生命保険はいらない、は本当?基本的知識や入るべき人の特徴を解説
- 更新:
- 2023/06/19

生命保険文化センターによる2021年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、生命保険の世帯加入率は89.9%という、非常に高い数値を記録しています。日本国民のほとんどが何らかの生命保険に加入していることが分かりますが、中には「生命保険はいらない」という意見を持つ方も少なくありません。
ただし、生命保険には多様な種類があるため保障内容も様々です。このようなことから、生命保険に入るべきかは、個人の状況に応じて冷静に判断することが大切です。
- そもそも生命保険とはなにか
- 生命保険は本当にいらないのか
- 生命保険に入るべきか
この記事では、生命保険に対するこのような疑問を解消するために、生命保険の基礎知識から解説し、生命保険に入るべきかを判断する基準をお伝えします。
そもそも生命保険はなんのため?
多くの方が加入する生命保険は、死亡した時に保険金が支払われる「死亡保険」だけではありません。死亡時だけでなく、既定の病気や怪我をした時に支払われる保険や、介護など、人の生存や死亡に関して支払われる保険のことを「生命保険」と呼びます。
どのような事態に備えたいかの目的によって対象となる生命保険は異なり、払込期間や保障期間にも様々なものがあります。生命保険の良し悪しも判断するには、まず生命保険の種類を把握し、理解する必要があるでしょう。
尚、火災保険や自動車保険、賠償責任保険などは「損害保険」に該当し、事故や災害に対して保険金が支払われるものです。損害保険は生命保険会社ではなく損害保険会社が扱う別の商品のため、この記事では解説の対象外とします。
生命保険の基本形は3種類
生命保険には様々な種類がありますが、生命保険の基本形は「定期保険」「終身保険」「養老保険」の3種類に分けられます。ここでは、それら3種類の保険の違いについて解説します。
定期保険
定期保険とは、契約時に決められた一定期間のみ保障される保険です。保険期間内に死亡した場合に保険金を受け取れるのが一般的な形式です。
定期保険の多くは、支払った保険料は戻ってこない「掛け捨て型」ということもあり、加入当初の保険料は割安なのがメリットです。契約期間が過ぎれば保険は更新出来ますが、更新の際には加入者の年齢などに応じて保険の掛け金が高くなる傾向にあります。
その時の状況に合った保険に入りたいなど、定期的に生命保険を見直したい方に向いているのが定期保険です。
終身保険
終身保険とは、保険期間が定められておらず、契約者が死亡するまで保障が続く形式の保険のことです。生命保険会社の広告などで「保障が一生涯続く」などと表現されているものは、この終身保険に該当します。終身保険では、支払った保険料が戻ってこない「掛け捨て型」の他に、解約返戻金などとして返金される「貯蓄型」もありますが、貯蓄型の方が保険料は割高になります。
更新する必要がないため、契約時から払い込み期間満了まで保険料は変わらないことが一般的です。ただし、加入当初の保険料は定期保険に比べると高めに設定される傾向があります。
一度の加入で保険料が変わらない安心感が欲しい方に向いているのが終身保険です。
養老保険
養老保険とは、保険期間内に死亡した場合は死亡保険金が、満期時まで生存していれば死亡保険金と同額の満期保険金が支払われる保険です。
養老保険では必ず保険金がもらえる仕組みになっているため、原則として「貯蓄型」で、保障と貯蓄を兼ね備えていると言えます。ただし、その分保険料が割高なのがデメリットです。
割高な保険料を支払っても、確実に保険金を受け取りたい方に向いているのが養老保険です。
生命保険の目的は5種類
生命保険を目的別に大きく分類すると、5種類に分けられます。先述した3種類の基本的な分類と目的別の分け方を組み合わせれば、多くの保険商品の内容が理解できるでしょう。
ここでは、目的別に生命保険の種類をご紹介します。
死亡に備える保険
死亡に備える生命保険は、「死亡保険」とも言われます。保険期間中に被保険者が死亡した際に、事前に指定していた受取人が保険金を受け取れます。死亡だけでなく、約款で定められた高度障害状態になった時でも保険金が支払われる保険もあります。
