としまえん跡地が再開発中!建設される公園と「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」について紹介
- 更新:
- 2023/07/12
2020年8月31日、東京都練馬区にある遊園地「としまえん」が惜しまれながらも閉園しました。有名な遊園地のため、行ったことがなくても衝撃を受けた方は多いのではないでしょうか。
としまえんの跡地は、すでに都と民間事業者による再開発が決定しています。そこで今回は、跡地に建設されるふたつの施設の全貌について見ていきましょう。また「そもそもとしまえんはなぜ閉園したのか」についても詳しく調査しました。
としまえんとは
としまえんとは、「西武グループ」に属する「株式会社西武園ゆうえんち」により運営されていた、東京都練馬区の遊園地です。「都心からほど近く、住宅地の真ん中に心身ともに健康であるためのスポーツ施設」をコンセプトとして、大正15年9月15日に開園。22ヘクタールもの広大な土地に、アトラクションやプールをはじめとする遊び場がいくつも設置されていました。
ちなみにとしまえんは東京都練馬区の「練馬城跡地」にあるために、「なぜ練馬なのに、としまえんなの?」とよく言われていました。実はこの練馬城を築城したのが「豊島」という方だったために、「ねりまえん」ではなく「としまえん」と名づけられたのです。意外に名前の由来を知らない方は多いのではないでしょうか。
多くの人に愛されたとしまえんですが、2020年についに閉園が決まってしまいました。「としまえん」がどんな園だったのか振り返りつつ、閉園の詳細についても見ていきましょう。
子供から大人まで楽しめるテーマパーク
としまえんはさまざまなタイプの遊び場が充実しており、「子供から大人まで楽しめるテーマパーク」として有名です。「水と緑の遊園地」と自称していましたが、実際に水や自然と触れ合える施設が満載でした。特に有名だった施設は下記の4つです。
- 世界初の流れるプール
- 31本(日本一)のウォータースライダー
- 100年以上の歴史を持つ回転木馬「カルーセルエルドラド」
- アルパカやポニーと触れ合えるペットガーデン
「としまえんといえばプール」とイメージする人も多いほど、プール施設の充実度が高いです。世界初の流れるプールと日本一のウォータースライダーを中心に、子供から大人まで誰もが楽しめました。
回転木馬「カルーセルエルドラド」は、世界的にも貴重な文化遺産として知られており「機械遺産」にも登録されています。すべてが手彫りのアンティークな雰囲気は、初めて見る人を虜にするでしょう。
アルパカやポニーなど、日常生活では見られない動物との触れ合いも魅力。また併設するグラウンドを地元の企業や学校の運動会に貸し出すなど、「地域密着型の遊園地」としての一面も有名です。
2020年8月31日に閉園した
地元の人からも観光客からも愛され続けたとしまえんですが、惜しまれつつも2020年8月31日に閉園。実に94年もの長い歴史に幕を閉じました。
閉園の前後には、SNSを中心に「もうすぐ100周年だったのに、なぜ閉園するの?」という声も。閉園の背景には、さまざまな「大人の事情」や、運営元の西武グループにとっての「転機」がありました。閉園の理由について見ていきましょう。
としまえんはなぜ閉園したのか
多くの人に惜しまれつつ、100周年を目前にして94年の歴史に幕を閉じたとしまえん。その閉園の理由は、大きく分けて下記の3つといわれています。
- 純粋な業績不振
- 東京都による買収計画
- アメリカ・ワーナーグループによる申し出
それぞれ詳しく見ていきましょう。
純粋な業績不振
単純に業績が悪化したことが、としまえん閉園の最大の理由といわれています。1992年のピーク時には毎年390万人もの人が訪れていましたが、2018年には93万人と約4分の1に激減。来る人が減れば、当然収益も減ります。実際に、2018年~2020年の純利益は下記のように推移していました。
年 | 純利益 |
---|---|
2018年 | ▲221,000円 |
2019年 | 527,000円 |
2020年 | 334,000円 |
2019年・2020年は来場者数が若干増えたこともありかろうじて黒字を保っていますが、毎年数億円が動くとしまえんにとっては微々たるものです。としまえんは長らく自転車操業状態での経営を続けてきました。アトラクションの老朽化によりメンテナンス費用もかさばり、ついには運営が立ち行かなくなってしまったのでしょう。
東京都による買収計画
としまえん閉園のもうひとつの背景は、東京都による買収計画です。実はとしまえんを中心とした周辺エリア一帯は、1957年に都市計画公園「練馬城址公園」として、整備区域に指定されていました。
