【2025年4月施行】プロパンガススキーム禁止で何が変わる?今後どうなるのか解説
- 更新:
- 2025/03/25
2024年4月に液化石油ガス法施行規則が改正されました。LPガス(プロパンガス)料金への関係ない設備費の上乗せを禁止する新制度が段階的に施行されています。2025年4月からは三部料金制が徹底され、賃貸物件オーナーである不動産投資家も大きな影響を受けることになるでしょう。
今回はこの商慣習、いわゆる「プロパンガススキーム」が横行していた理由や、是正による業界の変化、不動産投資への影響を詳しく解説します。これから不動産投資を始める人もチェックしておいた方が良い内容ですが、すでに物件を持っている人は影響が大きいのでしっかり読んでおきましょう。
- 目次
- プロパンガススキームが2025年4月から禁止に!
- 「プロパンガススキーム」とはLPガス料金に関係ない費用を上乗せすること
- LPガス料金に関係ない設備費が上乗せされていた理由
- プロパンガススキーム禁止で今後はどうなる?
- プロパンガススキーム禁止は不動産投資に影響する?
- プロパンガススキームの禁止に関するよくある質問
- まとめ
プロパンガススキームが2025年4月から禁止に!
経済産業省による液化石油ガス法施行規則の改正により、LPガス(プロパンガス)料金へのエアコンなど関係ない設備費の上乗せを禁止する新制度が、2024年7月から段階的に施行されています。2025年4月からは、この規制の最終段階として「三部料金制」が徹底されることとなりました。
参考経済産業省「「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針(平成29年2月22日制定)」の改正について」
こうしたLPガス料金に関係ない設備費を上乗せする商慣習は、一部投資家の間で「プロパンガススキーム」と呼ばれています。詳しくは順に解説していきますが、プロパンガススキームは不動産オーナーとLPガス会社にメリットがあり、代わりに入居者が不利益を被る点が問題視されていました。まずはこのプロパンガススキームがどのようなものか、詳しく見ていきましょう。
「プロパンガススキーム」とはLPガス料金に関係ない費用を上乗せすること
LPガス料金に関係ない設備費を上乗せする「プロパンガススキーム」が商慣習化していたのは、主に不動産投資家や建設会社が経営する「賃貸集合住宅」です。仕組みと問題点を順に解説していきます。
賃貸集合住宅でガス会社と関係のない設備費が上乗せされていた

賃貸集合住宅のプロパンガススキームは、下記の構図で成り立っています。
- LPガス会社が賃貸集合住宅のオーナーにエアコンなどの設備を無償提供・貸与する
- 設備を無償提供・貸与する代わりに入居者とLPガスを契約させてもらう
- 提供・貸与の費用はLPガス会社がガス料金を値上げして回収する
LPガスの料金は「自由料金」となっているため、LPガス会社側で自由な料金設定が可能です。そのため「設備を無償提供する代わりに入居者と契約させてもらい、入居者からガス料金として設備費を回収する」流れが当然のように慣習化していました。後ほど詳しく解説しますが、オーナーとLPガス会社の両方にメリットがあったため「やらない理由はない」状態になっていたといえるのです。
賃貸経営者が受けた供与を入居者が負担する形に
この「プロパンガススキーム」の最大の問題点は、賃貸集合住宅のオーナーが受けた供与を実質的に入居者が負担している点です。入居者も新しい設備を使えるのでメリットが0というわけではありませんが、それ以上に増加するガス料金が負担となっているケースが後を絶ちません。
