不祥事から学ぶ!不動産投資に潜む罠とリスク回避の秘訣
- 更新:
- 2023/06/23
「不労所得」「お金がお金を産む」
憧れの生活をもたらす可能性がある魅力的な不動産投資ですが、同時に「怪しい」「騙されそう」というマイナスのイメージを持つ人も少なくないでしょう。不動産投資は動く金額が大きい分不祥事も多く、大々的に報道されている事件以外にも時折耳にする機会があることも原因でしょう。実際、独立行政法人国民消費生活センターによると、投資用マンションに関する相談件数は2018年で1,350件となっています。
もちろん不動産投資は資産形成の有効な手段であり、理想の生活を手に入れている人も多く不祥事はほんの一部です。しかし不動産に限らず、投資には罠やリスクがあるのもまた事実です。不動産投資に慣れていない人が怪しい会社に騙されたり、知らずに法律違反を犯したりするケースもあります。
本記事では、不動産投資に潜む罠やリスクを紹介し、それらを回避するためのポイントを解説します。大事な資金を投入する前に事例を知っておき、悪質な不動産投資の不祥事に巻き込まれないようにしましょう。
不動産投資における不祥事とは?
不動産投資に関する不祥事にはどのようなものがあるでしょうか?
大きく分けて以下の4つが考えられます。
違法な取引 | ・不正な手段により得た建築許可による不動産取引 ・虚偽の情報を記載した契約書を用いた不動産取引 |
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詐欺 | ・存在しない偽の物件情報や収益予測を提示して投資家を誤認させた上での契約 ・契約後の条件変更などや投資家側に不利な条件の秘匿などにより、実際にはリターンが得られない契約 |
物件の欠陥 | ・建物の耐震性や構造に問題があり、安全性が脅かされる欠陥物件の販売 ・工事不良や隠蔽工事により、劣化や機能不全が発生する欠陥物件の販売 |
財務上の不正 | ・不正な融資など財務上の不正行為を行った不動産契約 ・会計帳簿の改ざんや虚偽の財務報告による販売会社の財務状態の偽装 |
これらは不動産投資において起こりうる不祥事の一例であり、これらの不祥事は不動産投資家に大きな損害を与えるため注意が必要です。
不動産投資において不祥事が与える影響
これらの不動産投資における不祥事は、投資家だけでなく関係者に多大な影響を与えます。
不祥事により不動産投資家が受ける被害はなんといっても金銭的な損害でしょう。
独立行政法人国民消費生活センターによると、投資用マンションに関する相談を行った人の平均契約購入金額は2,776万円となっています。国税庁の調査による給与所得者の1人当たりの平均給与(年収)は461万円であることを考えると、人生に大きな影響を与える金額であるといえます。
実際に、「退職金で不動産投資を行ったが被害に遭い老後資金がなくなった」というように生活が一変してしまう可能性もあります。また金額的な被害だけでなく、被害に対処するための手続きや、被害に遭ったことによる家族との関係悪化や老後不安といった精神的ダメージも大きいでしょう。
また、不祥事が影響を与えるのは被害者だけではありません。投資家が不動産投資に対して不信感を抱くようになると市場全体に悪影響を与えるだけでなく、業界全体の信用も損なわれる可能性があります。
不動産投資にまつわる不祥事の事例
ここからは実際の不動産投資にまつわる不祥事についていくつか見ていきましょう。
事例①:スルガ銀行「かぼちゃの馬車」事件
不動産業界に多大な影響を与えたことから、「スルガショック」と呼ばれたスルガ銀行が関連する不祥事がありました。この不祥事の中心となったのが「かぼちゃの馬車」事件です。
「かぼちゃの馬車」とは女性用シェアハウスのブランド名であり、株式会社スマートデイズという不動産会社が販売を行っていました。同社の「かぼちゃの馬車」を始めとする事業は投資家に人気が高く、5年で1,000棟、12,000戸を管理するまでに事業を拡大しました。
「かぼちゃの馬車」が投資家から人気を博した理由は、同社が「サブリース方式による一括管理・家賃保証」を謳っていたからです。
サブリース方式とは、サブリース業者がオーナーが保有する賃貸住宅を一括して借り上げ、オーナーに一定の金額を支払うシステムです。オーナーにとって「賃貸収入の安定」と、「管理の手間がない」という大きなメリットがあります。
参考サブリースは解約できない?これで完璧!メリットから問題点まで一挙解説
しかし、スマートデイズ社はこのシステムを悪用し、①建設工事の契約金額に対する不当に高額な金額設定②履行能力がないにもかかわらず投資家に好条件を保証した上での勧誘を行い、投資家からの利益を搾取しました。その結果、最終的には約23億円にものぼる未払家賃を残し経営破綻するという事態になりました。
