国交省の不動産情報ライブラリが超有益!概要や不動産投資での活用法を解説!
- 公開:
- 2024/07/07
2024年4月1日、国土交通省が制作した「不動産情報ライブラリ」が公開されました。同ライブラリは、「土地総合情報システム」「標準地・基準地検索システム」に代わるシステムとしてリリース。従前の2システムより掲載内容が増え視認性や操作性が高まったことから、利用者より高い評価を受けています。
本記事では、不動産情報ライブラリの概要や掲載内容、不動産投資における活用方法を解説します。不動産情報ライブラリで見られる情報や活用方法を知りたい方は、最後までご一読ください。
- 目次
- 不動産情報ライブラリの概要
- 不動産情報ライブラリの掲載内容
- 不動産情報ライブラリはSNSでも高評価
- 不動産情報ライブラリを活用する3つのメリット
- 不動産情報ライブラリを利用する際の注意点
- まとめ
不動産情報ライブラリの概要
国土交通省が開発した「不動産情報ライブラリ」は、以前の「土地総合情報システム」「標準地・基準地検索システム」をバージョンアップしたシステムです。本章では、まず不動産情報ライブラリの特徴を解説。次に、ライブラリ公開の背景を解説します。
不動産情報ライブラリの特徴
不動産情報ライブラリは、ライブラリ内の情報を地図の上に重ねて表示できます。ライブラリに掲載されているのは、価格や地形、公共施設の場所など不動産取引で参考にする情報です。従来のシステムで表示されていたのは、価格のみ。価格以外の情報は、他のホームページから検索が必要でした。不動産情報ライブラリでは、国や行政機関が公表しているオープンデータを活用。ホームページを横断することなく、ライブラリ内だけで必要な情報収集が完結できます。
スマートフォンで情報を閲覧できることも、不動産情報ライブラリの大きな特徴です。ライブラリのキャッチコピーは「スマートフォンで「誰でも」「簡単に」不動産に関するオープンデータの閲覧ができます」。パソコンだけでなくスマートフォンでも閲覧できるよう、特別なソフトを使わないシステムにより設計されました。
参考報道発表資料:「不動産情報ライブラリ」の運用を開始します(国土交通省)
不動産情報ライブラリは、API連携により外部アプリケーションとの連携も可能。API連携を申請することで、民間企業もライブラリ上のデータを外部アプリケーションで活用できます。
不動産情報ライブラリが公開された背景
不動産情報ライブラリが公開された背景として、不動産取引では必要な情報が点在し、情報収集が難しくなっていたことが挙げられます。
不動産取引で参考にするのは、価格情報だけでなく、周辺の公共施設や学区、防災情報などさまざまな情報です。これらの情報は、国や地方自治体がそれぞれ異なるホームページで公開。情報が点在していることから、収集に時間がかかる状況でした。情報収集に時間がかかる例として、渋谷区で情報を収集する際に見るサイトの一部を紹介します。
検索対象 | 公開場所 |
---|---|
防災情報 | 渋谷区ホームページ「防災マニュアル・防災マップ」 |
公共施設 | 同「地図から施設を探す」 |
学区 | 同「住所別通学区域一覧」 |
病院 | 東京消防庁「渋谷区病院一覧」、渋谷区医師会「医療機関検索」など |
周辺地域の価格情報 | 国土交通省「標準地・基準地検索システム」 |
都市計画制限 | 同「土地総合情報システム」 |
同じ渋谷区ホームページでも、検索対象が変わるたびにページを移動しなければなりませんでした。不動産情報ライブラリでは、これらすべての情報をライブラリ内で確認可能。ライブラリのリリースにより、情報収集が格段に楽になったといえるでしょう。
不動産情報ライブラリの掲載内容
不動産情報ライブラリに掲載されている情報は、大きく6種類。
- 価格情報
- 地形情報
- 防災情報
- 周辺施設情報
- 都市計画情報
- 人口情報等
具体的な掲載内容を、項目ごとに見ていきましょう。
①価格情報
不動産情報ライブラリでは、以下4つの価格情報を閲覧できます。
- 国土交通省地価公示価格
- 都道府県地価調査
- 不動産取引価格情報
- 成約価格情報
ライブラリで価格情報のタブを選択。必要なデータにチェックを入れ「決定」を押すと、選択したデータが表示されます。条件設定では、用途地域ごとの絞り込みが可能です。
