不動産投資で節税できる?節税の仕組みや節税にならないケースをわかりやすく解説!
- 更新:
- 2024/10/31
「不動産投資は節税になる」という話をよく耳にする一方、「不動産投資は節税にならない」という声も少なからず存在します。肯定と否定の話が両方出ていることから、どちらが正しいのかわからず、不動産投資を始められない方もいらっしゃるでしょう。
不動産投資は節税になる側面とならない側面があり、どちらも正解です。本記事では、不動産投資が節税となる仕組みをわかりやすく解説。さらに、不動産投資で節税できる税金や、節税効果がある場合とない場合をそれぞれ解説します。
本記事を読むことで、不動産投資における節税の仕組みや節税効果が理解できるでしょう。不動産投資で節税できる仕組みが気になる方は、最後までご一読ください。
不動産投資が節税になる3つの仕組み
不動産投資には、たしかに節税効果があります。不動産投資が節税になる仕組みは、主に以下の3つ。
- 不動産投資の収入から費用を引くことで税金が減る
- 確定申告による「損益通算」により全体の所得を減少させる
- 法人化により経費計上できる項目を増やす
なぜ節税になるのか、1つずつ解説します。
仕組み①:不動産投資の収入から費用を引くことで税金が減る
不動産投資が節税になる最初の仕組みは、「不動産投資の収入から費用を引くことで税金が減る」点です。
不動産投資においては、収入から経費を差し引くことが可能。収入から経費を差し引いた金額を「不動産所得」と呼びます。不動産所得が少なくなる、あるいは赤字になると各種税金が減る、もしくはゼロになる仕組みです。
不動産投資では、以下の出費を「必要経費」として計上できます。
- 管理費
- 修繕費
- 租税公課(固定資産税、登録免許税、不動産取得税など)
- 減価償却費
- 損害保険
- ローンの金利
- 保険料
- 税金
- 自動車関連の費用(車両購入費、自動車税、保険料、メンテナンス費用など)
- 旅費や交通費
経費計上できる費用については「ローンの利息分だけが経費?不動産投資の必要経費を正しく理解して賢く節税しよう」記事も合わせてお読みいただくと、より理解が深まります。
不動産投資が節税になる条件として「経費を引いた結果、不動産所得が帳簿上赤字になること」も挙げられます。手元にある現金が黒字だとしても、帳簿の上で赤字であれば節税効果が出るからです。
不動産投資においては良い赤字と悪い赤字があり、必ずしも赤字が悪とは言い切れません。では、良い赤字と悪い赤字について、それぞれ例を見ていきましょう。
「良い赤字」の例
「良い赤字」として、以下の例が挙げられます。
- 将来のために計上している費用を含めて記帳する
- ローンの返済分として、少額を自己負担する
不動産投資では、物件の修繕が必要となったときに備える「修繕費」や、経年劣化による不動産の価値を正しく算出するために「減価償却費」を計上します。減価償却費は実際に支払うわけではなく、帳簿上で発生する費用です。修繕費や減価償却費を経費として不動産収入から差し引くことで、不動産所得が減少。不動産所得が帳簿上で赤字となった場合は、税金はゼロになります。帳簿上で赤字になると本来税金として納める分が手元に残り、キャッシュフローとしては黒字が増加。これが不動産投資における「良い赤字」です。
また、ローン返済の持ち出しが少額である場合は、資産を得るために必要な赤字=「良い赤字」と考えます。「持ち出し」とは、費用が収入を越えた場合に、超えた費用を自己負担することです。
例えば、2,500万円の物件をローンで購入、返済するために毎月1万円の持ち出しがあるとしましょう。ローン期間が20年であった場合、累計の持ち出しは1万円 × 12ヶ月 × 20年=240万円です。つまり、毎月1万円=総額240万円の投資で2,500万円の物件を入手できる持ち出しは「良い赤字」となります。ちなみに、20年で2,500万円を貯蓄しようと思うと、毎月10万円以上の出費が必要です。
不動産投資は、不動産が月々の収入を生み出すだけでなく、「不動産」という大きな資産を得られます。収入や資産を得るための赤字は、価値のある「良い赤字」となるのです。
「悪い赤字」の例
反対に、不動産所得における「悪い赤字」とは、次のような例を指します。
- 費用負担だけが大きくなりキャッシュフローを圧迫しているケース
- 多額の持ち出しとなるケース
- ローン返済額が家賃収入による利益を上回ったケース
不動産購入に伴いローンを組んだ場合、不動産投資の経費として計上できるのは「ローンの金利」のみ。利息が高いローンを組んでしまった、思ったよりも家賃収入が少なかった、などの理由からローン返済額が増えると、節税どころか現金が減ってしまう点を忘れてはいけません。
仕組み②:確定申告による「損益通算」により全体の所得を減少させる
確定申告による「損益通算」も、不動産投資で節税になる仕組みです。「損益通算」とは、不動産所得の赤字分を給与所得などの所得から差し引くこと。損益通算により課税所得が減るため、所得税や住民税額を減らせます。これが、不動産投資が節税になる仕組みです。特に不動産を購入した初年度は、登録免許税や不動産取得税、印紙税など初年度のみ計上される経費があるため、確定申告による節税効果がより多く見込めます。
損益通算は自動的に行われず、確定申告が必須です。給与所得の確定申告は、会社が実施しますが、不動産投資の確定申告は、自分でしなければなりません。帳簿を作成し確定申告をすることで、他の所得との「損益通算」が行われます。損益通算により全体の所得が減ると、納税額も減少。「損益通算」により全体の所得を減少させ納税額を減らすことが、不動産投資で節税できる仕組みです。
なお、会社で申告した給与所得を基準に計算した所得税より損益通算後の所得税が少ない場合、納め過ぎた税金は「還付金」として戻ってきます。
参考【完全版】不動産投資で節税!不動産所得の赤字で損益通算できる仕組みを徹底解説!
