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新宿御苑での汚染土再利用実証事業について解説!不動産投資への影響は?

新宿御苑, 汚染土再利用実証事業, 影響

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令和4年12月、東京都の新宿御苑内にて福島第一原発事故により汚染された土を花壇として利用する実証事業が実施されることが発表されました。同年12月21日に、地元住民を対象とした説明会が実施。しかし、除染土の安全性に疑問があることから住民や市民団体からの反対意見が根強く、実施時期はまだ決まっていません。

本記事では、新宿御苑で行われる汚染土再利用実証事業の概要を解説します。反対意見や他自治体での過去事例を踏まえて、本事業の問題点も合わせて解説。最後に、本事業が不動産投資に与えるであろう影響について説明します。

汚染土の再利用は、今後他の自治体へ広がることが想定されます。そうなると、新宿以外の不動産投資にも、影響が及ぶかもしれません。汚染土の再利用が不動産投資に与える影響が気になる方は、ぜひ本記事をご一読ください。

新宿御苑に持ち込まれる除染土とは

新宿御苑に持ち込まれる「除染土」とは、福島第一原発の事故により放射能で汚染された「汚染土」の一種です。除染土は「じょせんど」と読み、除染作業により庭先や農地等から回収された表土を指します。

汚染土は、2044年度中に福島県外での最終処分を行うことが決まっています。最終処分までは、福島第一原発周辺にある福島県大熊町と双葉町にある中間貯蔵施設に保管中です。

中間貯蔵施設での汚染土保管量は、東京ドーム約11杯分。環境省は、汚染土の最終処分量を減らすために、放射線量が少ない汚染土を除染し再生利用をしたいと考えています。今回新宿御苑で実施されるのは、除染土を再生利用するための実験的な実証事業です。

新宿御苑における汚染土再利用実証事業の概要

実証事業は、環境省管轄の拠点で実施されます。新宿御苑は環境省管轄の国民公園です。新宿御苑の他、環境省管轄の国立環境研究所(茨城県つくば市)と環境調査研修所(埼玉県所沢市)で実施が予定されています。

この他、福島県南相馬市と飯館村で実証事業が実施されました。ここからは、「環境省 新宿御苑で実施予定の実証事業に関する説明会」資料を参考に、新宿御苑の実証事業について解説します。

実施場所

新宿御苑での実証事業は、新宿御苑内にある管理事務所近くの花壇で実施されます。区画近隣は管理区域のため、関係者以外立ち入り禁止です。

実施場所

実施事業では、敷地内に作成した縦3m ✕ 横10mの花壇に除染土を利用します。花壇の周辺にある貯水槽も利用するため、花壇周辺10m ✕ 13mの区画が事業地区として指定されています。

参考環境省「環境省 新宿御苑で実施予定の実証事業に関する説明会」資料

実施方法

新宿御苑での実証事業は、放射能の飛散防止や適切な水処理対策の下で実施されることになっています。

花壇では、除染土の上に覆土(ふくど)し、覆土に草花を植えます。覆土とは、埋め立てた廃棄物の表面を土砂で覆う方法です。埋立地で実施され、次のような効果があります。

  • 汚染物質の飛散
  • ガスや悪臭の防止
  • 浸出する水による土壌汚染の抑制

さらに、覆土の下にある除染土の下に集水シートを敷き、浸透水が集まる層を作ります。浸透した水は貯水槽に貯留され、安全性を確認した後に下水道に放流される仕組みです。

なお、実証事業終了後の除染土は、新宿御苑から除去され福島県に戻る予定となっています。

除染土の輸送方法と放射能飛散防止対策

新宿御苑で利用する除染土は、福島県の中間貯蔵施設より輸送されます。除染土の輸送についても、放射能飛散防止対策がきちんと講じられています

除染土は小型土のうに入れ、さらに大型土のうに入れて二重に防護。飛散や流出、雨水等の浸入がないよう、箱型の2トントラックで密閉して輸送されます。

除染土の輸送ルートも事前に決まっています。スムーズに輸送・搬入ができるよう、事前にドライバーの研修とルートの試走を行います。搬入時は、輸送監視システムにより輸送車の走行位置を監視。線量測定器が搭載された指揮車両による適切な指示のもと、福島県から新宿御苑まで輸送されます。

