修繕積立金の値上げ上限が「1.8倍」に!規定の背景や不動産投資への影響を解説します
- 更新:
- 2024/05/06
2024年2月27日、国土交通省は修繕積立金の値上げ上限基準を1.8%とする方針を固めたことが各種メディアにて報道されました。方針で定められた上限は、あくまで「基準値」です。しかし、具体的な数値が出たことにより、「修繕積立金は1.8%以上にできないのか」といった憶測も広がっています。
修繕積立金の値上げ上限や値上げ幅については、有識者会合にて審議の上、方針が決定しました。本記事では、2024年4月時点での審議内容や、規定にいたった背景について解説します。さらに、物件購入時に気を付けるべきポイントを、修繕積立金の観点から解説。本記事を読むことで、修繕積立金の値上げ上限に関する理解が深まるでしょう。修繕積立金の値上げ上限規定が不動産投資に与える影響が気になる方は、必見です。
修繕積立金の値上げ上限が1.8倍に
修繕積立金の値上げ上限は、マンションが抱える課題について検討する有識者会合(以下「会合」と記載)にて「基準案」として提示されました。会合では、修繕積立金の初期額と最終額もあわせて規定。修繕積立金の値上げ上限には、今回規定された初期額と最終額が大きく関係しています。
「1.8倍」とは修繕積立基準額の初期額と最終額の差
修繕積立金の値上げ上限は、実際に「1.8倍」と明示されたわけではありません。「1.8倍」とは、修繕積立金基準額の初期額と最終額の差になります。初期額と最終額が出てきた理由は、2種類ある積み立て方法にあります。
修繕積立金の積み立て方法は「均等積立方式」と「段階増額積立方式」の2種類。均等積立方式では、期間内の積立額が均等になります。段階増額積立方式は、新築当初の積立金が低く段階的に増額される方式です。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」によると、均等積立方式を採用するマンションの割合は41.4%、段階増額積立方式は43.4%。完成が新しいマンションほど、段階増額積立方式が多くなっています。
段階増額積立方式は、適切な時期に修繕工事を行うため、積立金の増額が必須です。段階増額積立方式において無理なく積立金を増額するために、適切な引き上げ幅を規定した「基準案」が示されました。
基準案では、段階増額積立方式における月額徴収額の基準を以下のように定めています。ベースとなる基準額は、均等積立方式を採用した場合における修繕積立金の月額です。
| 初期額 | 基準額※の0.6倍以上 |
|---|---|
| 最終額 | 基準額の1.1倍以内 |
※均等積立方式における修繕積立金の月額
基準額が3万円であった場合を例に取り、初期額と最終額を算出してみましょう。初期額と最終額の計算式は、下表の通り。最終額を初期額で割って算出した値上げ幅は、1.83倍です。報道のとおり、初期額から最終額までの値上げ幅は1.8倍となりました。
| 初期額 | 30,000円 ✕ 0.6 = 18,000円 |
|---|---|
| 最終額 | 30,000円 ✕ 1.8 = 33,000円 |
| 値上げ幅 | 33,000円 ÷ 18,000円 ≒ 1.83倍 |
修繕積立金を値上げする理由や必要性については、以下記事で詳しく解説しています。修繕積立金についての理解を深めるために、合わせてお読みください。
修繕積立金は初期額の1.8倍以上にしてはいけない?
