あおぞら銀行の株価が米国不動産事業不振で急落!今後の見通しや市場への影響を解説
- 更新:
- 2024/02/09

2024年2月1日に、あおぞら銀行が「通期業績予想および配当予想の修正に関するお知らせ」をリリースしました。内容を見ると、当初は大幅黒字を見込んでいた2024年3月期の業績予想が赤字に急転。配当金も無配となり、多くの個人株主が損切りした影響で株価が急落しました。
そこで今回は、あおぞら銀行が赤字化・株価急落となった経緯や、赤字化の原因である「米国不動産(米国オフィス不動産)」について詳しく解説します。また今後のあおぞら銀行の見通しや市場への影響についても見ていきましょう。市場動向が気になる投資家の人は必見です。
- あおぞら銀行が赤字化で株価急落!
- あおぞら銀行が赤字化した最大の原因は「米国オフィス不動産」
- あおぞら銀行は今後どうなる?市場への影響は?
- そもそも米国不動産への投資ってアリ?メリット・デメリットを比較
- 米国・日本の不動産どちらに投資すべき?おすすめな人を解説
- まとめ
あおぞら銀行が赤字化で株価急落!
2024年2月1日を境にあおぞら銀行の株価が急落し、多くの個人株主が悲鳴を上げています。株価が下がった理由や詳細について見ていきましょう。
連結当期純利益240億円黒字 → 280億円赤字に下方修正
あおぞら銀行は2023年5月17日に公表した通期業績予想で、連結当期純利益について240億円の黒字を見込んでいました。しかし2024年2月1日に発表された業績予想では、280億円の赤字に下方修正。当初よりも520億円低い着地となる見込みです。なお、1株当たりの当期純利益も205円51銭の黒字から239円76銭の赤字に下方修正されました。
参考あおぞら銀行「2024年3月期通期業績予想および配当予想の修正に関するお知らせ」
突如赤字転落に至った主な理由は、米国オフィス向け不動産の貸倒引当金324億円を計上したためです。また海外金利の上昇により価格が急落した有価証券の売却損410億円も含まれています。米国オフィス向け不動産の事業については、この後詳しく見ていきましょう。
配当の停止で株価が大幅急落することに
業績予想の赤字転落により、あおぞら銀行の連結資産の自己資本比率(国内)は8.8%、CET1比率(※)は6.6%程度になると見込んでいます。あおぞら銀行が目標としている9%・7%の比率を下回ってしまう形です。
※銀行の自己資本のうち、普通株式や内部留保で構成される部分
これを受けてあおぞら銀行は来期以降の資本確保や資本健全性の改善のため、第3四半期配当および期末配当予想を無配とする決断をしました。配当がもらえないと分かった個人株主の多くは「失望売り」を決行。結果、株価は1株2,500円台から2,100円台まで急落しています。
なお、2月5日頃には株価が一時2,300円台まで回復しました。これはおそらく、新NISAを始めたばかりの初心者が見かけ上の配当利回りの良いあおぞら銀行株を予約注文し、一時的に新規購入が増えたのが理由の一つとみられています。2月6日にはまた「売り」の動きが見られ、再度2,100円台まで株価が下がっている状況です。
純損失計上は2009年3月期以来15年ぶり
あおぞら銀行が純損失を計上したのは、実に2009年の3月期以来で15年ぶりです。当時はリーマン・ショックの最中であり、今回よりもはるかに多い2,400億円規模の赤字を計上していました。
とはいえ最近のあおぞら銀行はM&Aアドバイザリーや再生ファイナンスなど顧客関連のビジネスを中心に着々と業績を伸ばしていたため、関係者からも「まさか」と驚きの声が上がっています。
あおぞら銀行が赤字化した最大の原因は「米国オフィス不動産」
今回、あおぞら銀行が赤字化に至った最大の原因は「米国オフィス不動産」への融資事業の不振です。詳しく見ていきましょう。
あおぞら銀行は数少ない「米国オフィス不動産融資」を積極的に行う銀行
あおぞら銀行は、日本では数少ない「米国オフィス不動産投資」を積極的に行う銀行として定着しています。他行が手を出さない理由はアメリカのオフィス不動産市場の流動性が低く、買い手がつかず「損切り」ができないリスクが非常に高いためです。
そのような中、あおぞら銀行は約19億ドルを米国オフィス不動産への融資に割いています。「何も起きなければ安定する」のが米国オフィス不動産の特徴ですが、この後解説する理由により市場が大幅に変化し、あおぞら銀行が大きな損失を被ることとなりました。
コロナ禍と金利上昇でアメリカのオフィス価格が急落
