フラット35の詐欺で逮捕!詐欺対策や悪徳業者を見抜くポイントについて解説します!
- 更新:
- 2025/01/12

フラット35は低金利でかつ借りやすいことから、人気のある住宅ローンです。人気がある商品だからこそ、フラット35を悪用した詐欺は後を絶ちません。2024年2月6日にも、住宅ローン専門会社「SBIアルヒ」のフランチャイズ店で、虚偽申告によりフラット35の詐欺を働いたとして男性5名が逮捕されました。
本記事では、最初に、なぜフラット35詐欺が問題になるのか解説。具体例として、SBIアルヒによるフラット35詐欺事件の概要と問題点を解説します。最後に、不動産投資でフラット35の詐欺や悪徳業者を見抜くポイントをそれぞれ紹介します。フラット35の詐欺について知りたい方や、不動産投資で詐欺に遭いたくない方は、必見です。
フラット35の詐欺とは
「フラット35」は居住用の住宅を購入するときに使用できるローンです。保証人が不要で借りやすいことから、不正融資による詐欺でよく使われます。不動産投資での手口は、投資用物件の購入者がフラット35を使い、詐欺業者は購入希望者から仲介手数料をだまし取ります。
フラット35詐欺の代表的な事例
フラット35で行われる詐欺の代表例は、以下の2つです。
- 虚偽の居住目的での融資申請
- 書類の改ざんによる融資申請
「虚偽の居住目的で行う融資申請」とは、投資用物件である不動産を購入する際「自分が住む」と申告して、フラット35の融資を受けること。業者から「一時的に住民票を移せば大丈夫」などと言われ、住民票を移して融資を受けることも、フラット35を不正に受け取る一例になります。
書類を改ざんして、フラット35の融資を受けるケースもあります。
- 面識のない宅建士名で書類を作成する
- 申込者の収入や物件価格を改ざんした書類を提出する
上記のような書類改ざんにより、フラット35を悪用するケースも後を絶ちません。
フラット35の詐欺が発覚した場合のリスク
では、フラット35の詐欺が発覚した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。
最大のリスクは「刑事罰」が科されること。詐欺が発覚した場合は、詐欺罪や有印私文書偽造罪などに問われる可能性があります。加えて、民事上の責任として、損害賠償の義務を負わなければならないかもしれません。
損害賠償責任を問われた場合、融資額を一括で返すことが求められます。それだけでなく、金利や手数料、調査費用といった、融資に付随する費用の賠償を請求されることも。場合によっては、風評被害による損害賠償責任も問われるかもしれません。
フラット35での融資額を合計した賠償額は、数千万以上になるでしょう。加えて風評被害による賠償請求が行われると、億単位の賠償責任を負う可能性もあります。
実際に行われたフラット35の詐欺:SBIアルヒの事件
ここで、実際に行われた詐欺の事例を紹介します。本記事で取り上げるのは、2024年2月6日に報道された「SBIアルヒ」の事件です。
概要
2024年2月6日、偽造した身分証明書を使ってフラット35に申込み、不正に融資を受けた5名が逮捕されました。2020年6月に住宅ローン専門会社「SBIアルヒ」から2,780万円をだまし取ったことによる、詐欺や有印公文書偽造などの疑いです。舞台となったのは、SBIアルヒのフランチャイズ店舗。SBIアルヒの社内調査により発覚しました。
事件の流れ
逮捕された5名の職業と事件の流れは以下のとおり。
- 無職A
- 暴力団幹部B
- 不動産会社元社員C、D
- 元「SBIアルヒ」の店舗運営会社社員E
2020年、無職のAは、住宅を購入するために融資を受けたい旨を暴力団幹部Bに相談しました。Bは、不動産会社の社員であったCとDをAに紹介し、CとD両名に、フラット35の手続き代行を依頼します。A、B、C、Dの4名は共謀して虚偽の在籍証明書や健康保険証を作成。融資業者である「SBIアルヒ」のフランチャイズ店に提出しました。
SBIアルヒ側の担当者であるEは、虚偽の申請と知りつつ不正に審査を通過させ、フラット35でAに2,780万円を融資します。そして、B、C、Dは、融資金の中から数百万円の手数料を受け取りました。
