東北大学サイエンスパーク構想が本格始動!概要や不動産投資への影響について解説
- 更新:
- 2024/05/09

2024年4月26日、三井不動産と東北大学が連携して「東北大学サイエンスパーク構想」を本格始動することが明らかになりました。同パークは、東北大学の新青葉山キャンパス内に設置。半導体分野に精通する東北大学と、産学連携や新産業創造に明るい三井不動産のパートナーシップにより、最先端の技術が社会に還元される可能性が高まります。
本記事では、東北大学サイエンスパーク構想の概要や施設の詳細、会員組織「MICHINOOKコミュニティ」について解説。さらに、同構想が不動産投資に与える影響についても考察します。東北大学サイエンスパーク構想とは何か気になる方、大規模施設の開設が不動産投資に与える影響を知りたい方は、必見です。
東北大学サイエンスパーク構想とは
東北大学サイエンスパーク構想とは、東北大学が持つ人材や設備、制度などを広く社会に提供することで、最先端の技術を社会に活かすとともにイノベーションを生み出し、社会課題解決と新産業創造を目指すものです。三井不動産が持つ、産学連携や新産業創造に関する知見を活用し、同社と東北大学がパートナーシップを締結して運営されます。同構想の愛称はMICHINOOK(ミチノーク)。東北大学のコンセプトである「発見は未知ノ奥にあり」が由来となっています。
構想の主体は、大学内にある、東北大学共創戦略センターです。同センターによると、東北大学サイエンスパーク構想とは「世界的に競争⼒の⾼い⺠間企業、地域の研究機関、⼤学、⾃治体等を⼤規模に集積し、⼀体的・統合的に展開しようとする我が国最⼤規模のリサーチコンプレックス計画」とされています。
本構想は、先端技術開発に挑む企業や、学術研究を進める大学や研究機関が融合する「共創の場」を構築するとされています。この「共創の場」の中心が、サイエンスパークなのです。
サイエンスパークの概要
東北大学サイエンスパーク構想の中核を担うサイエンスパークについて、詳しく見ていきましょう。サイエンスパークは、東北大学の青葉山新キャンパスに立地。敷地面積は約4万㎡を誇ります。
青葉山新キャンパスは、2017年、理工系学部のある既存キャンパス「青葉山キャンパス」内に新設されました。青葉山には「青葉城」こと仙台城があり、地下鉄東西線「青葉山駅」に直結。仙台駅から9分と好立地でありながら、緑が豊かなキャンパスです。
サイエンスパークの代表的な設備として、2024年4月より運用が開始されたNanoTerasu(ナノテラス)や青葉山ユニバースなどが挙げられます。では、今回運用が開始された施設を見ていきましょう。
施設①:NanoTerasu(ナノテラス)
NanoTerasu(ナノテラス、以下「ナノテラス」と記載)は、2024年4月1日より稼働開始した世界最高水準の先端大型研究施設です。世界最先端の科学技術を追求することはもちろん、産業利用や地方創生まで幅広く利用できます。2023年5月に仙台市で行われたG7科学技術大臣会合でも、各国の大臣が視察に訪れました。
ナノテラスの「Nano(ナノ)」は、1メートルの10億分の1に当たる単位から取った名称です。「Terasu(テラス)」の由来は、日本神話の「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」から。天照大御神のように、ナノテラスでの研究や成果が世界の学術や産業に豊かな実りをもたらして欲しいという願いから命名されました。
ナノテラスは、日本初の「官民地域パートナーシップ」にて運営される施設です。民間パートナーが国と費用を分担して、整備や運用を実施します。民間のパートナーとして運営するのは、以下の5団体です。
- 光科学イノベーションセンター(PhoSIC)
- 宮城県
- 仙台市
- 東北経済連合会
- 東北大学
ナノテラスを利用するには、共用利用とコアリション利用があります。
