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【2024年最新版】TSMCはなぜ熊本に工場を建設? その理由や経済への影響について解説!

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台湾の半導体メーカーTSMC(台湾積体電路製造)が、熊本県菊陽町(きくようまち)に新たな半導体製造工場を建設することが話題となりました。TSMCの熊本工場への投資額は約1兆円で、ソニーグループと連携し、デンソーの出資も受けた建設計画です。

世界的に半導体不足が問題となった中で、なぜ日本の中でも熊本が進出先に選ばれたのでしょうか。また、この工場設立が日本経済に及ぼす影響も気になるところです。

そこで本記事では、半導体メーカーTSMCが熊本に進出した背景やTSMCについての基礎的な情報、日本経済に与える影響について解説します。TSMCの建設が不動産投資に与える影響も解説。TSMCがなぜ熊本に進出したのか知りたい方、TSMCが経済や不動産投資に与える影響を知りたい方はぜひご一読ください。

TSMC熊本工場の概要

半導体の製造専門会社であるTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company:台湾積体電路製造)は、2024年1月現在で時価総額77兆円、時価総額ランキングで世界13位に位置する巨大企業です。

TSMCとして日本初進出となる熊本工場は、熊本県の中央部に位置する菊池郡菊陽町に建設されます。この工場では、市場での需要が高い10 〜 20nm(ナノメートル)の半導体を製造予定です。

菊陽町は、熊本市の東側。阿蘇くまもと空港(熊本空港)からも車で15分の好立地です。TSMCの工場は、菊陽町と同町南東の合志市(こうしし)をまたぐ「熊本セミコンテクノパーク」内にある「第2原水工業団地」に建設されます。2023年12月に第1工場が完成、当初の計画通り2024年冬から稼働開始の予定です。

TSMCは、菊陽町に第2工場も建設予定となっています。第3工場も菊陽町に建設と言われていますが、菊陽町との声に加えて大阪となる可能性があるとの声も挙がっています。

半導体メーカーTSMCとは

半導体の製造専門会社であるTSMCは「Taiwan Semiconductor Manufacturing Company」の頭文字です。現地表記では「台湾積体電路製造」となります。

カナダのTechInsights調べによると、TSMCは2023年の半導体売上高ランキングの1位となりました。半導体の受注生産を行うTSMCがなぜここまで躍進したのか、急増した半導体需要と合わせて見ていきましょう。

TSMCが躍進した背景

半導体の先端技術は「いかに小型化するか」の追求です。半導体の単位は「nm(ナノメートル)で表されます。1nmは、1mm(ミリメートル)の100分の1です。10年前は20nm台だった半導体のサイズは、2024年1月現在で3 〜 5nmまで縮小。小型化のプロセスにあたり、競合であるIntelに技術力で打ち勝ったのがTSMCでした。

TSMCは請負生産型の企業であるため、発注元の企業があって仕事が成り立ちます。TSMCの顧客は、AppleやNVIDIAといった大企業です。AppleではiPhoneやパソコンのGPU(画像処理装置)に必要な半導体をTSMCに製造委託してきました。

半導体産業は販売・材料開発・製造装置の開発と管理・本体の設計・本体の製造という工程に分けられます。「本体の製造」を行うTSMCは、半導体産業の流れを表した下図においては、最上位に位置する企業です。

Intel・NVIDIA・TSMCは半導体業界でどんな役割を果たしているのか?(GIGAZINE)

同じ半導体メーカーとして知られるNVIDIAやAMDは半導体の設計を行い、製造を他業者に委託する「ファブレス企業」です。

Intel・NVIDIA・TSMCは半導体業界でどんな役割を果たしているのか?(GIGAZINE)

一方TSMCは、ファブレス企業に委託されて製造を行う「ファウンドリ企業」となります。製造専門であるファウンドリ企業として半導体産業で躍進したのがTSMCです。

Intel・NVIDIA・TSMCは半導体業界でどんな役割を果たしているのか?(GIGAZINE)

設計と製造の双方を行う企業は「IDM」と呼ばれ、先述のintelはこちらに分類されます。

Intel・NVIDIA・TSMCは半導体業界でどんな役割を果たしているのか?(GIGAZINE)

出典Intel・NVIDIA・TSMCは半導体業界でどんな役割を果たしているのか?(GIGAZINE)

TSMCと半導体需要

半導体はスマートフォンやGPUなど、私たちが日常で用いる多くの電子機器にとって必須の部品です。しかし、新型ウイルスの影響によるスマートフォンやパソコンの需要の増加と半導体生産ラインの滞りが相まって、2021年頃から世界的な半導体不足に見舞われました。

