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神宮外苑地区の再開発で樹木が伐採される?!その概要や問題点を分かりやすく解説!

神宮外苑, 再開発, 問題点

2023年2月16日、「神宮外苑地区第一種市街地再開発事業」(以下神宮外苑再開発)の施行が東京都に認可されました。

この再開発事業は、明治神宮外苑を中心とした地域が対象となっています。神宮球場や秩父宮ラグビー場が改築され、スポーツ施設の他に文化交流施設の増設、広場の造成が行われます。以前改築された国立競技場も対象地域です。

再開発計画概要によると、神宮外苑地区のシンボルとも言える「いちょう並木」はそのまま残ることになっています。しかし、他の計画内容には、樹木の伐採や高層ビル、ホテルの建設など現在の景観や環境が損なわれかねない記載がありました。そのため、住民や都民の間で神宮外苑再開発に対して不満の声が挙がっています。

本記事では、神宮外苑再開発の目的、概要、問題点や反対意見について徹底的に解説します。神宮外苑再開発が問題となっている理由についての理解につながりましたら幸いです。

神宮外苑再開発はなぜ行われるのか

東京都は、神宮外苑地区を世界に誇れるスポーツクラスターとして整備する長期計画を策定し、神宮外苑地区一帯のまちづくりに取り組むこととしました。目的は、創建当時から国民のスポーツの場を提供してきたことや、東京2020オリンピック・パラリンピックを経て得たレガシーを次世代に引き継ぐためです。

令和5年1月、神宮外苑再開発を担当する4事業者連名で「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」事後調査計画書」(以下計画書と略)が提出されました。計画書によると、神宮外苑再開発の目的は以下2点です

  • 明治神宮外苑の「スポーツ拠点」としてのブランドを次世代につなげるべく、既存のスポーツ施設の役割を尊重しつつ、時代の変化に合わせたスポーツ施設の更新と新たなアクティビティの場を形成し、一体的にスポーツとの親和性が高い地区の形成を図る。
  • 土地の高度利用化を促進し業務・商業等の都市機能の導入、緑の充実とオープンスペースの形成を図り、魅力ある複合市街地を実現することを目的とする。

参考「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」事後調査計画書 事業の内容 目的等:東京都環境局

神宮外苑再開発の概要

神宮外苑再開発は、東京都港区北青山一丁目、北青山二丁目、新宿区霞ヶ丘町の各一部に位置する面積約17万平方メートルの土地に、スポーツ施設、オフィス、商業、宿泊施設、駐車場等を主な用途とする建築物を計画する事業です

神宮外苑再開発の方針は、以下3点です。

  1. 周辺特性を踏まえた適切なゾーニング
  2. 歩行者ネットワークによる回遊性の実現
  3. 更なる緑・広場の整備によるパブリックスペースの拡充

さらに、適切なゾーニングとして、再開発地域を以下のように分類しています

地域名 場所 特徴
大規模なスポーツ施設エリア 東京体育館・国立競技場から南北に連なる形 ・段階建て替えにより一体的なスポーツ施設エリアを形成
魅力ある複合市街地エリア 国道246号(青山通り)及び特別区道第1044号線(スタジアム通り)沿道 ・土地の高度利用と多様な都市機能(業務、商業、住宅、文化・交流施設等)の導入により魅力ある新しい複合市街地を形成
緑豊かな憩いエリア 神宮外苑いちょう並木沿道 ・聖徳記念絵画館を臨む神宮外苑いちょう並木のビスタ景を保全する
・既存の緑を活かし、豊かな緑やアフタースポーツ等を楽しむことのできる憩いの空間を形成

参考「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」事後調査計画書 事業の内容 目的等:東京都環境局

事業者

神宮外苑再開発の施行事業者は、下記4団体です。

  • 三井不動産株式会社
  • 宗教法人明治神宮
  • 独立行政法人日本スポーツ振興センター
  • 伊藤忠商事株式会社

代表事業者は、三井不動産株式会社となっています。

対象箇所

神宮外苑再開発事業地域内にある主な施設は、次の5つです。

  • 明治神宮野球場(神宮球場)
  • 神宮第二球場
  • 秩父宮ラグビー場
  • テニスコート
  • 伊藤忠商事東京本社ビル

神宮外苑再開発では、上記の建物があるエリアを基準として、地域を7つに分けて開発します。新旧施設の区分と用途は、次のとおりです。

新施設 旧施設 主要用途
ラグビー場棟 神宮第二球場周辺 ラグビー場、文化交流施設、商業、駐車場等
事務所棟 伊藤忠商事東京本社ビル オフィス、商業、駐車場等
野球場棟及び球場併設ホテル棟 秩父宮ラグビー場周辺 野球場、宿泊施設、商業、駐車場等
複合棟A オフィス、商業、駐車場等
文化交流施設棟 明治神宮野球場(神宮球場) 公園支援施設、商業等
複合棟B 宿泊施設、スポーツ関連施設、駐車場等
聖徳記念絵画館前エリア 軟式グラウンド周辺 広場、テニス場等

