【2025年10月施行】改正住宅セーフティネット法で何が変わる?不動産投資への影響も解説
- 更新:
- 2025/05/11

2025年10月1日から改正住宅セーフティネット法が施行されます。この法改正は、高齢者や障害者など「住宅確保要配慮者」の住まい探しを支援する制度の大幅な見直しを含んだものです。
不動産オーナー・投資家にとって、この法改正は単なる規制強化ではなく、むしろビジネスチャンスになる可能性を秘めています。補助金の活用や新たな入居者層の開拓につながるからです。
この記事では、改正住宅セーフティネット法の概要や、施行で何が変わるかわかりやすく解説。また、不動産オーナー・投資家向けに、不動産投資にどのような影響を与えるのかも解説します。市場が不安定化する中、不動産投資戦略でお悩みの方は参考にしてみてください。
- 目次
- 住宅セーフティネット法とは
- 2025年10月に改正住宅セーフティネット法が施行される背景
- 改正住宅セーフティネット法で何が変わる?主な3つの改正点
- 改正住宅セーフティネット法が不動産投資に与える影響
- 改正住宅セーフティネット法ではマンションの登録もOK
- セーフティネット住宅と公営住宅の違いは?
- まとめ
住宅セーフティネット法とは
住宅セーフティネット法は、正式名称を「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」といいます。高齢者、障害者、子育て世帯などの「住宅確保要配慮者」が、安心して住む場所を確保できるような環境整備を目的とした法律です。
住宅セーフティネット法は2007年に制定され、2017年に大幅改正されました。改正で創設された「新たな住宅セーフティネット制度」は、次の3つの柱で構成されています。
- 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
- 登録住宅の改修や入居への経済的支援
- 住宅確保要配慮者のマッチング・入居支援
この制度は空き家・空き室を有効活用して住宅確保要配慮者の居住の安定を図りながら、不動産オーナーには空室対策などののメリットを提供します。社会的役割を果たしながら、さまざまな支援を受けられる仕組みとなっているのがポイントです。
2025年10月に改正住宅セーフティネット法が施行される背景
2025年10月の改正住宅セーフティネット法施行の背景には、深刻化する高齢化の問題があります。
単身世帯の増加や持家率の低下に伴い、賃貸住宅への入居ニーズが高まっています。とくに単身高齢者世帯は2030年には約900万世帯に迫る見通しです。
こうした住宅確保要配慮者の賃貸住宅へのスムーズな入居支援は、避けられない課題となっています。
一方で、単身高齢者などの住宅確保要配慮者に対しては、不動産オーナーの拒否感が大きいのが現状です。拒否の主な理由は「居室内での死亡事故等への不安」が約9割を占めています。孤独死や死亡後の残置物処理など、入居後のトラブルに対する不安が大きいのです。
引用国土交通省
また、全国の空き家数は約900万戸あり、そのうち賃貸用は約443万戸と多くの空き室が存在しています。これらの空き室を活用した住宅確保要配慮者の住まい確保は、社会的にも求められていることです。
引用国土交通省
このような状況を踏まえ、オーナーと住宅確保要配慮者の双方が安心して賃貸契約を結べる環境整備が必要となり、今回の法改正につながりました。
改正住宅セーフティネット法で何が変わる?主な3つの改正点
改正住宅セーフティネット法では、主に3つの大きな改正点があります。
詳しく見ていきましょう。
①大家と入居者の双方が安心できる市場環境の整備
前述のとおり、不動産オーナーの多くが入居者の死亡、そしてその後の残置物処理などの手続きに不安を抱えています。そこで、大家さんの不安に対応する主な3つの施策を打ち出しました。
- 終身建物賃貸借(※)の認可手続き簡素化:従来の住宅ごとの認可から事業者の認可へ変更
- 残置物処理業務の追加:居住支援法人が入居者からの委託に基づく残置物処理を実施可能に
- 認定家賃債務保証業者制度の創設:要配慮者に使いやすい保証業者を認定
※死亡時に相続せず、終了する賃貸借契約
終身建物賃貸借の簡素化により、賃借人の死亡時に終了する(相続人に相続されない)賃貸借契約がスムーズに結べるようになります。以前は相続人とやり取りする必要があり、多くの不動産オーナーが面倒と感じていました。相続人がやりとりに応じないなど、トラブルに発展してしまうケースも決して少なくありません。