感染症の流行当初は「半導体不足は続く」と予想。しかし、予想に反して、2022年下半期には半導体不足解消の兆しが見られました。その後は、半導体の供給が需要を上回ります。世界半導体統計(WSTS)は「2023年秋季半導体市場予測」にて、2023年の半導体市場は前年比9.4%減だったものの、その後は堅調な回復が見込まれ、2024年は前年比13.1%の成長が見込まれると発表しています。

2023年7 〜 9月期における世界のファウンドリー企業において、TSMCは市場シェア1位。TSMCは世界の半導体生産の約半分となる56.1%を担うとされており、2023年以降も継続的で安定した半導体生産を世界中から求められています。

参考特集:半導体グローバルサプライチェーンはどう変わる?(日本貿易振興機構)

TSMCが熊本に進出した4つの理由

既に本社のある台湾を中心に半導体の生産ラインを持つTSMCがなぜ新たな工場として熊本を選んだのか、考えられる理由は4点。一つずつ見ていきましょう。

理由①:豊富な水資源

TSMCのある台湾では、2021年の大干ばつにより深刻な水不足が起こりました。雨期の短さやラニーニャ現象による降雨量不足が原因です。特に台湾北部では下図のようにダムの貯水量が5%台まで減少する地域もありました。台中では3.8%、台南では0%となったダムもありました。

2021年の干ばつは半導体市場への影響が懸念されました。半導体生産には大量の水が必要だからです。実際には18万エーカーに渡る農地の灌漑用水を止めることで、家庭や工場に必要な水を確保。灌漑用水を止めたことで農業にしわ寄せが来る形となったため問題の根本解決が急務となりました。

こうして台湾での水不足が問題化する中で、台湾と距離的に近く、水資源が豊富な熊本が注目されました。熊本県では生活用水の約8割が地下水です。菊陽町を含む熊本地域(熊本市、合志市など)では、ほとんどの水資源が地下水でまかなわれています。熊本の地下水は阿蘇の外輪山から20年かけて地下を流れて熊本市内に届くとされています。さらに、環境省の「名水百選」に選ばれた4つの水源もあることから豊富でかつ質がいい水の供給が可能であり、半導体工場の進出先として選ばれたのです。

参考半導体メーカー「ラピダス」が北海道千歳市に新工場建設を決定!その理由や世間の反応を解説!

理由②:日本の半導体メーカーとの連携

日本の半導体メーカーと連携しやすいことも、TSMCが熊本に進出した理由です。

先述のように、半導体生産には材料メーカーや製造装置の開発・管理企業が必要で、TSMC単体では半導体の生産を行えません。九州の半導体製造シェアは、国内の2割です。半導体関連の事業所数も全国の16.4%あります。このように九州には多くの半導体関連企業があるため、半導体の生産ラインとして選ばれたと考えられます。

九州北部は半導体生産拠点として「シリコンアイランド」と呼ばれていました。現在でも、多くの半導体関連企業が事務所や工場を構えています。九州経済産業局の「九州半導体関連企業サプライチェーンマップ」からは、九州一帯に半導体の主要企業や工場が分布していることが分かります。中でも熊本と福岡に集中傾向にあり、福岡には今回のTSMCの熊本進出をサポートするソニーグループの半導体企業も存在します。

一方、熊本県内では、製造品出荷額内で半導体産業の占める割合が20%程度。半導体産業は熊本県の経済を支える産業であることがうかがえます。

理由③:既存企業との関係

TSMCが菊陽町に半導体工場を製造した理由として、既存企業との関係も挙げられます。

TSMCと連携して工場を運営するソニーは、菊陽町にiPhone搭載カメラ向けのセンサーを供給する主要生産拠点を保有済みです。TSMCは、ソニーの大手顧客とされています。ソニーに向けて製品を出荷する際に同じ菊陽町に工場があると便利であることも、TSMCが熊本県に進出した理由の一つです。

理由④:アメリカー中国間の緊張

また、アメリカと中国間の緊張が熊本進出の後押しとなったとの見方もあります。アメリカのIT企業がTSMCに半導体の製造を依拠しているのは、TSMCが半導体メーカーに委託されて製造を行うファウンドリ企業であるためです。

一方、アメリカは中国と長い間緊張関係にあります。半導体産業がアメリカ企業と関係を密にすることで中国からの攻撃をけん制。このことから半導体産業は「シリコンの盾」と呼ばれ、半導体産業の代表格であるTSMCは台湾人から「聖なる山」と呼ばれています。

