サブリースは解約できない?これで完璧!トラブル事例や正当事由の判例を一挙解説
- 更新:
- 2024/11/08
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不動産投資を行う際に心配になるのは空室による家賃の減収です。
空室が増えるとそれだけ毎月の収入が減ってしまうので、オーナーにとってはできるだけ避けたいものですよね。そこでサブリースを行う会社と契約を結ぶことで、空室の場合も一定の家賃収入を得ることができます。
しかし、よく知らないままに契約してしまうと後々契約上でトラブルが発生することも少なくありません。たとえば事情があって物件を手放したくなった場合にも、サブリース会社に拒絶されて解約できないケースがあります。トラブル回避のために、サブリースとはどのようなもので、なぜ注意しておく必要があるのか押さえておきましょう。
今回はサブリースの特徴や、予想されるトラブルと解約時の「正当事由」として認められた判例についてご説明します。
- 目次
- サブリースとは
- サブリース契約は解約できない?予想されるトラブルの原因とは?
- サブリースが解約できた判例
- サブリースが解約できなかった判例
- サブリース解約のための手順とは?
- サブリースを解約することの利点
- サブリース解約後にやるべきこと
- 使ってもいい?サブリースのメリットとデメリットを改めてチェック
- サブリースのデメリット
- サブリースのトラブルを防ぐには?5つの注意点
- 【失敗しない】サブリース会社を選ぶポイント
- サブリース契約は解約できない?予想されるトラブルの原因とは?
- まとめ
サブリースとは
サブリースとは、マンション、アパートなどの集合住宅形式の不動産投資物件を不動産会社が一括で借上を行うシステムです。この契約をすることで、空室になっても不動産の所有者には満室想定の家賃の80~90%が定額で入ってくることが保証されます。
空室であろうが、満室であろうが一定の収入が保証されることから「一括借上制度」「家賃保証制度」とも呼ばれています。空室リスクを回避するための方法のひとつです。
サブリース契約は解約できない?予想されるトラブルの原因とは?
前述した通り、サブリース契約は不動産会社側に有利なものとなっています。空室リスクを回避するためとはいえ、気軽に契約してしまうと後々トラブルに発展する可能性もあるでしょう。
中には知識の少ない大家さんを対象に、サブリースの詳細をあえて伏せたまま契約を行う業者もいるようです。
サブリースを契約する前に起こりうる問題を予測し、できるだけ回避できるよう備えておくことが大切です。
家賃保証は年々下がる
サブリース物件が投資物件として売りに出されていることも少なくはありません。中にはかなりの高利回りのものもありますが、多くの場合、その時点のみ高利回りとなっているので要注意です。
というのは、家賃保証の金額は段階的に下がっていくケースが非常に多いためです。
通常、サブリース契約は2年、5年といった期間で家賃保証の金額が下がっていきます。
一定の家賃は保証されているとはいえ、段階的に収入が下がっていくわけですので、キャッシュフローは刻々と悪化していきます。非常に事業計画のやりにくい投資物件となるでしょう。
サブリース契約をする前に、その問題をよく考慮して事業計画をたてなければなりません。
途中解約されるおそれがある
通常サブリース契約は、不動産会社から解約の要求ができるようになっています。一定の収入があるものと計画していても、途中で契約が解約されてしまうリスクをはらんでいるのです。
不動産会社が中途解約できるのは、サブリース契約が前述した「借地借家法」に従って行われるからです。そのため、普通の賃借人が賃貸契約を解除できるのと同様に、不動産会社もサブリースを解約することができます。