色つきの丸や四角が、地価がついている地点です。記号や文字をクリックすると、価格や住所が確認できます。なお、成約価格情報については、「レインズマーケットインフォメーション」に記載された情報と同じです。
②地形情報
地形情報では、以下のことを確認できます。
- 陰影起伏図
- 土地条件図
- 大規模盛土造成地マップ
陰影起伏図は、北西の方向から地表に向けて光を当てて作成された図です。凹凸のある地表面の北西側が白く、南東側が黒くなっています。土地条件図は、山地、台地・段丘、低地、水部、人工地形などの地形分類です。大規模盛土造成地マップでは、都道府県や市町村が抽出した、谷や斜面に盛土した大規模な造成宅地が表示されます。
表示させたい地形にチェックを入れ決定を押すと、選択した地形情報と地図が重なって表示。画像は、土地条件図を表示した状態です。
③防災情報
防災情報では、8つの情報を確認できます。
- 洪水浸水想定区域
- 土砂災害警戒区域
- 津波浸水想定
- 高潮浸水想定区域
- 避難施設
- 災害危険区域
- 急傾斜地崩壊危険区域
- 地すべり防止地区
避難施設は、火事、地震、津波など、災害別の検索が可能です。防災情報も、見たい内容をチェックして「決定」を押すと、地図上にデータが表示されます。
④周辺施設情報
周辺施設情報で得られるのは、以下の情報です。
- 保育園・幼稚園等
- 小学校区
- 中学校区
- 学校(小学校、中学校、中等教育学校、高等学校、高等専門学校、短期大学、大学、特別支援学校、義務教育学校、各種学校、専修学校)
- 市区町村村役場及び集会施設等(公立公民館、集会施設)
- 図書館
- 医療機関(病院、診療所、歯科診療所)
- 福祉施設(保護施設、老人福祉施設、障害者支援施設等、身体障害者社会参加支援施設、児童福祉施設等、母子・父子福祉施設、その他の社会福祉施設等)
- 自然公園地域
下図では、保育園・小学校等と図書館を選択しました。色のついた丸をクリックすると、施設名と所在地が表示されます。
⑤都市計画情報
都市計画情報で見られるのは、以下の情報です。
- 都市計画区域
- 区域区分(市街化区域、市街化調整区域)
- 用途地域
- 防火・準防火地域
- 地区計画
- 立地適正化計画
色分けされた区画をクリックすると、用途地域名、容積率と建ぺい率が表示されます。下図では、用途地域を選択しました。
⑥人口情報
人口情報では、以下のデータを確認できます。
- 国勢調査(500mメッシュ)
- 将来推計人口(500mメッシュ)
- 駅別乗降客数
国勢調査と将来推計人口は、詳細設定で世代の絞り込みが可能です。
500mメッシュは、緯度・経度に基づき地域を編み目状に分け、500m四方の区画ごとに編成した区分になります。人口情報は、メッシュごとに色分けされて表示。メッシュ部分をクリックすると、データが表示されます。下図は、国勢調査と駅別乗降客数を選択して表示した状態です。青く塗りつぶされた部分が駅で、クリックすると駅別の乗降客数が表示されます。
掲載内容は今後も増える予定
ここまで紹介したのは、2024年6月現在の掲載内容です。リリース時の報道発表資料によると「運用開始後、利用者アンケート等によりニーズを把握し、より利便性の高いシステムとなるよう、掲載情報の追加・変更等を検討する予定」とのこと。今後、利用者のニーズにより掲載内容が増える予定です。掲載内容の増加により、さらに充実したシステムとなることが期待されます。
不動産情報ライブラリはSNSでも高評価
不動産情報ライブラリは、SNS上でも高い評価を受けています。ライブラリに関する、X(旧Twitter)での口コミをいくつか見てみましょう。
国土交通省の #不動産情報ライブラリ
すごい便利
不動産価格の他に
駅の乗降者数の推移や
地図上で人口推移の予測も見れる
2050年まで5年ごとの
将来推計人口も年齢層別に見られるから
将来過疎るかどうか予測できる
家を買おうと思ってる人は要チェック
公開当初から神ツールと言われていた不動産情報ライブラリですが、当時はアクセス集中していた為か何もデータが表示されなかった
今は非常にサクサク動いて本当に神ツール
実勢価格も防災情報も避難施設も学区もこれ一つで調べられるので、ぜひお住まいの地域で調べてみて!