死亡に備える保険は、先述した「定期保険」「終身保険」「養老保険」の3種類があるため、保険に加入する場合は、自身の状況に合わせて選ぶ必要があります。
病気・怪我に備える保険
病気や怪我で通院、入院、手術をした際に保険金が支払われる生命保険は、「医療保険」と呼ばれます。公的保険では保障されない差額ベッド代や先進医療費、入院中の食事代など様々な用途に保険金が利用できる可能性があります。がんと診断されたり、がん治療が長期化した時の保障に特化した「がん保険」も一般的です。
医療保険には商品ごとに細かい保障範囲が定められており、更に「定期保険」と「終身保険」の種類もあるため、契約する際には必要な保障内容を見極めて商品を選ぶ必要があります。
介護に備える保険
被保険者に介護が必要になった際に、保険金を受け取れるのが「介護保険」です。公的介護保険では足りない分を補うために加入されることが多いのが特徴です。保険金はまとまった一時金で受け取る他に、年金のように定期的に決まった金額を受け取るなど、契約内容によって様々な方法があります。
要介護認定を基準とした介護保険だけでなく、身体障がい状態になった時に保険金が給付される生命保険や、重い怪我や病気により働けなくなった時に給付される就業不能保険もあります。
老後のための保険
一定期間保険金を支払うことにより、契約時に定めた年齢から年金が受け取れる「個人年金保険」があります。公的な年金だけでは不足する分を補うため、個人で加入できる年金として活用されているケースが多いです。年金を一生涯受け取れるもの、一定期間だけ受け取れるもの、一時金として受け取れるものなど、給付金の受け取り方は様々です。
また、保険金支払い期間中に亡くなったとしても、事前に定めた受取人が代わりに年金を受け取れる商品などもあります。死亡しても生存していても保険金が満額受け取れるタイプの保険は、養老保険にも似ています。
子供のための保険
子供の教育費のために加入される「学資保険」が、子供のための代表的な生命保険です。満期保険金が一括で受け取れる保険の他に、子供の入学や進学でお金が必要となる時期に合わせて祝い金が受け取れるなどの内容の保険もあります。
学資保険では、保険料払い込み期間中にお金を支払う契約者が亡くなった場合、死亡時以降の保険料払い込みが免除され、決められた満期保険金が支払われる契約内容のものが一般的です。
生命保険はいらないと言われる理由
不測の事態に備える、または、想定される教育や老後の資金を用意するために利用されることの多い生命保険ですが、「生命保険はいらない」という不要論もあります。
ここでは、生命保険がいらないと言われる理由について解説します。
保険を利用するとは限らない
保険はあくまでも万が一のための備えであるため、保険を利用しない場合は保険料が無駄になるという意見があります。また、保険の契約内容は複雑で、病気になったとしても細かい規定の内容によって保障の対象とならない場合もあり、頼りにしていた保険金が受け取れない可能性もあります。
公的保障が充実している
日本は公的保障が充実しており、それほど高額の医療費がかからないため、生命保険はいらないと考える方もいます。具体的には、日本人は健康保険に加入しているため、医療費は1割から3割の自己負担で賄えます。
また、それでも莫大な医療費が必要になったときは、高額療養費制度があります。高額療養費制度では、年齢や所得に応じて、医療費に支払う限度額が定められています。
たとえば、30代で年収約370万円から770万円の場合、毎月の高額療養費の自己負担限度額(世帯ごと)は以下の通りです。
- 80,100円 +(医療費 - 26,7000円)✕ 1%
年収約770万円から1,160万円の場合、毎月の高額療養費の自己負担限度額(世帯ごと)は以下のように上がります。
- 167,400円 +(医療費 - 558,000円)✕ 1%
年収約1,160万円以上であれば更に自己負担限度額は上がります。このような医療費が支払えるのであれば、生命保険の中でも特に医療保険は不要であると考えられるでしょう。
保険以外にも資金を使える
保険は補償範囲が広く手厚いほど、保険料も上がる仕組みです。そのため、手厚い保障を求めた結果、高額な保険料が負担となるケースもあります。高額な保険料を払うのであれば、その資金を利用して貯蓄や投資をするなど、他に有意義な使い方をするべきという意見もあります。