北海道生協連による調査では、LPガス5㎥あたり料金の業者間での最安値・最高値の差が3,000円以上となっており、徐々に価格差が大きくなっていることも分かっています。これはプロパンガススキームによる設備費の差と考えられるでしょう。
さらにこの問題点を増長させているのが、賃貸集合住宅の入居者が自分でLPガス会社を変更できない点。賃貸集合住宅におけるLPガス会社は、契約そのものは入居者と直接結ぶものの、基本的に全戸一括でオーナーが管理します。ガス料金が負担となっていても、入居者側で契約先を変更するのはほぼ不可能です。
事実として消費者センターには「ガス料金が異常に高い」というプロパンガススキームに関する苦情が、年間約2,000件も寄せられていたとのこと。それだけ入居者へのしわ寄せが大きくなっていたといえるでしょう。
LPガス料金に関係ない設備費が上乗せされていた理由
LPガス料金に関係ない設備費が上乗せされていた理由としては、主に下記の3つが挙げられます。
オーナーとLPガス会社の両方にメリットがありますが、しわ寄せは入居者が受けています。なぜプロパンガススキームが商慣習化するに至ったのか、理由について詳しく見ていきましょう。
理由①:オーナーは手出しなしで新しい設備が手に入る
プロパンガススキームでは、LPガス会社が無料でエアコンやインターホンなどの設備をオーナーに提供しています。オーナー側から見れば、一切の手出しなしで新しい設備が手に入るのがポイントです。
新しい設備を充実させられれば、当然入居希望者が集まりやすくなります。プロパンガススキームは賃貸集合住宅経営の最大のリスクともいえる「空室の発生」の抑制に一役買っていたといえるでしょう。
理由②:オーナーは家賃を安く見せられる
プロパンガススキームを使えば、オーナーは設備の充実度に対する家賃を安く見せられます。エアコンやインターホンなどの設備費に一切お金がかかっていないため、家賃を上げる必要がないというわけです。
「設備が充実しているのに家賃が安い物件」は、もちろん入居希望者からすれば「条件の良い物件」に映ります。しかし実際には設備費の料金がガス料金に上乗せされているので、入居者は結局設備の充実度相応の総額を支払わなければいけません。この仕組みに気づかず入居してしまう人が多くいました。
そして先述したように、入居者側でのLPガス会社変更はほぼ不可能です。そのため、必然的に入居者は下記の2択を迫られます。
- 泣き寝入りしてその物件に住み続ける
- 諦めて引っ越しをする
しかし引っ越しにも費用や手間はかかるもの。次の物件で同じことが起きない保証もありません。多くの入居者が泣き寝入りして同じ物件に住み続けることを選択しているため、低いリスクで入居希望者を集められる方法として「プロパンガススキーム」が横行していたといえるでしょう。
理由③:LPガス会社は契約先を獲得できる
プロパンガススキームのLPガス会社にとってのメリットは、新たな大口の契約先を獲得できることです。賃貸集合住宅は入居者が多いため、オーナーに取り入ることさえできれば一度に大量の顧客を獲得できます。
しかしオーナーに取り入るために、提供するガスの品質などを変えるわけにはいきません。そのため新たな契約先を獲得するには、どうしても下記2つの方法で営業する必要がありました。
- ガス料金を他社より値下げする
- 料金は据え置きで別のサービスを提供する
この「別のサービスの提供」として採用されてしまったのが、現在のプロパンガススキームです。LPガス会社の利益はほぼ契約先の数で決まるため、プロパンガススキームが商慣習化したのは会社存続のためにある意味必然だったのかもしれません。しかしこのスキームが蔓延したことにより、本来であれば料金やサービスの質で競争すべきだった業界の構図が破綻してしまったのは事実です。
プロパンガススキーム禁止で今後はどうなる?
