不動産業界への影響は!?リーガルテックの全貌やメリットを徹底解説!
- 更新:
- 2023/07/12

「リーガルテック」という言葉をご存じでしょうか。リーガルテックとは、法律(リーガル)と技術(テクノロジー)が合体した言葉で、「法律サービスの利便性を向上させるために開発されたITを活用した製品やサービス」のことを指します。
日本では新型コロナウィルスの蔓延を機に急速に成長し、企業からの認知度も上がってきています。リーガルテックは企業の法務におけるさまざまな課題を解決するサービスです。今回はリーガルテックの基本や企業における導入のメリットを解説します。
またリーガルテックは不動産業界にも影響を与えています。不動産業界におけるリーガルテックの用途や、今後の動向についても見ていきましょう。これからの不動産投資にも影響を与える部分なので、ぜひチェックしてみてください。
リーガルテックとは
リーガルテックとは、法律(リーガル)と技術(テクノロジー)を合わせて、短縮した言葉です。一般には、「法律サービスの利便性を向上させるために開発されたITを活用した製品やサービス」と定義されています。
法律関連の業務にIT技術を活用し、業務の効率化や精度の向上をもたらすのがリーガルテックです。会計・勤怠をはじめとする業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化は日本でもメジャーになりつつありますが、ついに法律の分野にも進出してきました。膨大な調査や資料作成などの業務が発生する法律関連業務において、リーガルテックの導入効果は非常に大きいです。
「リーガルテック」の流れはいつから始まったのか、日本の動向はどうなのか見ていきましょう。
リーガルテックの発祥はアメリカ
リーガルテックの発祥は、2000年代初期のアメリカです。「訴訟大国」とも呼ばれるアメリカは、圧倒的に法律関連業務のIT化需要がありました。具体的には下記のような業務にリーガルテックを適用し、大幅効率化と精度の向上を図っています。
- 過去の事例や判例の調査
- 証拠の収集と書証の作成
アメリカの裁判は「判例法主義」であり、過去の事例・判例をベースに判決が行われます。また「ディスカバリー」という証拠開示制度があるため、裁判に関連する証拠を事前に収集し、書証として裁判所に提示する必要があるのです。
総人口が明らかに違うので一概に比較できるものではありませんが、アメリカの年間訴訟件数が1,800万件なのに対し、日本は15万件ほどとなっています。圧倒的に多い訴訟に対しスピーディーかつ正確に対応するため、関連業務のDX化は必然だったのでしょう。
日本でのリーガルテックはコロナ禍を機に広がり始める
日本でのリーガルテックの流れは、新型コロナウィルスの蔓延とともに加速しました。国内リーガルテックの代表格である、「電子契約サービス」の市場規模を見ていきましょう。
上記の画像以前の2019年の電子契約サービス市場規模は58億円です。「コロナ元年」といわれる2020年に、すでに約2倍の101億円にまで市場規模を拡大しました。2023年には300億円、2026年には450億円にまで到達するとの予測です。
これだけ電子契約サービスが広がったのは、テレワーク・在宅ワークの必要性が生じ、従来通りの対面契約が困難となったのが主な理由です。しかし「コロナ禍も終わって、今後の市場成長は停滞するのでは」という声もあります。
とはいえ電子契約サービスをはじめとするリーガルテックを、企業が導入するメリットは非常に大きいことが浮き彫りになりました。今後も徐々に市場規模は拡大していくものとみられるでしょう。
なお企業がリーガルテックを導入するメリットについては、この記事の後半で詳しく解説しています。
日本のリーガルテックは主に4つに分類される
経済産業省は、日本におけるリーガルテックを下記の4種に大別しています。
- 登記・電子署名
- 契約書関連
- 調査・分析
- 紛争解決
参考経済産業省「リーガルテック(Legal Tech)を取り巻く日本の市場構造」
それぞれどのようなサービスなのか、導入によりどのような効果が期待されるのか見ていきましょう。
登記・電子署名