また、居住支援法人による残置物処理が業務として追加されることで、入居者死亡時の後片付けに関する懸念が軽減されます。これまで大家さんの大きな不安要素だった「残置物の処理」が、制度としてサポートされるようになるのです。
さらに、住宅金融支援機構(JHF)の家賃債務保証保険を活用し、要配慮者への保証リスクを低減する仕組みを創設します。オーナーは、家賃滞納により収入が途絶える心配なく賃貸できるでしょう。
②入居中の見守りやサポートを行う「居住サポート住宅」の創設
「居住サポート住宅」という新たな住宅カテゴリーを創設し、入居する要配慮者に以下の支援が提供されます。
- ICT技術を活用した安否確認や見守りサービス
- デイサービスなどの福祉サービスへのつなぎ
- 認定保証業者による家賃債務保証
現行のセーフティネット登録住宅(2017年創設)は「大家が拒まないこと」と「物件情報の公表」が柱でした。一方で新たな「居住サポート住宅」は「居住支援法人等による積極的なサポート」が特徴です。「大家が拒まなくて済む」ような対策が重視されています。
居住支援法人等はICT(センサー・カメラなど)や訪問による見守りを実施し、入居者の状況が不安定になった際には適切な福祉サービスにつなぎます。これにより「孤独死による事故物件化」などのリスクは大幅に軽減されるでしょう。
③住宅と福祉の連携による「地域の居住支援体制」の強化
国土交通大臣と厚生労働大臣が共同で方針を策定し、市区町村への「居住支援協議会(要配慮者の入居をサポートする組織)」の設置が促進されることとなりました。居住支援協議会が主体となって、以下3つの法人・団体による要配慮者への総合的な居住支援が可能な体制を整備します。
- 不動産関係団体(宅建業者、管理業者、オーナーなど)
- 居住支援法人(社会福祉協議会や福祉関係団体)
- 都道府県・市区町村(住宅部局、福祉部局)
従来よりも要配慮者の状況に合った住まいの提供が可能になります。また、住まい以外の面も同時に相談できる環境が整い、より「必要な福祉」を要配慮者に届けられるようになるでしょう。
改正住宅セーフティネット法が不動産投資に与える影響
改正住宅セーフティネット法は不動産オーナーにも大きな影響を与える可能性があります。ここでは、法改正が不動産投資にもたらし得る影響を見ていきましょう。
「家賃債務保証」で家賃滞納のリスクを抑えられる
改正住宅セーフティネット法では、家賃債務保証の仕組みが大幅に拡充されます。もし仮に入居者の家賃支払いが滞っても、住宅金融支援機構や保証会社により支払われる仕組みです。
住宅確保要配慮者を積極的に受け入れれば、空き家・空室の解消を見込めます。従来は入居拒否の対象となりがちだった低所得者層も安定した入居者として受け入れやすくなり、不動産オーナーにとって新たな入居者層の開拓につながるでしょう。
孤独死による事故物件化のリスクが下がる
高齢者等の入居に対して不動産オーナーが感じる最大の不安が「孤独死による事故物件化」です。改正住宅セーフティネット法では、カメラやセンサーなどのICTを活用した見守りや、定期的な訪問により孤独死の放置を防ぎます。
万が一の場合でも早期発見につながるため、深刻な事故物件になるのを防げるでしょう。高齢者の入居へのハードルが下がり、物件価値を維持しながら新たな層を開拓することが可能になります。
面倒な賃貸借契約の相続がなくなる
改正住宅セーフティネット法では、入居者の死亡時に終了する「終身建物賃貸借」の利用が容易になります。 入居者死亡時に賃貸借契約が自動終了するため、相続人とのトラブルや契約解除の難しさといった問題を回避できるのです。契約終了から次の入居者募集までの時間短縮にもつながり、空室による損失を最小限に抑えられるでしょう。
空き家&補助金を活用して低コストな不動産投資を実現できる
改正住宅セーフティネット法は、空き家や空き室を活用した不動産投資を促進するさまざまな支援制度を備えています。2017年の改正の時点で「改修工事に対する補助金」の仕組みは用意されていましたが、これがさらに使いやすくなるでしょう。具体的には、セーフティネット住宅に登録することで、以下の改修工事に最大50万円が補助されます。
- バリアフリー改修
- 防火・消火対策工事
- 耐震改修
- 子育て世帯対応改修
- その他、必要と認められた改修工事
参考国土交通省「民間住宅を活用した新たな住宅セーフティネット制度」
補助金の活用で「古い空き家を購入して改修し、セーフティネット住宅として運用する」方法も取りやすくなりました。空き家問題の解決に貢献しながら、安定した収益が見込める投資ができる可能性があります。
