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水素基本戦略による不動産業界への影響を解説!不動産投資は今後どうなる?

水素基本戦略, 不動産業界, 影響

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2023年4月4日、岸田文雄内閣総理大臣は、脱炭素社会を実現するための「水素基本戦略」を5月末を目途に改訂することを発表しました。同日総理大臣官邸で開催された「第3回再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」を踏まえた結果です。

水素基本戦略は、カーボンニュートラル=脱炭素の突破口として期待される水素の活用による水素社会の実現について書かれています。しかし、水素基本戦略により私たちの生活がどう変わるのかわからない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、水素基本戦略の概要と改定の背景、今回の改定で変わるポイントをわかりやすく解説します。合わせて、水素基本戦略が不動産業界にどう影響を及ぼすのかも、ご説明します。水素基本戦略が不動産投資に与える影響が気になる方は、最後までご一読いただけましたら幸いです。

水素基本戦略の概要

水素基本戦略とは、「2050年を視野に入れ、水素社会実現に向けて将来目指すべき姿や目標として官民が共有すべき方向性・ビジョンであるとともに、その実現に向けた行動計画を取りまとめたもの」です。

「既存のエネルギー供給構造を変革し、新たなエネルギーシステムへの移行を図っていかなければならない」として、政府は「エネルギー安全保障と温暖化対策の切り札」となりうる水素の利用を推奨しています。

「2050年」とは、菅義偉前内閣総理大臣の所信表明演説で出てきたキーワードです。2020年10月、菅前総理は所信表明演説にて次のように宣言しました。

「我が国は、二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち二〇五〇年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。」

引用首相官邸「令和2年10月26日 第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説」

菅前総理は、脱炭素社会の実現には「次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーション」が鍵であるとし、「総力を挙げて取り組む」ことも宣言しています。水素社会の実現も、カーボンニュートラル=脱炭素社会の実現の一環と言えるでしょう。

水素基本戦略改訂の背景

水素基本戦略は、戦略内にて「2020年度を区切りとして進捗状況などをフォローアップすることとし、必要に応じて見直しを行うこととする」と定義されています。水素基本戦略の上位計画である「エネルギー基本計画」が3年ごとに検討・見直しを行うことからも、2021年から、水素基本戦略を含めた水素政策の見直しが検討されてきました。

参考経済産業省 資源エネルギー庁「水素政策の最近の動向等について」

見直しを受けて今回発表されたのは、「水素基本戦略」を5月末をめどに改訂することと、その改定案です。

水素基本戦略の主な改定内容

水素基本戦略の改定内容は、主に次の4点です。

  • 水素基本戦略
  • 水素産業戦略の策定
  • 水素保安戦略の策定
  • 包括的な制度整備

それぞれ詳しく解説します。

水素基本戦略

水素基本戦略の主な変更点は、以下になります。

  1. 2040年における水素等の野心的な導入量目標を新たに設定
  2. 2030年の国内外における日本企業関連の水電解装置の導入目標を設定
  3. 大規模かつ強靭なサプライチェーン構築、拠点形成に向けた支援制度を整備
  4. 「クリーン水素」の世界基準を日本がリードして策定

水素の導入目標は、2030年時点で300万トンです。その先、2040年には1,200万トンの導入を軸に検討される予定となっています。

水電解装置の導入目標は15GWです。これは、全世界の導入見通しの1割にあたります。

サプライチェーン構築や拠点形成に関しては、15年間で15兆円の投資計画が検討。「クリーン水素」の世界基準は、水素の製造源ではなく、炭素集約度(水素製造時に発生するCO2排出量)で評価する基準の策定を検討する予定です。

水素産業戦略の策定

水素基本戦略を実現するため、「水素産業戦略」も同時に策定されます。「水素産業戦略」は、「①脱炭素、②エネルギー安定供給、③経済成長の「一石三鳥」を狙い、日本の技術的な強みを生かし、世界展開を図る」戦略です。具体的には次のような施策が想定されています。

