【2023】13種類の用途地域とは?概要と具体的なイメージを徹底解説!
- 更新:
- 2023/06/19
用途地域とは何かご存じですか?「ここに工場は建てられないらしい」「ここには高層マンションは建てられないらしい」といった区分があることは、なんとなく知っている方が多いのではないでしょうか。その細かなルールは、「用途地域」によって定められています。
用途地域とは地域ごとに建てられる建物の種類や規模を定めたルールのことで、2023年1月現在は13種類に分かれています。不動産の購入を検討する際にはぜひ押さえておきたいポイントです。
そこで本記事では、「用途地域とは何か」という基本的な部分と、13種類の用途地域における制限の内容や具体的な活用イメージを紹介します。
用途地域とは?
用途地域とは、地域ごとに建てられる建物の種類や規模についてを定めたルールのことです。具体的には、主に以下の4つに関する制限が定められています。
- 種類(住宅・商業施設・工場など)
- 建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)
- 容積率(敷地面積に対するすべての階の床面積合計の割合)
- 高さ(床から屋根の一番高い部分までの高さ)
都市計画法により「市街化区域」として指定される地域には、必ず用途地域が設定されています。市街化区域とはすでに市街化が進んでいるか、むこう10年以内に開発を進め、市街化を検討している地域のことです。どの地域をいずれの用途地域に設定するかは、各市町村によって指定されています。
用途地域の目的は暮らしやすい街づくり
用途地域を設定する最大の目的は、暮らしやすい街を作ることです。例えば住宅地に公害を伴う工場を建設したり、騒音のリスクがある娯楽施設を建ててしまったら、住民の平穏な生活が脅かされてしまうでしょう。
また用途地域を設定することで、将来的なその地域のイメージがしやすいという面もあります。計画的な開発を進める上で、用途地域は非常に重要な役割を示しているのです。
用途地域は13種類に分けられる
用途地域は、その制限内容や用途により以下の13種類に分けられます。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 第一種中高層住居専用地域
- 第二種中高層住居専用地域
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 田園住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
上記の13種は、さらに住居系用途地域8種、商業系用途地域2種、工業系用途地域3種に大別されます。それぞれの用途地域における詳しい概要や具体的な活用イメージは、この記事の後半で見ていきましょう。
不動産を購入するなら用途地域の確認が重要
不動産を購入する場合には、使途に合った用途地域かどうかの確認が必要です。用途地域によって建築できる建物の種類が変わってしまうので、事前にイメージしていた使い方ができない場合があります。事前に用途地域の確認をしておき、イメージとの齟齬が生まれないようにしましょう。
用途地域の調べ方は?
各市区町村が用途地域を確認できる「都市計画情報」を用意しており、「市区町村名 + 用途地域」で検索すればすぐにヒットします。例えば下記の画像は東京都新宿区、新宿駅付近の用途地域の地図です。
左側サイドバーにある通りに13種類の用途地域が色分けされており、視覚的に簡単に確認できます。用途地域を確認したい場合は、各自治体の都市計画情報を見てみましょう。
住居系用途地域のそれぞれの概要と活用イメージ
住居系用途地域は8種類あり、さらに大まかな用途で分けると以下の4つに分類されます。
- 第一種、第二種低層住居専用地域
- 第一種、第二種中高層住居専用地域
- 第一種、第二種、準住居地域
- 田園住居地域
住宅系用途地域は、住民が快適に居住できることを優先した制限が設定されています。個別に詳しく見ていきましょう。
住居系用途地域①:第一種、第二種低層住居専用地域
第一種、第二種低層住居専用地域は、まさに「住宅地」という用途で使用される地域です。
第一種、第二種低層住居専用地域の概要
第一種、第二種低層住居専用地域には住宅や高校までの教育施設、介護施設などが建築でき、娯楽施設や工場など大半の施設は建築できません。第一種では小売店や飲食店も建築できませんが、第二種では制限こそあるものの建築可能です。
建ぺい率や容積率の制限が厳しく、高さも10~12mまでの制限があるため、3階建て以上の建物は基本的に建築できないでしょう。
第一種、第二種低層住居専用地域は閑静な住宅街のイメージ
引用いえうり
第一種、第二種低層住居専用地域のイメージは、低階層の住居が立ち並ぶ閑静な住宅街です。騒音がなく日当たりや風通しが良いのがメリットですが、お店が近くにないのはデメリットでしょう。静かに暮らしたい方は第一種、多少の利便性が欲しい方には第二種が向いています。