また、この被害に加担したのはスマートデイズ社だけではありませんでした。2018年に行われた金融庁の行政処分の内容によると、スルガ銀行はスマートデイズ社が賃料や入居率について実態より高く想定・改ざんを行っていた事実を認識しながらも融資を行ったとしています。
この事件では投資家への被害だけでなく、ほかの金融機関が不信感から不動産融資の引き締めを行った結果、不動産投資の資金調達がしにくくなるという影響が生じました。
事例②:中部電力系企業による不動産鑑定評価額の引き上げ
次に紹介するのは、不動産投資信託(REIT)に関する不祥事の事例です。
この不祥事を起こしたのが、株式会社エスコンアセットマネジメントという投資運用会社です。同社の親会社は中部電力系企業の、商業施設開発を中心とする「日本エスコン」。東証プライム上場企業でもある、有名企業の子会社が関わった不祥事により関連企業は株価を大きく下げ、一般投資家にも損害を与えました。
金融庁の行政処分の内容によると、エスコンアセットマネジメントが行ったのは「不適切な不動産鑑定業者の選定」と「選定した不動産業者に対する不適切な働きかけ」でした。本来公正に評価されるべき不動産鑑定ですが、同社は親会社の希望価格になるように鑑定評価額を引き上げる誘導を行ったのです。
具体的な手口は以下の通りです。
- 親会社から取得する不動産について希望額を聞く
- 希望額になるように働きかけた上で複数の不動産鑑定業者から評価額を聞き、一番高い額を提示した業者に決める
- その業者に決めた根拠をもたせるために、ほかの業者と比べて鑑定報酬額が一番低くなるように業者と交渉する
その目的は、同社が運用する「エスコンジャパンリート投資法人」が行っている不動産投資信託(REIT)で利益を得るためでした。REITにおいて、不動産取得額は「第三者である不動産鑑定会社の評価額が上限」と定められています。つまり、評価額が高ければその分投資家から多額の資金を引き出せるのです。
この不祥事により、エスコンアセットマネジメント社は金融商品取引法に定める「忠実義務(顧客の利益のために業務を行う)」に違反したとして、3ヶ月の業務停止命令と再発防止のための業務改善命令という行政処分を2022年に受けました。
事例③:住宅ローン「フラット35」の不正利用
不祥事に関わっていたのが、企業だけとは限りません。
独立行政法人住宅金融支援機構のプレスリリースによると、外部からの情報提供に基づいて調査を行った結果、面談を行った105件について「フラット35の不適正利用」の事実が発覚しました。
その不適正利用の内容は主に「融資申込み時点からの投資目的利用」および「住宅購入価格の水増し」です。勧誘した売主や仲介業者などの関与の下に、個人が不動産投資目的の物件を「自己居住用」としてフラット35に申し込んだというものです。
フラット35は「本人またはその親族が自ら居住するための住宅の建設、取得等に利用できる」住宅ローンであり、投資用の不動産取得には利用できません。
また、利用目的の偽装のほかに、実際の購入額より水増しした価格の契約書を偽造して、本来の金額以上の融資を受けるといった手口も行われていました。
これらの不祥事を受けて、独立行政法人住宅金融支援機構では、今後調査が必要と判断したフラット35の利用者を対象に居住実態調査を行うといった対策を講じることになりました。
事例④:強引な勧誘
不祥事として大きく表沙汰にはなっていないものの、独立行政法人国民生活センターには不動産投資に関する以下のような相談も寄せられています。
- 投資用マンションをしつこく勧誘され、事業者が怖くて契約をしてしまった
- 街頭アンケートに記入したら投資用マンションを勧誘され契約してしまった
- 家賃保証があると勧誘され投資用マンションを購入したが、赤字になっている
- 事業者に指示されて虚偽申告をしローン等を組んだが支払えない
収入に合わない高額なローンを組んで返済困難になったり、事業者がクーリング・オフさせないようにしたりといった悪質なケースもみられます。
不動産投資におけるリスク回避の方法
このように不動産投資に関する不祥事が報道されると、「不動産投資は怖いから行わない方がいい」と思うかもしれません。
しかし、例えば転職や結婚、株式投資を「失敗するケースがあるから」という理由で行わないことがあるでしょうか。実際にはよく対象を調査して見極めた上で、メリットが上回ると判断すれば決断するのではないでしょうか。
不動産投資でも同様に、あらかじめ情報を集め、リスクを踏まえた上で予防策を講じることが大切です。
方法①:十分な調査を行う
