不動産投資ローンは繰り上げ返済すべきか?メリットとデメリットを検証
- 更新:
- 2025/01/12
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不動産投資を行ううえで、ローンの返済総額はできる限り少なくしたいものです。長期の債務から少しでも早く解放されたいという方や、金利が発生しているので早期に返済することで総返済額を少しでも減らしたい、と考える方もいるでしょう。不動産投資を始めてから手元に余剰金ができた時は、繰り上げ返済すべきか、手元に資金を残しておくべきか、迷う方も多いのではないでしょうか?
しかし、不動産投資は投資額が大きく長期を費やす投資だからこそ「ローンは早く返すべき」と一概には言えません。資産状況や投資の方針によっては繰り上げ返済をしない方がいい場合もあります。それはどういう場合なのか、ご自身の投資の方針に適した返済方法の参考として、ここでは不動産投資におけるローンの繰り上げ返済とは何か、どんなメリットとデメリットがあるのかについてご説明します。
- 目次
- 不動産投資ローンの繰り上げ返済をすべきケースとすべきでないケース
- 不動産投資ローンの繰り上げ返済の2つの方法
- 投資の負担軽減につながる!繰り上げ返済3つのメリット
- 繰り上げ返済をする前に!確認すべき4つのデメリット
- 繰り上げ返済をうまく活用する方法とは
- 不動産投資ローンの繰り上げ返済に関するよくある質問
- まとめ
不動産投資ローンの繰り上げ返済をすべきケースとすべきでないケース
不動産投資ローンを繰り上げ返済すべきかどうかは、現在の状況や目的により変わってきます。繰り上げ返済をすべきケースとすべきでないケースについて、具体的な判断基準を見ていきましょう。
不動産投資ローンを繰り上げ返済すべき(したほうがよい)ケース
不動産投資ローンを繰り上げ返済すべき(したほうがよい)ケースは下記の3つです。
それぞれ、理由を詳しく解説します。
繰り上げ返済すべきケース①ローンの金利が高い
金利が3%以上と比較的高い水準でローンを組んでいる場合、繰り上げ返済によって大きな利息の削減効果が期待できます。この削減効果は、特にローン残高が大きい投資初期において顕著です。
例えば、借入額2,000万円・金利3%・35年返済の場合、繰り上げ返済をしないと支払利息は約1,200万円にもなります。ここで1年目の終わりに200万円の繰り上げ返済をすれば、総支払利息を約200万円削減することが可能です。
このように金利負担が重い場合は、できるだけ早期に繰り上げ返済をすることで、長期的な収支の改善が期待できるでしょう。
繰り上げ返済すべきケース②追加の物件を購入する予定がない
1つの物件のみを運用し、次の物件を購入するつもりがないのであれば、その物件のローン返済を優先することは理にかなっています。新たなローンの審査を考慮する必要がなく、手元の現金を多く持っていなくても影響がないためです。特に、以下の場合がこのケースに該当しやすいでしょう。
- 退職後の収入の足しとして1物件のみ運用している場合
- 相続対策としてマンションを1室のみ購入した場合
手元の現金に余裕があるなら早めに返済し、少しでも利息負担を軽減するのがおすすめです。
繰り上げ返済すべきケース③安定した高利回り物件を保有している
利回りが高く(目安として7%~くらい)、かつ入居が安定している物件を保有している場合も、繰り上げ返済を検討したほうが良い可能性があります。出た利益を繰り上げ返済に回せば、投資の効率をさらに高められるためです。
仮にもとの利回りが7%~程度の場合、繰り上げ返済で10%を超えることもあり得ます。返済期間を徐々に短縮していけば、予定よりも早い段階でローンの返済から解放され、家賃収入の大半を純利益とすることが可能です。
投資物件の収益性が非常に高い場合は、発生した収益を繰り上げ返済に回し、さらに利回りを上げていくことも検討してみると良いでしょう。
不動産投資ローンを繰り上げ返済すべきでないケース
反対に、繰り上げ返済をおすすめしないケースは以下の4つです。
こちらも順に解説していきます。
繰り上げ返済すべきでないケース①余剰資金が少ない
不動産投資では突発的な修繕費用の発生や、空室による家賃収入の減少リスクに備えるため、最低でも下記の余剰資金は確保しておくべきです。
- 6ヶ月分のローン返済資金
