建築基準法改正による「4号特例」縮小をわかりやすく解説!不動産市場への影響も紹介
- 更新:
- 2025/05/11

2025年4月から建築基準法が改正され、いわゆる「4号特例」の対象範囲が大幅に縮小されました。この改正により、これまで建築確認申請が不要だった多くの木造2階建て住宅が新たに建築確認時の審査の対象となっています。
この記事では、建築基準法の改正によって4号特例の何が変わるのか、そして不動産市場にどのような影響があるのか詳しく解説します。リフォームや不動産投資を検討している方は、改正内容を理解しておくことで、将来的なトラブルや予期せぬコスト増加を避けられるでしょう。
- 目次
- そもそも4号特例とは?
- 2025年4月1日建築基準法改正による「4号特例」縮小の詳細
- 4号特例が縮小される背景は「建築物省エネ法の改正」と「空き家問題対策」
- 4号特例の縮小がもたらす不動産市場への影響
- 4号特例の縮小で不動産投資にも変化が
- 建築基準法改正・4号特例の縮小に関するよくある質問
- まとめ
そもそも4号特例とは?
まずは建築基準法の4号特例について詳しく知らない方のために、この制度の基本を解説します。
「4号特例の説明はいらない」という方は、次の【2025年4月1日建築基準法改正による「4号特例」縮小の詳細】までスキップしてください。
4号特例は「一定基準以下の物件の審査を省略する」制度
4号特例とは、建築基準法第6条第1項第4号にもとづいた「小規模な木造建築物の建築確認を簡素化する」特例制度です。特定の条件を満たす建築物について、建築確認手続きの際に「構造耐力関係規定の審査」が省略されます。この審査は、文字通り建築物の耐久性・安全性を確認するものです。
建築確認が省略されることで設計者や工務店の事務負担が軽減され、住宅建築のスピードアップやコスト削減につながっていました。全国の新築戸建て住宅のおよそ7割がこの特例の対象になっていたといわれており、多くの住宅供給を支えてきた制度です。
4号特例が適用されていた建物の種類
2025年3月31日以前、4号特例が適用されていた建物の条件は以下のとおりです。
構造 | 条件 |
---|---|
木造 | ・2階建て以下 ・床面積500㎡以下 ・共同住宅、店舗などの「特殊建築物」かつ200㎡を超える建物でない |
木造以外 | ・平屋 ・床面積200㎡以下 |
つまり、ほとんどの木造戸建て住宅や、小規模な木造の店舗・事務所などは4号特例の対象となっていました。このあと詳しく解説しますが、これまで特例対象となっていた4号建築物の多くが、これからは新築やリフォームの際に審査を受けなければならなくなっています。
2025年4月1日建築基準法改正による「4号特例」縮小の詳細
2025年4月1日から施行される建築基準法の改正により、4号特例の適用範囲が大きく変わります。改正の具体的な内容を見ていきましょう。
「4号建築物」を「新2号建築物」「新3号建築物」に分類
改正後は、これまでの「4号建築物」が「新2号建築物」と「新3号建築物」に再分類されます。具体的な区分は以下のとおりです。
区分 | 条件 |
---|---|
新2号建築物 | ・階数2以上の木造建築物 ・延べ面積200㎡を超える木造建築物 ・木造以外の小規模建築物も含む |
新3号建築物 | ・平家建ての木造建築物 ・延べ面積200㎡以下の建築物 ・都市計画区域等内に建築されるもの |
これまで建築確認申請の審査省略の対象だった建物の多くが、厳格な審査の対象になります。区分ごとの変化を詳しく見ていきましょう。
「新2号建築物」は建築確認(審査)が必要
改正後、新2号建築物に分類される建物(階数2以上または延べ面積200㎡超の木造建築物)は、構造関係規定等の審査が必要になります。つまり、これまで4号特例により審査が簡略化されていた木造2階建ての一般住宅も、新たに「建築確認審査」の対象となるわけです。また、新2号建築物については大規模なリフォームも建築確認審査の対象となります。
新2号建築物を建てる際には、構造計算や構造関係規定への適合性など、より詳細な審査を行わなければいけません。設計者や工務店には、これまで以上に正確な設計図書の作成と提出が求められる形です。
「新3号建築物」は今までどおり審査省略制度の対象
一方、新3号建築物に分類される平屋建ての木造建築物(延べ面積200㎡以下)は、今までどおり審査省略制度の対象となります。つまり、建築確認申請は必要ですが、構造関係規定等の審査は省略される形です。
新3号建築物は、旧制度における4号建築物と同じく比較的簡単な手続きで建築できます。また、新2号建築物とは異なり、大規模なリフォームも審査の対象外です。ただし「延べ面積200㎡以下の平屋建て」はそう多くなく、ほとんどの木造建築物が新2号建築物となるでしょう。
確認申請の際には構造・省エネ関連資料の提出が必須に