もし、半導体製造の委託先をアメリカ国内で代替し、サプライチェーンがアメリカ国内で完結すれば、台湾への半導体依存が解消されます。そして、「シリコンの盾」は効力を失うでしょう。「シリコンの盾」がなくなり中国から攻撃を受けた場合のリスクを考慮した結果、中立的国家である日本に工場を設けるのはリスクヘッジとしてうなづける話です。

TSMC進出による日本経済への影響3選

TSMCの熊本進出にあたり、約1兆円の投資額が動きます。半導体工場の新設に伴い人員不足が予測されており、雇用や教育の面でも経済的な波及効果が予想されます。TSMCの熊本進出が日本経済に与える影響を3点紹介します。

影響①:政府からの支援

投資額の約半分は日本政府からの補助金となります。政府は日本の半導体産業復活に対して協力的です。岸田首相も、2023年8月に開催された「日本の半導体・デジタル戦略シンポジウム」に寄せたビデオメッセージの中で以下のように述べています。

「半導体は、デジタル化や脱炭素化の実現に不可欠なキーテクノロジーであり、更に経済安全保障の観点から、重要な戦略物資でもあります。最近、注目が集まっている生成AI(人工知能)も、半導体がなくては成り立ちません。半導体の安定的な供給体制の確保は、我が国、そして世界の経済社会にとって、喫緊の課題です。」

引用半導体戦略シンポジウムにおける岸田総理ビデオメッセージ(首相官邸)

経済産業省は過去に半導体工場の誘致を目指してきた背景があり、2020年にはTSMCとIntelの双方に工場誘致の交渉を行った旨の報道も出されました。

いずれにしても、日本政府は半導体産業の復活を日本の経済を支える一つの要と見なし、協力を惜しまない姿勢であることが読み取れます。TSMCの熊本第1工場への最大4,760億円の助成を含めた令和3年度の半導体産業支援に対する予算は、およそ8千億円。半導体産業支援に関しては、令和5年度補正予算で約2兆円が計上、令和6年度予算案でも48億円を計上見込みです。TSMCの熊本進出は政府からの大きな支援を受けるほどに期待されていることがうかがえます。

九州フィナンシャルグループの試算によると、TSMCが及ぼす熊本県内への経済波及効果は10年間で6兆9千億近く。当初の4兆3千億円から大幅に情報が修正されました。このように日本経済に少なからず変化を及ぼす土壌は、日本政府主導で整備されていると言えるでしょう。

影響②:半導体企業での雇用創出と半導体人材の育成

TSMCの熊本工場建設により、中長期的に多くの雇用が創出されました。熊本第1工場建設に際しては、最大6千名が建設作業に従事。ソニーグループとデンソーの合弁会社である運営担当企業のJASM(ジャスム)では、1,700名の雇用が創出される見込みとなっています。工場の安定した操業と先端技術の研究開発のために多くの人材が必要であり、関連企業の雇用が促進される見通しです。

さらに、菊陽町や近隣の大津町、合志市には、工場関係者の生活を支える産業も進出。これらの産業に従事する方の雇用も創出される見込みです。

雇用の増加に対応できるよう、半導体人材の育成も進められています。熊本大学は半導体人材の教育に向け、新たな学部「情報融合学環」と工学部に「半導体デバイス工学課程」を設立。情報融合学環と工学部半導体デバイス工学課程は、令和6年度より開設されます。

情報融合学環では「データサイエンスをベースにこれからの社会課題・企業課題に取り組む力が身に付く2つのコース」として、DS総合コースとDS半導体コースを設置。半導体コースでは、半導体を含む製造DX課題への対応力を身に付けられます。

TSMCの工場が建設された菊陽町にある「熊本県立技術短期大学校」には、2024年(令和6年)4月より半導体技術科が新設されます。独立行政法人国立高等専門学校機構も、九州・沖縄地区にある9つの高専を中心とする半導体人材育成事業を開始。拠点校は、「熊本セミコンテクノパーク」がある合志市の熊本高専と佐世保高専(長崎県佐世保市)です。

影響③:その他半導体関連企業の九州進出

TSMCの進出を皮切りに、国内の半導体関連企業の九州への進出が相次いでいます。
半導体工場の保守やインフラ管理を行うジャパンマテリアルは、TSMCにガス設備を供給するため菊陽町の東側に位置する大津町に工場を取得しました。半導体製造の温度調節装置を開発する伸和コントロールズは、修理サービスを行う拠点を長崎県大村市に新設しています。

