徹底解説!ワクチン普及が不動産投資に与える影響とは?
- 更新:
- 2021/10/10
コロナウイルスの登場によって、日本経済全体が大きな影響を受けてきたことは、改めて言うまでもありません。特に不動産業界に関して言えば、緊急事態宣言の発出によって既存マンションの成約数が大幅に減少したり、不動産投資ローンの審査が厳しくなったことなどが挙げられます。
このような状況の中で、まさに救世主とも言える存在が、ワクチンです。ファイザー社やモデルナ社、アストラゼネカ社のワクチンが特に有名ですが、これらのワクチンは2021年初頭から日本でも接種が開始され、2021年9月現在では、既に国民の半数以上が2度の接種を終えている状況にまで進展しました。
読者の皆さんの中でも、既に2度のワクチン接種を終えられた方もいれば、これから接種をする予定という方もいらっしゃるかも知れません。最近の報道を見ると、3度目のワクチン接種が必要になる可能性についても取り沙汰されていますが、いずれにせよ、今後ワクチンの接種が進むにつれて、少しずつ経済活動が活発化することが予想されます。
その象徴とも言えるのが、2度の接種完了を証明する「ワクチンパスポート」です。今年の7月より、政府と一部の市町村によって交付が開始されたワクチンパスポートは、これまで日本から海外への渡航者に対してのみ、紙ベースでの発行が行われてきました。このワクチンパスポートの提示によって、一部の国においてPCR検査の免除や、自主隔離期間の短縮などのメリットを享受することが出来たのです。
一方で、経団連からはこのワクチンパスポートを、海外渡航者だけでなく国内の経済活動においても普及するよう政府に対して要望の声が上がりました。ワクチンをしっかりと接種したことを証明することにより、日本国内の経済活動の活発化を図ることができるというメリットがあるという訳です。
加えて、9月6日のデジタル社会推進会議において、このワクチンパスポートをオンラインで発行する方針が決定されました。これまでの紙ベースのパスワードに替えて、スマートフォンでQRコードを表示する形式を想定しているようです。
このように、ワクチンの接種状況の進展により、日本経済は大きく変化することが期待されています。この流れは、日本経済全体に対して良い影響を与えるであろうことはもちろんのこと、不動産投資にも影響を与えることが予想されます。
そこで本記事では、ワクチンの普及によって日本経済にどのような影響があるのかをまず説明した後に、不動産投資に対してどのような影響を与えるのかについても見ていきたいと思います。
ワクチン普及に伴う日本経済への影響について
冒頭で述べた通り、ワクチンの接種状況の進展により、経済活動が再び活発化することが期待されています。本章では、ワクチンの普及によって国民の消費活動にどのような影響が出ると予想されているか、また経済の活発化に大きく寄与することが見込まれるワクチンパスポートについて、その詳細を見ていきたいと思います。
国民の消費活動への影響について
それではまず、ワクチンの普及によって、日本国民の消費活動にどのような影響があるのかについて見ていきたいと思います。顧客満足度覆面調査等を行う株式会社MS&Consultingが7月に行った調査によると、まず「複数名での外食(宴会)」を今まで通りに行うことが出来るようになる条件について、52.4%の消費者がワクチン接種によって元通りになると考えていることが明らかとなりました。
また、同調査において、「国内旅行」が今まで通りに行えるようになる条件についても聞いたところ、ワクチン接種によって元通りになると回答した消費者は全体の54.7%にも及ぶことが分かりました。
上記の調査から分かるように、日本経済の中でも特にコロナウイルスの影響を受けてきた飲食業界・観光業界にとって、ワクチンの接種が国民の消費活動を活発化し、状況が好転させる要因となることが見込まれているのです。
参照観光経済新聞「ワクチン接種と経済活動再開意向の関係に関する調査」
また、9月15日に日本商工会議所が取り纏めた「ワクチン接種の進展に伴う社会経済活動の回復に向けた緊急要望」においても、社会経済活動の回復の希望がワクチンであることが強調されているほか、「ウィズ・コロナ」における経済活動の活発化に向けた提言が数多くなされています。
同要望書によると、コロナ禍で困窮する飲食・宿泊事業者を始めとする中小企業への支援を積極的に行っていくことや、感染状況の落ち着いたエリアからGoToイートやGoToトラベル事業の再開・拡充を行っていくことなどが提言されています。
参照ワクチン接種の進展に伴う社会経済活動の回復に向けた緊急要望
これらの調査や提言書から読み取れることは、コロナウイルスの影響で大きく落ち込んだ日本の経済や国民の消費活動が、ワクチンの接種状況の進展によって徐々に回復する見込みが高いと言うことです。そして、その回復を更に後押しする施策として期待されているのが、「ワクチンパスポート」なのです。
ワクチンパスポートの概要と効果
今年7月から交付が開始されたワクチンパスポートは、冒頭で述べたように、当初海外渡航者を対象とした制度であり、ワクチンパスポートの提示によって、ドイツやフランスなどの一部の国において、自主隔離やPCR検査の免除が認められるといったメリットがありました。一方で、このワクチンパスポートは、海外渡航者以外には利用するメリットが全くなく、経済活動の回復に寄与するような期待もあまりされていませんでした。
状況が大きく変わったのは、6月24日に経団連によって取り纏められた提言の中で、ワクチンパスポートを用いた4つの方針が示され、それによって経済の活性化が期待されるようになったためです。
経団連が示した4つの方針について見ると、ワクチンの接種により
- 各種割引
- 国内移動の緩和
- イベント会場等への優先入場
- 介護施設・医療機関の面会といった活動制限の緩和