貯蓄があれば賄える
貯蓄が十分にある場合は、保険を利用する必要はないため、生命保険は不要だという意見があります。生命保険の保険料には、保険会社が運営するための手数料等が含まれているため、自分で貯蓄または投資をして、必要な費用を用意した方が効率的だという考えが基になっているようです。
生命保険に入るべきか
生命保険の内容や、生命保険はいらないという意見も踏まえたうえで、自身の状況を見極めて、生命保険に入るべきかを判断することが大切です。
ここでは、生命保険に入るべき人・入らなくて良い人の特徴や生命保険以外で万が一に備える方法をご説明します。
生命保険に入るべき人の特徴
生命保険に入るべき人の特徴は以下の通りです。
- 貯蓄がそれほど多くない
- 安心感が欲しい
- 小さな子供がいる
貯蓄がそれほど多くなく、突然の医療費が支払えない、どうしても貯蓄ができないという方は、貯蓄の代わりに生命保険を利用する方法も有効です。また、保険では投資ほど多くの利益は期待できないことがほとんどですが、生命保険に加入すれば受け取れる金額が保証されていることが多いため、利益は少なくても安心感が得られるでしょう。更に、今後教育費や養育費が多くかかる子供がいるなど、自分に万が一のことがあった場合にお金を遺したい理由がある方は、死亡保険を契約しておけば安心できます。
生命保険に入らなくて良い人の特徴
生命保険に入らなくて良い人の特徴は以下の通りです。
- 貯蓄が十分にある
- 自分でお金を管理したい
- 生命保険のデメリットが気になる
貯蓄が十分にあり、万が一の事態や医療費に対応できるのであれば、生命保険は不要です。さらに、自分でお金を管理したい方は、生命保険にはお金をかけず、資金を元に運用するのが向いています。また、生命保険はいらないと言う人がいるように、デメリットがあるのも事実です。これらのデメリットが気になる場合は、生命保険には入らなくても良いでしょう。
生命保険に入るべきかの判断基準
生命保険にはメリットとデメリットの両面があるため、「どんな生命保険にも絶対に入らない」またはその反対に「何が起きても全て保険で賄えるようにする」など、極端な方向性を選ぶ必要はありません。
自分にとって不足している部分を過不足なく生命保険で補うよう、必要に応じて最適な商品を選ぶのがおすすめです。
生命保険以外で万が一に備える方法
自分に万が一のことが起きた場合に備えるために、不動産投資を生命保険の代わりにすることも可能です。不動産投資でローンを組んだ場合、契約者が死亡した際にローンの残債が免除されるという「団体信用生命保険」に加入することになります。団体信用生命保険により、残された家族はローンの負担もなく、定期的な家賃収入が得られ、不動産という大きな資産が得られるのです。
ただし、不動産投資では永続的に家賃収入が得られるという保証はなく、自然災害などによって不動産が損失するおそれもあることなどには注意も必要です。
まとめ
この記事では、生命保険の種類について解説したうえで、「生命保険はいらない」という生命保険不要論は本当かをご説明しました。
生命保険には多くの種類があり、保障内容も多岐に渡っています。公的保障や必要となる金額などについて把握したうえで、本当に生命保険がいらないかどうかを判断すると良いでしょう。
生命保険以外にも不動産投資で万が一の事態に備えることも可能なため、詳しくは当社コンサルタントまでお気軽にご連絡ください。

この記事の執筆: 丸岡花
プロフィール:宅地建物取引士・FP検定2級を持つ主婦ライター(2児の母)で、300本以上の不動産関連記事の執筆実績を有する。得意ジャンルは不動産・税金・英語・育児。不動産が大好きで、不動産関連のニュースや法改正、市況のチェックが日課となっている。豊富な知識に裏付けされた独自性の高い切り口と、公的機関や学術論文などの1次情報に基づく正確性の高い文章に定評がある。元バックパッカーで旅行・キャンプをこよなく愛し、過去に20か国以上を訪問した経験を持つ。保有資格は宅建士・FP2級に加え、TOEIC895点(米国居住経験あり)、秘書検定1級、保育士など多岐に亘っている。
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