- 物件価値の5%程度の予備修繕費
上記を確保できていない状態での繰り上げ返済は、運転資金不足のリスクを大きく高めてしまいます。仮に1ヶ月分のローン返済資金しか余裕がないのに、空室が3ヶ月にのぼれば、差分の2ヶ月分は個人の貯蓄や生活費から捻出しなければいけません。まずは最低限の余剰資金を確保し、余裕を作ることを優先しましょう。
繰り上げ返済すべきでないケース②余剰資金で追加の物件を購入したい
投資の規模を拡大していきたいなら、手元の余剰資金は次の物件購入に活用すべきです。現金に余裕があると、ローンにおける審査の通りやすさや金利の優遇度が変わってきます。また、年齢が若い時期にローンを組んでおいたほうが、低い金利で契約できる可能性が高いのもポイントです。
追加の物件を購入して安定的に収益を上げられれば、さらに新たな物件を購入し収益性を高めていく好循環が生まれます。特に年齢が若い20代~30代の方は、繰り上げ返済はせず規模を拡大して、本業を超える利益を狙ってみるのも一考でしょう。
繰り上げ返済すべきでないケース③低金利でローンを組めている
目安として2%未満の低金利でローンを組めている場合は、繰り上げ返済をあまりおすすめしません。利息の削減効果が小さいため、現金を手元に残しておくメリットのほうが大きくなりやすいためです。
手元の現金を使って新たな物件を購入し、不動産投資の規模を拡大するのも良し。新たに高額なローンを追加することに抵抗があるなら、投資信託のような別の投資商品に回すのも良いでしょう。この手元の現金運用で、単純計算で2%以上の利回りを確保できれば、繰り上げ返済するよりも経済的なメリットが大きくなります。
繰り上げ返済すべきでないケース④物件の利回りが低い
目安として3%未満の低利回り物件の場合は、繰り上げ返済よりも収益性の改善や売却を考えましょう。仮に繰り上げ返済をしても、使った金額を回収するまでに何年かかるかわからないため、投資としては非効率といえます。具体的には以下のことを検討すべきです。
- 家賃の見直しによる利回り改善
- リノベーションによる物件価値の向上
- 売却による投資資金の回収
たとえば空室が発生したタイミングで家賃を上げれば、以降の利回りを改善できるかもしれません。ただし競合性が高く、単純に家賃を上げた場合に入居者が見つからないなら、リノベーションによる差別化や売却も選択肢に入ってきます。
とはいえリノベーションは費用がかかるため、ハッキリ言えばリスキーな対策です。未練がなければ売却し、新たな物件を購入するのが成功の近道かもしれないでしょう。
不動産投資ローンの繰り上げ返済の2つの方法
繰り上げ返済には、期間短縮型と返済額軽減型の2つの方法があります。それぞれ説明していきます。
(1)期間短縮型
期間短縮型とは、毎回の返済額を変えずに返済期間を短くすることです。毎月の返済額は変わりませんが、返済期間が短くなるので、短縮された期間に支払う予定だった利息が軽減されます。 期間短縮型ではこの利息の軽減効果が大きいために、繰り上げ返済においては次に説明する返済額軽減型よりも期間短縮型のほうが選ばれています。
(2)返済額軽減型
返済額軽減型とは、返済期間はそのままで毎月の返済額を減らすことです。返済期間は変化しませんので、利息の軽減効果は期間短縮型よりも小さいですが、元本が手元に残るので、金利上昇によるローン返済額の増大や、急な修繕費といった将来のリスクに強いといえます。
繰上返済早見表
返済期間 | 返済金額(毎月) | 利息軽減効果 | 特徴 | |
---|---|---|---|---|
期間短縮型 | 短縮 | そのまま | 大 | 返済総額を大きく減らせる |
返済額軽減型 | そのまま | 減少 | 少ない | 急な出費に対応できる |
繰上なし・2種類の繰り上げ返済をシミュレーションで比較
それでは、投資用物件として区分マンションを購入した場合、①繰り上げ返済なし ②期間短縮型 ③返済額軽減型 それぞれの返済をいくつかのケースでシミュレーションしてみましょう。
前提条件
借入金額:2,000万円、元利均等返済
返済期間:35年、支払回数:毎月(420回)、年金利:2.5%
H4ケース① 借入から一年後、100万円を繰り上げ返済
返済型 | 支払回数 | 返済総額 | 元金分 | 利息分 | ①との差額 |
---|---|---|---|---|---|