聖徳記念絵画館前エリアは、本来の神宮外苑再開発地域ではありません。しかし、神宮外苑と同時に開発されるため、一緒に紹介します。

参考神宮外苑地区まちづくりの計画概要・今後の取り組み方針について:神宮外苑まちづくり

参考「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」事後調査計画書 事業の内容 目的等:東京都環境局

スケジュール

神宮外苑再開発のスケジュールは、次のとおりです

期間 場所
2023年3月~2024年 神宮第二球場、伊藤忠商事本社ビル等(事務所棟にある既存施設)解体
2025年~2028年 ラグビー場棟、事務所棟建設
2027年~2028年 秩父宮ラグビー場解体
2028年~2032年 複合棟A、野球場棟及び球場併設ホテル棟建設
2032年~2033年 明治神宮野球場(神宮球場)解体
2033年~2035年 ラグビー場棟、複合棟B、文化交流施設棟建設

参考「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」事後調査計画書 事業の内容 目的等:東京都環境局

施行順

神宮外苑再開発は、次の順番で実施されます。先に既存施設の解体を行い、解体後の空地に新施設を建設する流れです。

  1. 神宮第二球場解体→新ラグビー場(周辺施設)建設
  2. 秩父宮ラグビー場解体→新神宮球場(周辺施設)建設
  3. 神宮球場解体→広場建設

参考「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」事後調査計画書 施工計画及び供用の計画:東京都環境局

神宮外苑再開発で懸念される問題点

神宮外苑再開発により、いくつかの問題点が懸念されています。
本記事では、環境の変化に焦点を当て、樹木伐採による緑の減少と高層ビルが建つことによる環境の悪化という2つの問題点を紹介します。

①樹木伐採による緑の減少

神宮外苑再開発では、1,000本近くの樹木が伐採されることが発表されています。植樹を行うため、トータルの樹木本数は再開発前より増えるという発表もありましたが、植樹した樹木が成長するにはそれなりの年月が必要です。植樹した樹木が成長するまでは、再開発前より緑が少ない状態が続くことが問題視されています。

加えて、樹木伐採と植樹に関しても、問題が提起されています。

健康な樹木が伐採される

施行4事業者の連名で出された「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」環境影響評価書によると、神宮外苑再開発においては、現況建物等構造物解体に支障する樹木や計画建築物の建築に際し支障となる樹木約1,000本が伐採予定となっています。

同評価書では、樹木医の診断により樹木の活力度を4段階に分けています。安全維持のために伐採する「枯損木」を含めた、活力度別の伐採本数は次のとおりです。

活力度 存置 移植 伐採 合計
正常なもの 100 20 100 220
普通、正常に近い 240 50 604 894
悪化のかなり進んだもの 0 0 227 227
顕著に悪化の進んでいるもの 0 0 40 40
合計 340 70 971 1381

参考「(仮称)神宮外苑地区市街地再開発事業」環境影響評価書 予測・評価[生物・生態系]:東京都環境局

伐採の判断基準は、次の3点です。

  • 樹高や目通りが大きい樹木(樹高12m超)
  • 根鉢の適切な確保が難しいと樹木医が判断した樹木
  • 健全に活着することが望めないと樹木医が判断した樹木

上記の表によると、活力度が「普通、正常に近い」樹木が最も多く伐採されます。理由があるとはいえ「健康な樹木を伐採して新たに樹木を植える」ことに対し、住民や都民から疑念の声が出ています。

当初の発表よりも大量の樹木が伐採されてしまう

2月下旬、三井不動産が提出した樹木伐採・移植許可申請書が話題となりました。樹木伐採・移植許可申請書には、神宮第二球場と建国記念文庫の森の周辺にある低木の伐採本数が書かれており、当初発表の本数より伐採本数が増えることが確実という内容です。

三井不動産が出した許可申請には、旧明治神宮野球場(神宮球場)周辺や軟式グラウンド周辺は含まれていません。上記地域の申請書が出された場合、さらに大量の樹木が伐採される懸念があります。

樹木が枯れる・定着しない可能性がある

神宮外苑再開発が終わったあと、残った樹木が枯れる可能性があるという声も出ています。1991年に地下にトンネルが建設された神宮外苑では、トンネル直近15m以内の樹木残存率は30%程度であるいう調査結果が発表されました。

神宮外苑再開発では、樹木より間隔を8m開けて開発をすることが発表されています。15m以内である8mでは、樹木が枯れてしまうことが懸念されています。

参考研究開発機構 機構教授 石川幹子:神宮外苑の銀杏並木の保全に向けて

参考新球場が近すぎる…神宮外苑のイチョウ並木「絶体絶命の危機」 新宿御苑では建造物の近くで枯死が相次ぐ:東京新聞2022年8月15日

移植した樹木も、100%定着するわけではなさそうです。日本緑化センターが行った根株の試験移植では、活着率は92.2%でした。同様に、根株を使って移植を実施した網走開発建設部北見道路事務所の報告によると、根株から芽が出たのは、約7割です。

神宮外苑再開発では、木は994本増える予定とされています。この数値は、移植・植樹した樹木約1,000本がすべて定着した場合です。樹木が定着しなかった場合、樹木の本数は減ります。元々ある樹木が枯れた場合も同様です。樹木が枯れてしまう・植樹した樹木が定着しないことを考慮しない計画に対して、異議を唱える声が上がっています

