リバースモーゲージとは?メリット・デメリットから「やばい」と言われる理由までわかりやすく解説
- 更新:
- 2023/06/19
リバースモーゲージとは、自宅を担保に融資を受けられるシニア向けのローン制度のことです。世帯分離や高齢化により普及しつつある制度ですが、一部では「やばい」「罠」とも噂されており、将来本当に利用して良いのか不安に感じている方もいるでしょう。
しかしリバースモーゲージは、金銭面の不安を解消し、老後を豊かに過ごすための有用な手段です。そこで今回は、リバースモーゲージのメリット・デメリットから、おすすめな人まで詳細にわかりやすく解説します。将来リバースモーゲージを使いたいけど不安がある方や、そもそもリバースモーゲージがなんなのか詳しく知りたい方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
リバースモーゲージとは
リバースモーゲージとは、今住んでいる自宅を担保にして現金融資を受けられる、シニア向けのローン制度です。お金は年金や若い頃の貯金ではまかなえなくなった生活費・介護費の補てんために毎月受け取ったり、入院・手術など突発的に大きな費用が発生した際にまとめて受け取ったりできます。
契約者が亡くなった際に担保の自宅を貸し手が売却し、融資額を回収するのがリバースモーゲージの仕組み。リバースモーゲージを契約すると、基本的に担保とした自宅を子などに相続できない点には注意が必要です。
条件により借入限度額は大きく変わりますが、一戸建ての場合は担保評価額の最大70%、マンションの場合は最大50%の融資ができます。ただし、あくまで担保にするのは自宅であり、投資用のマンション・アパートなどは設定できません。
リバースモーゲージの提供機関による違い
リバースモーゲージは社会福祉協議会をはじめとする公的機関、または銀行などの金融機関が主体となって提供しています。それぞれ受けた融資の使用目的や、融資を受けるための条件などが異なるので押さえておきましょう。詳しい違いは下記の表の通りです。
提供機関 | 公的機関 | 金融機関 |
---|---|---|
受けた融資の使用目的 | ・基本的に生活費のみ | ・投資以外なら自由 ※ |
融資を受けるための主な条件 | ・土地の評価額が1,500万円以上 ・65歳以上の高齢者のみで構成された世帯 ・市町村税の非課税世帯または均等割課税世帯程度の低所得世帯 |
・55歳以上で構成された世帯(金融機関により年齢の条件は異なる) ・年金または給与による安定した収入がある |
担保にできる物件種別 | ・集合住宅は不可(戸建てのみ) | ・集合住宅も可 |
※使途が住宅ローンの借り換えに制限される「リバースモーゲージ型住宅ローン」などの商品もあります。
公的機関が提供するリバースモーゲージの使用目的は生活費のみとなっており、土地の評価額や年齢、収入による制限が厳しいのが特徴です。またマンションなどの集合住宅は、原則として担保にできません。
対して金融機関が提供するリバースモーゲージは、使用目的や条件が緩く、さらにはマンションなどの集合住宅も担保にできるのがポイント。ただし金融機関ごとに条件や融資額などのサービス内容が大きく異なるため、実際に利用する際はしっかりと比較検討しましょう。
リバースモーゲージの2つの利用タイプ
提供機関のほか、リバースモーゲージには「リコース型」と「ノンリコース型」という2種類の利用タイプによる差があります。具体的な差は下記の通りです。
利用タイプ | リコース型 | ノンリコース型 |
---|---|---|
死亡後または限度額利用後に完済できない場合の残債 | 相続人が負担 | 消滅(誰も支払う必要なし) |
金利 | 安め | 高め |
融資限度額 | 普通 | 減る可能性あり |
リコース型では、万が一担保の自宅を売却して融資額を返済しきれなかった場合に、相続人が残債を返済する必要があります。それに対してノンリコース型の場合は、誰も残債を返済する必要がありません。ただし金利が高めになり、一般に融資限度額が減るため、月々にもらえる金額は減少します。
ちなみにリバースモーゲージ型住宅ローン「リ・バース60」を主体となって提供している住宅金融支援機構によると、99.4%がノンリコース型を選択しています。「もらえるお金は減るけど、相続人にリスクを負わせたくない」というのが、多くの人の考え方なのでしょう。
参考住宅金融支援機構「【リ・バース60】の利用実績等について」
リースバックとの違い
