賃上げしてもインフレで意味がない?実質賃金が低下する中、なぜ不動産投資が有効なのか?
- 更新:
- 2023/11/16
「2030年代半ばには中小企業を含めて最低賃金は1,500円」
これを聞いて「無理だろう」と思う人の方が大半ではないでしょうか。
しかし、2023年11月2日に閣議決定された「総合経済対策」のひとつの目標として、政府は2030年代半ばまでに最低賃金の1,500円への引き上げを目指すとしています。
デフレから抜け出し、経済を活性化するために政府が重要視している「賃上げ」ですが、すでに賃上げの動きは一部で起こっています。
しかし賃上げの行方が大きな関心事となる一方で、現状多くの人々が苦しんでいるのが「物価上昇」です。
「うちの会社ではさっぱり賃上げの話題なんかない」「物価ばかり上がって大変……」という人のほうが多いのではないでしょうか。
現状、賃上げよりインフレ率の方が高く、実際の購買力を示す実質賃金は低下し続けています。果たして今後インフレ率を上回る賃上げは実現されるのでしょうか。
本記事では賃上げとインフレを加味した実質賃金の現状を解説し、資産を守るための方法としての不動産投資のメリットについても紹介します。本記事をぜひお読みいただき、将来に対する不安を軽減する備えに役立てましょう。
総合経済対策における賃上げの概要
内閣府の「デフレ完全脱却のための総合経済対策」は以下の5つの方針から構成されています。「物価」「賃上げ」に関する具体的な内容を中心に見てみましょう。
1.物価高から国民生活を守る ・令和6年分の所得税3万円・個人住民税1万円の定額減税 ・低所得世帯への1世帯7万円・住民税非課税世帯への10万円の支援 ・企業・家庭への省エネ設備の導入支援 など |
2.地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ ・賃上げ促進税制の強化(青色申告事業者が給与を増加させた場合、一部を法人税・所得税から控除できる) ・最低賃金の引き上げ(2030年代半ばに1,500円が目標) ・「年収の壁」への対応(パート・アルバイトの厚生年金・健康保険加入への支援) など |
3.国内投資の促進 |
4.人口減少対策としての社会変革 |
5.防災・減災などの国土強靭化 |
NHKの「日本の賃金はなぜ上がらないか」によると、政府が賃上げに対する施策をおこなう背景には「家計の所得が増えないと、個人消費は増えずデフレ・スパイラルから脱却することはできない」という考えがあるとしています。
総合経済対策はこれらの施策により、30年間に及ぶ「低物価・低賃金・低成長」のデフレ時代から、「物価」と「賃金」を上げることで「高成長」につなげようというものです。
賃上げに対する現状と課題
中小企業や地方への波及を目標としている賃上げですが、大手企業を中心に賃上げの機運は高まっています。
現在の賃上げに関する現状と課題について見ていきましょう。
2023年における賃上げの実態
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「公益企業における2023春闘の結果」によると、製造大手を中心に満額回答を含む大幅賃上げが相次ぎました。労働組合ナショナルセンターの連合による集計では直近の賃上げ率は3.67%と2013年以降で最大の伸び率を堅持しているとしています。
以下は一例を表にまとめたものです。
要求内容 | 回答内容 | |
---|---|---|
日本郵政グループ | 定期昇給分2% + ベースアップ3%を合わせて5% | 定期昇給(2.04%)+ 月例賃金(1.62%)に加え、特別一時金(1.45%)の支給で合計5.11%の賃上げ |
NTTグループ | 月例賃金で2%の引き上げ + 生活防衛への措置として年間10万円 | 主要会社の正社員一人平均3,300円(前年比1,100円増)の改善 (特別一時金はゼロ回答) |
中部電力など | 3,000円の賃金改善 (条件による) |
1,000円 ~ 満額の賃上げ |
東京電力 | 年収水準3%引き上げ + 一時金 | 年収水準3%引き上げ (一時金はなし) |
KDDI | 5%の賃金改善 | 満額回答 契約社員にも昇給 + 一時金支給 |
引用独立行政法人労働政策研究・研修機構 公益企業における2023春闘の結果
このように大手企業では価格転嫁に伴う賃上げ実施の動きも出ており、中小企業への波及が期待されます。
現在までの賃上げの実態
一方、これまでの賃上げの状態はどうだったのでしょうか。
