なんちゃって(住宅ローンで不動産投資をすること)の問題点とは?
- 更新:
- 2023/07/12
ここ最近、「住宅ローンで不動産投資」の問題が大きく取り上げられています。特に新聞やテレビでは「なんちゃって住宅ローン」という名前で詳しく解説がなされるとともに、国の機関が詳しく調査に入ることが報じられました。
ところで、そもそも「なんちゃって住宅ローン」とはどのようなもので、一体それの何が問題なのでしょうか?住宅ローンは多くの人々が利用している一方で、それを投資用として賃貸に出す、という発想にはほとんどの方がならないかと思うので、なかなか詳しい状況が分からない方も多いのではないかと思います。
結論から言うと、住宅ローンを利用しての不動産投資は、多くの場合金融機関への詐欺行為に近く、一括返済などのリスクを大きく含んだ手法である、と言えます。
本記事では、このなんちゃって住宅ローンについて詳しく解説し、「なぜ多くの人がやろうとするのか」「銀行にばれたらどうなってしまうのか」などについてお話をしていきたいと思います。
住宅ローンと不動産投資ローンの違いについて
それでは、まず住宅ローンと不動産投資ローンの違いについて、簡単にまとめて行きたいと思います。大きく、以下のような違いがあると言われています。
- 目的の違い
- 融資条件の違い
- 審査の厳しさの違い
一つ一つ解説をしていきたいと思います。
①目的の違い
住宅ローンと不動産投資ローンの最初にして最大の違いが、その目的です。これは多くの方が既にご存知かと思いますが、基本的に住宅ローンは「自身が住むための不動産」を購入する目的で借り入れをし、不動産投資ローンは「収益を得るための不動産」を購入する目的になります。
当たり前ですが、住宅ローンは自身が住むために借りるものですから、ローンで物件を購入した際にはしっかりとその家に住む必要があります。特に公的機関への証明として、住民票を移すことなどは銀行によっては求められることもあるでしょう。
住むための家は、衣食住の中の一つでもあり、人間にとって必要なものですから、その分融資がつきやすく、条件も良いことが多いです。一方で不動産投資は必ずしも生活に必要なものではなく、あくまで投資ですから、融資の審査が厳しかったり、融資条件が住宅ローンと比較すると劣ってしまうこともあります。
いずれにせよ、以下でお話しする両者の違いは、基本的に目的の違いに起因することが多いです。その点をしっかりと念頭に置いて、読み進めて行ってください。
②融資条件の違い
2つ目の違いとして、融資内容の差が挙げられます。端的にいうと、住宅ローンの方が、不動産投資ローンと比べて融資内容が良いのです。具体的には、以下の点が大きく異なります。
- 金利
- 融資期間
- 自己資金割合
金利について
まず金利についてですが、住宅ローンは投資ローンよりも低金利であることが多いです。概ね0.5%〜2.0%ほどの金利で住宅ローンが借りられる一方、不動産投資ローンは金利が1.7%〜4.5%と比較的高めの金利となっています。
融資期間について
また、融資期間についても両者間で大きな違いがあります。基本的に住宅ローンは、物件の築年数にかかわらず融資期間を最長35年間引くことが出来ると言われています。一方で、投資ローンの場合には築年数によって融資期間の算出方法が大きく変わります。投資の場合には、「法定耐用年数-築年数」の数値を出し、そこから融資期間を割り出すこととなります。
例えば築30年のマンションがあるとします。自分が住むことを目的として住宅ローンを利用する場合には、基本的に35年間の融資を組むことが出来ます。一方、不動産投資ローンの場合には、まず残存耐用年数を算出します。RCマンションの法定耐用年数は47年ですから、残りは47年 - 30年 = 17年となり、この分しか融資を引くことが出来ないという訳です。このように、両者では融資期間が大きく異なるという点をしっかりと覚えておいてください。
自己資金割合について