そして2011年には未曽有の被害をもたらした「東日本大震災」をきっかけに、東京都はとしまえんのある練馬城址公園一帯を、避難場所や防災拠点確保のために「優先整備区域」に指定。としまえんを買収して防災公園化する計画が、すでに2011年から動き出していたのです。
西武グループはギリギリまでこの計画への協力を拒否し、としまえんを守り続けていました。しかし先述した業績不振や、後述する第三者の介入により、ついに2020年2月には閉園に向けた協議が進行することとなります。
ワーナー・ブラザースの参入
としまえんの買収を拒否していた西武グループを揺るがしたのは、アメリカの「ワーナー・ブラザース」の参入です。ワーナーブラザースとは、正式には「ワーナー・ブラザース・エンターテイメント」のこと。主にハリウッドの映画会社・スタジオとして有名で、日本にもグループ会社「ワーナー・ブラザース・ジャパン」があります。
ワーナー・ブラザースはかねてから「日本でハリーポッターのスタジオ型テーマパークを作りたい」と画策していました。そこで大手総合商社である伊藤忠商事が、「としまえんの敷地を使ってテーマパークを作るのはどうか」とワーナー・ブラザースに提案したのです。
この提案に乗ったワーナー・ブラザースは、西武グループへ買収を打診。詳細な金額は公表されていませんが、ワーナー・ブラザースの提示した買収金額は、かねてから買収提案をしていた東京都のはるか上だったといわれています。地域の活性化をめざしていたとしまえんの方針とも合致し、ついに西武グループも乗り気になったのでしょう。
としまえん跡地の再開発方針とは
としまえんの跡地は、すでに再開発(都立公園整備)が決定しています。都立公園整備について、2020年6月12日に東京都と練馬区、西武鉄道、ワーナー・ブラザース・ジャパン、伊藤忠商事の4者が覚書を締結しました。
今後、としまえん跡地は下記の2つとして再開発されます。
- 都市計画公園
- メイキング・オブ・ハリー・ポッター
なお、「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」の誘致は30年間で、以降は都市計画公園に統合される予定です。「防災とエンターテインメント」を核とした開発で、としまえん閉園により落ちた練馬区の集客力向上が期待されています。再開発によって新たに生まれる「都市計画公園」と「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」について詳しく見ていきましょう。
としまえん跡地にできる「都市計画公園」とは
としまえんの跡地にできる1つ目の施設は、「都市計画公園」です。東京都建設局が発表したテーマは、「都民に親しまれてきた土地の歴史・風土、緑豊かな自然を生かし、多様な主体と連携して、社会の変化に応えながら創りあげる公園」となっています。このテーマを踏まえて、都市計画公園開発予定の全容を見てみましょう。
5つの区画から構成
都市計画公園は、大きく分けて下記の5つの区画から構成される予定です。
- 花のふれあいゾーン
- エントランス交流ゾーン
- 川辺の散策ゾーン
- 人々を繋げ歴史を伝える文化ゾーン
- にぎわいアクティビティゾーン
それぞれの区画について、どのような施設が建設されるのか見てみましょう。
花のふれあいゾーン
花のふれあいゾーンは、花とのふれ合いやイベントが楽しめるエリアです。花畑をメインとして、イベント広場や観光・産業のPR拠点が建設されます。活気やにぎわいのある空間となり、地域の活性化に貢献するでしょう。
エントランス交流ゾーン
エントランス交流ゾーンは、公園の顔となる園内利用の拠点エリアです。広場と飲食施設が併設される予定で、地域の人々の交流を活性化させるでしょう。また、管理所や案内所などの情報提供施設も主にこのエリアに建設されます。
川辺の散策ゾーン
川辺の散策ゾーンは川や川沿いの緑、立ち並ぶ桜に親しめるエリアです。主に散歩やランニング、飲食での利用を想定しています。大きい車も通れる広々とした道幅が設定されるため、防災の観点でも活躍するでしょう。
人々を繋げ歴史を伝える文化ゾーン
人々を繋げ歴史を伝える文化ゾーンは、主に子どもが水遊びや遊具遊びを楽しめるエリアです。施設等は建設せずに区画を整備し、水遊び場や広場などを設置します。現状の自然林も残すため、多様な植物や昆虫とも触れ合える空間となるでしょう。
にぎわいアクティビティゾーン
にぎわいアクティビティゾーンは、アスレチックやキャンプなど、アウトドアな遊びを楽しめるエリアです。樹木に囲まれた広い空間で、子供から大人まで夢中になって楽しめるでしょう。