契約期間中でも、稼働率などの関係で不動産側から解約されることもありえるということを頭に入れておきましょう。
オーナーからの解約は簡単にできない
不動産会社からオーナーへのサブリース解約の申し入れは簡単です。しかし、オーナーからの解約は簡単ではありません。このことが、様々な問題を引き起こす一因となっています。
通常の賃貸契約は、契約の更新時期に更新を望まなければ解除することができます。
しかし、サブリースの場合、投資物件の空室リスクは不動産会社が負います。満室にするためにかける手間や費用は全て不動産会社持ちです。不動産会社が苦労して客付けして満室稼動させようとするのに、大家さんが自由に解約できるのでは、サブリース業そのものが成立しません。
サブリース会社はあくまでもその物件を借りている「借主」の立場です。正当な理由がない場合、オーナー側からの契約解除はできないとされています。よって、契約解除にサブリース会社が応じない場合は、正当事由が必要となるのです。
この正当事由は、物件個別の事情がからみ、裁判所で様々な判例が出ています。解約の理由が正当事由であるかどうかは裁判所の判断となるケースがほとんどです。少なくともオーナー側の事情だけでは認められません。
正当事由として認められるケース
オーナー側からサブリース契約を解除できる正当事由として認められるのは、以下のようなケースです。
- 立ち退き料を支払うケース
- 事情があり物件を売却するケース
- 老朽化で取り壊しを行うケース
- 自分で住む、または親族が住むケース
サブリース会社としては、収入が見込める物件のサブリース契約を解除「される」立場となるため、管理をしてきた物件からの収益を手放すことになります。そのため、サブリース会社に恩恵がなければ解約請求を通すことはできません。まず正当事由となるケースとしては、持ち主が立ち退き料を支払うことで会社の損失を補填することが挙げられます。
また、物件の売却や取り壊しを選択することで、貸主が物件の持ち主ではなくなります。この場合は物件の貸主と借主という関係ではなくなるため、サブリース契約を解除する正当事由となります。
サブリース契約がセットになっている物件は売却が困難であることは先述しましたが、サブリース契約が解除されたタイミングで物件を引き渡すことで、スムーズな売買が可能になります。例えば物件の購入検討の問い合わせが来た際に、先方には「現状はサブリース契約があるが、引き渡しの時点では契約が解除される想定である」といった内容を伝えることで、購入が成約する可能性が高まります。
正当事由にならないケース
サブリース契約解除の正当事由として認められないのは、以下のような「金銭的な事情」があるケースです。
- 利回りを高くしたい
- 売り時で高く売りたい
サブリース契約は借主であるサブリース会社の利益を守るための契約となるため、貸主だけが得をする要求は正当事由として通らないことを覚えておきましょう。
ただし、サブリース会社が家賃や保証額を貸主に支払わず、数ヶ月単位で滞納するような事態になれば、正当事由の有無に限らず契約を解除することができます。借主に落ち度がない場合は、正当事由のもと契約を解除する交渉を行いましょう。
オーナー側の解約には時間がかかる
正当事由が認められサブリースの解約に同意を得られても、実際の解約までに時間がかかるのが普通です。
通常サブリース会社は簡単に解約されないように、契約書に「解約する場合は、半年前に書面で通知しなければならない」などの条項が盛り込まれています。 そのため、契約書には解約の6ヶ月前に書面により通告することや、そもそも解約条項がなく、解約で違約金を徴収される可能性もあります。
サブリース業というビジネススキームからしても、これは避けられない問題であり、この点についてよく理解した上でサブリースを検討すべきでしょう。