今回基準案で定められたのは、あくまで「基準値」です。積み立て額の設定が低過ぎる場合、大幅な引き上げも想定されます。会合の終了後に提出される「とりまとめ案」には、引き上げについて「1.8倍以上にすることを制限するものではない」として留意事項が記載されています。
- 「段階増額積立方式における適切な引上げの考え方」については、実現性をもった引上げにより、修繕積立金の早期の引上げを完了し、均等積立方式へ誘導することを目的とするものであり、例えば、工事費高騰等の状況を踏まえた長期修繕計画の見直しにあたって、管理適正化のために現在の修繕積立金額の額を大幅に引上げる等を制限するものではない。
引用標準管理規約の見直し及び管理計画認定制度のあり方に関するワーキンググループ とりまとめ(案)|国土交通省
つまり、今回の基準案では「適切な引上げの考え方」として「上限1.8倍」という基準が規定。修繕積立金を基準額の1.8倍以内に必ず収める必要はありません。管理組合の総会にて合意が取れた場合は、修繕積立金が規定の1.8倍以上になる可能性もあります。
修繕積立金の早期値上げも検討される
会合では、築年数が古いマンションほど修繕積立金の値上げが難しい傾向にあることが指摘され、修繕積立金の早期値上げについても検討されました。
修繕積立金の早期値上げが必要となるのは、特に段階増額積立方式を採用している場合です。マンションは、築年数を重ねるごとに修繕の必要性が増します。必要な修繕を適切に行えるよう、早いうちに修繕積立金を確保しておかなければなりません。
国土交通省が作成した資料によると、40歳で新築マンションを購入した場合、平均収入と修繕積立金額は以下のように推移します。修繕積立金は、マンションの築年数が増えるとともに上昇。所有者の年齢も上がって収入が減少するため、修繕積立金を値上げした場合に回収が難しくなる可能性が浮上します。
現状では築年数が経過するにつれて修繕積立金の値上げが難しくなることから、築年数が浅い段階で早期に値上げする仕組みが必要ではないかとされました。とりまとめ案においても「段階増額積立方式では、早期に引上げを完了させることが望ましい旨の周知を行う」ことが明記されています。
修繕積立金の値上げ幅が検討された2つの背景
今回、修繕積立金の値上げ幅について検討された背景は、以下2点です。
値上げを検討した背景について詳しく知ることで、修繕積立金にまつわる現状をより深く理解できるでしょう。
背景①:修繕積立金の不足
今回上限が提示された背景として、修繕積立金の不足が挙げられます。
2018(平成30)年に行われた「平成30年度マンション総合調査」では、長期修繕計画を作成している管理組合の割合は9割。2013(平成25)年に実施された前回調査よりも増加しています。
月/戸当たりの修繕積立金の額、駐車場使用料等からの充当額を含む修繕積立金の総額も、前回調査より増加しました。
一方で、修繕積立金が不足していると回答した管理組合は35%近く。20%超不足しているとの回答も15.5%ありました。
上記から、修繕積立金は月額が増えているにもかかわらず総額は不足していることが分かります。
2022(令和4)年4月より、既存マンションの長期修繕計画期間が25年から30年へ変更。5年長くなったことにより、今後はさらに修繕積立金が不足する可能性が出てきました。段階増額積立方式の場合は修繕積立金の値上げが難しいことから、必要な修繕積立金を事前に集めておくために値上げ幅と上限が規定されたのです。
背景②:長期修繕計画による修繕費用の増加
修繕積立金の値上げ上限が規定された理由として、長期修繕計画による修繕費用の増加も忘れてはいけません。
修繕積立金の積み立て方式は、「均等積立方式」と「段階増額積立方式」。国土交通省が定めた「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、毎月均等に積み立てていく均等積立方式が望ましいとされています。
段階増額積立方式を採用しているマンションの一部は、長期修繕計画の始期と比べて終期の修繕積立金が大幅に上昇。特に新築マンションは、上昇傾向が顕著です。計画終期に修繕積立金の引き上げを行うと、所有者の高齢化や収入の低下により滞納の可能性が拡大。予定通りに引き上げられない恐れがあります。段階増額積立方式でも計画初期から修繕積立金を適切にプールしておくため、積立金を回収できそうな値上げ幅について検討されました。