共用利用は、年に数回程度行われる課題募集に応募し、課題審査委員会の審査に合格することで利用可能です。コアリション利用は、1口5千万円の加入金を支払いコアリションユーザーになることで、10年間利用できます。コアリション利用の加入金は、民間パートナーの財源ともなる仕組みです。
施設②:青葉山ユニバース
青葉山ユニバースは、2024年4月1日より運用を開始した産学連携拠点となります。レンタルラボやレンタルオフィスの他、以下の施設が運用中です。
グリーンクロステック研究センター 宇宙ビジネスフロンティア研究センターグリーンクロステック研究センター
グリーンクロステック研究センターは、東北大学が推進する「研究開発DX」を担い、持続可能な社会の実現に向け様々な研究を行います。得られた知識や技術を実社会で活用する「社会実装」に近い研究を行い、実績が豊富な学内外の研究者を多数招へいしている施設です。同時に、ナノテラスのような世界に誇る教育環境との連携も実施。経済産業省が掲げる「グリーン成長戦略」の分野における、新たな産学共創の場を形成しています。
宇宙ビジネスフロンティア研究センター
宇宙ビジネスフロンティア研究センターは、超小型人工衛星(マイクロサット)の製作や開発を行う施設です。超小型人工衛星とは、質量範囲が10kg〜100kgの衛星を指します。
東北大学は、2000年頃から超小型人工衛星の研究開発を実施。過去に10機以上開発し、多くの成果を上げてきました。この取り組みを支えるために設立されたのが「宇宙ビジネスフロンティア研究センター」です。
施設③:東北大学半導体テクノロジー共創体
サイエンスパークには、「東北大学半導体テクノロジー共創体」も設置されました。東北大学は半導体分野の研究に強い学校です。東北大学半導体テクノロジー共創体は、半導体分野での東北大学の強みを活かし、産学官共創を推進するために設置されました。
東北大学半導体テクノロジー共創体は、以下の拠点により構成。
- スピントロニクス省電力ロジック半導体開発拠点
- 半導体製造プロセス・部素材・イメージセンサ開発実証拠点
- MEMS設計・プロセス開発実証拠点
最新鋭の研究開発環境を提供し、材料・プロセス開発から設計、試作、評価まで、全工程を一気通貫で推進することが期待されています。
会員組織「MICHINOOKコミュニティ」
東北大学サイエンスパーク構想では、実際の施設だけではなく、知識や技術を広めるための会員組織「MICHINOOK(ミチノーク)コミュニティ」も作られました。「MICHINOOKコミュニティ」は、国内外の多彩な人材と既存の学術領域におけるコミュニティとの共創を行う組織です。東北大学と連携パートナーの技術や知識を会員に提供することで、社会価値やイノベーションの創出をサポートする役割があります。
連携予定のパートナーとして、地元の官公庁や企業だけでなく国内外の大学や学術交流機関も名を連ねています。
活動内容
「MICHINOOKコミュニティ」は、下記の4分野から活動を開始。分野は順次拡大する予定で、交流連携イベントや東北大学からの情報提供などが行われます。
- 材料科学
- 半導体/量子
- グリーン/宇宙
- ライフサイエンス
2024年6月には、ライフサイエンス分野で初の交流連携イベントが実施予定です。
会員種別
「MICHINOOKコミュニティ」に参加するには、会員登録が必要となります。会員種別は、次の4種類。
- 特別会員A
- 特別会員B
- 個人会員
- 学生会員
個人会員と学生会員は2024年6月、特別会員は同年8月より登録開始です。各種別ごとに利用できるサービスが異なります。
東北大学サイエンスパーク構想が不動産投資へ及ぼす影響
東北大学サイエンスパーク構想により、半導体分野を中心とした各種研究や技術開発のさらなる発展が期待されてます。同構想は、半導体分野だけでなく、不動産投資にも確実に影響を与える事象です。
ここからは、東北大学サイエンスパーク構想が不動産投資に与える影響を考察します。
影響①:マンション需要の増加が期待される
東北大学サイエンスパーク構想により、パークやパーク近隣施設の従業員が住むマンションの需要が見込まれます。想定される需要の具体例は、以下の通り。
- サイエンスパークに入居、勤務する企業の従業員が住む部屋