高評価の声がある一方で「不動産情報ライブラリは使いづらくなった」との声もありました。
土地総合情報システムが不動産情報ライブラリへ統合されて完全に使いづらくなった。クレーム入れたい
土地総合情報システムに慣れていた方にとっては、不動産情報ライブラリは使いづらく感じるのかもしれません。
不動産情報ライブラリの評価は、SNS上ではおおむね好評です。筆者も実際に使いましたが、「標準地・基準地検索システム」と比較すると格段に使い勝手が良くなりました。情報も見やすくなり、かなり使いやすいシステムだと感じています。
不動産情報ライブラリを活用する3つのメリット
不動産情報ライブラリを活用するメリットは以下3点。
- 物件に関する情報を一括で入手できる
- 想定する入居者の客層に沿った情報を得られる
- 購入者と投資会社との共通認識を作りやすい
それぞれ詳しく解説します。
メリット①:物件に関する情報を一括で入手できる
不動産情報ライブラリを活用するメリットの1点目は、物件に関する点在した情報を一括で入手できることです。
今までは、都市計画や地価、学区、ハザードマップなどを調べる際に、複数のサイトを横断しなければなりませんでした。不動産情報ライブラリを使うことで、これまで複数サイトで集めていた情報を一画面で確認でき、利便性が向上。土地勘がない地域の物件を検討する際も、将来の人口推移や価格情報など、不動産に関する情報の確認をしやすくなりました。
メリット②:想定する入居者の客層に沿った情報を得られる
想定する入居者の客層に沿った情報を選んで入手できる点も、不動産情報ライブラリのメリットです。不動産情報ライブラリでは、ユーザーが選択してデータベース内にある情報を表示できます。例えば、ファミリー層向けの物件では、希望物件から近い学校や図書館の場所を確認可能です。単身者向け物件であれば、駅や病院の近さなどを見るといいでしょう。
このように不動産情報ライブラリを使うことで、客層ごとに求められるニーズに応じて希望エリアの環境を調べられる点が2つ目のメリットです。
メリット③:購入者と投資会社との共通認識を作りやすい
購入者と投資会社との間で物件周辺の環境に関する共通認識を持てる点も外せません。不動産情報ライブラリを使うことで、購入者と投資会社が同じ情報を共有。物件周辺の環境について共通認識を持てることも、不動産情報ライブラリを使うメリットです。
物件や環境についての認識違いは、後々トラブルにつながる可能性があります。認識違いの代表例は以下の通り。いずれも、トラブルを誘発しやすい事象となります。
- 周囲の環境が想定と違っていた
- 希望する客層の入居者が来なかった
- 入居者が多そうだから不動産を購入したのに、入居がない
購入者と投資会社との間で共通認識ができ、トラブルの原因となる認識違いを起こしづらくなる点も、不動産情報ライブラリを活用する大きなメリットです。
不動産情報ライブラリを利用する際の注意点
不動産情報ライブラリには、他のシステムと同じく利用上の注意点があります。
不動産情報ライブラリは、常に最新情報が掲載されるとは限りません。ライブラリより新しいデータが欲しい場合は、別途検索が必要です。コンテンツの出典時期は「コンテンツの出典」で確認できます。また、不動産情報ライブラリでは、データ作成者からの許諾が取れないなどの理由で一部データがない地域もあります。ライブラリでデータが表示されない場合は、検索が必要です。
不動産情報ライブラリでは、地番や路線価の検索もできません。地番を調べたい場合は、法務局の「登記情報提供サービス(有料)」で検索します。路線価は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」での検索が必要です。
まとめ
不動産情報ライブラリの誕生により、特に住環境面で物件の情報を得やすくなりました。当社が独自開発した収益物件選定システム「MIKATAイズム」とライブラリを併用することで、物件選定の精度がより高まることが期待できます。
不動産投資で物件を選ぶ際は、データだけでなく、実際に物件を取り扱うコンサルタントの「生の声」を聞くことも大切です。当社の無料相談では、取引した際の感覚や物件の印象といった「生の声」、物件選定のコツや各種システムの活用方法などをお伝えします。
無料相談では、無理な勧誘は決して行いません。中立の立場から、投資家目線でのアドバイスをいたします。不動産投資を成功させたいときは、当社の無料相談を活用していただけましたら幸いです。ぜひ一度、詳しい話をお聞かせください。
この記事の執筆: 堀乃けいか
プロフィール:法律・ビジネスジャンルを得意とする元教員ライター。現役作家noteの構成・原案の担当や、長野県木曽おんたけ観光局認定「#キソリポーター」として現地の魅力を発信するなど、その活躍は多岐に亘る。大学および大学院で法律や経営学を専攻した経験(経済学部経営法学科出身)から、根拠に基づいた正確性の高いライティングと、ユーザーのニーズに的確に応えるきめ細やかさを強みとしている。保有資格は日商簿記検定2級、日商ワープロ検定(日本語文書処理技能検定)1級、FP2級など。
ブログ等:堀乃けいか