20年続いた秋葉原再開発計画の論争に決着か?反対派が多かった5つの理由を徹底解説
- 更新:
- 2023/10/09

「秋葉原が再開発される」と各メディアが報じているのを見て、内容が気になりこの記事にたどり着いた方が多いでしょう。実はこの「秋葉原再開発計画」に関する論争は、かれこれ20年以上も続いていました。先日ついに千代田区を含めた賛成派の人数が反対派を超え、再開発を進める方向で調整する見込みとなっています。
参考東京新聞
そこで今回は「秋葉原が再開発されたらどう変わるのか」「再開発が反対され続けていた理由は何なのか」という点に着目して解説します。また当社は不動産会社ですので、最後には「再開発予定の秋葉原への不動産投資はアリなのか」という視点からも見ていきましょう。「アキバのこれから」が気になる方や、再開発のチャンスをモノにしたい投資家の方は必見です。
秋葉原再開発計画の概要
今回の秋葉原の再開発計画は、言ってしまえば「一画すべてを一度取り壊して、すべて作り直す計画」です。千代田区が公開している「外神田一丁目南部地区のまちづくり説明会」の資料をベースに解説していきます。
秋葉原駅前の1.7ヘクタールほどのエリアが対象
秋葉原の再開発計画は、下図のとおり秋葉原駅前の1.7ヘクタールほどのエリアが対象となっています。
神田川を中心とした広範囲が再開発の対象となっており、ほぼすべての建物が一度取り壊され、高層ビル等に集約される予定です。
高さ170mのオフィスビルや高層ホテルを建設する
再開発エリアの北部には高さ170mの高層オフィスビルが、南部には高層ホテルや住宅が立ち並ぶ予定となっています。
北部の170mオフィスビルの低層部に、既存の路面店のような商業施設を集約。バスの乗降場や歩道が整備され、アクセス性も向上する見込みです。
神田川沿いに親水広場を設置し、船着場を整備する
神田川沿い南側には1,000㎡規模の「親水広場」を設置し、既存の船着場も整備します。「親水性」を高めた過ごしやすい空間を作りつつ、防災力の向上を図るのが目的です。
今までの秋葉原のイメージとは打って変わった、自然との距離が近い街になるといえるでしょう。
秋葉原の再開発で生じる2つのメリット
秋葉原の再開発が進むと、下記2つのメリットに期待できます。
- 治安の改善が見込まれる
- 老朽化が進む建物を建て替えられる
それぞれどのような背景があり、どのように変わるのか見ていきましょう。
メリット①:治安の改善が見込まれる
第一に悪化しつつある秋葉原の治安改善が見込まれるでしょう。近年の秋葉原は悪質な客引きや転売目的の行列が非常に増えており、お世辞にも安全な街とはいえない状況です。さらに発展しすぎたメイドカフェ文化が、風俗的な営業に姿を変える可能性も懸念されています。これらは、千代田区が公開する市民の意見書要旨にも記載がありました。
実際に秋葉原に住んでいる人からは「住み始めた頃は良かったけど、今の秋葉原はまるで歌舞伎町のよう」ともいわれており、それだけ環境が変化しているのが読み取れます。再開発により路面店のほとんどが消滅するため、必然的に治安は改善していくでしょう。
メリット②:老朽化が進む建物を建て替えられる
秋葉原の再開発により、老朽化が進む路面店や区が所有する葬祭会館の建て替えが実現可能です。横浜国立大学の学生が2019年に調査したところ、秋葉原の物件は飲食店を除き築30年以上がほぼ全てを占めていました。
このままでは大地震が起きた際に、ドミノ式に多くの建物が被害を受ける可能性も否定できません。内閣府が公開する資料によれば、首都圏では30年以内に70%の確率でマグニチュード7クラスの地震が起きるとされており、対策が急務です。
いずれは既存の路面店の建て替えや補修をしなければいけませんでしたが、それが早まっただけとの見方もあります。より強度の高い建物で構成された街に生まれ変われば、秋葉原の安全性は大きく向上するでしょう。
秋葉原の再開発の反対派が多かった主な5つの理由とは
2つの明確なメリットこそあるものの、秋葉原の再開発に反対派が多かったのには下記5つの理由が考えられます。
- 「秋葉原らしさ」が失われてしまう
- 公正な議論がなされてきていない
- 反対派の地権者がないがしろにされてしまう
- 建設費・人件費の高騰で採算がとれない
- 高層ビルの安全性に疑問がある
それぞれの理由について、より具体的に深掘りしていきましょう。
理由①:「秋葉原らしさ」が失われてしまう