除染土搬入後は、大気中と地下水の放射能濃度と空間線量率を週1回測定工事中は、空間線量率と大気中放射能濃度が毎日測定されます。

事業実施中は、常時観測装置を設置し空間線量率を毎日測定。放射能濃度も月1回測定され、環境省ホームページにて結果を公表する予定です。

除染土の被ばく線量

いくら「安全」と言われていても、除染土の使用で実際どれだけ放射能を浴びるのかが気になるところです。実は、除染土利用での被ばく線量はそれほど多くありません

我々は、普段生活する中でも自然放射線を浴びています。ラドン・トロンや食品、宇宙や大地からの自然放射線による被ばく量は、年間約2.1ミリシーベルト(mSv)です。除染土の上で作業する場合の被ばく量は、7日間で0.034mSv。年に換算すると、約1.77mSvの被ばく量となります。環境省資料によると、一般公衆の年間追加被ばく線量限度は2.1mSv。1年間除染土上で作業したとしても、年間の被ばく線量限度以下となります。

1年間除染土の上で作業した場合、年間被ばく量の合計は1.77 + 2.1 = 約3.87mSv。一方、X線CT検査を1回受けると、約5 〜 30mSv被ばくします。1年間除染土の上で作業したとしても、1回のCT検査より少ない被ばく量なのです。

参考環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成29年度版)の掲載について(お知らせ)」

汚染土再利用実証事業への反対意見

新宿御苑や所沢市の除染土持込実証事業にあたっては、市民団体からの反対意見も出ています。過去に実証事業を実施しようとした福島県の二本松市と南相馬市では、住民の反対により実証事業が中止となりました。

ここからは、新宿御苑における市民団体の反対活動や法律に関する疑問の声、反対意見により実証事業が中止になった例を紹介します。

「新宿御苑への放射能汚染土の持ち込みに反対する会」の活動

「新宿御苑への放射能汚染土の持ち込みに反対する会」は、令和5年1月24日に発足した、新宿御苑での実証事業に反対する市民団体です。同会の主な活動として、以下の3点を解説します。

  1. 計画中止の申し入れ
  2. 陳情書の提出
  3. 反対署名運動

活動①:計画中止の申し入れ

令和5年2月24日、住民団体が環境省に除染土持込実証事業計画中止の申し入れを行いました。申し入れを行ったのは、次の3団体です。

  • 新宿御苑への放射能汚染土の持ち込みに反対する会
  • 所沢への福島原発汚染土持ち込みを考える市民の会
  • 埼玉西部・土と水と空気を守る会

住民団体は、事業の中止だけでなく住民説明会議事録の公開や各種情報提供も要請しました。

活動②:陳情書の提出

令和5年2月20日、同会は新宿区議会に対し国に意見書を提出するよう陳情書を提出しています。陳情の内容は、下記のとおりです。

  • 住民や新宿御苑の全関係者に対する実証事業詳細の十分な周知
  • 誰でも参加できる公開説明会の再開催
  • 一方的な説明ではなく参加者からの質問に回答がもらえる場をの設置
  • 汚染土に含まれる全放射性物質濃度の測定と情報開示
  • 住民や全関係者の理解が得られていない現状における実証事業の中止

活動③:反対署名運動

同会は、インターネット上で実証事業に対する反対署名も集めています。署名活動は令和5年4月から開始。約1ヵ月で約850名の署名が集まりました。

サイトでは、説明が行われないまま、東京のランドマークである新宿御苑に安全性に疑問のある放射能汚染土を持ち込むことは、到底許されないと主張。さらに、新宿御苑での実証事業実施を許すことにより、全国に汚染土が拡散されることも懸念されています。

参考change.org「新宿御苑に放射能汚染土をもちこまないで!~みんなの憩いの場に安全と安心を!」

FoE Japanと環境省の質疑応答

令和4年12月27日、NPO法人「FoE Japan」が環境省との質疑応答を行いました。主な内容は、下表のとおりです。

質問内容 環境省からの回答
除去土壌の再生利用の法的根拠、省令案の内容、現在の状況について 放射性物質汚染対処特措法 41条1項の「処分」に該当する。同法7条に基づき定められた基本方針の中で、汚染の程度が低い除去土壌については再生利用を検討する必要がある
今回の実証事業の目的は何か。すでに福島県内で行われている実証事業との違いは何か。 福島県外における最終処分、再生利用を進める一歩として、福島県外において実証事業を進めることが重要。工事中や維持管理における安全性を確認するとともに、見学などをしてもらい理解醸成を進めるため
所沢や新宿で近隣の50人のみを対象にした説明会しか実施しなかった理由は何か。 まずは近隣住民に説明するということで、自治体と相談して案内。人数は新型コロナや会場の広さを考慮して決定
原状回復を行う際に、覆土と汚染土が混ざり、汚染土が環境中に拡散する可能性はないのか。 原状回復のときに混ざらないようにする。混ざってしまった土も除去して持ち帰る。

参考FoEJapan「汚染土壌の再利用をめぐる環境省への質問および回答要旨」

所沢市での実証事業への意見

実証事業が行われる予定である所沢市の市民団体も、環境省へ事業中止の申し出を行っています。

所沢市への実証事業に対する問い合わせでは、否定的な意見が多く寄せられていました。さらに、対象地区では「除染で出た土によって何が起こるか分からない」との意見も出ています。