生産 水電解装置の生産設備増強
水電解膜等のコア技術の開発支援
輸送 輸送設備の国内生産設備増強・人材育成
液化水素・MCHの海外普及(欧州等へのトップセールス)
水素等品質規格の標準化
利用 FC(燃料電池)商用車導入
水素ステーションのマルチ化
港湾や空港でのFC機器導入
発電技術の開発・国内外への普及加速
熱需要機器の導入促進

水素保安戦略の策定

「水素保安戦略」も、水素基本戦略を実現するための施策です。大規模な水素利用に向け、サプライチェーン全体をカバーした法令の適用関係の合理化・適正化を図ります

「水素保安戦略」の軸は、次の4点です。

  1. 水素の安全性を裏付ける科学的データ等の戦略的獲得
  2. 共有領域等に関するデータ等の共有
  3. 技術基準の統一的運用を通じたシームレスな保安環境の構築
  4. 第三者機関の活用(水素のノウハウ・経験を集約した中核拠点)
  5. 人材育成・大学の活用等(リカレント教育等による水素保安の人材の推進)

包括的な制度整備

経済産業省は、水素基本戦略・水素産業戦略・水素保安戦略の実現に向けた制度整備を「支援」と「規制」の2本柱で実現していくことを表明しています。2本柱の具体例は、下表のとおりです。

支援 既存燃料との価格差を埋めるためのサプライチェーン構築支援
水素の需要拡大に向けた供給インフラ整備への支援
規制 クリーン水素の定義づけ
クリーン水素導入への誘導措置の検討
適用法令の整理・明確化
大規模な水素の利活用に向けた必要な保安規制の合理化・適正化

参考内閣官房「水素社会実現に向けた政策の骨格(案)」

参考経済産業省「水素政策の最近の動向等について」

参考経済産業省「水素・燃料電池戦略ロードマップ~水素社会実現に向けた産学官のアクションプラン~(全体)」

水素エネルギーを実用化する際の課題

水素エネルギーの実用化に向けた2030年までの水素利用量の目標は、300万トンです。2040年には1,200万トンまで増やすとされていますが、水素エネルギーの実用化に向けては、課題も散見されています。

以下では、次の4つの課題について解説します。

  • 二酸化炭素(CO2)が排出される
  • 諸外国の水素生産量に追いつけるのか
  • コストがかかる
  • 安全面は問題ないか

課題①:二酸化炭素(CO2)が排出される

水素は製造方法により、グレー・ブルー・グリーンの3種類に分けられます。石炭や天然ガスといった化石燃料から作られるグレー・ブルー水素は、生産過程でCO2を排出。グレー水素生成の過程で作られたCO2は再利用されませんが、ブルー水素生成で作られるCO2は再利用されます。一方、太陽光発電や風力発電により作られるグリーン水素は、そもそもCO2を排出しません

原材料 二酸化炭素(CO2)の排出 二酸化炭素(CO2)の再利用
グレー水素 化石燃料(石炭や天然ガス) あり なし
ブルー水素 化石燃料(石炭や天然ガス) あり あり
グリーン水素 太陽光発電や風力発電 なし 排出なし

CO2の排出による環境への影響をなくすため、政府は「クリーン水素への移行」を明確化しています。「クリーン水素」とは、炭素集約度により評価する基準によって分類される水素です。水素の製造源で分類される「グリーン水素」とは違います。

アメリカでは「水素1kgを生産する際に排出されるCO2が2kg以下」だとクリーン水素となります。この定義に上記の3種類を当てはめると、クリーン水素には、グリーン水素だけでなくブルー水素も含まれる可能性があります。

日本におけるクリーン水素の定義は、これから決定されます。水素社会を実現するに当たっては、クリーン水素への移行によりCO2の排出量をどれだけ減らせるかが、今後の課題と言えるでしょう。

課題②:諸外国の水素生産量に追いつけるのか

水素の普及にあたっては、今後諸外国の水素生産量に追いつくことも課題のひとつです。独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、アメリカでの水素生産量は、2022年現在で約1,000万トン。現在200トンの日本の年間水素生産量と比較すると、5倍の開きがあります。

