マンション管理組合の理事長とは?不動産投資家でもなれる!仕事内容やメリット・注意点を押さえて投資活動を有利に進めよう
- 更新:
- 2023/06/19
「マンション管理組合の理事長になれば不動産投資に有利って本当?」マンション管理組合の理事長とは、文字通りマンション管理におけるトップとなる存在。しかしマンションによっては、理事長には不動産投資家でもなれます。
理事長には責任と面倒な仕事がつきまといますが、投資家にとっては資産価値の向上やコストの削減により、投資活動を有利に進めるためのチャンスです。今回はマンション管理組合の理事長の仕事内容から、就任するメリット、注意点まで徹底解説します。ぜひポイントを押さえて理事長になり、投資活動を有利に進めましょう。
- 目次
- マンション管理組合の理事長とは
- マンション管理組合の理事長には不動産投資家でもなれる?
- マンション管理組合の理事長の権限と主な仕事内容
- マンション管理組合の理事長になるメリット
- マンション管理組合の理事長になる場合の注意点
- マンション管理組合の理事長就任中はチャンス!資産価値向上・コスト削減を目指そう
- まとめ
マンション管理組合の理事長とは
マンション管理組合の理事長とは、その名の通りマンションの維持管理を進める「理事会」のトップにあたる存在です。よく「管理組合」「理事会」の差が分からず、理事長のポジションが良く分からないという声を見かけるので、下表にまとめました。
名称 | 概要 |
---|---|
管理組合 | ・マンション所有者は法律上必ず入らなければいけない ・快適なマンションの維持管理を行う |
理事会 | ・管理組合の組合員から選出した代表(理事)で構成する ・実質的なマンション維持管理業務は理事会が行う |
理事長 | ・理事会のトップ(= マンション管理のトップ)にあたる ・理事会の招集を行ったり、意見を取りまとめたりする |
マンションの維持管理を行うのは、法律で定められた「管理組合」です。管理組合は法律上、区分所有者全員の加入が義務付けられています。しかし区分所有者全員で維持管理のための業務を行うのは困難なため、実質的には代表(理事)を選出して理事会で行います。そして、その理事会のトップを担うのが「理事長」ということです。
マンション管理組合の理事長には不動産投資家でもなれる?
結論、マンション管理組合の理事長には、区分所有する不動産投資家でもなれます。ただし、下記4つのどのパターンで理事や理事長を選出しているかによっても変わってきます。
選出方法 | やり方 |
---|---|
立候補 | ・本人の立候補による ・立候補者がいない場合は輸番制などで対応 |
推薦 | ・前回の理事が次回の理事を決定する |
抽選 | ・くじなどの方法でランダムに理事・理事長を決める |
順番(輸番制) | ・部屋番号などをベースとし、順番に理事を選出する |
上記4つのうち、立候補または順番(輸番制)による選出方法であれば、不動産投資家でもマンションの管理者になれるでしょう。とはいえ「立候補者がなかなか現れない」「推薦しようにも他の組合員との交流がない」といった理由で、近年は多くのマンションが順番(輸番制)を採用しているので、もしやる気がなくても一度は理事になる可能性が高いです。
詳しくは後述しますが、マンション管理組合の理事長になれれば、物件の資産価値を上げたりコストを削減したりして、不動産投資を有利に進められる可能性があります。仕事内容からメリットや注意点、具体的な施策内容まで順に見ていきましょう。
マンション管理組合の理事長の権限と主な仕事内容
マンション管理組合の理事長に与えられた権限は、主に下記の2つです。
- 総会で決議されたことを実行する
- 管理規約で定められた行為をする
本来、理事長に与えられているのは「決まったこと、定められたことを実行する」権限のみ。区分所有者(組合員)の意見を募って理事会・総会で施策などを話し合い、管理規約に則ってマンションの維持管理を遂行します。
しかし実際には理事長にほぼ管理を任せきりとなっているマンションが多く、理事長が大きな権限を持っているケースは少なくありません。そのため、理事長の働き次第でマンションの状況を大きく変えられます。そこで、まずは理事長の主な仕事内容を見ていきましょう。
理事長の仕事内容①:管理会社とのやり取り
多くのマンションでは、日常的な共用部の清掃や設備の保守点検などを管理会社に委託しています。この管理会社とのやり取りを主体となって行うのが、理事長の重要な役割です。