法改正によるもうひとつの大きな変更点は、新2号建築物の確認申請の際に「構造関係書類」や「省エネ関連資料」の提出が必須になることです。これまでの4号特例では、構造関係書類の提出が省略されていました。また、4号特例縮小と同時に施行される「省エネ基準への適合義務化」に対応する省エネ関連資料の提出が必要となっています。
この変更は、建築物の安全性と省エネ性能の向上を図るためのものです。一方で、設計者や施工者にとっては業務量の増加につながります。結果として、建築コストの上昇や工期の延長が予想されるでしょう。
4号特例が縮小される背景は「建築物省エネ法の改正」と「空き家問題対策」
4号特例が縮小される背景には、2022年に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」があります。この法改正により、2025年4月から住宅を含む全ての建築物について省エネ基準への適合が義務付けられました。
この省エネ基準適合義務化に対応するため、建築確認の過程で省エネ性能の審査も同時に行う必要が発生。そこで4号特例を縮小し、より多くの建築物を詳細な審査の対象とする制度変更が行われたのです。
また、近年増加している空き家問題への対策という側面もあります。老朽化した建物の安全性確保や、適切な管理を促進するため、建築基準法による規制強化が進められているのです。
とくに耐震性能に関する審査を厳格化することで、安全性の高い住宅ストックを形成し、将来的な空き家問題の深刻化を防ぐ狙いがあると考えられます。
4号特例の縮小がもたらす不動産市場への影響
4号特例の縮小は、不動産市場にさまざまな影響を与えることが予想されます。具体的にどのような変化が起こるのか見ていきましょう。
新築物件のコスト増・工期延長が発生する
4号特例の縮小により、これまで審査が省略されていた木造2階建て住宅などの新築時に、構造計算書や省エネ性能に関する資料の作成・提出が必要になりました。これにより、以下のような影響が予想されるでしょう。
- より詳細な構造計算や省エネ計算が必要になるため、設計料が上昇する可能性がある
- 審査範囲が広がることで、人件費が増えて建築確認申請の手数料も上昇する可能性がある
- 審査期間が長くなることで、着工までの期間が延びる可能性がある
建売住宅や分譲住宅の価格にも、この影響が反映される可能性が高いです。
大規模リフォームにも建築確認が必要になる
法改正のもうひとつの大きな影響は、大規模なリフォーム(大規模の修繕・大規模の模様替え)にも建築確認が必要になる点です。
2025年3月31日までの旧制度では、4号特例の対象となる木造住宅の大規模リフォームは、建築確認申請が不要とされていました。しかし、改正後は以下のようなリフォームにも建築確認が必要になる場合があります。
- 屋根全体のふき替え
- 外壁全体の張り替え
- 床の全面改修
- 柱や梁(はり)の過半数を交換するような改修
ただし、キッチンやトイレ・浴室などの水回りのリフォームや、バリアフリー化のための手すりやスロープの設置工事については、従来通り建築確認は不要です。
引用国土交通省
大規模リフォームに建築確認が必要になることで、リフォーム費用の上昇と工期の延長が予想されます。古い住宅のリフォーム需要が減少し、リフォーム業者によるさらなる価格のつり上げが起きることもあり得るでしょう。
カーポートなどの「エクステリア増築」も場合によっては確認対象に
カーポートなどの「エクステリア」的な増築工事は、4号特例により建築確認不要とされてきました。しかし、今後は以下の条件を満たす場合、建築確認の対象となる可能性があります。
- 建物が「新2号建築物」に分類される
- 増築部分の面積が10㎡を超える
- 高さが2m以上ある
ガーデンルームや物置などの増築も同様で、これまで以上に慎重な計画が必要になるでしょう。こちらも業者の人件費上昇が原因で、工事費増加などの影響が予想されます。
4号特例の縮小で不動産投資にも変化が
4号特例の縮小は、不動産投資にもさまざまな影響を及ぼすことが予想されます。ここでは、木造戸建て投資にどのような変化が起きるのか、どのような投資戦略が有利になる可能性が高いのか見ていきましょう。
「木造戸建て投資」は収益性が下がってしまうリスク大
4号特例の縮小によって、以下の理由で木造戸建てはとくに収益性が下がってしまうリスクが高いです。
- 利回りの低下(物件購入コストの増加)
- リフォーム費用の増加(建築確認申請費用、設計事務所への依頼費用)
- リフォーム工期遅れによる空室期間の延長(確認申請の審査期間による着工の遅れ)
まず、築古物件を購入してリフォーム・リノベーションを行うスタイルの投資では、費用の増加が避けられません。外壁の全面張り替えなどの工事には建築確認が必要になり、一物件あたりのリフォーム費用が数十万円ほど増加する可能性があります。また、リフォーム済みで販売される中古物件も、売り出しまでの過程で価格が上乗せされるため同様です。