仕組み③:法人化により経費計上できる項目を増やす
不動産投資が軌道に乗ってきた際は、法人化により節税ができる場合もあります。
法人化すると、経費計上できる項目が増えます。生命保険料控除を例にすると、個人の場合は上限4万円ですが、法人は上限額がありません。法人であれば、退職金の積立や修繕積立金に充当できる「共済掛金」も経費として計上可能です。また、法人化すると、個人では3年間である損失の繰越期間が10年に。会社名義や役員名義で保有した資産を家族に「報酬」として支払い可能など、さまざまな方法で経費計上が可能です。
法人化すると、経費計上できる項目が増え不動産所得を減らしやすくなるメリットがあります。結果、法人化した方が個人よりも節税しやすくなるのです。
参考不動産投資の法人化とは?法人化するタイミングやメリット・デメリットを徹底解説!
節税のポイントは「減価償却費」
不動産投資で節税する際のポイントは、減価償却費です。
「減価償却」とは、高額かつ長期にわたって利用できる資産の価値を、数年から数十年かけて経費計上して少しずつ減少させる仕組みのこと。減価償却により毎年計上される費用を「減価償却費」と呼びます。不動産投資で減価償却できるのは、物件の価格です。例えば、1,200万円の物件を20年かけて減価償却する場合、1,200万円 ÷ 20年 = 毎年60万円を減価償却費として計上できます。
減価償却は「実際の支出がない、帳簿上の費用」であることが、最大の特徴です。
例えば、1,200万円の物件を現金一括払いで購入したとします。減価償却をしない場合、初年度のみ1,200万円を経費(建物購入費用)として計上可能。減価償却をすると、初年度に1,200万円を計上せず、毎年60万円ずつ減価償却費として計上できます。減価償却費により毎年帳簿上の不動産収入を減らせるため、節税が可能となるのです。
不動産投資で節税できるのは所得税・住民税・相続税
不動産投資で節税できるのは、以下3種の税金です。
- 所得税
- 住民税
- 相続税
所得税と住民税、相続税では計算方法が異なります。ここからは、不動産投資での節税方法を「所得税と住民税」「相続税」に分けて見ていきましょう。
所得税・住民税
不動産投資では、かかった費用を計上することで不動産所得が減少し、所得税・住民税を減らせます。不動産投資が赤字の場合は確定申告で損益通算ができるので、不動産所得以外の所得も減少。結果、課税所得が減少し、所得税や住民税が節税できるのです。
不動産投資で節税できるとはいえ、節税目的の不動産投資は、あるべき姿ではありません。不動産投資を行う本来の目的は、「家賃収入や売却益によって利益を出し、豊かな生活を送ること」。不動産投資で家賃収入が多くなると課税所得が増えて、当然多くの税金を支払うことになります。しかし、それが不動産投資の本来あるべき姿なのです。
節税対策のためだけに不動産投資をはじめたとしても、思うような節税効果を得られない場合も多々あります。不動産投資は、利益を出すために行うもの。所得税や住民税に関しては「税金対策の投資」ではなく「計上できる経費が多く、比較的節税しやすい投資」であることを覚えておきましょう。
相続税
所得税と住民税は「税金対策ではなく、比較的節税しやすい投資」と述べましたが、相続税は、明確に「税金対策の投資」となり得ます。当社のお客様でも、相続税対策として物件を購入した方がいらっしゃいました。
不動産投資が相続税対策になる理由は、不動産の相続税評価額が現金よりも低くなるためです。相続を行う際、現金資産や有価証券は時価で評価されます。一方で、不動産の評価額は約70%。賃貸用のワンルームマンション1室であればさらに低くなるので、大きな節税効果を生むのです。
実は相続税は基礎控除が大きいため、納税対象者はそれほど多くありません。相続税の基礎控除額は、以下の式で計算されます。
- 基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 ✕ 法定相続人の数)
つまり、不動産投資で相続税対策が必要なのは、相続税の評価額が3,600万円以上になりそうな場合です。とはいえ、対策をしておくに越したことはありません。コンスタントに家賃収入がある場合、相続した相手の生活が楽になることが考えられます。相続税対策だけでなく家族の生活が将来楽になることを考えたうえで、相続を視野に入れて投資用不動産を購入してもいいでしょう。
参考不動産投資物件の生前贈与とは?相続税対策になるメリットと注意点を解説!