水素基本戦略の実施にあたり、十分な量の水素を製造し、供給できるようになるのかどうかも、日本が水素社会になるにあたっての課題です。

課題③:コストがかかる

水素は輸送、貯蔵などでコストがかかることも課題と言えます。水素を扱う際は、水素侵食・水素脆化という水素特有の現象が発生します。水素侵食とは、水素の影響で鋼の中にある炭素が失われもろくなると同時に、メタンガスを生成する現象です。水素脆化とは、水素の影響で材料強度が低下する現象をいいます。

水素を扱うには、水素侵食や水素脆化が起こりにくい素材を選ぶ必要があります。そのため、他の燃料よりも輸送・貯蔵コストがかかることは否めません。

水素導入にあたっても費用がかかることも課題です。「水素・燃料電池戦略ロードマップ」では、水素社会実現にあたって、利用・供給それぞれのコスト軽減目標を設定しています。

対象 軽減目標 目標年度
水素自動車とハイブリッド車の価格差 300万円→70万円 2025年
水素ステーションの整備費 3.5億円→2億円 2025年
水素の値段 100円/Nm3→30円/Nm3
※1Nm3=0.0899kg
2030年

課題④:安全面は問題ないか

水素基本戦略では「空気中で最も拡散しやすい物質であるため、その性質を踏まえ適切な管理下において着火や爆発する可能性は極めて低い」とされる一方、「密閉された空間において大量の水素と酸素が混在する状況では爆発の危険性が大きくなる」ことが明記されています。

参考経済産業省 再⽣可能エネルギー・⽔素等関係閣僚会議 「水素基本戦略」

実際に、2011年に発生した福島第一原発の事故や水素ステーションで爆発が起こった事例もあることから、安全面に対する懸念の声もあることは事実です。

水素基本戦略の文中には「①水素を漏らさない、②漏れた際には即時に検知し、水素供給を止める、③漏れても溜まらないようにする、といった安全対策が取られている」と記載があります。水素社会の実現にあたっては、水素爆発に対する配慮を示す具体例の提示が必要と言えるでしょう。

水素社会推進による経済面への影響

水素社会の推進は、経済面にも大きな影響を与えます。ここからは、水素社会の実現で成長が期待される分野を紹介します。合わせて、住宅への影響も見ていきましょう。

水素社会実現に向けて成長が期待される分野

「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」によると、「2050年にカーボンニュートラルを目指す上での取組が不可欠な分野」として、次の14分野が紹介されています。

エネルギー関連産業 洋上風力・太陽光・地熱産業
水素・燃料アンモニア産業
次世代熱エネルギー産業
原子力産業
輸送・製造関連産業 自動車・蓄電池産業
半導体・情報通信産業
船舶産業
物流・陣龍・土木インフラ産業
食料・農林水産業
航空機産業
カーボンリサイクル・マテリアル産業
家庭・オフィス関連産業 住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業
資源循環関連産業
ライフスタイル関連産業

上記の産業には、水素社会実現のための「実行計画」が策定される予定です。

参考内閣官房・経済産業省など「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

水素社会実現による住宅・建築物産業への影響

先述の「グリーン成長戦略」では、住宅・建築物分野は「早急に取り組むべき分野」であり「家庭・業務部門のカーボンニュートラルに向けて鍵となる分野」であるとして、太陽光発電システムの導入や太陽光発電を補助するZEH(ゼッチ)の拡大が図られています。

ZEHとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスのことです。「使用するエネルギーと創るエネルギーにより、1年間での消費エネルギー量を実質的にゼロ以下にする家」を指します。