以下のグラフは厚生労働省が発表している「賃金引上げ等の実態に関する調査」の令和4(2022)年までの1人あたり平均賃金の改定額及び改定率の推移を示したものです。
グラフを見ると平成15(2003)年以降、平均賃金の改定率は30年近く1 〜 2%の横ばいが続いている状態です。
それに加えて令和4(2022)年の同調査では「賃金を引き下げる」「改定しない」と回答した企業が合わせて約7%あり、物価の上昇に対して十分な賃上げがおこなわれているとは言えない状況です。
賃上げへの課題
賃上げをおこなうには当然原資が必要であり、業績が好調なことが前提となります。
2023年9月調査の日銀短観では、大企業を中心に、中堅・中小企業とも全体的に業績が「良い」と答える企業が増加しています。
しかし業績が好調な企業がある一方で、大企業から中小企業に至るまで、業績が良いと判断する割合は製造業のほうが非製造業より低くなっています。
これは円安や原油高により経費が上がり、収益を圧迫していることが主な原因です。今後も円安や原油高が続くかは不透明であり、企業が賃上げを踏みとどまる可能性もありえます。
また、日本の労働構造も賃上げへの課題の一つです。内閣府の「労働市場の変化と賃上げに向けた課題」によると、「労働移動の円滑度が高い国ほど実質賃金上昇率が高い傾向にある」としています。
下のグラフが示すように、日本は労働移動の円滑度・実質賃金上昇率ともに低い水準です。
つまり日本の労働構造は「雇用の流動性が低く、一度雇うと長期で雇用することになるため簡単には賃上げできず、賃上げの必要性も低いためなかなか賃金が上がらない」と解釈できます。
インフレを加味した実質賃金の状況
賃上げされるかどうかも重要ですが、もう一つ気になるのが「物価上昇」でしょう。
次に、インフレ率を加味した実質賃金がどうなっているのかについて解説します。
インフレ率の推移
下の表は令和4(2022)年9月 ~ 令和5(2023)年の消費者物価指数を示したものです。
この表から、インフレ率は2021年より年3%程度ずつ上昇していることがわかります。
一方、下のグラフは約50年間の賃金の推移を示したものです。
一見してここ20年以上横ばいが続いており、現状では賃金上昇率がインフレ率を下回る企業が多いと考えられます。仮に「2030年代半ばに時給1,500円」を達成できたとして、東京都で見ると賃金の伸び率は年2.3%です。賃金の伸び率がインフレ率を上回る可能性は今後もあまり高くはないと言えるでしょう。
可処分所得と貯蓄率の推移
次に、可処分所得と貯蓄率についても見てみましょう。下のグラフは、家庭の可処分所得と貯蓄額を示したものです。
令和2(2020)年度はコロナ関連の給付金で大きく可処分所得が延びているものの、そのほかの年を見ると可処分所得が上がってはいるものの同時に支出も上がっていることがわかります。30年前と今とで可処分所得に対する支出の割合を比較すると違いが一目瞭然であり、支出割合の上昇にともない近年の貯蓄額は大きく下がっているのが現状です。
可処分所得が上がっているのに貯蓄額が下がっているということは、可処分所得の増加が支出の増加に追いついていないと考えられます。下のグラフからもわかるとおり、実質賃金はじわじわと低下し続けています。
資産形成の重要性
インフレ率を加味した実質賃金は低下し続けており、賃上げがされたとしてもイコール実質賃金の上昇となるかは疑念が残ります。
また、賃上げには実質賃金の低下以外のリスクも考えられます。本章では賃上げにともなうリスクと、給料以外の資産形成手段の獲得の重要性について解説します。
インフレ率と賃金上昇率の差が広がる可能性
賃上げの前提として「価格転嫁 = 値上げ」が必要です。元々需要の安定している大企業やインフラ関連企業などは値上げしやすいため賃上げも比較的容易ですが、中堅 〜 中小企業は「値上げ = 価格競争力低下」として容易に値上げをしづらいと考えられます。
値上げをしづらい中堅 〜 中小企業は賃上げもしにくくなります。賃上げができない企業の従業員にとっては、大企業を中心とした値上げの影響を今後さらに受ける可能性があります。
そもそも今までの数十年賃金はほぼ横ばいの状態で、今後インフレ率を超えるペースで突然企業全体が賃上げできるようになるとは考えにくいでしょう。値上げから賃上げにつなげられる企業と、値上げできず賃上げできない企業の差が広がるのにともない、インフレ率と賃金上昇率の差が一層広がり続けることも考えられます。
投資で収入を多角化する重要性