本件に加えて、Cが過去にSBIアルヒに申し込んだ5件の融資に不正の疑いがかけられています。金額にすると、約1億3千万円です。
本件の問題点
本件では、フラット35の不正利用(詐欺)だけでなく、暴力団への金銭供与があったことも問題視されています。ここからは、2つの問題を掘り下げていきましょう。
問題①:フラット35の不正利用
本件の大きな問題は、フラット35の不正利用です。フラット35のホームページには以下の記載があります。
「このような不適正な目的で融資を受けることは、ローン契約違反であり、住宅金融支援機構では融資の残債務について一括返済請求を行うこととなります。 また、たとえお客さまが手続を事業者任せにしていたとしても、虚偽の内容で融資を受けることは犯罪(詐欺罪)であり、お客さま自身が責任を問われることになります。」
引用フラット35「【フラット35】の不適正利用に巻き込まれないために」
本件のように虚偽の身分証明書を使った申請は、複数の罪に問われる可能性があります。下記は、犯罪名と罪状をまとめた表です。
犯罪名 | 罪状 | 根拠条文 |
---|---|---|
詐欺罪 | 不正にフラット35の融資を受けたこと | 刑法246条1項 |
有印公文書偽造罪 | 身分証明書の偽造 | 同155条1項 |
有印公文書行使罪 | 身分証明書の偽造 | 同158条 |
このように、フラット35の詐欺は、詐欺罪に加えて有印公文書偽造・行使の罪に問われる点も、本件の問題であるといえます。
問題②:暴力団への金銭供与
フラット35の不正融資に加えて、反社会的勢力である暴力団に金銭を供与したことも、本件の大きな問題です。本件の容疑者Bは、暴力団幹部です。Bに手数料が渡ったことが、暴力団への金銭供与につながりました。
住宅ローンを契約する場合、反社会的勢力へ関わっていないことについての同意が求められます。フラット35であっても同じです。
1992年4月より施行された暴力団対策法(暴対法)では、暴力団は以下のように定義されています。
「二 暴力団 その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。」
引用e-gov法令検索「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」第2条
暴力団への金銭供与は、不法行為を行う暴力団の資金源となります。2010年以降、暴力団を無くすために、暴力団対策法をベースにした暴力団排除条例が各自治体で制定されました。今日では、企業も暴力団のような反社会的勢力と関わらないことが求められています。そのような社会の要請にもかかわらず暴力団に利益供与を行った点も、本件の大きな問題点です。
不動産投資でフラット35の詐欺を見抜くポイント
フラット35には、利用時にいくつか制限があります。投資用物件を買わせたいからと制限に触れず、フラット35を不正利用させる不動産業者はなくなりません。いくらだまされて融資を申し込んだとしても、罪に問われるのは、残念ながら購入者です。
悪徳業者にだまされないためには、甘い言葉が嘘や間違いであることを見抜く知識が不可欠です。ポイントは、次の2点。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ポイント①:「投資用物件にも利用可能」と誘う
フラット35を「投資用物件にも利用できる」と誘う不動産業者は、信用してはいけません。フラット35は、居住用住宅を購入する際のローン。投資用物件には利用できません。住宅専用であることを利用して「金融機関には『自分で住む』と伝えればいい」とそそのかす業者も危険です。中には「セカンドハウスとしての利用」と伝えることを提案する業者もいますが、もちろんそれも規約違反となります。
フラット35のような住宅ローンを使って投資用物件を購入することを「なんちゃって住宅ローン」「なんちゃって不動産投資」(通称「なんちゃって」)と呼びます。「なんちゃって」を使った投資を行うと、2件目の不動産投資で借り入れが難しくなったり、今借りているローンの一括返済を求められたりするリスクがあります。「なんちゃって」のリスクについては、以下の記事もあわせてお読みください。
参考なんちゃって(住宅ローンで不動産投資をすること)の問題点とは?