クラウド上で必要な項目を記入していくだけで、本社移転や役員変更・株式分割などの登記関連業務や、個人・法人との契約締結業務を完結させられるサービスが「登記・電子署名」に該当します。「日本でのリーガルテックはコロナ禍を機に広がり始める」で紹介した「電子契約サービス」は、登記・電子署名サービスの一部です。
登記・電子署名サービスがあれば、ペーパーレス・印鑑レスで登記・契約ができます。また、後から契約書を見返さなければいけなくなった際の、検索性の向上も可能です。単純に業務の手間が軽減されるのはもちろん、封筒代・切手代などの直接的なコストや、人件費などの間接的なコストの削減にも期待できるでしょう。
契約書関連
AIを活用してNDA(秘密保持契約)などの契約書に不備や齟齬がないか自動でレビューしたり、自動登録された契約書の基本情報を用いた容易な管理・検索をしたりするサービスが「契約書関連」に該当します。
法務に詳しい専門的な人材がいなくても契約書のレビューができるのが、契約書関連サービスの最大のポイントです。また最近では、質問に答えていくだけで契約書草案を自動作成してくれる「ドラフティングサービス」も注目されています。将来的には、「登記・電子署名」のサービスとあわせて、契約書の作成から管理までのほぼすべてを自動化できるかもしれません。
調査・分析
裁判の事例・判例を調査したり、インターネット上に残された裁判の証拠となるメールなどのデータを収集したりするデータベースやサービスが「調査・分析」に該当します。
日本ではまだ非常に数が少なく、発展途上な分野です。「訴訟大国」と呼ばれるアメリカではもっとも活用されていますが、裁判の少ない日本では現状あまり需要がないのでしょう。現在は企業内不正の調査等に用いられる、「デジタル・フォレンジック」のサービスが主に登場しています。
紛争解決
インターネットで弁護士などの専門家に法律相談ができるサービスが「紛争解決」に該当します。まだ数が少ないため、「調査・分析」のカテゴリーの関連分野として取り上げられるケースも少なくありません。
アンケート事業者「マクロミル」の調査によると、法的トラブルに遭った人の約8割が、適切な司法サービスを受けられていないという結果が出ています。
引用弁護士ドットコム
紛争解決サービスの発達により、ハードルが高かった一般人の法律相談が容易になり、法的なトラブルを容易に解決できる社会の形成が期待できるでしょう。
リーガルテックを導入するメリットとは
リーガルテックを企業が導入するメリットとしては主に下記の3つが挙げられます。
- 「法律関連業務」が誰でもできる
- 書類作成・チェック業務が効率化できる
- 情報をオンラインで一元化できる
それぞれ、具体的なメリットを見ていきましょう。
メリット①:「法律関連業務」が誰でもできる
主に「契約書関連」のリーガルテックを導入すれば、「法律関連業務」が誰でもできるようになります。登記・契約関連書類のレビュー作業をほぼ自動化できるので、法律に詳しい人がいなくても関連業務を完結可能です。
東京商工会議所による都内の中小企業906社に対する調査で、中小企業の法務における最大の課題は「人材不足」であると分かりました。
グローバル化への対応やコンプライアンス維持のために法務の重要性が説かれる中、法律関連業務をこなせる人材の不足を嘆いている企業はなんと47.6%にものぼります。しかしこの人材の不足は、リーガルテックの導入で十分に穴埋めできるでしょう。
メリット②:契約書に関する業務が効率化できる
「登記・電子署名」や「契約書関連」のリーガルテックを導入すれば、契約書の作成から締結、管理などあらゆる業務の効率化が可能です。人間が契約書の作成やチェックを行うことで発生しうる、ミスやトラブルの抑制効果も期待できます。
また紙ベースの契約締結にかかる業務は、印刷や製本、押印や郵送など、1通あたり数十分~数時間かかるケースが少なくありません。電子契約サービスなら、契約締結までわずか数分で完結します。残業や休日出勤などが常態化する労働環境の改善にも効果を発揮するでしょう。
メリット③:情報をオンラインで一元管理できる