米国オフィス不動産市場が急激に変化した原因は、コロナ禍による在宅勤務の普及と金利の上昇です。アメリカではコロナ禍以降、在宅勤務が急速に普及しました。2021年の時点で、アメリカの在宅勤務経験者は57.9%にものぼります。
在宅勤務が普及すれば、当然賃貸オフィスの需要が落ちてきます。そこへさらに金利上昇がのしかかり、新規にオフィス投資をする人・新規にオフィスを建てる企業が激減。結果としてオフィス価格の大幅急落に至ったというわけです。
「ノンリコースローン」の担保割れで多額の損失が発生することに
あおぞら銀行で取り扱う米国オフィス不動産向けの融資は、すべて「ノンリコースローン」という種類となっています。ノンリコースローンとは物件そのものや賃料収入の一部を担保として設定する代わりに、融資を受けた人は担保以上の弁済をしなくて良いという仕組みです。今回はオフィス価格が大幅に下がったため、多くの物件が担保割れを起こし融資を回収できなくなってしまいました。
多額の貸倒引当金計上で結果的に赤字化
あおぞら銀行はノンリコースローンの担保割れを見越し、2023年9 ~ 12月期に324億円もの貸倒引当金を計上しています。貸借対照表へ新たに貸倒引当金を追加するためには、損益計算書上に貸倒引当金繰入を費用として計上する必要があり、その結果赤字化してしまったわけです。
とはいえ、あおぞら銀行はあくまで「最悪のケース」を想定し、324億円という非常に大きな金額を貸倒引当金として計上しました。実際には全額を消費せず、数年後に一部が戻し入れされ収益計上されるかもしれません。
あおぞら銀行は今後どうなる?市場への影響は?
あおぞら銀行の今後の予測や、市場への影響についてまとめました。
- その他の顧客関連ビジネスは伸びている
- 「若干の顧客離れ」はあっても大きな影響はなさそう
- 他行への影響もほとんどない見込み
それぞれ見ていきましょう。
その他の顧客関連ビジネスは伸びている
あおぞら銀行の実績および2023年度の業績予想を見ると、既存の顧客関連ビジネスは伸びていることが分かります。今回大きなダメージを受けているのは、米国オフィス不動産への融資を含む「マーケット関連業務」です。
2023年の顧客関連ビジネス利益は2022年比で119億円の増加を見込んでいます。米国オフィス不動産関連で計上した「貸倒引当金」が一時的なものであることから、来期の業績は回復する可能性が高いのではないでしょうか。
「若干の顧客離れ」はあっても大きな影響はなさそう
赤字化と株価急落によりあおぞら銀行のマイナスイメージが定着し、若干の顧客離れは進むかもしれません。しかし、先述したように既存の顧客関連ビジネスは成長傾向にあります。米国不動産オフィスの件が他業務に影響を与えることも考えづらく、すでに獲得した顧客の大半が離れるようなことはないでしょう。多少の変化はあるかもしれませんが、トータルで見ると大きな影響はなく進む可能性が高いです。
他行への影響もほとんどない見込み
今のところ日本で「米国オフィス不動産向けのノンリコースローン」を実施している他行はほとんどありません。つまり今回のように米国オフィス不動産市場の影響をダイレクトに受けて、業績低迷・株価急落となる銀行はないと考えられます。あくまで「あおぞら銀行特有の事情」としての扱いに終わりそうです。
そもそも米国不動産への投資ってアリ?メリット・デメリットを比較
今回あおぞら銀行は「米国不動産オフィス不動産」の融資事業が不振となった形となりました。知らない人が多いかもしれませんが、実は日本人でもアメリカの不動産(主に一般戸建て賃貸)へ投資できます。そこで米国不動産投資のメリット・デメリットを比較しました。
米国不動産投資のメリット
米国不動産投資の主なメリットは下記の3つです。
- 人口増で不動産価格の伸びが期待できる
- GDP成長で賃料増の可能性も高い
- カントリーリスクが低い
アメリカはここ100年間、人口が右肩上がりに増え続けています。人口が増えているということは、当然賃貸需要が上がってきており不動産価格も上がりやすいということです。
またGDP(国内総生産)も世界1位を保ったまま伸び続けており、経済成長による賃料相場の上昇にも期待できます。さらにカントリーリスク(※)はもっとも低いAランクに位置しており、突然不動産価格が暴落する可能性も低めです。安定した収益を得たいなら、アメリカの不動産へ投資するのも「アリ」でしょう。
※カントリーリスク:国の経済や政治等の不安定さが要因で、投資対象の価格下落が発生するリスクのこと。A ~ Hの8段階で表され、Aがもっとも低リスクとされる
