【2023】行動経済学の主要な5つの理論を知って負けない不動産投資を!
- 更新:
- 2023/06/19
行動経済学とは、経済学と心理学を融合した学問のこと。人間が感情に流され、非合理的な判断をすることを前提としたお金やモノの動きと、その理由の追求をする学問です。
行動経済学には有名な5つの理論があります。実はこれらの理論の考え方によって、私たちは日常生活において正常な判断をできず、損をしているケースが少なくありません。不動産投資においても同様で、感情のままに行動した結果、数百万円 ~ 数千万円レベルの損をする可能性があります。
反対にいえば、行動経済学の理論を知ることで、感情に流されず損をしない選択ができるということ。今回は行動経済学の有名な5つの理論と、日常生活における具体例、理論に基づいた不動産投資における注意点を解説します。不動産投資で大損しないためにも、ぜひ最後まで目を通してみてください。
行動経済学とは
行動経済学とは、経済学と心理学を融合した学問です。経済学では、すべての人が合理的な判断をする前提で、データに基づき論理的にお金やモノの動きについて考えます。それに対して行動経済学は、人間が感情によって合理的な判断をしないことを前提に、お金やモノの動きとその理由を追求します。
事実として、人は重要な選択に直面した際に、合理的な判断ができない場合があるでしょう。詳しくは後ほど行動経済学の具体的な理論を用いて解説しますが、たとえば「今少しの損をしておけば、将来比にならないほどの大きな得をする」場合でも、人は少しの損を避けるために行動する場合があります。経済学に基づいて考えれば非合理的な判断であり得ない話ですが、行動経済学で考えれば当然あり得る結果といえるのです。
つまり行動経済学を学んでおけば「感情による不合理的な判断」をする可能性を減らし、合理的な判断で最大限の利益を得られる可能性があります。専門的に学習せずとも、ぜひこれから紹介する5つの理論だけでも押さえて、日常生活や不動産投資で「本質的に損をしない選択」ができるようにしましょう。
行動経済学の有名な5つの理論
行動経済学には、下記の有名な5つの理論があります。
- プロスペクト理論
- サンクコスト効果
- アンカリング効果
- 現在志向バイアス
- フレーミング効果
上記以外にもさまざまな理論がありますが、もっとも日常的に人間が直面するもの、そして不動産投資に関係するものはこの5つといえます。まずはそれぞれの理論の概要と、身近な具体例を見ていきましょう。
プロスペクト理論:損失を回避したいと考える
プロスペクト理論とは「得を求めるよりも、損を避ける」という心理に基づく理論です。大きな得をする可能性が圧倒的に高い場面でも、人間は少しでも損をする選択を避ける傾向があります。
多くの方は、普段の生活でも「期間限定」「もう1個買うとさらに1個オマケ」のような広告につられて、なにか商品を購入した経験があるのではないでしょうか。こうした広告は「この期間で買わないと損をする」「2個分の値段で3個手に入るなら、1個だけ買うのは損」というプロスペクト理論の考え方をベースに作られているのです。
しかしプロスペクト理論を知っておけば「期間限定と書いてあるけど、普段はいくら?本当に得?」「まるごと1個分オマケがつくのはたしかに得だけど、そもそも2個以上必要?」といった冷静な判断ができます。損失回避のために、非合理的な判断をする可能性が低くなるでしょう。
サンクコスト効果:もったいないと感じる
サンクコスト効果とは「かけたコストを無駄にしたくない」という心理に基づく理論です。つまり、人間が「もったいなくて、やめられない」という思考に陥ってしまうことを指します。なお、サンクコストは「埋没費用」とも呼ばれています。
このサンクコスト効果の分かりやすい例が、行列ができているお店に並ぶケース。たとえば行列ができている飲食店を見て「これだけ人気なら、美味しいだろうから並んでみよう」と、並び始めたとしましょう。
しかし行列は思ったよりも長く、1時間経っても入店できませんでした。他にもやりたいことがあるので、さすがにそろそろ食事を済ませたい。しかし「もう1時間も並んだし、今から別の店に行くのはもったいない」と考え、多くの人は並び続けてしまいます。結果として他のやりたいことは消化できず、いってしまえば「損」をしている状態です。
サンクコスト効果を知っておけば「30分経って入店できる見込みがなければ、諦めて他のお店に行こう」といった対策ができます。「もったいない」を理由に、それ以上の損をしていないか冷静に判断できるでしょう。