リバースモーゲージと似ている「リースバック」という制度があります。リースバックは自宅を売却してお金をもらい、家賃を払って住み続けられる制度です。
「自宅を用いてお金をもらえる」という点では、リースバックもリバースモーゲージも同じ。ただしリバースモーゲージは所有権を持ったまま自宅を担保にして融資を受けますが、リースバックはお金をもらう時点で自宅を他人(リースバックの提供会社)に売却し、所有権を移転します。
リバースモーゲージが契約できない場合でも、リースバックなら契約できる可能性があります。ただしどちらの場合でも最終的に自宅は戻ってこないので、よく考えて慎重に契約しましょう。
リバースモーゲージが「やばい」「罠」といわれる理由
資金面の不安を解消し、充実したセカンドライフを過ごすための有用な手段であるリバースモーゲージですが、調べると「やばい」「罠」などのキーワードがヒットします。しかし「本当にリバースモーゲージはやばいのか?」というと、そのようなことはありません。
リバースモーゲージは「自宅が返ってこない」「相続人に残債を負担させる必要がある」などのデメリットやリスクが独り歩きしている状況です。たしかにリバースモーゲージは担保にした自宅が返ってきませんが、最近では相続人に負担を残さない「ノンリコース型」が主流となっています。
つまりメリットとデメリットをしっかり押さえておけば、リバースモーゲージは危険な制度とはいえません。リバースモーゲージのメリット・デメリットを、それぞれ詳しく見ていきましょう。
リバースモーゲージのメリット
リバースモーゲージのメリットは下記の3つです。
- 高齢者でも融資が受けられる
- 月々の返済負担が少ない
- 金融機関のリバースモーゲージは使途が広い
それぞれのメリットについて解説します。
メリット①:高齢者でも融資が受けられる
リバースモーゲージは、高齢者でも融資が受けられる数少ない方法です。特に70歳を過ぎると、消費者金融などの簡単にお金を借りる方法はほぼ使えなくなります。
「どうしても年金だけでは生活費を捻出できなくなってきた」「突発的にお金が必要になった」というシーンでも、リバースモーゲージがあれば資金調達が可能。リバースモーゲージは、高齢者の金銭的不安を解消してくれるでしょう。
メリット②:月々の返済負担が少ない
リバースモーゲージにおける月々の返済額は、一般的に利息のみとなっています。元本は最終的に担保の自宅を売却して精算するので、生きている間の負担はほとんどありません。
メリット③:金融機関のリバースモーゲージは使途が広い
金融機関が提供するリバースモーゲージの場合、融資してもらったお金は生活費以外のさまざまな使途に使えます。住宅ローンなどの一般的なローンは使途が制限されてしまう一方、金融機関のリバースモーゲージは投資以外なら自由なため、旅行などの娯楽費に活用しても問題はありません。
リバースモーゲージのデメリット
リバースモーゲージには下記5つのデメリットがあります。
- 相続人の同意がないと使えない
- 物件によっては使えない可能性がある
- 不動産評価額の見直しで利用限度額も変わってしまう
- 変動金利型しか存在しない
- 長生きすると家を失うリスクがある
リバースモーゲージの利用を検討するなら、メリット以上にデメリットをしっかりと押さえておいてください。デメリットを押さえておかないと、後からトラブルが起きて途方に暮れてしまうケースもあり得ます。それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
デメリット①:相続人の同意がないと使えない
リバースモーゲージは、相続人全員の同意がないと使えません。自宅が資産として残らないなど相続に大きな影響を与えるため、配偶者や子供など誰か一人でも反対すれば、リバースモーゲージは利用できないようになっています。
デメリット②:物件によっては使えない可能性がある
リバースモーゲージは、担保にしたい物件によってはそもそも使えない可能性があります。
各金融機関で立地や評価額など細かい条件が設定されており、審査をクリアできない場合は物件を担保にできません。
特にマンションは築年数や面積など、厳しい条件が設定されています。駅から近い、都心部にあるなど、資産価値が落ちにくい条件を満たしていないと利用できない可能性が高いでしょう。
デメリット③:不動産評価額の見直しで利用限度額も変わってしまう
リバースモーゲージの契約中には、担保物件の不動産評価額を毎年見直します。もし不動産評価額が下落してしまった場合、利用限度額も減額に。つまり予定よりも早く利用限度額に到達してしまい、自宅の売却を早期に迫られる可能性があるので注意が必要です。