①繰り上げなし | 420 | 30,029,274円 | 20,000,000円 | 10,029,274円 | - |
②期間短縮型 | 389 | 28,765,548円 | 20,000,000円 | 8,765,548円 | 1,263,726円 |
③返済額軽減型 | 420 | 29,543,817円 | 20,000,000円 | 9,543,817円 | 485,457円 |
ケース② 借入から5年後、100万円を繰り上げ返済
返済型 | 支払回数 | 返済総額 | 元金分 | 利息分 | ①との差額 |
---|---|---|---|---|---|
①繰り上げなし | 420 | 30,029,274円 | 20,000,000円 | 10,029,274円 | - |
②期間短縮型 | 392 | 28,974,454円 | 20,000,000円 | 8,974,454円 | 1,054,820円 |
③返済額軽減型 | 420 | 29,606,959円 | 20,000,000円 | 9,606,959円 | 422,315円 |
ケース③ 借入から1年後、200万円を繰り上げ返済
返済型 | 支払回数 | 返済総額 | 元金分 | 利息分 | ①との差額 |
---|---|---|---|---|---|
①繰り上げなし | 420 | 30,029,274円 | 20,000,000円 | 10,029,274円 | - |
②期間短縮型 | 359 | 27,641,825円 | 20,000,000円 | 7,641,825円 | 2,387,449円 |
③返済額軽減型 | 420 | 29,058,368円 | 20,000,000円 | 9,058,368円 | 970,906円 |
いずれのケースでも繰り上げ返済は総返済額を減らす効果があります。3ケースを比較して分かるように、期間を短縮し、金額を多く繰り上げると総返済額減少にさらに効果があります。
2種類の繰り上げ返済を比較した場合、金額だけを見ると②期間短縮型の繰り上げを選んだ方が得ですが、不動産投資において注意したいのは長期にわたる物件管理でのリスク対策です。③返済額減額型の場合は、月の返済金額が減少する分、予期せぬ修繕費用に対応できる資金を確保できるので②に比べリスクに高いことがわかります。
このように繰り上げ返済の方法一つとっても良さや強味が異なるので、それぞれの特徴を把握して何が自分の投資に合っているのかを判断していく必要があります。
投資の負担軽減につながる!繰り上げ返済3つのメリット
繰り上げ返済のメリットは「返済負担が軽減される」ことです。より詳しく、3つのメリットを見ていきましょう。
(1)返済総額を少なくすることができる
1つめのメリットは、先のシミュレーションでも見られたように、繰り上げ返済をすることで支払利息を軽減でき、それによって返済総額を少なくできることです。
ローンを借りるときに、借入金と借入期間、そして支払う利息の3つが決まります。通常の返済の場合、月々の返済は元本の返済とその利息の返済2つに割り当てられます。このうち元本の返済によって、ローン残高は減っていく仕組みです。
繰り上げ返済の場合、通常の返済分とは別に返済が行われます。この返済分は、利息分ではなく、すべて元本の返済に割り当てられます。そのため、利息分の返済額が軽減されるのです。
(2)精神的な負担を軽減できる
2つめのメリットは、繰り上げ返済によって返済期間が短縮するので、精神的な負担を軽減できることです。
繰り上げ返済によって、ローン残高が減少し、完済するまでの期間が短くなったり、月々の返済額が少なくなったりします。今後の返済負担が減ることによって得られる心理的負担の軽減は、無視できないメリットといえるでしょう。
(3)頭金よりも自己資金の調整ができる
金利を含めた総返済額を減らす手段として、購入時に頭金を多く支払いローンの借入額を減らすという手段があります。
確かに借入額が減ると返済すべき総額も減らせますが、問題なのはその後手元に残る自己資金が減ってしまうという点です。物件管理には予期せぬ修繕費をはじめとする出費のリスクがあります。頭金に多額の資金を投入してしまうと、これらのリスクに対応できなくなる可能性も生じます。