最後に、自己資金割合についてです。住宅ローンは、商品にもよりますが多くの場合フルローンを組むことが可能と言われています。特に、有名なフラット35などは積極的にフルローン融資を行っておりますし、私がこれまでお会いしたお客様でも自宅をフルローンで購入されている方は多いです。一方、投資用ローンの場合には住宅と異なり、ほとんどのケースで自己資金を入れることが求められます。大体、販売価格の1割〜2割を自己資金として入れることが多いイメージです。
③審査の厳しさの違い
3つ目に、融資審査の厳しさの違いが挙げられます。まず住宅ローンの場合には、ある程度給与が安定をしている方であればほとんどの場合融資の対象になるでしょう。一方、不動産投資ローンの場合には事情が大きく異なります。「年収〇〇円以上で、上場企業勤務など、かなり細かく審査対象となる方の属性が定められているのです。もし一つでもクリアできなければ、ほとんどの場合審査で否決されるでしょう。
特に大きいのは、中小企業の経営者への融資姿勢です。もちろん住宅ローンであれば問題はないのですが、どうしても給料が不安定な分、投資用ローンの審査で厳しく見られることが多いのです。どれだけ会社が成長していたとしても、一律で審査に弾かれてしまうケースもありますから、そういった点も特徴として挙げられます。
以上、住宅ローンと不動産投資ローンの違いについて大まかに説明をしてきました。やはり住宅ローンの方が条件が良いこともあり、銀行に嘘をついてでも住宅ローンで投資用物件に借り入れをしようとする人がいるのです。
そこで、次の章では、住宅ローンで不動産投資をすることのリスクについてお話します。
住宅ローンで不動産投資を行うことの2大リスクとは!?
ここまで、住宅ローンと不動産投資ローンの違いについて解説をしてきました。住宅ローンは、生活必需品である「家」を購入するための資金として、ある程度借りることのできる人の間口を広くするとともに、投資用のローン商品と比較して、金利や自己資金の面で優位であることをお伝えしました。
では、それを逆手にとって住宅ローンで不動産投資を行うことには、どのようなリスクが含まれているのでしょうか?答えとしては、大きく以下の2つになるかと思います。
- 次の借り入れが難しくなる
- 一括返済の危険性がある
リスク①:次の借り入れが難しくなる
まず1つ目のリスクは、次の投資用不動産を購入する際に、融資を借りるのが難しくなる恐れがある、という点です。融資を使って不動産を購入する際には、銀行が既に保有している物件の調査を行います。その時、借入が住宅ローン名義であるにも関わらず実態が投資用である場合、融資を断られるケースが多いです。
というのも、住宅ローンを不正に投資用に流用している場合、銀行との金銭消費貸借契約に違反していることとなり、リスク②でもお話しするように一括返済を求められる恐れがあるためです。そういうリスクのある人に銀行が融資をしたがらない、というのは想像に難くないと思います。
リスク②:一括返済の危険性がある
住宅ローンを投資用として運用することの2つ目のリスクは、銀行から一括返済を求められる恐れがある、ということです。リスク①でもお話しましたが、銀行から融資を受ける際には銀行と「金銭消費貸借契約」を締結する必要があります。その契約の中に、「購入した物件を自己居住目的以外で使用しない」という文言が入っています。そしてこれに違反すると、銀行から借入金額の一括返済を求められることとなるのです。
もし一括返済を求められた場合、運良く他行への借り入れができなかったり、売却しても残債額以下でしか売れなかったりした場合には、最悪自己破産にまで陥ってしまう可能性もあります。そういった意味でも、住宅ローンを不正に投資目的に利用することは非常にリスクの高い行為であると言えるでしょう。
まとめ
ここまで、住宅ローンと投資用ローンの違い、及び住宅ローンの不正利用によるリスクについて解説を行ってきました。ここ最近、巷では住宅ローンの不正な投資利用、いわゆる「なんちゃって住宅ローン」が問題視され始めましたが、未だになんちゃって住宅ローンを使って投資で儲けようとする人が一定数いることも事実です。
一時的な目の前の利益だけでなく、しっかりとそのリスクを認識し、長期的な目線で正々堂々と投資を行うことが、成功への確実な一歩となると思います。