LPガス料金への関係ない設備費上乗せ、通称プロパンガススキームの禁止による変化は下記の6つです。
- これからはこれからは「三部料金制の徹底」が義務に
- 過大な営業行為が規制
- 賃貸契約前のLPガス料金等の説明義務が発生
- 設備料金にはエアコンなど無関係な費用の計上は禁止
- 設備はオーナーが設置し家賃で徴収することに
- 違反した事業者には罰金や登録取消の罰則を科す
それぞれ詳しく解説します。
変化①:これからは「三部料金制の徹底」が義務に
2025年4月に施行される新制度では、LPガス会社や不動産オーナーは下記3つの料金を契約者に明示しなければいけません。
- 基本料金:検針費用など、基本的に変わらない固定の料金
- 従量料金:ガスの使用量に応じて発生する料金
- 設備料金:ガス警報器など関連設備の契約料金
いずれの料金も算定根拠とともに通知する必要があり、これまでのような内訳が不透明な請求は認められなくなります。この三部料金制の徹底により、消費者は支払う料金の内訳を正しく把握できるようになるでしょう。
変化②:過大な営業行為が規制
2024年7月2日から、LPガス会社による過大な営業行為が明確に規制されています。具体的には、以下のような行為が禁止となりました。
- 設備の無償貸与や無償での配管工事の請負
- 不動産オーナーへの紹介料の支払い
- 入居者にLPガス会社の変更を禁止させる形での賃貸借契約
この規制により、LPガス会社と不動産関係者の間での不適切な取引関係が是正されることに。つまり「プロパンガススキーム」そのものが全面的に禁止された格好です。
変化③:賃貸契約前のLPガス料金等の説明義務が発生
2024年7月2日施行の新制度により、賃貸借契約を締結する前に、入居希望者に対してLPガス料金の情報を提供することが義務付けられました。
これによる入居希望者・LPガス会社・不動産オーナー三方の変化は下記のとおりです。
- 入居希望者は契約前にガス料金の詳細を確認できる
- LPガス会社は料金表等の情報をあらかじめ提供する必要がある
- 不動産オーナーは入居希望者にLPガス料金情報を適切に提供する義務が生じる
もし事前にガス料金の情報提供がなければ、入居希望者は直接LPガス会社や不動産オーナーに料金情報の開示請求ができます。LPガス会社や不動産オーナーは、この請求に従わなければいけません。
変化④:設備料金にはエアコンなど無関係な費用の計上は禁止
先述した3つの料金の「設備料金」について、エアコンやインターホンなどガスに無関係な費用の計上が禁止となります。現在のプロパンガススキームのように新しい設備をLPガス会社で無償提供したとしても、費用の回収はできなくなるでしょう。
変化⑤:設備はオーナーが設置し家賃で徴収することに
これまでLPガス会社から無償提供を受けていたような設備については「オーナーが設置し家賃で徴収すること」と規定されます。必然的に家賃は高くなりますが、ガス料金は値下がりするので入居者の負担が増えるわけではありません。LPガス会社にガス料金を多めに徴収されていたケースも多いので、入居者の負担はむしろ減る可能性が高いでしょう。
変化⑥:違反した事業者には罰金や登録取消の罰則を科す
新たな制度に違反したLPガス会社には、30万円以下の罰金や販売免許の登録取消などの罰則が科されます。経済産業省は不適切な取引を把握するため「LPガス商慣行通報フォーム」を開設し、違反行為を見かけた場合は誰でも通報することが可能になりました。
立ち入り検査も積極的に行う方針を示しており、隠れてプロパンガススキームを用いて取引することもできなくなるでしょう。
プロパンガススキーム禁止は不動産投資に影響する?
結論からいうと、LPガス料金の上乗せ禁止は不動産投資にも影響します。想定される影響は下記の5つです。
- 家賃の改訂を検討しなければいけない
- 設備貸与を受けていた場合は購入が必要になる
- 入居者のガス料金が安くなり満足度が上がる
- 入居者(入居希望者)からの要請があればLPガス料金の詳細を開示する必要がある
- 新制度に準拠した賃貸借契約を結ぶ必要がある
なぜ上記のような影響がありうるのか、詳しく見ていきましょう。
影響①:家賃の改訂を検討しなければいけない
プロパンガススキームによる設備提供を受けていた場合、家賃の改訂を検討しなければいけません。これまでプロパンガススキームで提供されていた設備は、オーナー自身が設置し直し、家賃のアップで費用を回収する形になります。これまでのように、LPガス料金に上乗せして、LPガス会社が入居者に請求する形はNGです。
影響②:設備貸与を受けていた場合は購入が必要になる
先ほど解説したのは、設備の「無償提供」を受けていた場合です。もし「貸与」を受けていた場合は、LPガス会社に設備を回収されてしまうので、新たに購入が必要となってしまいます。