なお、管理会社にどこまでの業務を委託しているか、そもそも管理会社と契約しているかはマンションにより異なります。後述する「理事長の仕事内容②:住民からの相談窓口」の業務を完全に管理会社に委託している場合もあります。
とはいえ管理会社に丸投げせず、伴走するイメージでマンションの維持管理を進行することも可能です。理事長に就任してマンションの管理に問題を感じたら、一度管理会社と話し合ってみるのも良いでしょう。
理事長の仕事内容②:住民からの相談窓口
重要な理事長の仕事のひとつが、住民からの相談窓口となることです。基本的に組合員の困りごと・悩みごとの第1相談窓口は、マンション管理組合の理事長となっています。(管理会社に管理を委託している場合、管理会社の担当者が窓口となっているケースもあります)
ただし先述したように、基本的に理事長は総会で決議されたことを実行するのみです。つまり住民からの相談を聞いて一度持ち帰り、理事会や総会で解決に向けた話し合いを行います。ただし組合員がマンションの管理を理事長に任せている場合は、理事長が単独で対処をすることとなるでしょう。
理事長の仕事内容③:理事会と総会の開催
理事長は理事会や総会の招集・開催を主体となって行います。なお、理事会・総会はそれぞれ下記のようなものです。
名称 | 概要 |
---|---|
理事会 | ・代表(理事)が参加する ・①、②の仕事で発生した内容や後述する議題について話し合う ・総会で議決した内容を遂行する |
総会 | ・組合員全員が参加できる ・理事会で発生した事項について投票で議決する |
理事会でマンションの維持管理に向けた議題について話し合い、総会で投票により実行の有無を議決します。そして、実際に議決された内容を遂行するのは理事会です。なお、理事会では①・②の仕事で発生した議題のほか、下記のことも話し合います。
- 収支計画の策定
- 大規模修繕工事の計画と進捗確認
- 共用部分の使用ルールの策定
- 管理費等の滞納者への対応
マンション全体の計画やルール決め、滞納といったトラブルを起こしている人への対応など、理事会の役割は重要です。理事会がほぼ機能しておらず理事長がほとんど決めるケースも少なくないため、しっかりと仕事内容を押さえておきましょう。
マンション管理組合の理事長になるメリット
マンション管理組合の理事長になると、下記3つのメリットがあります。
- マンションの財務状況が分かる
- 費用の見直しができる
- 報酬が出る場合がある
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
理事長になるメリット①:マンションの財務状況が分かる
理事会に入ると、マンションの財務状況が分かります。下記のようなお金の情報は、理事会に入らないと分かりません。
- 管理費の収支
- 修繕積立金の収支
- 管理会社への委託費
理事長と会計担当理事は通帳の記載なども詳細に確認できるので、マンション全体の収支を正確に把握できます。「このマンションにはいくらかかっていて、将来的な費用は現在の管理費・修繕積立金でまかなえるのか」という点は、理事長あるいは会計担当者にならないと判断できないでしょう。
理事長になるメリット②:費用の見直しができる
財務状況からムダな費用を発見し、マンションの維持管理にかかるコストを削減できるのは大きなメリットです。理事長はこの費用の見直しを主体的に進められます。詳しくは後半の「費用の見直しをしよう」で解説しているので、ぜひ読んでみてください。
理事長になるメリット③:報酬が出る場合がある
理事長になると報酬が出る場合があります。ただし国土交通省の資料によると、平成30年時点では全国のマンションの23.1%しか理事長に報酬が出ておらず、金額は平均9,500円です。
8割近いマンションで理事長に報酬が出ておらず、金額も多くは1万円未満。あくまで「報酬が出る場合がある」程度のため、報酬面に過度な期待はしないでおきましょう。
マンション管理組合の理事長になる場合の注意点
マンション管理組合の理事長になる場合、仕事を進めるうえで下記2つの注意点を押さえておきましょう。
- 住民・建物のトラブルへの対応が必要
- 会計担当理事の動きに注意
それぞれ詳しく解説します。
注意点①:住民・建物のトラブルへの対応が必要
管理会社に窓口業務を委託していない場合は、住民や建物に関するトラブルへの対応が必要です。国交省によると、平成30年の時点で特にトラブルが発生していないマンションは23.2%しかありません。
そのため、居住者間のマナーや建物の不具合など、突発的な連絡に対応しなければいけない場合もあります。特に「エレベーターが壊れた」「ガラスが割れた」など共用部分の設備トラブルについては、緊急で現地に駆けつけて対応する必要があるでしょう。頻繁に発生するわけではありませんが、状況によっては仕事を休んで対応しなければいけない点は押さえておいてください。
