国会の「政倫審」とは?自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題とあわせて解説
- 更新:
- 2024/03/08
自民党派閥の「政治資金パーティー裏金問題」をきっかけに、国会の「政倫審」が行われ話題となっています。しかし「政倫審ってそもそも何?」「どのくらい重要な出来事なの?」と疑問に思っているのではないでしょうか。
そこで今回はこの国会の「政倫審」の詳細について徹底解説します。また2024年に行われた、裏金問題に関連する政倫審の情報や、そもそも政倫審が行われる原因となった「政治資金パーティー裏金問題」についても詳しく見ていきましょう。
国会の「政倫審」とは
さっそく、国会の「政倫審」について順に解説していきます。
政倫審は「政治家の倫理を審査するために置かれる組織」のこと
政倫審は、ざっくりいうと「政治家の倫理を審査するために置かれる組織」のことです。正式名称は「政治倫理審査会」といい、衆議院・参議院にそれぞれ設置されています。各議員が規範や法令に違反し得る行為をはたらいた際に、政治的・道義的に責任があるかを追求するのが「政倫審」の目的です。
ただし、政倫審そのものに法的な拘束力はありません。仮に政倫審で「法的責任がある」と判断された場合も、あくまで下記のような「勧告」を行うのみとなっています。
- 行動規範の遵守
- 国会役職の辞任
- 党員の自粛
仮に政倫審の場で「国会の役職を退くべき」と勧告したとしても、本人にその気がなければ辞任する必要はありません。本当に法的責任への処分を問うなら、政倫審とは違い強制力のある「証人喚問」を行う必要があります。
委員25人のうち9人以上から申し立てがあると審査会が開かれる
政倫審の「審査会」が開かれるのは、委員25人のうち9人以上から「申し立て」があり、委員の過半数がそれに賛成した場合です(※)。2024年現在、委員の構成は「与党17人・野党8人」となっています。つまり現在は野党の全員が申し立てをしても、審査会は開かれません。
※「委員の3分の1の申し立て」と「委員の過半数の賛成」があれば政倫審が開催されます。委員は通常25人ですが、何らかの理由で欠員が出る場合もあります。
しかし今回の裏金問題をめぐっては、当事者である松野前官房長官をはじめ与党の5名が弁明のための申し立てを行いました。そのため野党だけでは人数不足にもかかわらず、政倫審が開かれる格好となっています。
政倫審の審査会は原則非公開
政倫審の審査会は原則非公開であり、通常ならマスコミなども介入できません。ただし申し立てした本人から要望があった場合には、例外的に公開で政倫審が行われる場合もあります。
今回、2月29日・3月1日の政倫審をめぐっては、自民党の多くの党員は直前まで「全面非公開」を主張していました。しかし岸田首相の出席や一部の当事者の「説明責任を果たす」という申し立てのもと、最終的には「全面公開」の形で行われています。
過去には9度の政倫審が開催
これまで、過去には下記のとおり9度の政倫審が開催されています。
年度 | 対象 | 問題 | 公開可否 |
---|---|---|---|
1996年6月 | 自民:加藤紘一 | ヤミ献金問題 | 非公開 |
1998年6月 | 自民:山崎拓 | 資金提供問題 | 議員のみ傍聴 |
2001年2月 | 自民:額賀福志郎 | 資金提供問題 | 議員のみ傍聴 |
2002年7月 | 無所属:田中真紀子 | 秘書給与流用疑惑 | 公開 |
2003年5月 | 保守新党:松浪健四郎 | 秘書給与肩代わり疑惑 | 公開 |
2004年5月 | 自民:原田義昭 | 学歴詐称問題 | 公開 |
2004年11月 | 自民:橋本龍太郎 | ヤミ献金問題 | 議員のみ傍聴 |
2006年2月 | 自民:伊藤公介 | 耐震強度偽装問題 | 公開 |