水素燃料電池を使った発電も、ZEHで想定されるエネルギーです。従って、ZEHが早く導入され水素燃料電池が使用された住宅は、今後価値が上がることが想定されます。

他方、住宅や建築物の建設においても、制度の見直しが図られています。令和5年4月1日に施行された改正建築基準法では、第一種低層住宅専用地域や高度地区において屋上等に省エネ施設を作る場合に、高さ制限を超えることが構造上やむを得ない場合は、特例として許可が得られるようになりました。建築基準法の改正により、今後は、既存住宅にも太陽光発電が積極的に導入されるかもしれません

参考建築基準法第55条3項、58条2項

不動産投資への影響

水素基本戦略が不動産投資に与えると考えられる影響は、次の2つです。

  1. 太陽光発電を導入した不動産の価値が上昇
  2. 水素エネルギー関連施設の増加とその周辺の需要拡大

それぞれ詳しく解説します。

影響①:太陽光発電を導入した不動産の価値が上昇

現在進められている「第6次エネルギー計画」では、住宅の6割に太陽光発電を導入する計画です。現在でも、太陽光発電を導入し「低炭素建築物」に認定されると、税制が優遇されます。東京都では、すでに家庭用燃料電池(エネファーム)の設置に対する補助金制度があります。

参考東京都環境局「水素を活用したスマートエネルギーエリア形成推進事業(家庭部門)事業概要」

国は、2050年までにカーボンニュートラルを実現させることを目指しています。そのため、補助金を活用してカーボンニュートラルを実現できた不動産の価値は、今後上昇する可能性が高いと言えるでしょう。

影響②:水素エネルギー関連とその周辺の需要拡大

水素基本戦略により、水素生成や活用に関する産業が活発化することが想定されます。特に、先ほど紹介した14分野に関しては、今後の成長が見込まれるでしょう。

成長が見込まれる分野では、雇用の拡大や業務拡張の可能性があります。雇用の拡大や業務拡張により、会社周辺や沿線の不動産価値が大きく変動するかもしれません。

不動産投資は、家賃収入で収益を上げます。そのため、今後の不動産投資では、水素基本戦略によって不動産の価値が変わることを考えながら、物件を選ぶ必要があると言えるでしょう。

まとめ

水素基本戦略の改定により、経済だけでなく不動産投資にも影響を及ぼすことは間違いありません。実際の改定は5月末なので、詳細の発表を待ちたいところです。

水素基本戦略に関する疑問点は、今後たくさん出てくるでしょう。水素電池を利用した太陽光発電の導入といった、不動産に対する施策も気になるところです。

水素基本戦略の方向性次第では、不動産の価値が大きく変わるかもしれません。当社でも、水素基本戦略により不動産の価値がどう変わるのか、最新の情報を入手していきます。気になることがありましたら、遠慮なくご相談ください。

この記事の執筆: 堀乃けいか

プロフィール:法律・ビジネスジャンルを得意とする元教員ライター。現役作家noteの構成・原案の担当や、長野県木曽おんたけ観光局認定「#キソリポーター」として現地の魅力を発信するなど、その活躍は多岐に亘る。大学および大学院で法律や経営学を専攻した経験(経済学部経営法学科出身)から、根拠に基づいた正確性の高いライティングと、ユーザーのニーズに的確に応えるきめ細やかさを強みとしている。保有資格は日商簿記検定2級、日商ワープロ検定(日本語文書処理技能検定)1級、FP2級など。

ブログ等:堀乃けいか

この記事の監修: 不動産投資コンサルタント 釜田晃利

老舗不動産投資会社にて投資用区分マンションの営業マンとして約10年間従事したのち、2015年にストレイトライド株式会社にて不動産事業をスタートしました。現在は取締役として会社経営に携わりながら、コンサルタントとしてもお客様へ最適な投資プランの提案をしています。過去の経験と実績をもとに、お客様としっかりと向き合い、ご希望以上の提案が出来るよう心がけています。

経験豊富なコンサルタントが
投資家目線で課題をヒアリングし、
中立の観点でアドバイスを行います。

不動産投資で成功するためのアドバイスですので、お客様のご状況によっては不動産投資をあきらめていただくようおすすめする場合もございます。あらかじめご了承ください。

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