物件購入時に気を付けたい修繕積立金関係のポイント3選
物件の維持費となる修繕積立金を支払うのは、持ち主であるオーナーです。修繕積立金はオーナーにとって必要経費である反面、家賃収入が減少する原因でもあります。物件の維持や価値を高める費用であるため、借主である入居者に負担させられないからです。
では、修繕積立金の観点から、新たに物件を購入する際に気を付けるべき点を見てみましょう。
ポイント①:修繕積立金の積み立て方法
物件を購入する際は、修繕積立金の積み立て方法を確認します。
均等積立方式は、将来必要な修繕積立金総額を修繕計画の年数で割り、毎月均等額を積み立てる方式です。毎月の支払額が均等なので、資金計画が立てやすいことがメリットです。デメリットは、購入直後の負担が多いことが挙げられます。
段階増額積立方式は、築年数が浅いときは修繕積立金が低く、段階的に増額されます。築浅マンションであるほど初期の修繕積立金支払いが少なく済むことがメリット。反面、年数が経つと増額されるため、資金計画が立てづらいデメリットがあります。
現在は段階増額積立方式でも、将来的には国が推奨する均等積立方式に切り替わる可能性があります。どちらの方法でも大切なのは、現在支払う修繕積立金額と、将来的に支払う積立額の見通しです。現在の支払額が低く、将来の積立金負担が予算以上になるようであれば、別の物件を探してもいいでしょう。
ポイント②:重要事項調査報告書の確認
物件購入では、管理会社が毎年発行する重要事項調査報告書を見て、修繕積立金の総額や大規模修繕工事の有無を確認しましょう。記載された積立総額が少ない場合、修繕積立金が値上がりする可能性があります。大規模修繕工事が予定されている場合も、同様です。
修繕積立金は物件の価値を保つために必要な経費となります。従って、値上げが想定される物件をすべて避ける必要はありません。修繕積立金の値上げにより収支計画を超える出費が想定される場合のみ、購入を慎重に検討する必要があります。
ポイント③:修繕積立金の値上げを見越した収支計画の立案
物件を購入する際は、修繕積立金の値上げを見越して収支計画を立てることが大切です。
修繕積立金が値上げされると、修繕が適切に行われ物件の価値が維持できるメリットもあります。物件の価値が維持できると、売却計画である「出口戦略」も立てやすくなることも忘れてはいけません。
修繕積立金の値上げは、物件の価値や売却時の査定にもつながります。修繕積立金の積み立て方法や状況、将来的な修繕計画を見て値上げを見越した収支計画を立てておくことで、実際に値上げがあっても慌てず対応でき、出口戦略も立てやすくなるでしょう。
まとめ
修繕積立金の値上げ上限が均等積立方式の1.8倍になることに関しては、2024年3月で審議が終了。「とりまとめ案」が周知される予定ですが、2024年4月4日現在でまだ周知されていません。「とりまとめ案」が変更される旨の報道もないため、現状のまま周知されることが想定されます。
2023年に「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が改正され、修繕積立金の目安額が上昇。目安額が上昇したことから、今後は修繕積立金の値上げが増えてくる可能性があります。
修繕積立金の値上げ上限が規定されたことは、不動産投資にも少なからず影響を与えます。とりまとめ案が正式に発表された後、修繕積立金の値上げに関して新たな動きが出てくる可能性もあるでしょう。修繕積立金値上げの上限に関して不明点や気になる点が出てきた場合は、当社の無料相談をご活用いただければ幸いです。中立の立場で、最新の情報や豊富な経験に基づいた見解をお伝えします。

この記事の執筆: 堀乃けいか
プロフィール:法律・ビジネスジャンルを得意とする元教員ライター。現役作家noteの構成・原案の担当や、長野県木曽おんたけ観光局認定「#キソリポーター」として現地の魅力を発信するなど、その活躍は多岐に亘る。大学および大学院で法律や経営学を専攻した経験(経済学部経営法学科出身)から、根拠に基づいた正確性の高いライティングと、ユーザーのニーズに的確に応えるきめ細やかさを強みとしている。保有資格は日商簿記検定2級、日商ワープロ検定(日本語文書処理技能検定)1級、FP2級など。
ブログ等:堀乃けいか





