まずは、話を持ち掛けてきた相手や販売業者の話が信頼できるものなのか、対象の物件は本当に収益性があるものなのかについて調査を行いましょう。実際に、「現地を調査できない」という点を逆手に取った、海外不動産投資詐欺などの被害も起こっています。
また、高すぎる利益率に踊らされないように注意も必要です。「実際にそれだけの利益を出すことが可能なのか」、物件や周辺環境の情報収集だけでなく、ほかの業者や周辺の同条件の物件と比較してみるのもよいでしょう。
方法②:不動産投資に必要な知識を身に付ける
また、知識不足によって不利な契約を結ばないように、必要な知識を身に付けておくのもリスク回避につながります。プロである販売側と同等の知識を持つのは難しくても、不動産投資に必要な基本的な知識だけでも知っておけば、怪しい勧誘には「この話、何かおかしいな?」と気が付く可能性が上がります。
不動産投資では、収益性だけを見てしまいがちですが、修繕費などの費用負担もあります。ほかにも、空き室リスクやサブリースの場合は契約解除、あるいは賃料値下げの可能性がある点にも考慮が必要です。
また、何が違法な勧誘であるか知っておくことも大事です。
宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者に対し、契約の締結の勧誘をするに際して「不確実な将来利益の断定的判断の提供」「勧誘目的であることを告げない勧誘行為」などを禁止しています。
不確実な将来利益の断定的判断、つまり「必ず儲かる」といった勧誘は、宅地建物取引業法違反になるため、信用してはいけません。
参考【完全版】グッと成長!差がつく不動産投資の勉強法を徹底解説!
方法③:信頼できる専門家のアドバイスを受ける
物件だけでなく、販売業者自体が信頼に値する相手かどうかについても調査が必要です。不動産投資は専門的な知識や経験が必要であり、成功には知識を持ち信頼できる専門家のアドバイスが欠かせません。
専門家を選ぶ際には、口コミや社歴、不動産投資に関する実績、アフターサポート体制などと合わせて、取り扱い物件の種類や地域、投資先の条件が自分のニーズに合っているか確認を行いましょう。説明会やセミナーがあれば参加してみるのもよいでしょう。
また、情報が収集できるのは専門家だけではありません。先に不動産投資を始めている人などが周りにいたら情報を交換するのもよいでしょう。
参考誰に聞けばいい?目的別にみる不動産投資の相談先を徹底解説!
方法④:投資資金と生活防衛資金を分ける
ここまでで挙げた対策を講じても、リスクを0にはできません。万一不祥事に巻き込まれ被害に遭った場合、一番避けたいのが生活資金まで失ってしまい生活に困るといった事態です。
それを防ぐためには、投資資金と生活防衛資金を分けておくことが大事です。予期しない出費などに備えるためにも生活防衛資金は必要であり、不動産投資による万一のリスクに備えるためにも必要な資金でもあります。生活を豊かにするための投資で生活がたちゆかなくなるようなリスクを負ってはいけません。
参考いくらあれば良い?不動産投資の初期費用と、抑えるコツを解説!
まとめ
今回は不動産投資における不祥事の事例から、不動産投資に潜むリスクと回避方法について解説しました。
しかしこれまでの不祥事によって、悪質な不動産投資案件に対する規制強化や不動産投資家たちの自衛意識も高まりました。実際、国民生活センターへの相談件数は年を追うごとに減少傾向にあります。
不動産経営は「ギャンブル」ではなく「投資」です。「儲かりそう」という期待で冷静な判断を失わないように、ここまでに挙げた「充分な調査」「不動産投資の基礎知識」「信頼できる専門家の選定」「許容リスク範囲の資金投入」を元に正しい不動産投資を行いましょう。
当社は実績に基づいた、顧客の皆様のためになるビジネスを行っております。ぜひ安心して、不動産投資については当社にご相談ください。
この記事の執筆: ひらかわまつり
プロフィール:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士資格を有するママさんライター。親族が保有するマンションの管理業務経験を有するなど、理論・実務の両面から不動産分野に高い知見を持つ。また、自身でも日本株・米国株や積立NISAなどを行っていることから、副業や投資系ジャンルの執筆も得意としている。解像度の高い分析力と温かみのある読みやすい文章に定評がある。不動産関連資格以外にも、FP2級、日商簿記検定2級、建築CAD検定3級、TOEIC815点、MOSエキスパートなど多くの専門資格を持つ。
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