専用住宅への登録が宣伝・広告になる
セーフティネット登録住宅として、都道府県・政令市・中核市に物件を登録することが可能です。登録された住宅の情報は、都道府県や支援団体が住宅確保要配慮者に見える形で提供します。つまり、登録そのものに広告宣伝の効果があるわけです。
住宅確保要配慮者向けの賃貸住宅は、現状まだ市場での競争が激しくはありません。不動産投資における「空室リスク」を軽減する手段のひとつとして、検討する価値はあるでしょう。
改正住宅セーフティネット法ではマンションの登録もOK
改正住宅セーフティネット法では、一戸建てやアパートだけでなく、区分マンションもセーフティネット住宅として登録できます。セーフティネット住宅に登録するメリットは以下のとおりです。
- 専用サイトでの掲載:「セーフティネット住宅情報提供システム」に掲載され、入居希望者に直接アピールできる
- 居住支援法人との連携:入居者の確保や入居後のサポートを受けられる
- 家賃の安定化:家賃債務保証や代理納付制度を活用できるため、家賃収入の安定化が期待できる
- 補助金の利用:耐震化やバリアフリー化など改修費補助が受けられる可能性がある
区分マンションは少額から投資できる点が魅力です。改正住宅セーフティネット法を活用することで、初期投資を抑えながら安定した賃貸経営が可能になるでしょう。
当社では、セーフティネット住宅での運用も可能な中古区分マンションの物件情報を多数取り扱っています。セーフティネット住宅制度を活用した投資戦略についても、無料相談でお気軽にご相談ください。専門の不動産投資コンサルタントが、あなたに合ったスタイルの投資をご提案します。
セーフティネット住宅と公営住宅の違いは?
セーフティネット住宅と公営住宅は、どちらも住宅確保要配慮者を支援する制度です。しかし、対象者や入居条件などさまざまな点で違いがあります。それぞれの特徴を理解すれば、不動産投資の選択肢を広げられるでしょう。
対象となる住宅確保要配慮者の範囲
セーフティネット住宅と公営住宅では、入居対象となる住宅確保要配慮者の範囲に違いがあります。
- 公営住宅:原則として同居親族がいることが条件(高齢者など一部例外あり)。市内在住・在勤の条件あり
- セーフティネット住宅:単身者も対象で居住地の制限なし。外国人や児童虐待を受けた人、単なる生活困窮者なども対象
セーフティネット住宅では、単身者や外国人、児童虐待を受けた人など、公営住宅よりも幅広い層が対象となっています。オーナーは自分の物件への入居者として受け入れる対象を選べるため、意外にも柔軟な運用が可能です。
家賃
セーフティネット住宅と公営住宅では、家賃の決定方法や水準に大きな違いがあります。
- 公営住宅:収入に応じて家賃が決定される。市場価格より大幅に安い
- セーフティネット住宅:基本的には市場価格に近い家賃設定。低所得者向けには補助あり
セーフティネット住宅は民間賃貸住宅のため、基本的には周辺相場に準じた家賃設定となります。ただし、住宅確保要配慮者専用の住宅(専用住宅)として登録した場合は、家賃低廉化補助を受けられます。この補助により、家賃を下げて入居者の家賃負担を軽減しつつも、オーナーは適正な家賃収入を確保できる仕組みです。
入居条件
セーフティネット住宅と公営住宅では、入居の条件も異なります。
- 公営住宅:収入基準が厳格。抽選や順番待ちによる入居のケースも多い
- セーフティネット住宅:空室があれば比較的すぐに入居可能
公営住宅は厳格な入居条件があり、倍率が高いと入居までに長期間待つケースが多いです。一方、セーフティネット住宅は民間賃貸住宅のため、要件を満たせば比較的スムーズに入居できます。オーナーも、長期間空室のままで入居者が決まるのを待っている必要はありません。
まとめ
改正住宅セーフティネット法は、2025年10月1日に施行される予定です。高齢者や障害者、低所得者などの「住宅確保要配慮者」の住まい探しを支援するため、大幅に制度が見直されます。
不動産オーナーを支援する制度も拡充され「セーフティネット住宅への登録を前提とした不動産投資」もひとつの選択肢として考えられるようになるでしょう。改正住宅セーフティネット法を活用した不動産投資にご興味の方は、当社不動産投資コンサルタントへの無料相談をご活用ください。専門的な視点から、成功率の高い不動産投資の実現をサポートします。

この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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