アンカリング効果:最初に見た数字を基準にする
アンカリング効果とは「最初に見た数字を基準に、後から見た数字の優劣を判断してしまう」という考え方です。日常的にあらゆる商品を買う際にも、アンカリング効果によって正常な判断をできていないケースがあります。
たとえば「定価20,000円の商品が、70%オフの6,000円で売られているケース」を見てみましょう。多くの人が「20,000円が6,000円に!?安い!」と単純に考えてしまいます。しかし、これはあくまで定価からの値引き。「購入後に市場の販売価格をチェックしたら、ほとんど購入価格と変わらなかった」というケースは少なくありません。
これは最初に「20,000円」という情報を見て、そのまま判断してしまったからこそ起こり得ます。アンカリング効果を知っていれば、最初に20,000円を見た段階で冷静に市場価格をチェックし、本当に得かどうかの判断ができたでしょう。
現在志向バイアス:目先の利益を優先する
現在志向バイアスとは「将来の大きな利益より、目先の小さな利益を優先してしまう」という傾向のことです。たとえば「お金を貯めて1年後に車を買うぞ!」と意気込んだにもかかわらず、どうしても欲しいものがあると値段に関わらず衝動買いしてしまう、といったケースが現在思考バイアスの考え方に該当します。
人間は現在志向バイアスにより、目先の利益を優先してしまうものだと認識することが重要です。長期的な目標にプラスして段階的な目標を立てるなど、衝動的に行動を起こしてしまう意志を抑える対策をしましょう。
フレーミング効果:情報の見え方で受け取り方が変わる
フレーミング効果とは、「同じような情報だとしても、見え方(表現の方法)によって受け取り方が変わる」という現象のことです。分かりやすい例として「現金値引き」と「ポイント還元」との差を見てみましょう。ほとんど同じに見える下記のふたつですが、どちらがお得に見えるでしょうか。
- 10%現金値引き
- 10%ポイント還元
現金値引きの場合は、1万円のものを9,000円で購入可能です。ポイント還元の場合は1万円まるごとかかりますが、1,000円分のポイントがもらえます。ここからさらに1,000円のものを購入しようとした場合、ポイントを使って無料で手に入れた方が、なんとなくお得感があるでしょう。
しかし「1万円のもの + 1,000円のもの」を購入したすると、現金値引きの場合は9,900円、ポイント還元の場合は10,000円かかるため、実際には現金値引きのほうが100円お得です。フレーミング理論を知っていれば、具体的な金額を計算してどちらが本当にお得か判断できます。
行動経済学の理論をもとに考える不動産投資の5つの注意点
先ほどまで解説した5つの理論をもとに、不動産投資における5つの注意点を解説します。
- 「サブリース契約」が本当に必要か
- かけた時間や手間を理由に損をしていないか
- 値下げされた物件が相場に見合っているか
- 節税目的で投資を始めた場合は将来予測がしっかりできているか
- 購入物件の良いところだけを見ていないか
それぞれどの行動経済学の理論に基づき、どのような判断をすればよいのか具体的に見ていきましょう。
「サブリース契約」が本当に必要か:プロスペクト理論
不動産投資では、いわゆる家賃保証制度である「サブリース契約」が本当に必要か「プロスペクト理論」の考え方を軸に判断しましょう。サブリース契約を行うと管理をまとめて委託でき毎月の収入が保証されますが、家賃収入額は10 ~ 20%ほど減少します。
「家賃保証される = 損をしない」と考えられるため、サブリース契約を勧められるがままに契約してしまうケースは少なくありません。しかし賃貸需要が非常に高い地域で、空室リスクが非常に低い場合はどうでしょうか。
ほぼ満室状態を維持できるのに、低い空室リスク対策のために年間で家賃収入1 ~ 2ヶ月分の損をしてしまっているといえます。「サブリース契約を結ぶほど空室リスクがあるのか?」「管理を丸投げするなら、サブリース契約よりも管理委託が良いのではないか?」といった視点から、サブリース契約を結ぶべきか冷静に判断しましょう。
参考サブリースは解約できない?これで完璧!メリットから問題点まで一挙解説
かけた時間や手間を理由に損をしていないか:サンクコスト効果
不動産取引における買い・売りどちらの場合も、「かけた時間や手間を理由に、損をする選択を取っていないか」という点を、サンクコスト効果の考え方をベースに判断しましょう。たとえば、買い・売りそれぞれの視点で、下記のように「かけた時間がもったいない」と損をする選択をしてしまうケースがあります。