注意点②:会計担当理事の動きに注意
理事長になったら、マンションの会計を担当する「会計担当理事」の動きに注意しましょう。会計担当理事が修繕積立金などを横領するケースは少なくありません。
問題は会計担当理事が起こした横領であっても、マンション管理のトップである理事長に対し損害賠償請求されるリスクがある点です。実際に平成27年10月に起きたとあるマンションの会計担当理事による横領事件では、理事長に賠償責任があるという判決が出されています。
そのため理事長になったら、通帳に不審な点がないかのチェックが不可欠です。訴訟を起こされるリスクを避けるために、会計担当理事とお金の動きには注意しておきましょう。
マンション管理組合の理事長就任中はチャンス!資産価値向上・コスト削減を目指そう
マンション管理組合の理事長就任中は、マンションの資産価値を上げたり、コストを削減したりできる大きなチャンスです。ぜひこれから紹介する3つの施策を行いましょう。
費用の見直しをしよう
マンション管理組合の理事長就任中は、マンションの財務状況を把握し、費用の見直しを図れます。つまり将来的に発生するかもしれない、修繕積立金や管理費の値上げリスクを回避できる可能性があるのです。
特にチェックしたいのが「縁故で修繕工事を発注していないか」という点。「修繕工事が発生したら、この工事会社に修繕を発注する」と慣習化している場合があります。適切な費用比較が行われないので、実は相場よりもはるかに高い金額で発注しているケースが少なくありません。
もし理事長に就任したタイミングで「縁故で発注しているな」と感じたら、ぜひ理事会で話し合う議題に「突発的なトラブルを除き、修繕工事は複数社の見積りを比較検討する」という内容を盛り込んでみましょう。上手くいけば工事費を大幅削減し、将来的に入居者が支払う月額の値上げや修繕費用の増額を抑えられるため、空室リスクの軽減や利回りの向上が期待できます。
住民のトラブルを解決して空室リスクを下げよう
理事長が相談窓口としての役割を担っている場合は、住民のトラブル解決にむけて積極的に活動しましょう。トラブルが発生してもすぐに解決できれば、住民が自らの意思で退去し、空室が発生してしまうリスクを軽減できます。
もし頻発するトラブルがあれば、発生を防ぐための新たなルール策定も重要です。ぜひ理事会の議題に盛り込んで、住民が暮らしやすい環境づくりを心掛けましょう。
「マンション管理計画認定」を受けていない場合は認定を狙おう
もし所有する区分マンションが「マンション管理計画認定」を受けていない場合は、ぜひ認定を狙ってみましょう。マンション管理計画認定とは2022年4月に始まったばかりの、マンション管理の適正化を目的に創設された制度です。
認定を受けていれば、次の購入希望者に維持管理を適切に行っているとアピールできるため、将来高い値段でマンションを売却しやすくなります。5年ごとの認定更新のために適切な管理を行わざるを得ないため、次の理事長に引き継いだ後も高めた資産価値を維持できる可能性が高いでしょう。認定を受けるには、下記のような項目について一定の水準を満たしている必要があります。
- 修繕・管理にかかる資金計画を適切に行っている
- 管理組合が適切に運営されている(総会が定期的に開催されている)
- 国土交通省や市・区独自の管理適正化指針にそって適切に管理されている
マンション管理計画認定は、マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」からオンライン申請ができます。若干事務負担が増えてしまいますが、それ以上に認定を受ける価値があるので、ぜひ理事長就任中に認定を狙いましょう。
まとめ
マンション管理組合の理事長には、区分所有する不動産投資家でもなることが可能です。理事長になればマンションの財務状況が分かります。多くはありませんが、マンションによっては報酬も期待できます。
ぜひ理事長になったら、修繕費用の見直しや住民のトラブル解決のため積極的に活動しましょう。資産価値の向上やコストの削減が期待できるため、不動産投資活動を有利に進められます。また、2022年4月に新設された「マンション管理計画認定」の取得もぜひ狙ってみてください。
この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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