サラリーマンが不動産投資をする際の節税効果
不動産投資に取り組む多くの方は、サラリーマンとの兼業です。サラリーマンにとって、不動産投資は節税対策となり得るのかは、とても気になるところでしょう。ここからは、サラリーマンが不動産投資をする際の節税効果を見ていきましょう。
不動産投資は、収入からかかった経費を差し引くことで所得が減り、税金も減少します。サラリーマンであっても変わりません。経費計上により所得を減らせることは、サラリーマンの給与収入との大きな違いです。
不動産投資では、以下のような経費を費用として計上可能。
- 物件を購入した費用
- 購入後のランニングコスト
- 不動産投資ローンの金利
- 管理委託手数料や管理費
- リフォーム費や修繕積立金
これらの経費を不動産投資の収入から差し引くことで、本来納税すべき金額から税額を減少させられます。
また不動産所得が赤字の場合は、不動産投資の赤字分を給与所得から差し引くことが可能。結果、所得税や住民税が下がります。以上の点から、サラリーマンであっても、不動産投資で節税効果を生み出せるのです。
不動産投資で100%節税できるわけではない
不動産投資で節税効果は生まれますが、100%節税できるわけではありません。
不動産投資では、所得税や住民税を減らせます。所得税や住民税がなくなったとしても、固定資産税の支払いは必須です。所有する不動産が「市街化区域」に建てられている場合は、都市計画税がかかります。初年度に支払う不動産取得税も、減らせません。
高額なお金を動かす不動産投資は、資産を増やして自分や家族の生活をより豊かにするために行うもの。節税のために行うものではありません。「節税」=「支出を減らすこと」に重きを置くより、「資産を増やす」方向で投資を行った方が、いい結果が生まれやすくなります。不動産投資の節税は、あくまで付随的な効果です。節税ありきではなく「利益を出し資産を増やす事業」として取り組んでいただければ幸いです。
まとめ
不動産投資は、所得税、住民税、相続税に対する節税効果が得られます。しかし、不動産投資が持つ本来の目的は「家賃収入により長期にわたり安定した収益を得ること」。節税のためにわざと赤字を出す投資は、本来の目的と矛盾します。
不動産投資は節税効果が期待できる一方、リスクも存在する投資です。不動産投資を行う際は、制度や仕組みを理解し、リスクを抑えつつ長期的な目線で利益を出す計画を立て、その計画に沿って着実に運用することが必須になります。節税に関しては、長期にわたる不動産投資の中で、節税できるタイミングで賢く節税するスタンスが望ましいです。
「不動産投資では、どの経費を計上できるのかわからない。」「相続税対策で不動産を購入したい。」このような節税に関する疑問が湧いた際は、無料相談にてお話を伺います。中立の立場から、個々の状況に即したアドバイスをいたしますので、遠慮なくご相談ください。
この記事の執筆: 堀乃けいか
プロフィール:法律・ビジネスジャンルを得意とする元教員ライター。現役作家noteの構成・原案の担当や、長野県木曽おんたけ観光局認定「#キソリポーター」として現地の魅力を発信するなど、その活躍は多岐に亘る。大学および大学院で法律や経営学を専攻した経験(経済学部経営法学科出身)から、根拠に基づいた正確性の高いライティングと、ユーザーのニーズに的確に応えるきめ細やかさを強みとしている。保有資格は日商簿記検定2級、日商ワープロ検定(日本語文書処理技能検定)1級、FP2級など。
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