ただし、このエリアは2023年から2053年まで「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」が誘致されるため、実際に「にぎわいアクティビティゾーン」として機能するのは2054年以降となる見込みです。
2023年中に「花のふれあいゾーン」「エントランス交流ゾーン」が開園
東京都は2023年中に「花のふれあいゾーン」と「エントランス交流ゾーン」の2区画を開園します。2023年時点ではゾーンの全面開園とはならず、開園区域が徐々に拡張されていく予定です。
2029年までに全ゾーンを開園し、「緑と水」「広域防災拠点」「にぎわい」の3つの機能発現を目指しています。目標通り進めば、にぎわいアクティビティゾーンに建設される「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」とあわせて、練馬区の活性化が期待できるでしょう。
「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」はどんな施設?
としまえん跡地にできるもうひとつの施設は、ワーナー・ブラザースが運営する「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」です。2023年6月16日に開園となる予定で、大人6,300円、中高生5,200円、4歳から小学生は3,800円で入場できます。
すでに3月22日からチケットが先行販売されており、本記事を執筆した4月3日時点で6月の分はほぼ完売状態となっています。「ハリー・ポッター」シリーズがそれだけ日本で人気であり、ファンから本施設への期待が集まっていることがうかがえるでしょう。
すでに大人気が予想される、この「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」について、どのような施設なのか詳しく調査しました。
「ハリー・ポッター」の世界を堪能できる
「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」は、まさに「ハリー・ポッター」の世界を堪能できる施設です。館内には映画で実際に使用された衣装や小道具などが展示されており、ハリー・ポッターの映画製作の裏側をじっくりと満喫できます。
映画内のさまざまなシーンを実際に体験できるのもこの施設の魅力。「9と3/4番線のホグワーツ特急」や「ダイアゴン横丁」など、ハリー・ポッターファンにはたまらないエリアが用意されています。ツアー途中の「バックロットカフェ」では、なんと劇中に登場する「バタービール」を提供。「一度飲んでみたかった」という方も多いのではないでしょうか。
東京版「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」でしか見られないセットもいくつか用意され、ロンドン版を見た人でも楽しめるようになっています。すでに初回分のチケットは埋まりつつあるので、ファンの方は早めに確保しておくのがおすすめです。
世界で2番目のハリー・ポッタースタジオ
今回の東京版「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」は、世界で2番目のハリー・ポッタースタジオとなっています。世界初のスタジオはロンドンで、2012年に開業しました。
ロンドンでは毎年1,600万人以上が来場しており、いまだに予約困難な状況です。とはいえロンドンはまさにハリー・ポッターの舞台であり、「聖地巡礼」の意味で訪問されているのも来場者数が多い理由でしょう。
東京・練馬において、「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」でどれだけの経済効果が出るかは未知数です。しかしとしまえんがなくなった今、西武鉄道の利用者数増加や、周辺地域の活性化に期待がかかっています。
まとめ
としまえんは子供から大人まで楽しめるテーマパークとして、地元住民や観光客から愛された遊園地でした。業績不振や都の買収計画といった大人の事情や、ワーナー・ブラザースの参入という西武グループにとっての転機の訪れといった要因があったため、閉園はやむを得なかったといえるでしょう。
閉園こそ惜しまれましたが、新たに建設される都市計画公園と「メイキング・オブ・ハリー・ポッター」には期待が高まります。不動産投資においても、東京都や練馬区に大きな経済効果を与え、土地価格や物件価格が上がるかどうかが注目のポイントです。
この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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