「これまで無償で貸与されていた設備を自分で買う」だけの話なため、本来あるべき姿に戻ったともいえるでしょう。しかしエアコンなど金額の大きい設備の貸与を受けていた場合は、一時的な支出を覚悟しておかなければいけません。
影響③:入居者のガス料金が安くなり満足度が上がる
プロパンガススキームの禁止により、入居者は設備費用をガス料金に上乗せされなくなります。ガス料金が安くなり過度な負担がなくなるため、満足度が上がる効果に期待できるでしょう。
今までは高いガス料金に「泣き寝入り」をしている入居者も少なくありませんでしたが、省令が改正されれば「家賃」と「設備の充実度」をしっかり比較検討して物件を選べるようになります。
とはいえ、この変更はオーナーにとって課題になる可能性も考えられます。プロパンガススキームの活用により、これまでは家賃を抑えながら設備を充実させられました。しかし、今後は設備費用を家賃に反映せざるを得ません。つまり、表面的な家賃が上がることになってしまいます。
競争の激しいエリアでは「家賃のアップを打ち消せるほどの物件の魅力」をどうアピールするかがポイントとなってくるでしょう。
影響④:入居者(入居希望者)からの要請があればLPガス料金の詳細を開示する必要がある
不動産オーナーや管理会社には、入居者や入居希望者からの要請に応じて、LPガス料金の詳細な情報を提供する義務が発生します。開示が必要な情報は下記のとおりです。
- LPガスの基本料金
- LPガスの従量料金
- 料金の算定根拠
この開示義務に対応するために、ガス会社と連携して料金表など必要な情報を集めなければいけません。また、仲介業者を通じた取引の場合は、料金情報が入居者に正しく伝わるよう、仲介業者との情報連携も重要になってきます。
影響⑤:新制度に準拠した賃貸借契約を結ぶ必要がある
2025年4月2日以降の新規契約および既存契約の更新時には、賃貸借契約の内容も新制度に準拠しなければいけません。具体的には下記の対応が必要です。
- LPガス会社の変更ができない旨の記載を削除する
- ガス料金についての記載があれば、三部料金制に準拠した形にする
本制度の影響をまとめると、不動産オーナーはLPガス会社と連携しながら「三部料金制」に沿って料金を明確にしつつ、これまで無償提供を受けていた設備を設置し直し、かかった費用に応じた家賃の改定を検討しなければいけません。
「今後の設備投資の方針に迷っている」「家賃を上げないといけないけど、どう物件をアピールすべきか思いつかない」「これから不動産投資をしようと思っていたけど、資金繰りに不安がある」などお悩みの方は、当社不動産投資コンサルタントへの無料相談をお気軽にご利用ください。専門家の視点から、あなたの不動産投資の成功率を上げる丁寧なアドバイスをいたします。
プロパンガススキームの禁止に関するよくある質問
プロパンガススキームの禁止に関する、2つのよくある質問と回答をまとめました。
それぞれチェックしておきましょう。
プロパンガススキームが禁止になると、既存契約はどのように対応すればよいですか?
既存契約(2025年4月2日の施行時点で締結済みの契約)については、設備費用の計上自体は禁止されません。ただし、基本料金・従量料金・設備料金の3つに分けて、算定根拠とともに料金を明示することが推奨されます。
今の入居者が退去し新たな入居者希望者と契約を結ぶ際には、新制度に対応した契約内容に切り替えなければいけません。不動産オーナーは、それまでに料金体系の整備と契約内容の見直しを進めましょう。対応方針にお悩みの方は、当社不動産投資コンサルタントへの無料相談をお気軽にご利用ください。
プロパンガスの上乗せ禁止はいつから始まりますか?
すでに2024年7月2日から、LPガス会社による設備の無償貸与や無償での配管工事、紹介料の支払いなどが禁止となりました。また、賃貸契約締結前のLPガス料金情報の提供も義務付けられています。
さらに、2025年4月2日からは「三部料金制の徹底」が施行。LPガス料金を基本料金、従量料金、設備料金の3つに分けて算定根拠とあわせて明示することが義務付けられます。不動産オーナーはLPガス事業者と連携し、料金表などの入居者に提供できる情報を入手しましょう。
まとめ
LPガス料金への関係ない設備費の上乗せ、通称プロパンガススキームの是正により不動産オーナーとLPガス会社との関係は大きく変わります。設備費は家賃のアップで回収することになり、LPガス料金の値上げでガス会社が回収する現在の商慣習は断ち切られるでしょう。
不動産オーナーは新制度対応のため、家賃設定や契約内容の見直しを進める必要があります。当社でも本制度について詳しく理解していますので、具体的な対応方針に不安がある方はお気軽に無料相談をご利用ください。

この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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