2009年7月 | 民主:鳩山由紀夫 | 個人献金偽装問題 | 出席拒否 |
過去の政倫審は、すべて「政治とカネ」にまつわる問題をめぐって行われたものです。今回の政倫審は実に15年ぶりの開催となりました。直近では2009年に民主党の元代表であった鳩山由紀夫氏の「個人献金偽装問題」をめぐる政倫審が行われましたが、選挙を控えていたことを理由に本人の出席なく終わっています。
政倫審と「参考人招致」「証人喚問」の違い
政倫審と似たものに「参考人招致」と「証人喚問」があります。それぞれの違いは下記のとおりです。
項目 | 証人喚問 | 参考人招致 | 政倫審 |
---|---|---|---|
出席 |
義務 正当な理由がない場合は罰則 |
任意 | 任意 |
法的拘束力 | あり 虚偽発言は「偽証罪」の対象になる |
||
公開 | 原則公開 | 原則公開 |
原則非公開 本人からの申し出があれば公開 |
唯一、法的拘束力があるのは「証人喚問」です。虚偽の発言があった場合、偽証罪で3ヶ月以上・10年以下の懲役が科せられます。
また参考人招致はあくまで関係者・専門家の意見を聞くためのもので、こちらに法的拘束力はありません。ただし政倫審とは異なり、原則公開の形で行われます。政倫審は法的拘束力がないうえに原則非公開で、3つの中ではもっとも弱い権限しかありません。ニュースでは大きく騒がれていますが、実は「政倫審の開催は大ごとではない」といっても過言ではないでしょう。
2024年に行われた国会の政倫審まとめ
改めて、2024年に行われた裏金問題をめぐる国会の政倫審について見ていきましょう。
「自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題」を理由に開催
今回の政倫審は「自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題」を理由に開催されました。当事者の議員から裏金問題への具体的な説明がほとんどなされていなかったため、政倫審の場で説明責任を果たすのが目的です。そもそも「自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題」がなんなのかは、この後詳しく解説します。
2/29には岸田総理含む2名、3/1には安倍派4名が出席
今回の政倫審では、2月29日には岸田総理含む2名、3月1日には安倍派の議員4名が出席しています。1人あたりの時間を1時間20分とし、議員本人による弁明は15分、各党委員による質疑を1時間5分という形で行われました。
なお今回の政倫審には岸田首相が出席し話題となっていますが、実は審査会に現職総理大臣が出席するのは史上初のこととなっています。過去には橋本龍太郎氏など首相経験者が出席したケースはあるものの、現職総理大臣が出席した事例はありません。
政倫審に法的拘束力がないにもかかわらずこれだけ騒がれているのは、岸田首相が自らの出席を表明したせいもあるでしょう。
今までと異なる情報はなく、説明責任は果たされず
今回の政倫審をみると、結局のところ今までと異なる情報はほとんど出ておらず、説明責任は果たされなかったといえます。出席したほぼすべての議員が「会計には関与していない」「通帳は見たことがない」と発言しており、過少記載・不記載となっていた裏金の使途については一切触れていません。裏金をいつ、誰が始めたのかも謎のままです。
今回の政倫審について、JNNの18歳以上の男女2,581人への世論調査では、86%の人が「説明責任を果たしていない」と回答。「説明責任を果たした」と回答した人はわずか6%で、かえって議員への不信感が募る結果となりました。
そもそも「自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題」とは何?