違約金が発生する可能性がある
先ほど述べたように、サブリース契約に中途解約の条項が記載されていない場合、オーナーからの解約は非常に困難です。もし中途解約の条項があったとしても、高額な違約金を支払うことが書かれている場合が多くあります。
違約金の有無については、必ず契約時にしっかりと確認しておく必要があるでしょう。
サブリースが解約できた判例
ここからはサブリースが解約できた判例と解約できなかった判例を紹介します。まずは解約できた判例を見ていきましょう。
平成27年:立退料50万円の支払いを条件に解約成功
平成27年に東京地方裁判所で争われた案件では、立退料50万円をオーナーがサブリース会社に支払う条件で解約が成立しました。解約請求に至った理由は、築60年を超える老朽化した自宅の補修費をまかなうために、サブリース契約していた建物を売却する必要があったためです。
本案件ではサブリース会社に毎月33,000円の転賃収益が出ていたため、その損害金相当額として50万円の立退料で解約の正当事由と認める判決が出されています。とはいえ、この33,000円という金額に対し「契約の終了でサブリース会社の経営に影響を及ぼすことはない」という司法の判断があったのも本案件の背景です。あくまでサブリース会社の不利益にならないか、という点が争点となっていることが分かります。
参考一般財団法人不動産適正取引推進機構「サブリース会社に対する建物のオーナーの賃貸借契約解除及び建物明渡し請求が認容された事例」
サブリースが解約できなかった判例
続いて、サブリースが解約できなかった判例を2つ見ていきましょう。
①平成24年:契約期間満了時の更新拒絶で解約失敗
平成24年に東京地裁で争われた案件では、契約期間満了時のサブリース会社の更新拒絶が正当と判断され、オーナーの解約請求が棄却されています。本案件は下記のように少し複雑な事情があり、もともとA・Bの2者間で結んでいたサブリース契約が、まったく別のX・Yの2者間に承継されていました。
- オーナーAがBに対し、サブリース契約に相当する特約付きで賃貸借契約を結ぶ(Bがサブリース会社に相当する立場)
- Bがサブリース会社Yに賃借人の地位を譲渡する(A・Y間でサブリース契約が結ばれている状態)
- Aが不動産会社Xに対し建物を売却する(X・Y間でサブリース契約が結ばれている状態)
この状態で不動産会社Xがサブリース会社Yに対し、サブリース契約の契約期間満了時に解約請求を行った経緯です。しかし、Xに特段の事情があるわけではないため、正当事由がないことから請求が棄却されています。なんらかの経緯で契約者が変わっていても、サブリース契約が引き継がれ正当事由が通常と同じく必要になることが分かる判例です。
参考一般財団法人不動産適正取引推進機構「サブリース会社を借主とする建物の賃貸借契約の更新拒絶につき正当事由が否定された事例」
②令和元年:自己使用の必要性が認められず解約失敗
令和元年に東京地裁で争われた案件では、オーナーの自己使用の必要性が認められず解約に失敗しています。本案件ではオーナーに「相続対策の納税資金確保のため、サブリース契約中の建物を売却する必要がある」という事情がありました。しかし、これは正当事由に認められないとして解約請求が棄却されています。
なお本件では、契約書に「両当事者から解約申入れにより解約できる」という内容の約定が記載されていたとのこと。しかし借地借家法による定めが契約書の記載内容よりも強い効力をもちます。そのため、契約書の記載内容は無効と判断されました。
参考一般財団法人不動産適正取引推進機構「サブリース契約には借地借家法第28条の適用がないとして求めた賃貸人の建物明渡し請求が棄却された事例」
サブリース解約のための手順とは?