そこでまとまった自己資金を頭金ではなく繰り上げ返済に回すことで、これらのリスクを回避できます。頭金は購入時必要なので支払のタイミングが決まっていますが、繰り上げ返済なら自分の資金に余裕のあるタイミングで支払を調整できるので、リスクマネジメントをしつつ返済を進めることが可能です。
繰り上げ返済をする前に!確認すべき4つのデメリット
繰り上げ返済はいいことばかりとはいえません。手元に資金があるのでさっそく繰り上げ返済を、となる前に不動産投資するうえでは注意すべきポイントが4つあります。
(1)手元資金が減少する
1つめは、繰り上げ返済すると手元資金が減少することで、突発的な問題に対応できなくなる恐れがあります。 大家業は常に順調に進むわけではありません。急な空室で家賃収入が減少するリスクもありますし、購入時にはきれいだった建物も、経年劣化によりあちこちに不具合が出ます。エレベーターの点検や屋上防水、さらには前のオーナーがメンテナンスをしなかったために、数百万単位で修繕費が発生することもありえます。
繰り上げ返済する場合、このようなリスクに対応できるだけの資金は残しておく必要があります。
(2)金融機関の評価は、現金を持っているほうが高い
2つめは、金融機関からの評価への影響です。次の投資のために新しい融資を受ける場合、手元に現金を持っているほうが金融機関の評価が高くなります。このタイミングで繰り上げ返済をして現金が減ると、審査上では不利になります。
大家業が順調であれば、次の不動産の購入も検討することでしょう。新しい不動産を購入するための融資審査のときに手元に現金が多ければ、金融機関から有利な条件で融資を受けることもできますが、反対に現金が少なければ金融機関からの評価も低くなるでしょう。投資活動によっては自己資金を繰り上げ返済に回さず、次の投資に備えて保有しておいた方がいい場合もあります。
(3)低金利だと繰り上げ返済の効果が少ない
3つめは、低金利の場合には繰り上げ返済の効果が少ないことが挙げられます。住宅ローン同様に、不動産投資ローンも依然として低金利を推移しています。利息額の負担自体が小さいと、繰り上げ返済の効果も小さくなります。つまり繰り上げ返済のメリットである、利息負担を軽くする効果そのものが発揮されません。
そのため、繰り上げ返済するよりも、手元に現金を残しておいたり、新しい不動産の購入資金にあてたりする方がよいでしょう。
(4)繰り上げ返済に手数料が発生する場合がある
融資期間によっては、繰り上げ返済する時に手数料が発生するローンプランがあります。返済都度数千円、返済金額の数%など、料金は金融機関によって異なりますが、少しでも負債を減らそうと繰り上げ返済を重ねていると余計な費用が発生してしまいます。コストパフォーマンスを考えると「このタイミング、この金額では繰り上げ返済をしない方がいい」という場合もあります。
金融機関のローンプランによっては手数料が発生しないものもありますので、ご自身が組んでいるローンは手数料が発生するかどうか、繰り上げ返済前に確認してみましょう。
繰り上げ返済をうまく活用する方法とは
ここまで、繰り上げ返済についてのメリットとデメリットをご紹介してきました。それらを理解した上で、どうすれば繰り上げ返済を活用できるのかという点について掘り下げ、その方法について解説していきます。
少額からの返済を活用しつつ、高金利の物件から返済する
多くの不動産投資物件を購入した場合、金利はどんどん高額になっていきます。つまり、必然的に一番最後に購入した物件の金利が高くなってしまうという結果となります。そのため、まずは高い金利の物件から返済していくことを心掛けましょう。
そもそも投資物件にはボーナス併用が使用できません。そのため、自分の経済状況やお財布事情をしっかりと確認し、計画を立てながら無理のない範囲で順次返済をしていく必要があります。
そこで、少額からでも返済可能な場合があるという、繰り上げ返済の特徴を利用することがオススメです。
まずは高金利の物件を少額からでも良いので繰り上げ返済していき、金利が低くて最も効率が良い物件の返済を後回しにします。もしたくさんの投資物件を購入したいとお考えの場合は、この方法を使いながら手持ちのお金と相談して計画を立てていきましょう。少しずつ返済することで無駄な金利の支払いを抑えて効率的な返済が可能になるため、タイミングを図ってしっかりと計画を立てながら、繰上げ返済をしていくことをオススメします。