あらゆるリーガルテックに共通していますが、導入により情報をオンラインで一元管理できるようになります。たとえば担当者ごとにファイリングしていた契約書も、オンライン化で社内の誰でも参照できるようになり、いわゆる「属人化状態」を解消できるでしょう。
インターネットがあれば情報にアクセスできるので、テレワーク・在宅ワークでも普段通りに業務ができます。ほとんどのリーガルテックは通信を完全に暗号化しており、社員や役職などに応じた情報へのアクセス権限が設定できるので、セキュリティの面でも心配はありません。
メリット④:労働事件や企業犯罪が発生した際に原因究明ができる
「デジタル・フォレンジック」を活用した「調査・分析」のリーガルテックを導入すれば、万が一労働事件や企業犯罪が発生した際に原因究明ができます。「デジタル・フォレンジック」とは、パソコンやその他の電子機器、電子データの調査・解析をする技術のことです。
たとえば贈収賄などの企業犯罪が発生してしまった場合に、関係者のパソコンやサーバーのデータ、メールの送受信情報などを収集・閲覧・解析し、証拠となるデータを突き止められます。問題発生時の調査はもちろん、導入すること自体が抑止力としての効果を発揮するでしょう。
リーガルテックは不動産業界にも影響
リーガルテックは不動産業界にも影響を与えています。いくつか活用事例を見ていきましょう。
売買契約書のトラブル防止
不動産業界で「契約書関連」のリーガルテックを導入し、売買契約書のレビュー業務を任せる企業が増えています。大きな金額が動く不動産の売買契約は、ひとつのミスで企業に大きな損失を与えてしまう可能性があるからです。
また契約書のレビューを弁護士等に外注すると、一般的に1通あたり5万円前後の費用がかかってしまいます。契約数が多ければ、レビュー費用だけで数百万円になるケースも少なくありません。しかしリーガルテックなら、大きくコストを抑えて運用できます。
また物件データをもとにした賃貸借契約書など、売買契約書以外の作成・レビューができるサービスも登場しています。リーガルテックを導入すれば過去の契約書の管理・検索も容易になり、日々の契約書関連業務を便利にしてくれることは間違いないでしょう。
2022年からスタートした「ネット不動産」の電子契約に活用
2022年5月18日から不動産取引における書類の押印が不要となったため、ネット上で不動産取引を完結する「ネット不動産」が実現可能となりました。電子契約サービスが、このネット不動産における契約業務に活用されています。
なお2022年4月に行われた調査では、56.1%の人が不動産業界を「アナログだと思う」と感じていること、54.3%の人が「ネット不動産を積極的に利用したい」と感じていることが分かりました。
ネット不動産では賃貸はもちろん、売買の分野でも取引が行われています。現在はまだ従来通りの対面式が多いですが、今後はインターネット上で完結する不動産取引が増え、賃貸や売買・投資のメジャーな形が変わってくるかもしれません。
まとめ
リーガルテックは、法律(リーガル)と技術(テクノロジー)を合わせて、短縮した言葉です。訴訟大国アメリカでは2000年代初期からリーガルテックが発達していましたが、日本では新型コロナウィルスの蔓延を機に2020年ごろから急速に成長しました。
企業はリーガルテックを導入することで、法律関連業務を誰でも行えるようになったり、契約書に関連する業務を大幅に効率化できたりと、さまざまなメリットを享受できます。労働環境の改善や、コストの削減といった効果をもたらすでしょう。
リーガルテックは不動産業界にも影響を与えています。売買契約書をはじめとする契約書関連業務の効率化や、「ネット不動産」におけるオンラインでの契約締結が、不動産業界におけるリーガルテックの主な活用領域です。
今後は不動産投資においても、リーガルテックを活用した「ネット不動産」での取引が増えてくるでしょう。投資に取り組みやすい環境が形成され、より不動産投資が活発化することが期待されます。

この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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