サブリースの解約を進める際には、大きく分けて3つの手順を踏むことになります。特に先述の通り、貸主側からのサブリース解約は簡単にはできず、高確率でサブリース会社との交渉が必要になります。具体的に手続きの流れを確認しましょう。
手順① サブリース契約書の解約条項を確認する
解約の手続きを進めるために、まずは契約時に交わした契約書を見直しましょう。書面に記載されている解約条項を確認します。
解約の事前通告や違約金に関する記載を確認することで、予期せぬ齟齬や出費が生じるリスクを防いで解約通知書の作成に移ることができます。
手順② サブリース会社に解約通知書を送付する
解約通知書の送付前に、サブリース会社に電話またはメールで解約の旨を通達しましょう。通達後に、解約通知書をメールまたは郵送にて送付します。
解約通知書には「物件の名称」「持ち主の氏名・住所」「サブリース会社名・所在地」といった基本的な情報、「解約通知日」「契約終了希望日」といった具体的な日程、「準じる解約条項」「違約金・立退料」があればその内容を記載します。
手順③ サブリース会社と交渉を進める
解約の合意が取れない場合、サブリース会社と交渉を行います。サブリースを専門とする弁護士や不動産会社が仲介する形で、契約解除を進めていきます。
先述のとおり、サブリース契約の解除には正当事由が求められるなど、交渉の際には法的な解釈が必要になります。不動産のオーナー1人では交渉に限界があるので、専門知識のある第三者に交渉を依頼するようにしましょう。
サブリースを解約することの利点
空室を回避しながら管理を一任できる一方で、持ち主が不利になる契約が交わされてしまうのがサブリースです。ここではさらに別の視点から、サブリースを解約したらどのような利点があるかをご紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①利回りが改善する
サブリースの保証額が家賃の80%~90%が相場です。サブリース契約を交わすことで家賃収入および利回りが減少することになります。また、契約によっては持ち主が敷金・礼金を受け取れないケースもあります。
空室リスクが低い物件であれば、サブリースを解約することで家賃収入の向上によって利回りが改善し、キャッシュフローが良くなります。特に都心部のアクセスの良い物件であれば、空室リスクが低く入居付けも難しくないため、サブリース解約による恩恵が大きくなります。
②出口戦略が決めやすくなる
利回りが改善するということは、反対にサブリース契約時には利回りが低下することになります。
そのため、サブリース契約がセットになっている物件は公示される利回りの数値が低く、投資家に避けられる傾向にあります。また、サブリースの契約先の会社が決まっていることから、新たに購入する投資家は「このサブリース会社は信頼できるのか」というチェックから入らなければいけません。
すなわち、サブリース契約が前提の物件を嫌がる投資家が一定数いるため、売却が困難になるおそれがあります。
サブリース契約を解除することで、新たな買主視点では「利回りが良好で、自分の信頼できる管理会社とやり取りができる物件」となります。不動産投資は売却という出口戦略までが重要な事業計画となるため、物件が売れやすくなることは投資家にとって大きな利点です。
③管理会社を変更できるようになる
サブリース契約により管理をお任せできることはメリットでもありますが、リフォーム業者や交換設備の選定、入居審査などもサブリース会社に一任されます。
悪徳なサブリース会社であれば、一定のキックバック報酬を得る条件のもと、高額なリフォーム業者と結びついているかもしれません。そのため、サブリース会社の主導で行うリフォームや設備交換は、通常よりも割高になるリスクがあります。また、空室率を下げることを最優先に、家賃の支払い能力の低そうな入居希望者でも入居付けしてしまうおそれもあります。
サブリース契約を解除することで、自身の信頼できる会社に各種手続きを依頼できるようになります。不動産会社とのつながりも投資家の財産であることを意識し、優良な不動産会社と関係性を構築するようにしましょう。
サブリース解約後にやるべきこと
サブリース解約の合意が取れた後は、持ち主が鍵や敷金を保管している場合、サブリース会社に移管して解約が完了します。その後は通常の不動産投資と同じように、新たな管理会社や入居者との契約が必要になります。具体的にその後の手続きを見ていきましょう。
順番に解説します。
新しい管理会社を見つける