手持ちのキャッシュフローとバランスを見よう
では実際に返済する場合に返済額がどのようになっていくのか、キャッシュフローをシミュレーションして確認してみましょう。
例えば、
金利2%(変動なし)で5,000万円を35年返済で借り入れた場合を例にご説明します。
この例で計算すると返済総額は6,956万4,969円となり、毎月の返済額は16万5,631円です。返済総額のうち支払う利息は、利息だけでなんと1,956万4,969円にものぼります。
こうした利息を少しでも減らすべく、この条件で繰り上げ返済をしていった場合、どのようになるのかをシミュレーションしてみましょう。
返済を始めてから3年経ったときに250万円の繰り上げ返済をした場合を仮定して、計算してみます。
この場合、返済総額は6,867万8,230円となり、そのうち支払う利息は1,867万8,230円となりました。
では毎月の返済額がどうなったかというと、繰り上げ返済する前が16万5,631円。
繰り上げ返済した後が15万6,811円となり、繰り上げ返済をするかしないかだけで、返済総額に88万6,739円もの差額が生まれていることがおわかりいただけると思います。 これは、繰り上げ返済の前後で利息が変わったことによって返済額が減少したというカラクリです。利息が変わることによる返済額の減額は、金利変動などのタイミングによって効果が変わってくるため、情報を集めてもっとも効果的に減額できるタイミングを見極めるようにしましょう。
真面目にコツコツ返済することが必ず正しいわけではなく、少しでも金利を抑えながら賢く返済して節約することで新たな投資物件を購入する資金を捻出していくことが可能になります。
参考不動産投資でのキャッシュフローとは?成功のカギとなる計算方法や必要性を完全網羅!
確定申告に注意する
給与は会社から支払われるものであるため、源泉徴収で処理されてしまう関係で自分で手続きする必要はありませんが、不動産所得の場合は違います。自分自身で税額を計算し、支払う必要があるのです。
そのため、不動産投資の繰り上げ返済を検討する際は、確定申告における税務上の影響を理解しておきましょう。特に重要なのは、利息の経費計上額の減少による課税所得への影響です。確定申告において注意すべき主なポイントは以下のとおり。
- 確定申告は自身で計算・申告が必要
- 利息支払額は経費として全額計上が可能
- 繰り上げ返済により利息支払額が減少
- 経費計上額の減少により課税所得が増加
- 所得税・住民税の負担増加の可能性
繰り上げ返済による総支払額の削減は大きなメリットですが、その一方で税負担の増加も考慮する必要があります。メリットだけに目を向けず、デメリットもしっかり理解した上で賢く返済し、無駄なく効率的な資金計画を立てながら投資していくことが重要です。
不動産投資ローンの繰り上げ返済に関するよくある質問
不動産投資ローンの繰り上げ返済に関する、下記のよくある質問と回答をまとめました。
- 不動産投資ローンの繰り上げ返済は節税になりますか?
- サラリーマン大家は繰り上げ返済すべきですか?
- ワンルームマンション投資で繰り上げ返済すべきなのはどんなケースですか?
- 不動産投資ローンの繰り上げ返済に適したタイミングはいつですか?
同じ疑問をお持ちの方は、ここで解消しておきましょう。
不動産投資ローンの繰り上げ返済は節税になりますか?
不動産投資ローンの繰り上げ返済は、一般的に考えられているような節税効果は期待できません。むしろ、税負担が増加する可能性があることを理解しておく必要があります。
これは、不動産所得における経費計上の仕組みが原因です。ローン返済額のうち利息分は経費として計上できます。しかし、繰り上げ返済によって利息支払額が減少すると、その分だけ経費として計上できる金額も減少するためです。
例えば、月々のローン返済額が20万円で、そのうち8万円が利息分である場合、年間96万円を経費として計上できます。しかし、繰り上げ返済によって利息分が5万円に減少すると、年間の経費計上額は60万円。差額の36万円分が新たに課税対象となってしまいます。
ただし長期的な視点で見れば、支払利息の総額を抑えることで、トータルの支出は確実に減少します。税負担の増加を考慮しても資金計画に余裕があるなら、繰り上げ返済を検討する価値はあるでしょう。
サラリーマン大家は繰り上げ返済すべきですか?