が挙げられています。仮にこの提言が政策として行われるようになれば、国民の経済活動は大幅に緩和されることとなるでしょう。
また、国民の過半数がこのワクチンパスポートを活用した活動制限の緩和を支持しているという調査結果も出ています。「日本トレンドリサーチ」が全国の男女2,000人に対して行った調査によると、「ワクチンパスポートを行動制限の緩和に活用すること」について、52.9%が賛成と回答し、反対の22.1%を大きく上回ったことが分かりました。
参照ワクチンパス活用、過半数支持 感染ゼロより「ウィズコロナ」―民間調査
これらの調査結果などから、ワクチンパスポートの活用によって、日本経済の活発化がより一層後押しされることがお分かりになるかと思います。
ここまで、ワクチン接種の進展に伴って、日本経済の活性化が期待されていること、ワクチンパスポートの普及によってその活性化がより一層後押しされる可能性があることについて解説をしていきました。
次に、これらの動きが不動産投資にどのような影響を与えるのかについて見ていきたいと思います。
不動産投資への影響について
前章では、ワクチン接種の進展が日本経済の活性化や、国民の消費行動の活発化に繋がることが期待されているという点を解説するとともに、ワクチンパスポートがその動きを後押しするであろうことについても触れていきました。
本章では、ワクチンの普及によって不動産投資にどのような影響があるかについて見ていきたいと思います。まず結論から述べると、ワクチンの普及によって、大きく2つの影響が見込まれます。即ち、
- ①不動産価格のゆるやかな上昇
- ②ローン審査の緩和
の2点です。それぞれ細かく解説をしていきたいと思います。
ワクチンの影響①:不動産価格のゆるやかな上昇
ワクチンの普及が不動産投資に与える影響の一つ目は、不動産価格のゆるやかな上昇です。どのような理由で不動産価格がゆるやかな上昇をしていくのかを解説するに当たって、まず知って頂きたいのは「日経平均株価」と国土交通省が発表する「不動産価格指数」の連動性についてです。まず日経平均株価は皆さんもご存じの通り、東証一部上場の企業の中から選出された225社の平均株価の事を差しています。次に「不動産価格指数」とは、年間約30万件の取引を基に不動産の価格動向を表したもので、国土交通省により作成され、毎月公表されています。
実はこの日経平均株価と不動産価格指数は、ゆるやかに連動することが知られています。例えば、日経平均株価が上昇すると、その3-6か月後に不動産価格指数も上昇する、といった流れです。このような連動性が生じる理由としては、株価が上昇することによって投資家の投資余力が増加し、その増加分が不動産取引に流れることにより不動産価格が上昇するためです。
また、日経平均株価の動きと不動産価格指数の動きに3-6か月ほど差があるのは、既に皆さんもお気づきかと思いますが、不動産の購入には概ね3-6か月の期間を要するためです。
上記のような前提を考慮すれば、ワクチン接種の進展がゆるやかな不動産価格の上昇に繋がるというのも納得いただけるのではないでしょうか。つまり、前章で解説したようにワクチンの普及によって日本経済が活発化するようになれば、企業の経済活動も当然活性化するため株価は上昇し、その結果不動産価格も緩やかに上昇する、という訳です。
ワクチンの影響②:ローン審査の緩和
ワクチンが普及することによる不動産投資への2つ目の影響は、金融機関によるローン審査が緩和されるという点です。
読者の皆さんの中には、コロナの影響によって金融機関の審査が非常に厳しくなったと感じた方もいらっしゃったのではないでしょうか。若しくは、審査が通ったとしても、申し込みから承認までに非常に時間が掛かってしまったという方もいたのではないかと思います。
コロナウイルスの影響によるローン審査の遅延や否決の増加は、「不動産投資ローンはどう変わった?コロナ後の見通しまでを徹底解説!」で詳しく解説をしていますが、簡単に言うと「銀行が他業務に忙殺され、投資用ローンの審査に注力できなくなった」のが最大の問題でした。
しかし、ワクチンの普及によって国民の経済活動が回復傾向になるにつれて、金融機関の目線も、これまでの「困窮した中小企業の救済」から、徐々に投資活動のサポートへと移行していくと考えられます。そうなると、投資用ローンの審査に人員を割けるようになり、以前のように積極的な融資姿勢が取り戻されるのではないかと思われます。これが、ワクチン普及の二つ目の影響でした。
まとめ
本記事では、日本国民のワクチンの接種状況の進展によって、経済や国民の消費行動が活発化すること、また、不動産投資業界においても、不動産価格のゆるやかな上昇や金融機関による審査が軟化する可能性について解説をしていきました。
読者の方々の中には、本記事の不動産投資への影響の解説を見る中で「おっ!」と思われた方もいらっしゃるかも知れません。実は、①不動産価格のゆるやかな上昇と②ローン審査の緩和という組み合わせは、まさに不動産投資のチャンスであると言っても過言ではないのです。
念のために解説をしておくと、不動産価格がゆるやかに上昇するということは、購入する物件の価値も同じく上昇する可能性があるということを意味します。更に、そのような価値のある物件を購入するにあたって、金融機関が融資という形で後押しをしてくれるという事です。これは、まさに不動産投資の絶好の機会であると言えるでしょう。
とはいえ、全ての不動産の価値が等しく上昇するということはあり得ず、良い物件と悪い物件をしっかりと見極めることの重要性は、まずます高まっていくことだろうと思います。また、金融機関においても同様に、不動産投資ローンを積極的に行っていこうと考えている銀行もあれば、逆にまだまだ厳しい金融機関も数多く存在しています。
もし、「どういった物件を選べばよいのか」「どこの金融機関が積極的に融資してくれるのか」などお悩みの方がいらっしゃれば、是非一度弊社までお問い合わせ頂ければと思います。