ポイント②:「借金をまとめられる」と勧める
フラット35は、住宅購入に関する以下費用への貸付も可能です。
- 住宅購入にかかる診断料や各種手数料
- 購入者が負担する各種印紙代
- 火災保険料や地震保険料
- 司法書士や土地家屋調査士への報酬
- つなぎローンに係る費用(金利、融資手数料など)
参考フラット35「借入対象となる諸費用とはどのようなものですか?」
上記以外の費用は、貸付の対象外です。もちろん、いわゆる「おまとめローン」としての使用も不可。「住宅購入に関する費用に加えて、元々持っている借金をまとめられる」などの甘い言葉を使ってフラット35の活用を勧める不動産業者は、残念ながら信用に値しません。
フラット35詐欺にあわないために悪徳業者を見分けるポイント
不動産投資で詐欺にあわないためには、悪徳業者に関わらないことが大切。ここからは、不動産投資で悪徳業者を見分けるポイントを3つ紹介します。
話してから素性がわかる場合もありますが、なるべく早く見抜くに超したことはありません。本記事を参考に、悪徳業者と関わらず安全に不動産投資を行いましょう。
ポイント①:セミナーにてメリットだけもしくは虚偽の内容を説明する
セミナーにて、メリットだけ、もしくは虚偽の内容を説明する不動産業者は、信用に値しません。
不動産業者は、自社の宣伝や顧客獲得のために、不動産投資セミナーを開催する場合があります。ここで「不動産投資は絶対儲かる」「物件を買うなら今しかない」などと、メリットだけを強調する業者から物件を買うのは避けた方が賢明です。「住宅ローンでも投資用住宅は購入できる」と間違った内容を説明する業者も、信用できません。
不動産投資に限らず、どの投資にも必ずデメリットが存在します。それなのにデメリットを隠してうまい話ばかりする不動産業者は「物件を売ったら終わり」であるケースがほとんどです。物件購入後にトラブルが生じても助けてくれず、ひどい場合は借金を抱えて泣き寝入りする危険もあります。このような事態を避けるために、メリットだけでなくデメリットもきちんと説明してくれる業者を選びましょう。
ポイント②:宅地建物取引免許の番号を見る
不動産業者が持つ「宅地建物取引免許」の番号も、悪徳業者を見分けるひとつの指標です。不動産業者は、国土交通大臣または都道府県知事から宅地建物取引免許(宅建免許)を受けた上で営業します。宅建免許の有効期間は5年。受けた免許は、店舗内の目につきやすいところに掲示しなければなりません。
宅建免許は「○○免許(▲)第×××××号」の形で記載されています。免許の頭に記載されたカッコ内の数字が、更新回数です。(1)が初回の申請、(2)だと1回目の更新済みとなります。カッコ内の数字が大きいほど、不動産業界歴が長く信頼できる業者との判断が可能です。反対に、トラブルを起こすような悪徳業者は、免許の更新もされません。不動産業者が購入者とトラブルを起こした際は、行政処分や宅建免許取り消しが行われるからです。
このように、宅建免許の更新回数は、信頼できる業者を判断する指標となります。不動産業者を選ぶ際は、なるべくカッコ内の数字が大きい業者にすると良いでしょう。
なお、当社の免許は「東京都知事免許(2)第97446号」です。2015年に東京都より認可され、1回の更新を経ております。
ポイント③:従業員の服装や言葉づかいをチェックする
セミナーや免許に問題がなければ、最後に従業員の服装や言葉づかいをチェックしましょう。服装に乱れがあったり言葉づかいに引っかかりを覚えたりした場合は、やめておいた方が賢明です。たとえ言葉づかいが良くても「絶対儲かる」「高値で売れる」などの発言は要注意。悪徳業者である可能性が高まります。
いざ物件紹介に進んだとしても、物件のメリットだけを伝える業者はおすすめできません。購入者のことを考えておらず、手持ち物件を売りさばきたいだけの可能性があるため、やめた方がいいでしょう。さらに、メリットだけを伝えられた物件は、売却するときに利益が出ず、大きな損をしてしまう可能性もあります。
不動産投資において「絶対」はありません。メリットがあれば、必ずデメリットも存在します。デメリットをひた隠しにしていいことだけを言う業者は、信用できないといえるでしょう。
まとめ
住宅専用であるフラット35を使って投資用物件を購入させられたことによる詐欺被害は後を絶ちません。詐欺被害をなくすには、購入者の自衛も必須。購入者自らが知識を持ち、信頼できる不動産業者を選ぶことが求められています。
当社では、フラット35を使った物件購入は一切おすすめしていません。当社で推奨しているのは、正しい方法である不動産投資ローンの活用のみです。不動産投資を始めたいけれど詐欺が心配なときは、当社を選択肢のひとつとしていただけましたら幸いです。
本記事を読んでも、やはり詐欺が心配になる場合もあるでしょう。そのときは、無料相談の活用をおすすめします。「他社でフラット35を使った物件購入を勧められた」など、セカンドオピニオンとしての活用でも構いません。ぜひ一度、無料相談でお話を聞かせてください。

この記事の執筆: 堀乃けいか
プロフィール:法律・ビジネスジャンルを得意とする元教員ライター。現役作家noteの構成・原案の担当や、長野県木曽おんたけ観光局認定「#キソリポーター」として現地の魅力を発信するなど、その活躍は多岐に亘る。大学および大学院で法律や経営学を専攻した経験(経済学部経営法学科出身)から、根拠に基づいた正確性の高いライティングと、ユーザーのニーズに的確に応えるきめ細やかさを強みとしている。保有資格は日商簿記検定2級、日商ワープロ検定(日本語文書処理技能検定)1級、FP2級など。
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