今回、政倫審が開かれるきっかけとなった「自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題」の詳細をまとめました。「パーティーで集めたお金を裏金として蓄えていたのはなんとなく分かるけど……」という人はぜひチェックしてみてください。
政治資金パーティーとは「政治家がパーティー券を売って政治資金を集める会」のこと
そもそも政治資金パーティーとは「政治家がパーティー券を売って政治資金を集める会」のことです。政治資金パーティーは「安倍派」「岸田派」などの各派閥が定期的に開催し、1枚2万円が相場のパーティー券を企業や団体・個人に販売しています。集めたお金は私設秘書の雇用や選挙などの「政治活動」を目的に使用するのが一応の名目です。
自民党の各派閥の場合は、年1回程度の頻度で政治資金パーティーを開くのが通例となっています。1回で1億円以上を集めていたケースもあり、非常に多くのお金が動く政治資金パーティー。今回の問題は、このパーティー券収入の一部が政治資金以外の目的として使われた「裏金」と化していることが争点となっています。
パーティー券販売ノルマ超過分を帳簿に過少記載し「キックバック」として個人が取得していた
政治資金パーティーでは、各議員にパーティー券販売の「ノルマ」が課せられていたといいます。ノルマに相当する分は派閥の政治資金として扱われていたものの、超過分については帳簿に過少記載または不記載とし、各議員が「キックバック(謝礼金・報奨金)」として受け取っていたようです。
というのも、実は「20万円以下のパーティー券」については政治資金規制法で、購入した企業・団体・個人を収支報告書に記載する必要がないと定められています。5万円から収支報告書への記載義務がある「政治献金」よりも緩く、抜け道的にパーティー券収入が使われていたと考えられるでしょう。
ちなみに「安倍派」で行われた2022年の政治資金パーティーでは、パーティー収入総額9,480万円のうち、購入者の名前が記載されたのは41の企業・団体のみ。金額にして、全体の23%(2,218万円)にとどまりました。
参考東京新聞
なお安倍派・岸田派・二階派の3派閥における2018年 ~ 2022年のキックバックの合計金額は、約10億円にのぼるとされています。
政治資金パーティーで得たお金は政治活動費に使われなければ課税所得になる
先述したように、政治資金パーティーは政治資金を集めるために開催されるものです。集めたお金を「政治活動費」として使う分にはまったく問題ありませんが、使用しなかった分や別の目的で使った分は収入とみなされ、課税所得として扱われます。
つまり今回のような過少記載・不記載による使途不明額については、政治活動以外に使われたものとして扱われるため課税対象となるのが当然です。しかし、先述のとおり20万円以下のパーティー券に収支報告書への記載義務がないことから、「そもそもパーティー券の収入がいくらだったのか」がはっきり分からない事態となっています。
ほとんどのお金が使途も不明で疑惑だらけに
今回疑惑の対象となっている「パーティー券収入の総額」や「議員がキックバックを受けた金額」そして「キックバックの使途」は、結局のところ正確に解明されていません。一部を除き記録も残っていないことから、当事者による言及がない限り正確な金額を調べるのは困難かもしれません。
しかし、いち国民としては少しでも早く、かつ正しく徹底的に調査することを求めたいところです。
2024年の政倫審に対する国民の反応まとめ
2024年の政倫審に対する国民の反応を「X(旧Twitter)」からまとめました。
結局茶番・パフォーマンスでしかない
国民は全員「パフォーマンス」だと知ってます!
また茶番やってるなって感じです。
引用X
今回の政倫審では、結局のところ「新しいことはなにも判明しなかった」といっても過言ではありません。岸田首相が自ら出席を表明したのも、「やってる感」を出すための茶番・パフォーマンスという指摘があります。すべての疑惑が明るみになるまでは、国民から茶番といわれても仕方ないでしょう。
政倫審ではなく早急に証人喚問すべき
ダラダラ言い訳や会計に擦り付けるのを聞くのが政倫審なんだろうか?
だったら全く時間の無駄。
証人喚問にして欲しい。
引用X
政倫審には法的拘束力はなく、もし当事者に法的責任があったとしても「勧告」を行う程度の権限しか発生しません。万が一この裏金問題が「組織的な犯罪行為」だったとほぼ明らかになっても、政倫審だけでは当事者の役職をはく奪したり、刑法上の罰則を科したりすることはできないわけです。
この点を押さえている国民からは、「一刻も早く法的拘束力がある証人喚問をすべき」と声が上がっています。政倫審や参考人招致では当事者の虚偽発言も「お咎めナシ」となってしまうため、本当に責任を追求するなら偽証罪が適用される「証人喚問」を執り行わなければないでしょう。
まとめ
「自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題」をめぐる政倫審が話題となりました。しかし政倫審に法的拘束力はなく、極論「ウソ」をついても咎められることはありません。本当に議員の責任を追求するなら、法的拘束力のある「証人喚問」に切り替える必要があります。
今回の裏金問題でも明らかになってきましたが、残念ながら事実として「議員特権」のようなものが存在しているのかもしれません。われわれ庶民がたった一人で声を上げたところで、納税の義務から逃れることはできず、疑惑の議員たちを追求することも叶わないでしょう。
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この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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