米国不動産投資のデメリット
米国不動産投資の主なデメリットは下記の4つです。
- 不動産価格が高すぎる
- 維持コストがかかりすぎる
- 円高で余計にコストが上がっている
- 節税効果が薄い
アメリカは日本よりもはるかに不動産価格が高いです。不動産に関する根本的な考え方が異なっており、築年数が経っていても状態が良ければ高値で取引されます。日本ではあり得ませんが、アメリカでは築100年の物件が5,000万円以上するケースもざらです。
またアメリカに不動産投資をする場合、多くのケースでマンション・アパートではなく「戸建て」の物件を選ぶことになります。もちろん相応の家賃収入には期待できますが、維持管理のコストが非常に高くなりがちです。円高の影響で余計にコストが上がっているため、コストシミュレーションは徹底的に行なわなければいけません。
さらに2021年の税制改正により、日本に住んでいる個人は海外の不動産で発生した費用を損益通算できなくなりました。そのため、以前とは異なり個人の節税メリットは限りなく0に近いです。法人化すれば以前のように節税は可能ですが、知識のない状態で始めるのはリスキーでしょう。
米国・日本の不動産どちらに投資すべき?おすすめな人を解説
ここまで解説したメリット・デメリットを踏まえて、米国・日本の不動産投資がおすすめな人をそれぞれ紹介します。
米国への不動産投資がおすすめな人
米国への不動産投資がおすすめな人は下記のとおりです。
- 余剰資金が多い
- 英語をある程度読める
- 将来的にアメリカへ移住したい
- ハイリスク・ハイリターンな投資がしたい
アメリカの不動産価格は高く、日本よりも圧倒的に投資の初期コストがかかります。数百万円 ~ 数千万円単位の余剰資金がなければ、そもそも始めるのが困難でしょう。また契約などは英語で行われるため、不利な条件にならないよう契約書の英語をある程度読める状態が理想です。
また2021年の税制改正で、日本在住者の節税メリットはほとんどなくなってしまいました。しかし、アメリカへ移住すれば現地の制度で大きく節税ができます。将来的にアメリカ移住を考えている人には、米国不動産投資がおすすめです。なお、かかる費用の大きさからハイリスク・ハイリターンの傾向があるため、安全性を重視したい人にはおすすめしません。
日本への不動産投資がおすすめな人
日本への不動産投資がおすすめな人は下記のとおりです。
- 少ない資金からスタートしたい
- 海外投資に抵抗がある
- ローリスク・ミドルリターンな投資がしたい
日本の不動産投資は、10万円程度の元手でスタートできる可能性があります。根本的なマンションなどの不動産価格もアメリカより安く、少ない資金から低リスクに投資をスタート可能です。単純に「英語の契約書が怖い」「いざとなった時に気軽に行けない場所の物件を買うのは不安」という人にも、日本の不動産投資をおすすめします。
かける費用が少ない分得られる利益も少なめにはなりますが、それでも「ローリスク・ミドルリターン」程度の投資効果が期待できます。1件あたりが安いため、軌道に乗ったら複数件を所有して利益や資産を積み上げることも可能です。
当社では特にリスクが低いとされる「東京23区」「大阪」の物件を多数紹介できます。まずは無料会員登録して非公開の優良物件情報をチェックし、かかる費用や得られる利益の目安を見てみてください。
まとめ
あおぞら銀行は「米国オフィス不動産」への融資事業が不振となり、今回の赤字化や株価の急落を招きました。とはいえその他の顧客関連ビジネスは伸びており、今回の赤字化の原因が一時的な貸倒引当金の計上であることから、次年度以降は回復傾向となるのではないでしょうか。あおぞら銀行のような「米国オフィス不動産向けのノンリコースローン」を実施している他行はほぼなく、市場への影響もそこまで大きくないでしょう。
今回あおぞら銀行の「米国オフィス不動産」に関連して米国と日本の不動産投資を比較しました。米国不動産投資は、余剰資金があり将来的にアメリカ移住を検討したい人におすすめです。少ない資金から始めて「ローリスク・ミドルリターン」の投資を目指したい人には、日本への不動産投資をおすすめします。
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この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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