反対派の意見でもっとも多かったのは、再開発により「秋葉原らしさ」が失われてしまうというものでした。秋葉原は路面店を中心とした「昭和・平成初期の雰囲気に近い街並み」が魅力のひとつです。ひとたび再開発が進めば、路面店はほぼすべて失われ1つの大きな建物として再生します。「秋葉原」を印象付けるものを一掃するといっても過言ではありません。
また多くの方が秋葉原について「電気街」「サブカルの街」といった印象をお持ちかと思います。しかし今回の再開発計画に、それらの印象を維持したまちづくりを推し進めるような記載は、残念ながらほとんど含まれていませんでした。「秋葉原らしいにぎわいの創出」のような、具体性のない記載のみとなっています。
当然ながら「秋葉原らしさ」を好む層からの猛反発を受けることとなります。「つまらない街になる」「どの街も高層ビルだらけの同じ風景では魅力がない」といった意見が多く見られ、すべての人の理解を得るのは難しそうです。
理由②:公正な議論がなされてきていない
今回の秋葉原の再開発について、区と地権者・他の関係者間で公正な議論がなされていないという意見が多くみられました。「エリア内に区有の会館があるからといって、そもそも千代田区が賛成側に回るのはおかしいだろう」という意見も散見されます。再開発事業は不動産デベロッパーと地権者を主体として進めるものであり、自治体は公共・中立的な立場でなければいけません。
さらにこの意見を加速させたのが、千代田区が公開している資料内にある「地区計画の策定または見直しをするための進め方」の5ステップの存在です。5ステップには「将来像の共有」や「内容の検討」など、地権者や地域にかかわる人との意見交換のフェーズが含まれていますが、実際にはほとんど行われていないようです。
これでは「区が税収を増やすために、不動産デベロッパーと結託して無理矢理事業を進めようとしている」といわれても仕方がありません。もしこのまま再開発を進行するのであれば、より綿密な地権者・地域住民への共有が必要といえるでしょう。
理由③:反対派の地権者がないがしろにされてしまう
反対派の地権者がないがしろにされてしまうだろう、という意見もいくつかみられます。今回の再開発が進めば、現在「土地」という形で所有している地権者も、建設される建物内の「権利床」をもつことになります。つまり実体を持つ資産が事実上なくなるというわけです。
資料には「従前の権利に応じて土地建物を取得」と記載があり、従来どおりに商売ができなくなるわけではありません。もちろん個別で建て替え費用を負担することなく、総合的な資産価値が維持された状態で返ってきます。しかしビル内の権利床ということもあり、使途が大きく制限され簡単に売買できなくなるのが問題点でしょう。
反対派の地権者も当然「権利床」をもつことになりますが、ビル内で事業を継続できるかは別問題です。万が一事業継続を諦めるとなれば、大きな固定資産税だけがかかる負の資産をしばらく抱えることにもなり得ます。
理由④:建設費・人件費の高騰で採算がとれない
「建設費や人件費の高騰で採算が取れないだろう」と苦言を呈している地権者も多くいます。秋葉原では有名な「石丸電機」の元社長は「建築費や人件費の高騰の影響もあり、投資に対して、どれくらいのスパンでどれくらいのリターンがあるのか疑問だ」と発言しました。一般財団法人建設物価調査会によれば、建築資材の価格だけを見てもここ10年で40%近い値上がりを引き起こしています。
2024年には労働基準法改正による建設業界の残業規制も始まり、人件費の大幅な高騰も見込まれています。今再開発をするのが「悪手」だと感じる人がいてもおかしくありません。区による具体的な説明が必要でしょう。
理由⑤:高層ビルの安全性に疑問がある
「170mもの高層ビルは本当に安全なのか」という意見も少なくありません。千代田区が公開する「意見書の要旨」には、下記のような意見が掲載されていました。
- 歩道のすぐ横に170mもの高層ビルがあったら災害時が怖くて歩けない
- 地震が多発する最近の状況からあまりにも危険
- 消防車で助けられない高層ビルは公共の建物として必要か
現在秋葉原にあるビルでもっとも高いのは「秋葉原ダイビル」の147m。2003年の建設当時にも、安全性を疑問視する声が多数集まりました。170mもの高さのビルとなれば、地域住民から不安の声が上がるのも当然といえるでしょう。
再開発の可能性が高い秋葉原への不動産投資はアリ?