自身で物件を管理する場合を除き、不動産の管理会社と新たに契約を行います。管理会社は自身の信頼できる不動産会社を選定しましょう。サブリース解除の際に仲介を依頼したのが不動産会社の場合、物件の管理もその会社が行っているのであれば依頼するのも一つの手です。
サブリースの解約に手間取ると、「会社とのやり取りは面倒だし全部自分で管理しよう」といった考えに至る方もいます。しかし、サブリース契約にて物件の管理を一任していた状態からすべて自身での管理に移行すると、やることが一気に増えて賃貸経営が破綻しかねません。
オーナー自身が変化に段階的に慣れるためにも、サブリース解約後は管理会社と新たに契約することをオススメします。
入居者と改めて賃貸借契約を締結する
管理会社との契約が終わった後は、管理会社が変更になった旨を入居者に通達し、新たに賃貸借契約の合意書を交わします。
基本的には管理会社が窓口に立ちますが、契約手続きの進捗はオーナーも把握しておくようにしましょう。
空室の場合は、改めて賃貸募集をかける
空室がある状態でサブリースを解約すると、空室部分の家賃保証額が入らずに収支が悪化します。できれば解約手続きを進めている間に、並行して入居付けも行うようにしましょう。
解約手続きと並行して賃貸募集を行うメリットとして、「サブリース会社の企業努力で入居付けが行えなかった物件に、オーナー自身が入居付けを行っている」という状況が、交渉に有利に働く可能性があります。サブリース会社を利用する利点が薄いことをアピールすることで、貸主に有利に解除手続きを進めることが見込めます。
ただし、賃貸募集にも物件の掲載や広告の費用が掛かる点に注意しましょう。特に違約金を支払う場合には、手元資金がショートしないように入出金管理をしっかり行うことを推奨します。
使ってもいい?サブリースのメリットとデメリットを改めてチェック
ここまでサブリースの解約が難しいことを解説してきました。「結局、サブリースは使ってもいいの?」と迷っている方もいるでしょう。そこで、サブリースを利用するか判断できるよう、メリットとデメリットをまとめています。利用を迷っている方は、判断材料のひとつとして参考にしてみてください。
サブリースのメリット
サブリースのメリットは以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
空室リスクを回避できる
サブリース契約を結べば、不動産投資の事業計画にかかわる「空室リスク」の回避が可能です。もし空室が発生しても、サブリース会社から安定的な月額収入の支払いを受けることができます。
不動産投資はローンの返済や修繕費をはじめとしたメンテナンス費用などの支出があるため、空室発生による減収は赤字の発生、また事業計画の失敗リスクを高めてしまいます。サブリース契約を結べば、安定的な月額収入を得つつ計画通りに不動産投資を進めることが可能です。
管理をほとんど任せられる
サブリースを活用すれば、建物・賃貸の管理業務をほとんどサブリース会社に任せることが可能です。家賃の集金や入居者とのトラブル対応など、ほとんどの業務をサブリース会社が行ってくれます。
万が一にも入居者が付かなくなってしまうと、サブリース会社がもっとも大きな損失を被ってしまいます。サブリース会社が主体的に管理を行ってくれるため「契約したあとはお任せ」のようなスタイルで不動産投資を行うことが可能です。
確定申告がラクになる
サブリース契約を結べば、事務作業が簡素化され確定申告が大幅にラクになります。通常のケースとサブリース契約を結んでいるケースでは、以下のように帳簿作成時の手間が段違いだからです。
- 通常のケース:入居者個別に入退去時の収支を処理・記載しなければいけない
- サブリースのケース:サブリース会社とのやり取りだけ記載すれば良い
ひとつのサブリース会社と契約する戸数が多くなるほど、帳簿の記載内容も大きく簡素化されます。空室リスクを回避しつつ、管理や事務作業の負担も軽減できるのがサブリースのメリットといえるでしょう。
サブリースのデメリット
サブリースのデメリットは以下の2つです。
こちらも詳しく見ていきましょう。
得られる家賃収入の金額が減る
サブリースを契約することで、得られる家賃収入の金額が減ってしまいます。一般的にサブリース契約における家賃保証額は80~90%の設定です。つまり、オーナーが直接賃貸した場合と比べて、10~20%ほど家賃収入が減少してしまいます。
通常の不動産投資よりも入ってくる金額が少ないため、より細やかな資金計画を立てないと破綻してしまうかもしれません。