- サイエンスパークで勤務する従業員の居宅
- サイエンスパークに将来完成する施設スタッフが住む部屋
- サイエンスパーク周辺にできる各種施設の従業員が住む部屋
マンション需要は、サイエンスパークの最寄り駅である青葉山駅周辺にとどまらず、周辺駅にも波及する可能性を秘めています。
仙台市中心部の再開発も追い風に
東北大学サイエンスパーク構想によりマンション需要が高まる理由として、仙台市中心部の再開発も外せません。仙台市中心部では、仙台駅を中心とした地域の大規模再開発が継続中です。この再開発では、分譲住宅も再開発の対象となっています。東北大学サイエンスパークは、仙台駅から地下鉄で9分。仙台駅からも近いことからサイエンスパーク入居者の需要が見込まれ、不動産投資にも好影響を与えることが予測されます。
東北大学生協「仙台住まい事情」によると、新青葉山キャンパスに通う学生は、地下鉄沿線にも一定数が居住。学生の需要もあるため、仙台駅を中心とした東西線沿線にも不動産の需要が波及することも期待できるでしょう。
影響②:青葉山駅周辺の地価も上昇している
不動産投資では、地価が上昇した場合は土地の需要が高まっているため、入居者も多く集まると推測されます。最後に、2020年から2024年までの青葉山駅周辺の地価推移から、青葉山駅周辺での不動産投資における展望を見ていきましょう。
今回取り上げたのは、青葉山駅に近い次の2地点です。
- 仙台青葉-59(宮城県仙台市青葉区川内山屋敷77-1)
- 仙台青葉-61(同荒巻字青葉390-81)
仙台青葉-59(青葉区川内山屋敷77-1)は、東北大学の川内キャンパス西側です。最寄りの川内駅は、青葉山駅の隣にあります。先ほど紹介した東北大学生協「仙台住まい事情」によると、川内地区は新青葉山キャンパスに通う学生も多く住む地域とされています。学生需要も多い仙台青葉-59の地価推移は、下図の通りです。
東北大学サイエンスパークは、2021年の段階で整備中でした。2022年にはウェブサイトを開設、2023年にはナノテラス完成と着々と構想が動いていたことから、地価が上昇し続けたと推測されます。2024年の上昇率が高かったのも、サイエンスパークが本格始動することへの期待の証といえるでしょう。
次に取り上げる仙台青葉-61(青葉区荒巻字青葉390-81)は、青葉山駅から南西2kmの地点です。こちらも青葉山キャンパスの学生が多く住む地域となっています。
仙台青葉-61は、2023年までは地価の変動がありません。しかし、2024年、サイエンスパーク構想の始動とともに地価が上昇。それまで変化がなかった地域で地価が突然上昇したということは、サイエンスパーク構想により先々の需要が見込まれている証拠ともいえるでしょう。
まとめ
東北大学サイエンスパーク構想により、半導体分野を中心に各種研究や技術開発が格段に進歩することが期待されています。サイエンスパークを軸に、今以上に日本のハイレベルな技術力を世界へ広げていくことも期待されています。
同構想は、研究や技術開発分野だけでなく、不動産投資にも影響を大きな影響を与える可能性があります。特にサイエンスパークがある地下鉄青葉山駅周辺や沿線の仙台駅周辺は、不動産投資向きのエリアとなる可能性が高まるでしょう。
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この記事の執筆: 堀乃けいか
プロフィール:法律・ビジネスジャンルを得意とする元教員ライター。現役作家noteの構成・原案の担当や、長野県木曽おんたけ観光局認定「#キソリポーター」として現地の魅力を発信するなど、その活躍は多岐に亘る。大学および大学院で法律や経営学を専攻した経験(経済学部経営法学科出身)から、根拠に基づいた正確性の高いライティングと、ユーザーのニーズに的確に応えるきめ細やかさを強みとしている。保有資格は日商簿記検定2級、日商ワープロ検定(日本語文書処理技能検定)1級、FP2級など。
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