- 介護保険法を改正し、地域包括ケアシステムを推進するために介護情報を一元的に管理するシステム基盤を整備
第9期の改正では、審議中だった複合型の新介護サービス設置やケアプランの有料化は見送られ、2027年度の改定に向けて再審議される予定です。
介護保険の総費用が増加傾向となっていた2022(令和4)年12月、厚生労働省より「介護保険制度の見直しについて」という資料が出されました。同資料によると、3割負担・2割負担の基準となる「現役並み」「一定以上」という所得額の検討が予定。2024(令和6)年3月に厚生労働省で行われた「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」の資料では、利用者負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準を、2027(令和9)年の第10期改正までに決定することと明言されています。
「一定以上所得」の判断基準は、以下どちらかの方針を軸にして検討される予定です。
- 2割負担の対象は、負担上限額がなくても負担増に対応できると考えられる所得がある利用者
- 2割負担の対象は、一定の負担上限額を設けた上で1よりも広範囲の利用者(2028年度までに、負担上限額の在り方についても見直しを検討)
厚生労働省によると、今後は高齢者が増加し、2042年には高齢者数がピークを迎えると言われています。2025年以降は「高齢者の急増」から「現役世代の急減」へ移行する予測です。現役世代の急減と高齢者の急増に移行するここ数年は介護保険料や負担額が大きく変動する可能性が高まるため、今後の動向から目が離せません。
参考厚生労働省「日常生活圏域ニーズ調査の実施及び第6期介護保険事業(支援)計画の策定準備について」
参考厚生労働省老健局 社会・援護局「介護保険制度の見直しについて」
参考参考厚生労働省介護保険計画課「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料 令和6年3月」
まとめ
介護保険は、親や家族の介護や自分が介護を受ける側になった際に欠かせない制度です。しかし、新しい制度であり対象年齢も限られていることから、内容を知らなかった方も多いのではないでしょうか。身内に介護が必要となった際には、本記事を参考にしていただければ幸いです。
介護保険の適用を受けたとしても、金銭的負担はそれなりにかかります。介護のために仕事を減らし収入が減ったことにより、さらに負担が重くなる場合もあるでしょう。
介護費用を補てんするために「不動産投資」で収入を得る方法もあります。「TOKYOリスタイル」では、介護にかかる費用の捻出など、将来を見越した資産形成の手段として不動産投資を検討したいという相談も受付中です。どんなささいなことでも構いません。遠慮なく、無料相談を活用してください。
この記事の執筆: 堀乃けいか
プロフィール:法律・ビジネスジャンルを得意とする元教員ライター。現役作家noteの構成・原案の担当や、長野県木曽おんたけ観光局認定「#キソリポーター」として現地の魅力を発信するなど、その活躍は多岐に亘る。大学および大学院で法律や経営学を専攻した経験(経済学部経営法学科出身)から、根拠に基づいた正確性の高いライティングと、ユーザーのニーズに的確に応えるきめ細やかさを強みとしている。保有資格は日商簿記検定2級、日商ワープロ検定(日本語文書処理技能検定)1級、FP2級など。
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