不動産評価額が下落していれば売却金額も下がっているので、「リコース型」で契約していた場合は、足りない返済額を相続人が負担しなければいけません。相続人に負担させたくないなら、必ず「ノンリコース型」で契約しましょう。
デメリット④:変動金利型しか存在しない
リバースモーゲージには、「変動金利型」の商品しか存在しません。契約後は毎月利息相当分を支払うのが一般的ですが、予期せぬ金利の上昇で大幅に月々の負担が増える可能性があります。
一般的な住宅ローンの金利は0.5%~1.5%程度に設定されていますが、リバースモーゲージはそもそも金利が3%前後です。市場の影響による金利の振れ幅も他のローンより大きいため、余裕を持った返済計画を立てておかないと破綻する恐れがあるでしょう。
デメリット⑤:長生きすると家を失うリスクがある
長生きは良いことですが、リバースモーゲージを契約するなら大きなデメリットとなり得ます。想定よりも長生きしてしまうと融資限度額を超えてしまい、元本返済のために自宅を手放さなければいけないからです。
たとえば融資限度額が2,000万円で、毎月8万円の融資を受け続けた場合、限度額に到達するまでの期間は約21年です。65歳でリバースモーゲージを契約していたら、86歳には元本返済がスタートします。2021年の日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳であることから考えても、86歳まで長生きする可能性は低くありません。
高齢者は賃貸物件を借りづらくなるため、自宅を失うと途方に暮れてしまうケースも。悲惨な老後とならないよう、できれば何歳まで生きても融資限度額まで使い切らない計画を立てましょう。
リバースモーゲージがおすすめな人
下記3つのいずれかに当てはまる場合は、リバースモーゲージを利用するメリットがデメリットを上回るため、おすすめです。
- 相続人がいない
- 住宅ローンが負担となっている
- 将来的な有料老人ホームへの入居を検討している
それぞれ見ていきましょう。
相続人がいない
子供をはじめとする相続人がいない場合は、ぜひリバースモーゲージを積極的に活用しましょう。相続人の同意が必要ないので、自分と配偶者の意志のみでリバースモーゲージを利用可能です。
自宅を資産として残す必要もないので、融資されたお金は何も気にせず自分たちのために使えます。相続人がいないならぜひリバースモーゲージを活用して、老後の生活を豊かにしましょう。
住宅ローンが負担となっている
毎月の住宅ローンが負担となっている場合は、リバースモーゲージ型住宅ローンへの借り換えを行えば支払いが利息分だけになります。月々の支払額を大幅に軽減し、負担を抑えた生活が可能です。
ただし借り換えを行う際には、金融機関に手数料を支払わなければいけません。手数料が数十万円にのぼるケースもあるので、かえって負担とならないかしっかり確認しましょう。
将来的に有料老人ホームへの入居を検討している
将来的に有料老人ホームへの入居を検討している場合にも、リバースモーゲージの活用がおすすめです。有料老人ホームへ入居する際には、一般的に1万円~数千万円の入居一時金がかかります。この入居一時金を、リバースモーゲージで融資を受けてまかなうことが可能です。
夫婦の一方が老人ホームへ入居した場合に、もう一方が自宅に住み続けられるのがこのケースの最大のメリット。売却では自宅を失い、リースバックでは月々の賃料負担が大きくなってしまいます。有料老人ホームへの入居を検討しているなら、リバースモーゲージはベストな選択肢といえるでしょう。
まとめ
リバースモーゲージとは、自宅を担保に現金融資を受けられる、シニア向けのローン制度のこと。老後の資金面の不安を解消し、充実したセカンドライフを過ごすための有用な手段です。しかしデメリットも多いため、事前にしっかり押さえておかないと取り返しのつかないことになってしまうケースもあります。
とはいえデメリットさえしっかり理解しておけば、大きなトラブルとなるケースは滅多にありません。特に相続人がいない場合や、住宅ローンが負担となっている場合、将来的な有料老人ホームへの入居を検討している場合には圧倒的に利用するメリットが大きいです。ぜひリバースモーゲージを活用して、老後を豊かに過ごしましょう。
この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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