解約や家賃保証額の条件がサブリース会社に有利となっている
ここまで解説してきた内容からも分かるように、解約や家賃保証額の条件は圧倒的にサブリース会社優位です。借地借家法の定めにより、解約には相当の正当事由が必要となります。正当事由が認められても、損害相当額の立退料を必要とする場合がほとんどです。
また家賃保証額も年々下がってしまうことが多いうえ、この金額の条件もサブリース会社の裁量です。よほど不当な内容であれば拒絶することも可能ではあるものの、当初の条件で半永久的に契約できるわけではない点は理解しておかなければいけません。
サブリースのトラブルを防ぐには?5つの注意点
サブリースは不動産側に有利な契約となるため、契約期間や違約金などのトラブルが発生する可能性をはらんでいます。
しかし先ほどご説明したように、空室の場合のリスクを抑え、事務作業も簡略化できるなど不動産投資の上で心強い制度でもあります。できるならばトラブルを避け、上手に利用したいところです。
では、サブリースで予想されるトラブルを避けるためにはどのような方法があるのでしょうか。5つの注意点を紹介していきます。
トラブル回避のために、サブリースを検討している方は必ず確認するのがおすすめです。
メリットとデメリットをしっかりと理解する
以下の「サブリース契約のメリットとデメリット」をしっかりと理解したうえで契約しましょう。
メリット |
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デメリット |
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特に「簡単にはオーナー事情で解約できない」点はしっかりと理解しておいてください。将来、物件を売りたくなったときに、サブリース契約を解除して売却に着手できるわけではありません。「事情があっても、司法の判断で借地借家法の定めによる正当事由と認められなければ解約できない」ことは押さえておきましょう。
契約書をよく確認する
不動産業は、売買から賃貸まで、全て法律に基づいた契約によって成立しています。サブリース契約も例外ではありません。契約書の内容をよく確認することは、不動産投資のあらゆる場面で必要なことです。
サブリース事業を行っている不動産会社は玉石混交で、社員も様々な能力の人がいます。そのため、大雑把な説明をされてもそれでよしとしないことが重要です。
サブリース契約時には、問題になりそうな点や不明な点についてはきちんと説明を求めて、その契約に納得がいくまで確認をしていくことが重要になります。
事業計画を軽視しない
家賃保証がされる場合であっても、事業計画を軽視してはいけません。
空室リスクが大きく、客付けが上手く行かなかった場合などは、保証される家賃が大きく下がる可能性もあります。また、不動産会社がサブリース事業として失敗と判断すれば、撤退、つまり契約を途中解除されてしまうおそれもあります。
また、サブリースの場合は売却のチャンスを逃しやすいともいえます。サブリースは通常の賃貸より入ってくる金額が少ないので、投資物件としての価値は下がってしまいます。出口戦略まで考えた事業戦略を考える場合、この点も視野に入れるべきでしょう。
サブリースで家賃が保証されるとはいえ、不動産事業を行うことには変わりありません。手抜きせずにしっかりと事業計画をたてましょう。
専門家やサブリース問題解決センターに相談する
サブリース契約の解除で問題が発生した場合は、自力での解決は非常に難しいでしょう。
法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。サブリース解約の問題などを多く扱っている弁護士、法律事務所を探して相談してみましょう。
また、サブリースで起こった問題を解決するための団体も設立されています。
「サブリース問題解決センター」は法務大臣認証ADR機関提携団体です。サブリースの適切な取引を普及し、健全な不動産運用を目指す活動をしています。
サブリース物件に不安や疑問がある場合には、このような団体に気軽に相談することができます。無料相談会も開かれていますので、日時を公式サイトで確認するのがいいでしょう。
また、サブリースの適正な取引を目指すための勉強会も定期的に開催されているので、サブリース物件を所有の方で不安のある方は、一度参加してみるのもおすすめです。
参考【完全版】マンション投資で失敗しないための5大知識とは!?