また、もし仮に中小企業が賃金格差にともなう人材流出に危機感を感じ、賃上げをせざるを得ない流れになったとしましょう。
その場合には別の心配が起こります。人件費増大による経営悪化や、人件費をおさえて賃上げをおこなうために企業が人員削減して一人あたりの業務負荷を増やす可能性です。実質賃金のさらなる低下だけでなく、労働条件の悪化に対するリスクに備えるためにも給与収入以外の収入獲得手段を持ちリスクヘッジすることが重要になってきます。
企業の経営状態もインフレ率も、個人でどうにかすることはできません。企業の経済状況やインフレに左右されない収入源を持つことが、将来の不確実性に備える方法として不可欠です。
不動産投資のメリット
収入を多角化し将来への経済的な不安を軽減するために、インフレに強い資産形成としておすすめなのが不動産投資です。
インフレへの対抗策となる
インフレが続いた場合、現役時代の実質賃金の低下以上に問題となるのが老後の資金不足です。給与収入がなくなり物価が上がり続ければ、資産の減るペースは加速してしまいます。
物価上昇に合わせて不動産価格自体も上がり、保有不動産の資産価値を維持できる不動産投資は、インフレに対する生活不安への対抗策となります。
また、家賃は物価上昇に合わせて値上げをおこなえます。家賃の上昇により不動産からの収益も増加するため、物価上昇に伴い経費が上昇しても当初の利回りが維持できる不動産投資はインフレに強い資産形成の手段だと言えるでしょう。
資産形成の速度が早い
不動産投資は、レバレッジ効果の活用により資産形成の速度が早いのが特長です。
レバレッジとはいわゆる「てこの原理」であり、自己資本を元手に融資を組み、より大きな金額で投資をおこなうことで元手だけで運用するより大きな利益を得られます。
レバレッジ効果により、労働収入と合わせて速いペースで資産を形成できます。現役時代は「自分も働き、お金も働く」ことで資産を形成し、リタイア後は「自分は自由で、お金が働く」というライフプランも構築できるのではないでしょうか。
「まだ貯金が少なく、投資に回す資金がない」「子育てにお金がかかり、資産運用どころではない」と考える人にこそ、むしろ区分マンションへの不動産投資がおすすめです。区分マンションの場合、元手が10万円から投資できるものもあります。
まずは区分マンション投資から始め、利益が出たらそれを元手に複数物件の運用をおこなうことで、資産形成の速度はさらに早まります。
そのため不動産投資はリタイア世代だけでなく、特に現役世代におすすめの投資手段です。
当社では無料相談もおこなっております。興味を持った方はぜひお気軽にご相談ください。
老後の資産設計になる
不動産投資は、家賃収入を得ると同時に資産も形成できる資産運用です。
入居者からの家賃収入からローンを返済することで、利益を得ながらマンションという資産価値を向上させられます。
さらにローンの返済が終了すれば、家賃収入による利益が増えるうえにマンションは完全に自分の資産となります。そのままオーナーとして収入を得るか出口戦略として売却するか、そのときの状況に合わせて選択可能です。
不動産投資はインカムゲインもキャピタルゲインも狙え、安定した老後のための資産設計となります。
まとめ
大手企業を中心に賃上げの流れはあるものの、企業全体に広がるかについては「期待したい」といったところでしょう。
また、賃上げ = 実質賃金の上昇となるかどうかも不明です。インフレによる将来の不確実性に備えるために、不動産投資をぜひ検討してみてはどうでしょうか?不動産投資は資産形成の有力な手段であり、特に「区分マンション投資」は少額から始められ安定した家賃収入が期待できます。
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この記事の執筆: ひらかわまつり
プロフィール:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士資格を有するママさんライター。親族が保有するマンションの管理業務経験を有するなど、理論・実務の両面から不動産分野に高い知見を持つ。また、自身でも日本株・米国株や積立NISAなどを行っていることから、副業や投資系ジャンルの執筆も得意としている。解像度の高い分析力と温かみのある読みやすい文章に定評がある。不動産関連資格以外にも、FP2級、日商簿記検定2級、建築CAD検定3級、TOEIC815点、MOSエキスパートなど多くの専門資格を持つ。
ブログ等:ひらかわまつり