また、建築確認申請の手続きが長引けば、工期が延びて空室の状態で待つ期間も長くなってしまいます。結果として、全体の収益性が大きく下がってしまうかもしれません。
戸建て(空き家)投資なら「住宅セーフティネット」狙いもひとつの戦略に
4号特例の縮小により戸建て投資のハードルが上がる中、「住宅セーフティネット制度」を活用した投資戦略が注目されています。
住宅セーフティネット制度とは、高齢者や障害者、子育て世帯などの住宅確保要配慮者に対して、安心して暮らせる住宅を提供するための制度です。この制度に登録すると、改修費の補助金や家賃補填などの支援を受けられる場合があります。
もうひとつ注目したいのが、この制度で支援される工事の多くが「建築確認申請不要」の範囲に収まる点です。バリアフリー改修やキッチン・浴室などの水回りの改修は、建築確認が不要なリフォームに該当します。また、福祉団体との連携で安定した入居需要が見込める可能性が高く、結果として投資を有利に進められるでしょう。
参考改正住宅セーフティネット法で何が変わる?不動産投資への影響も解説
4号特例縮小の影響がほぼない「中古区分マンション投資」がおすすめ
4号特例の縮小の影響を最小限に抑えたい投資家は「中古区分マンション投資」を選ぶと良いでしょう。中古区分マンションをおすすめする理由は以下のとおりです。
- RC造(鉄筋コンクリート造)の区分マンションは、そもそも4号特例が関係ない
- 内装リフォームのみであれば、ほとんどのケースで建築確認申請が不要
- 構造部分は管理組合の管理下にあるため、基本的にオーナー自身の負担がない
- 都市部の中古区分マンションは売却時の流動性も高い
中古区分マンションでは、一般的なリノベーション(キッチン、バス、トイレの交換、壁のクロス張り替えなど)であれば、建築確認申請は必要ありません。リフォーム費用の増加や工期の延長といった問題の影響をダイレクトに受ける心配はないでしょう。
また、一棟アパートや戸建てと比較して初期投資額が少なく、慣れてくると複数物件に分散投資して収益を伸ばしやすいのも魅力です。また、都心の便利なエリアの中古区分マンションは、メインターゲットとなる「単身者」が増えており、今後も安定した賃貸需要が期待できます。
つまり4号特例の縮小は、木造戸建て投資に大きな影響を与える一方で、中古区分マンション投資魅力を高める結果となる可能性が高いです。当サイトに無料会員登録すれば、厳選された非公開の中古区分マンション情報をご覧いただけます。また、個別のご相談も承っておりますので、疑問や不安がある方はお気軽に無料相談をご利用ください。
建築基準法改正・4号特例の縮小に関するよくある質問
建築基準法改正や4号特例の縮小に関するよくある質問と、その回答をまとめています。
4号特例の廃止はいつからですか?
4号特例の縮小は、2025年4月1日から施行されます。注意点として、新制度の対象となるかを決めるのは「着工日(実際に工事を開始した日)」です。2025年3月31日までに着工した建築物には、4号特例が適用されます。
一方で、これから着工する建築物は、新2号または新3号建築物として分類されます。新2号建築物に該当した場合は、審査の対象です。
4号特例の廃止はハウスメーカーにも影響しますか?
4号特例の縮小は、ハウスメーカーにも以下のような影響を与えます。
- 設計業務の増加:構造計算や省エネ計算を含む詳細な図面作成が必要になる
- コスト増の価格転嫁:設計費用や申請費用の増加分は、最終的な価格に反映せざるを得ない
- 工期の延長:確認申請の審査期間が長くなり、全体の工期が延びる可能性がある
- 標準仕様の見直し:省エネ基準適合義務化に対応するため、断熱材や窓サッシなどの仕様変更が必要になる
価格上昇や工期延長は、最終的に一般の住宅購入者やリフォームを検討する不動産オーナーにも影響します。とくに木造戸建ての購入・リフォームを検討中の方は、影響があるものと思っておいたほうが良いでしょう。
まとめ
2025年4月からの建築基準法改正による4号特例の縮小で、これまでの4号建築物が「新2号建築物」「新3号建築物」に分類されます。多くの木造戸建ては、新たに建築確認時の審査対象となる「新2号建築物」の対象です。
この改正は、建築物の安全性や省エネ性能の向上といったメリットがある一方で、コスト増や工期延長などのデメリットも生じさせます。今回の法改正の影響を受けにくい中古区分マンション投資にご興味の方は、当社の無料相談をお気軽にご利用ください。市場の動向にマッチした、そしてあなたの目指すスタイルに合った投資方針をアドバイスいたします。

この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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