当社は不動産会社ですので「再開発の可能性が高い秋葉原に投資するのはアリなのか?」という目線で解説していきます。結論をいうと、秋葉原へ不動産投資するのは「アリ」です。ただしいくつか注意点を伴うので、秋葉原の不動産投資事情について見ていきましょう。
不動産の価値・賃貸需要は上昇する可能性が高い
再開発があった地域では、ほぼ100%といって良いほど高確率で地価やマンション価格が上がります。新築されるビルにはオフィスも入居するため、周辺の物件の賃貸需要も大きく高まるでしょう。
さらに建設資材の高騰も相まって、価格の高い新築マンションが建てば中古マンションの相場も引き上げられる見込みとなっています。家賃収入だけでなく売却益も狙えるかもしれません。なお再開発を抜きにしても、千代田区の地価は上昇傾向です。
コロナショックで一時は地価が若干下がりましたが、現在はまた回復傾向に転じています。万が一「再開発しない」方針でまとまった場合も、大打撃を受けるリスクは低いといえるでしょう。
水害リスクに注意が必要
秋葉原は水害リスクに注意が必要な地域です。千代田区のハザードマップを見ると、秋葉原のある神田川周辺は最大で3m規模の洪水被害に見舞われるリスクがあります。
船着き場や親水広場の整備により、バリケード的な役割のあった低・中階層のビル群はなくなります。そのため完成後の状況によっては、ハザードマップの記載よりも浸水被害が大きくなるかもしれません。できれば3 ~ 5階以上の高階層物件を所有するのが良いでしょう。
「先行者利益」を取るか「リスク回避」を取るかがポイント
まとめると、秋葉原への不動産投資は「先行者利益」を取るか「リスク回避」を取るかが分け目となるでしょう。再開発による恩恵をダイレクトに受けられれば安定した家賃収入が得られるだけでなく、地価やマンション価格の上昇により売却益を得られる可能性があります。
しかし今回の秋葉原の再開発は先行き不透明な部分が多く、そもそも実施されるかどうかもまだ確実ではありません。もう少しだけ様子を見るのもひとつの選択肢といえるでしょう。
「我こそは」とこの再開発のチャンスをモノにしたい方には、当社でも秋葉原エリアの物件を紹介できます。ぜひまずは無料会員登録して、秋葉原エリアにある会員限定物件の情報をゲットしてください。
まとめ
秋葉原の再開発計画は、秋葉原駅南東部の神田川周辺1.7ヘクタールほどのエリアが対象となっています。該当エリアの建物はほぼすべて取り壊し、170m規模の高層ビルなどに集約される予定です。1,000㎡規模の「親水広場」も新設され、今までとは打って変わった自然に近い街にもなるでしょう。
治安の改善や老朽化が進む建物の建て替えなどメリットがある一方で、「秋葉原らしさが失われる」「公正な議論がなされていない」などの反対意見も多くありました。今後は再開発を進める方向になるかと思われますが、反対派の意見をすべて抑えるのは難しそうです。
再開発が進めば不動産の価値や賃貸需要が大きく高まるため、今秋葉原に不動産投資をするメリットは大いにあるといえます。まだ先行き不透明な部分があるためリスクは0ではないものの、早期に物件を購入して大きな先行者利益のチャンスを得たい人はぜひ当社にご相談ください。あなたに合った秋葉原の優良な物件をご提案いたします。

この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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