②高層ビルが建つことによる環境の悪化

神宮外苑再開発では、それまでになかった「超高層建築物」が建つことになりました。建築基準法により、高さ60m以上の建物が超高層建築物として定められています。神宮外苑再開発で該当する建造物は190m、185m、80mの3種類です。

神宮外苑地区は、東京都の条例により15メートルを超える建築物を禁止しています。しかし、東京五輪に伴う国立競技場の建て替えにより、高さ制限が80メートルに緩和され、屋外広告物の制限も緩和されました。

加えて、東京都は「公園まちづくり制度」の制定により、神宮外苑地区の公園指定を解除し、用途制限を撤廃しました。用途制限が撤廃されたことで、高さ制限も撤廃されたのです。この規制緩和により、かつてはなかった高層ビルが神宮外苑地区に建つことになりました。

神宮外苑再開発では屋外広告物も許可されたことから、さまざまな屋外広告物が作られることが予想されます。屋外広告物と同時に色彩の使用も許可されたので、緑が中心だった神宮外苑に自然以外の色が増え、景観が変わる可能性もあるのです。

加えて、樹木の伐採でも景観が損なわれ、日差しが当たらなくなる、ビル風が吹くといった環境の悪化が懸念されています。

参考再開発等促進区を定める地区計画一覧:東京都都市整備局

神宮外苑再開発に対する反対意見

神宮外苑再開発に対しては、事前計画の閲覧期間が短かったこと、後出しで資料が出てくることによる反対意見が多くあります。反対意見をいくつか紹介します。

①日本イコモス国内委員会(ICOMOS)による計画見直し要請

日本イコモス国内委員会(ICOMOS)は、文化遺産の保護に関わる国際的な非政府組織です。日本イコモス国内委員会は「公園まちづくり制度」の適用や計画内容について、見直し要請をしてきました

2月17日に神宮外苑再開発が東京都に認可されたことを受け、日本イコモスは、2月20日、正式に工事の中止を要請する文書を提出しました。

参考日本イコモス国内委員会の活動:日本イコモス国内委員会

②反対署名運動

神宮外苑再開発においては、都民による反対の署名運動が行われています。反対署名数は、2023年2月末現在で約11万件です。

神宮外苑再開発に反対する主な理由は、次のとおりです。

  • 一般市民が利用できる公益性の高い施設が全て廃止されるのは大きな矛盾
  • スポーツ施設として唯一残るのが高額な会員制テニスクラブというのは、公平性を欠いている
  • 計画の本質である都民のための公益性、及び何故この計画が必要で経済的に成り立つかの説明が全くされていない
  • 再開発によって予測される環境への影響についての具体的なデータや説明が不十分

参考神宮外苑1000本の樹木を切らないで~再開発計画は見直しを!:change.org SNSでも、反対の声が多くあがっています。

③近隣幼稚園・保護者からの陳情

港区南青山の幼稚園や小学校の保護者で構成される「明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」は、事業者や港区長、区議会議長、教育長に対して住民説明会の開催を求める陳情書を提出しました。南青山は、神宮外苑再開発地域の周辺地域です。

神宮外苑再開発は、東京都が計画を公表してから閲覧できる期間が2週間しかありませんでした。港区南青山においても、区域ごとで住民説明会の参加者を限定していたとされ「説明が不十分だ」という声が挙がっています

参考明治神宮外苑地区再開発めぐり「事業者は住民説明会の開催を」 南青山の小学校保護者ら港区へ陳情書:東京新聞2023年2月21日

まとめ

神宮外苑地区は、1926年に完成して以来都民や区民に親しまれてきた場所です。明治神宮外苑ホームページにも、「外苑もその時々の要望に答え(中略)次々と時代の先端の施設を作り」と書かれています。

神宮外苑再開発でも、ホームページにあるように時代の先端の施設を作ろうとしていますが、未だ多くの反対意見もあり、今後の動向に目が離せません

神宮外苑地区や周辺は、第一種・第二種中高層住居専用地域や第一種・第二種住居地域であることから、再開発の動向で不動産の価値が変わる可能性があります。神宮外苑地区や周辺の不動産投資で心配なことがありましたら、いつでも当社にご相談いただけましたら幸いです。

この記事の監修: 不動産投資コンサルタント 釜田晃利

老舗不動産投資会社にて投資用区分マンションの営業マンとして約10年間従事したのち、2015年にストレイトライド株式会社にて不動産事業をスタートしました。現在は取締役として会社経営に携わりながら、コンサルタントとしてもお客様へ最適な投資プランの提案をしています。過去の経験と実績をもとに、お客様としっかりと向き合い、ご希望以上の提案が出来るよう心がけています。

経験豊富なコンサルタントが
投資家目線で課題をヒアリングし、
中立の観点でアドバイスを行います。

不動産投資で成功するためのアドバイスですので、お客様のご状況によっては不動産投資をあきらめていただくようおすすめする場合もございます。あらかじめご了承ください。