金融サービスでは、熊本県の地方銀行である肥後銀行がTSMCの工場建設をきっかけに台湾の玉山銀行と提携、2023年6月には台北市に駐在員事務所を開設しました。

TSMCの熊本進出による周辺地域の変化と不動産投資への影響

TSMCの熊本進出は、ばく大な経済効果を生み出す見込みです。第1工場が完成したことから、すでに経済効果や変化が出ている部分もあります。

ここからは、TSMCの熊本進出により、周辺地域が実際どれくらい変化したかを見ていきましょう。合わせて、地域の変化による不動産投資における影響も考察します。

菊陽町周辺の変化

TSMCの工場建設が発表された令和3年以降、菊陽町の人口は年間500名以上増加中です。令和5年12月現在の人口は、約4万4千人となりました。この先、市となる要件である人口5万人を確実に超える見込みであることから、今後は市制への移行を視野に入れている状況です。

TSMCに関連して、熊本県はインフラを整備しています。九州自動車道からTSMCがある熊本セミコンテクノパークへ向かう「中九州横断道路」の建設が計画されています。同道路は合志市にできる「合志IC」からセミコンテクノパークへ向かいます。

合志ICからも「合志ICアクセス道路」を建設し、TSMCの前を通り国道325号線とつなげる予定です。さらに、合志ICアクセス道路には、現存する「大津植木線」を多車線化して連結予定です。

鉄道も整備が予定されています。2027年には熊本と大分を結ぶ豊肥本線の三里木駅と原水駅間に新駅を建設予定です。この新駅は、TSMCから3.5kmの位置に建設。TSMCの従業員や関係者の利用が見込まれることから、地域の発展も期待されています。

不動産投資への影響

では、TSMCの熊本進出による不動産投資への影響を見ていきましょう。菊陽町では、すでに不動産投資の需要が高まっています。菊陽町に進出を予定しているのは、TSMCだけではありません。複数の企業が進出することから、TSMC以外の住宅需要も急上昇、不動産投資目的の物件購入が進められている状況です。

菊陽町は、TSMCの熊本進出が決定してから急激に地価が上昇しています。以下は、菊陽町やその周辺の地価推移を一覧にした表です。TSMCの工場建設が発表された令和3年以降、地価が急激に上昇していることがわかります。

菊陽町はTSMCの第2工場も建設予定であることから、この先もまだまだ地価上昇が期待される地域です。さらなる地価の上昇を待つ住人もいることから、現在「売り渋り」も見られています。加えて、複数企業が進出することや大部分が「市街化調整区域」であり開発行為が禁止されていることから、菊陽町では住宅用の土地が不足している状況です。菊陽町の土地が不足していることから、菊陽町の東西に位置する大津町や合志市の需要も高まっている状況となっています。

まとめ

TSMCの熊本進出は、一企業の工場新設が日本経済に多大な影響を与えた事例です。工場新設により多くの雇用が創出されることから、不動産投資にも影響を与えます。不動産投資への影響も含めて今後の展開に注目です。

当社では、このような社会情勢の変化に対する相談も承っております。「社会情勢の変化は不動産投資にどのような影響を与えるのか」「今回のような場合、不動産投資をすべきかやめるべきか」。このような不安や心配をお持ちの場合、ぜひ当社の無料相談をご利用ください。豊富な経験を持つ不動産投資の専門家によるアドバイスで、あなたの不安を解消するお手伝いをいたします。どんな些細なことでも構いません。遠慮なく無料相談をご活用いただければ幸いです。

この記事の執筆: 堀乃けいか

プロフィール:法律・ビジネスジャンルを得意とする元教員ライター。現役作家noteの構成・原案の担当や、長野県木曽おんたけ観光局認定「#キソリポーター」として現地の魅力を発信するなど、その活躍は多岐に亘る。大学および大学院で法律や経営学を専攻した経験(経済学部経営法学科出身)から、根拠に基づいた正確性の高いライティングと、ユーザーのニーズに的確に応えるきめ細やかさを強みとしている。保有資格は日商簿記検定2級、日商ワープロ検定(日本語文書処理技能検定)1級、FP2級など。

ブログ等:堀乃けいか

この記事の監修: 不動産投資コンサルタント 釜田晃利

老舗不動産投資会社にて投資用区分マンションの営業マンとして約10年間従事したのち、2015年にストレイトライド株式会社にて不動産事業をスタートしました。現在は取締役として会社経営に携わりながら、コンサルタントとしてもお客様へ最適な投資プランの提案をしています。過去の経験と実績をもとに、お客様としっかりと向き合い、ご希望以上の提案が出来るよう心がけています。

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中立の観点でアドバイスを行います。

不動産投資で成功するためのアドバイスですので、お客様のご状況によっては不動産投資をあきらめていただくようおすすめする場合もございます。あらかじめご了承ください。

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