何社か選んで比較検討する
サブリース会社は1社だけで決めず、何社か選んで比較検討しましょう。なぜなら、以下のような条件はサブリース会社により異なる場合があるためです。
- 管理手数料(家賃収入から差し引かれる金額)
- 賃料の見直し時期
- 再免責期間(空室時など家賃保証を行わない期間)
とくに初めてサブリース契約を利用する場合は、どの会社の条件が良いか判断するのは難しいでしょう。そのため、最低でも2社以上の契約内容を比較し、より条件が良い方を選ぶ必要があります。
【失敗しない】サブリース会社を選ぶポイント
サブリース契約で失敗しないためには、優良なサブリース会社選びがカギを握ります。下記のポイントを押さえてサブリース会社を選びましょう。
- 大手企業か、中小企業か
- 担当者との相性は良いか
- 市場のリサーチ力や分析力はあるか
- しっかり相場にあった賃料提案をしてくれるか
大手企業は緻密なプラン設計が特徴で、賃料見直しも含めた将来のシミュレーションの正確性が高いことが多いです。一方で中小企業は扱う物件が幅広く、地域に密着した提案を行ってくれるのがポイント。中小企業の方が高い入居率を維持できるケースもよくあるため、必ずしも大手を選べば良いわけではありません。
長く付き合っていく担当者とウマが合うか、また市場をリサーチした適切な提案をしてくれるかどうかもポイントです。当然、相場と乖離した賃料提案をしてこないこともチェックポイントとなります。こうしたポイントを押さえて、サブリースを活用した不動産投資を成功させましょう。
サブリース以外の物件管理方法は?
サブリースは家賃保証を行ってくれるほか、建物・賃貸管理もほぼ一任できるのがメリットです。しかしサブリース以外に、物件の管理方法には以下の2つがあります。
特に、サブリースよりも毎月の減収が少なく、かつ管理の手間も抑えられる「委託管理」は検討の余地ありです。サブリースの利用を迷っている方は、ほかの2つの管理方法の特徴も押さえておきましょう。
自主管理
自主管理とは、文字通り自分で物件や賃貸の管理を行う方法です。以下のメリット・デメリットがあります。
メリット |
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デメリット |
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自主管理をすれば一切の手数料がかからないため、より多くの家賃収入を得ることができます。一方ですべての管理業務を自分で行う必要があり、すぐに行ける距離にないと負担が大きいのがデメリットです。
また修繕などを依頼する業者は、自分で選定しなければいけません。1から業者との関係を築くことから、修繕費用が割高になってしまうリスクもあります。自主管理はある程度の経験を積み、不動産投資に慣れたらおすすめできる方法です。
委託管理
委託管理は不動産会社に物件や賃貸管理を委託する方法です。以下のメリット・デメリットがあります。
メリット |
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デメリット | 管理手数料がかかる (家賃収入に対し5~10%が相場) |
委託管理は「家賃保証のないサブリース契約」のようなイメージで、管理業務をほとんど任せることが可能です(※)。管理手数料はかかるものの、その相場は家賃収入に対し5~10%ほど。10~20%が相場のサブリースと比較し、手数料は大幅に抑えられます。
忙しくてなかなか時間を捻出できない方でも、委託管理を活用すれば不動産投資をはじめられるでしょう。サブリース会社のように「解約できない」デメリットもありません。
当社でも主に委託管理を活用した不動産投資のご提案をしています。より詳しく管理方法について知りたい方や、サブリースの利用に不安をお持ちの方には、当社の無料相談をご活用ください。経験を積んだ熟練の不動産投資コンサルタントがお答えいたします。
まとめ
サブリースは空室期間の家賃を一定額保証してくれます。不動産投資のリスクヘッジとして考えたい選択肢のひとつといえるでしょう。 しかし、一般的に不動産会社有利の契約となるため、あまり考えずに契約してしまうと、途中で解約ができなかったり、違約金が発生したりというトラブルに発展する可能性もあります。
サブリースの契約を結ぶ前にはメリット・デメリットを踏まえてよく検討し、必要があれば専門家や団体に相談することも大切です。第三者の力も借りながら、自分でも知識をつけてサブリース契約を賢く利用しましょう。

この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
ブログ等:はやてのブログ