サラリーマン大家の場合、安定した給与収入があるからこそ、慎重に繰り上げ返済を検討する必要があります。特に重要なのは、給与収入という安定した収入源があることを活かしつつ、不動産投資特有のリスクに備えることです。
例えば、築古物件の場合は修繕費用の発生に備えて手元資金を確保しておかなければいけないため、繰り上げ返済により現金を減らすのはおすすめしません。
一方で退職後の収入源として不動産投資に取り組んでいるなら、早めに繰り上げ返済するのも検討の価値あり。返済期間を短縮でき、退職後に得る家賃収入の大半を純利益とできる可能性があるためです。
ケースバイケースですので、判断に迷ったら当社コンサルタントへの無料相談もご活用ください。あなたの状況に応じた適切なアドバイスをいたします。
ワンルームマンション投資で繰り上げ返済すべきなのはどんなケースですか?
具体的な判断は物件の状況によるものの、ワンルームマンション投資において繰り上げ返済したほうが良いのは下記のようなケースです。
- 築年数が古い物件で、今後の修繕費用増加が予想されるケース
- 立地や需要が安定しており、確実な家賃収入が見込める場合
- 現状は高利回りだが、周辺の開発状況から将来的な競合物件の増加が予想される場合
ポイントは「余裕のある時期に繰り上げ返済して利回りを高める」こと。ただし投資の規模拡大を狙っている場合はこの限りではありません。2件目以降の購入も視野に入れているなら、繰り上げ返済よりも余剰資金の確保を優先すると良いでしょう。
不動産投資ローンの繰り上げ返済に適したタイミングはいつですか?
以下のような状況は、繰り上げ返済を検討する良いタイミングとなる可能性が高いです。
- 安定した不動産収入が確保できている時期
- 大規模修繕や設備更新の予定がない時期
- 金利が上昇傾向にある時期
- 税金や保険料などの大きな支出がない時期
- 物件の入居が安定している時期
不動産向けのローン金利は2024年現在、歴史的な低金利期から上昇傾向に転じています。現状、不動産投資ローンへの影響はほとんどありませんが、今後金利が上昇する可能性が高いです。そうなれば、変動金利を利用している場合に繰り上げ返済のメリットが大きくなるでしょう。
ただし、繰り上げ返済は利息額を削減できるメリットがある一方で、手元のキャッシュを失うリスクの高い行為でもあります。タイミングにお悩みなら、当社の不動産投資コンサルタントへの無料相談をお気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしょうか。不動産投資における繰り上げ返済のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
・返済総額の減額 ・精神的な負担の軽減 ・頭金より自己資金を調整できる |
・手元の資金が減少 ・次の投資での融資審査が厳しくなる ・低金利では効果が少ない ・繰り上げ返済時に手数料が発生 (ローンプランによる) |
最初に述べた通り、不動産投資をしている方全てが繰り上げ返済をするべきか、一概には言えません。なぜなら投資家それぞれの資金状況や方針により、メリット・デメリットどちらを重視すべきかが変わってくるからです。少しでも早くローンを返済したい方もいれば、次の投資物件を検討している方もいます。また、投資以外にも自宅や車をローン購入したり、子供の学費でまとまった資金が必要になる場合もあります。
また、繰り上げ返済2種類の方法のうち、自分の資産状況ではどちらがいいのか迷われている方もいるでしょう。 保有している自己資金をはじめ、投資の方針や人生設計によって最適な返済方法も十人十色と言えます。繰り上げ返済の検討を機に、自分がどのような投資をしていきたいのか、この先の方針を確認してみましょう。
当社では不動産投資に係るさまざまなご相談にも対応しております。ローン返済の最適な方法はもちろん、現状で判断が難しい不動産投資案件や、これからの投資の方針についてなど、多様なお悩みに不動産投資のエキスパートがお応えいたします。お気軽にご相談ください。

この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
ブログ等:はやてのブログ