- 買い:時間をかけて金融機関に交渉したのに、金利が高かった。それでも契約してしまった
- 売り:なかなか買い手が購入を決断せず取引が長引き、早く終わらせたいと値下げをしてしまった
買いの場合、他の金融機関に交渉すれば、より安い金利で契約して数十万円 ~ 数百万円の費用を抑えられる可能性があるでしょう。売りの場合も、値下げをせずとも待っていれば買い手が購入を決断し、損をすることはなかったかもしれません。
不動産投資においては「時間 < お金」と考えて動くのがベターです。かけた時間がもったいないからと安易な選択をして、数百万円にもおよぶ損失を発生させないよう注意しましょう。
参考中古マンション購入時の注意点と、確認しておくべきポイント3選
値下げされた物件が相場に見合っているか:アンカリング効果
条件が良いと思っていた物件が値下げされたら、多くの方は「チャンスだ」と感じるでしょう。しかし、本当にその値下げは相場に対して安いといえるのか、アンカリング効果の考え方を基準に再検討すべきといえます。
なぜなら、相手もアンカリング効果を知っており、戦略的に値下げをしてきている可能性が否定できないからです。値下げにより安いという印象を受けたものの、実は値下げ前の価格が相場よりも高く、よくよく比較したら特段安くないというケースは少なくありません。
確かに値下げは多くの場合で購入のチャンスといえますが、必ずしも自分に有利とは限らない点は押さえておきましょう。購入前には冷静に相場をチェックし、損をしない取引を心掛けてください。
節税目的で投資を始めた場合は将来予測がしっかりできているか:現在志向バイアス
節税目的で不動産投資を始める方は少なくないでしょう。しかし、現在志向バイアスの考え方に則り「今すぐ節税できるから」と短絡的に考えないのが重要です。不動産仲介業者が節税のメリットだけを全面的にアピールし、それ以上のリスクを説明していない場合があります。
詳しい計算方法は割愛しますが、たとえば年間の課税所得が700万円の人が3,000万円の物件を購入した場合、節税できるのは年間10万円程度です。購入した年から効果を発揮するうえ、20年間経営したら200万円の節税。確かに少なくない数字に見えるかもしれません。さらに家賃収入を得られるため、ローンを差し引いても月間収支はプラスとなるでしょう。
しかし、プラスとなるのはあくまで理想的な利回りを維持できればの話。不動産投資には「空室により家賃収入がなくなる」「将来の売却価格が大幅に下落する」といったリスクが隠れています。トータル数百万円の節税効果が得られたとしても、それ以上の損失が発生する可能性があるのです。
不動産投資による節税は魅力的ではありますが、目先の効果にとらわれて将来のリスクを考えなければ、人生を棒に振るほどの損失を発生させてしまうかもしれません。信頼できる不動産仲介業者を見つけ、しっかりとリスクを加味した事業計画を立てながら不動産投資をスタートしてみてください。
購入物件の良いところだけを見ていないか:フレーミング効果
物件購入を検討する際、良いところだけを見て判断していないか、フレーミング効果の考え方を基準に再確認してみましょう。たとえば下記のような物件の「売り文句」には、下記のような裏の理由が隠れている場合があります。
- 静かで住みやすい⇔活気がない
- 治安が良い⇔娯楽がない
売り文句が本質的にはデメリットであり、将来入居者が減って損をしてしまう可能性も。地図を見たり、実際に現地の周辺を散策したりして、本当に売り文句がメリットなのかどうかしっかりと判断しましょう。
まとめ
行動経済学は、非合理的な決定をして損をしないために知っておきたい学問です。ぜひ本記事で紹介した5つの理論だけでも押さえておき、日常生活や不動産投資で損をするリスクを避けられるようにしましょう。
とはいえ行動経済学をある程度知っていても、不動産投資において判断に迷うケースは少なくありません。自分で考えても決定できないときは、信頼できる複数の不動産会社にアドバイスを求めるのもおすすめです。ぜひ当社にも、不動産投資に関するお悩みを気軽にご相談ください。
この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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