「放射性物質汚染対処特措法」の解釈にまつわる問題

環境省は、先述のFoEJapanの質疑応答で「汚染土再利用の法的根拠は、放射性物質汚染対処特措法41条」と述べています。「放射性物質汚染対処特措法」41条は、次のとおりです。

第四十一条 除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を行う者は、環境省令で定める基準に従い、当該除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を行わなければならない。

参考e-gov法令検索「放射性物質汚染対処特措法」

同条には「処分」の文言しかありません。環境省は「処分」に「再利用」が含まれると主張していますが、この主張を危険視する声も出ています。

廃棄物処理法では、1条に「再生」と「処分」の記載がそれぞれあります。一般廃棄物・産業廃棄物ともに「再生利用にかかる特例」を定義。それにも関わらず、放射性物質汚染対処特措法の解釈では「処分」に「再利用」を含めています。

法律によって言葉の解釈が変わることにより、今後「放射性物質汚染対処特措法」が環境省や政府にとって都合よく運用される可能性も否定できません

住民の反対による事業中止例

福島県二本松市では、除染土を道路の路床材として利用する実証事業が予定されていました。

二本松市では、新宿御苑と同様、限られた近隣住人にのみ説明会を開いていました。しかし、報道や市議会で実証事業説明会が大きく取り上げられた結果、規模を広げた説明会を開催説明会で反対意見が多く出たことにより、環境省が事業を中止する運びとなりました。

南相馬市では、常磐道の拡幅とインターチェンジ新築工事にて盛土として除染土を利用する計画が出ていました。インターチェンジ新築と除染土利用がセットとなっていたことから、反対署名や計画撤回の声が殺到。結果、事業はいったん中止となりました。

汚染土再利用実証事業による不動産投資への影響

汚染土再利用実証事業における最大の問題は「除染土の安全面」です。住まいの近くに除染土が使われているとしたら、本当に安全かどうか気になるでしょう。

いくら環境省が安全であると言っても、自然の状態に比べると、わずかとはいえ放射能が増えることは事実です。放射能が増えることにより対象地域に住むリスクはゼロとはなりませんが、福島県飯館村での実証事業で収穫された作物は、一般食品を大きく下回るセシウム濃度でした。環境大臣室や総理官邸にも、除染土を使用した鉢植えが置かれています。

除染土が実際に利用されていることで、除染土の安全性はある程度担保されています。従って、現状で除染土実証事業が不動産投資に与える影響は、さほど心配しなくていいとも言えるでしょう。

まとめ

新宿御苑での汚染土再利用実証事業は、住民団体が反対する一方で「除染土の利用はどこかがやらなければならない。それなら新宿御苑で行ってもいいのでは」と割り切っている住民も一定数います。とはいえ、除染土が100%安全とは言い切れないことや、環境省が発表する情報量が少ないことが、汚染土再利用実証事業における最大の問題点です。

除染土を活用し最終処理量を減らす意向から、今後除染土の実証事業は増加する可能性があります。今後の状況次第では、事業対象地域の住民や新規転居希望者が減り、不動産投資にも影響が出てくるかもしれません

当社では、汚染土再利用実証事業に関する動向を注視しています。実証事業と不動産投資の関係で不安なことがありましたら、遠慮なくご連絡いただけましたら幸いです。

この記事の執筆: 堀乃けいか

プロフィール:法律・ビジネスジャンルを得意とする元教員ライター。現役作家noteの構成・原案の担当や、長野県木曽おんたけ観光局認定「#キソリポーター」として現地の魅力を発信するなど、その活躍は多岐に亘る。大学および大学院で法律や経営学を専攻した経験(経済学部経営法学科出身)から、根拠に基づいた正確性の高いライティングと、ユーザーのニーズに的確に応えるきめ細やかさを強みとしている。保有資格は日商簿記検定2級、日商ワープロ検定(日本語文書処理技能検定)1級、FP2級など。

ブログ等:堀乃けいか

この記事の監修: 不動産投資コンサルタント 釜田晃利

老舗不動産投資会社にて投資用区分マンションの営業マンとして約10年間従事したのち、2015年にストレイトライド株式会社にて不動産事業をスタートしました。現在は取締役として会社経営に携わりながら、コンサルタントとしてもお客様へ最適な投資プランの提案をしています。過去の経験と実績をもとに、お客様としっかりと向き合い、ご希望以上の提案が出来るよう心がけています。

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中立の観点でアドバイスを行います。

不動産投資で成功するためのアドバイスですので、お客様のご状況によっては不動産投資をあきらめていただくようおすすめする場合もございます。あらかじめご了承ください。

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