住居系用途地域②:第一種、第二種中高層住居専用地域
第一種、第二種中高層住居専用地域は、居住環境を優先してはいるものの、利便性が向上している地域です。
第一種、第二種中高層住居専用地域の概要
第一種、第二種中高層住居専用地域には住宅やスーパー、図書館、病院などを建築でき、工場や大型商業施設などは建築できません。ただし第二種であれば、中規模の商業施設も建築できます。低層住居専用地域と比較し利便性が向上した地域です。
さらに高さ制限がないため、マンションなど3階建て以上の高階層住宅も建てられます。
第一種、第二種中高層住居専用地域はマンションが立ち並ぶ住宅街のイメージ
引用SUUMO
第一種、第二種中高層住居専用地域のイメージは、マンションが立ち並んでおり、スーパーなどの施設が点在する住宅街のイメージです。ある程度静かな環境で暮らしつつ、あわせて利便性も求める方に向いています。
住居系用途地域③:第一種、第二種、準住居地域
第一種、第二種、準住居地域は、居住環境と商業施設が充実した環境が合わさった、駅に近いエリアに多い地域です。
第一種、第二種、準住居地域の概要
第一種、第二種、準住居地域では、3,000平米までの大規模マンションや中~大型商業施設、ホテルなど工場以外の大半の施設が建築できます。第一種ではカラオケ・パチンコ・風俗店などの建築は禁止されていますが、第二種なら建築可能です。また準住居地域は国道や幹線道路沿いであることが多く、車を持っている方に最適なエリアとなっています。
第一種、第二種、準住居地域は住居やオフィス、店舗が混在する街のイメージ
引用Lnote
第一種、第二種、準住居地域は高階層のマンションに加え、大きめのショッピングモールや娯楽施設が充実した賑やかな街のイメージです。買い物や遊びで日常を充実させたい方に向いています。
住居系用途地域④:田園住居地域
田園住居地域は、2018年に追加された居住環境と農業の両立を目指した地域です。
田園住居地域の概要
田園住居地域では高校までの教育施設と、病院や図書館など生活に最低限必要な施設が建築できます。また産地直売所や農機具用倉庫など、同業関連施設が建築可能です。比較的農業の用途に特化した地域となっています。
建ぺい率や容積率、高さには大きく制限があるため、3階建て以上の大きな建物は基本的に建てられません。
田園住居地域は田んぼ・畑や低階層住宅が並んだイメージ
引用スマイティ
田園住居地域は田んぼや畑、低階層の住宅が並び、最低限の生活用施設が点在するイメージです。農業を営む予定の方や、自然豊かな地域に住みたい方に向いています。娯楽施設やスーパーなどがない点は割り切る必要があるでしょう。
商業系用途地域のそれぞれの概要と活用イメージ
商業系用途地域には以下の2つがあります。
- 近隣商業地域
- 商業地域
住宅に加え会社の事務所や大規模な商業施設が建てられるのが商業系用途地域の特徴です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
商業系用途地域①:近隣商業地域
近隣商業地域は居住環境と商業施設が混在した地域です。
近隣商業地域の概要
近隣商業施設ではショッピングモールなどの大きめの商業施設や、小規模な工場、会社の事務所などを建築できます。特に小~中規模の小売店や飲食店が建てられることが多いです。制限がかなり緩い地域ですが、風俗店は建てられません。
近隣商業地域は住宅地とお店が隣接した「商店街」のイメージ
引用イエイ
近隣商業地域は住宅地の近くに店舗が立ち並んだ、いわゆる「商店街」のイメージです。非常に利便性が高い一方、騒音などに悩まされる方もいます。気になる方は住居系の用途地域の方が向いているかもしれません。
商業系用途地域②:商業地域
商業地域は住居や商業施設などを問わず、かなり大きな建物が混在することが多い地域です。
商業地域の概要
商業施設では大規模な工場や廃棄物処理場を除く、ほぼすべての施設が建築できます。主に大きめの駅周辺や都心部に設定されており、さまざまな施設が建てられることからかなり価値の高い地域です。国道や県道などの主要な道路付近に設定されていることも多く、交通の利便性も高い地域となっています。
商業地域は高階層の商業施設が立ち並ぶ都会のイメージ
引用mitaina
商業地域は高層マンションや商業ビル、大規模なショッピングモールなど非常に面積が広く階層の高い建物が並んだ、まさに「都会」のイメージです。駅から近いことが多く、賃貸需要は底堅いと言えるでしょう。
工業系用途地域のそれぞれの概要と活用イメージ
工業系用途地域には以下の3種類があります。
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
その名の通り、まさに工場の建設に特化した地域となっています。例えば「工業専用地域」になると、住宅は一切建てられません。それぞれ詳しく見ていきましょう。
工業系用途地域①:準工業地域
準工業地域は小・中規模な工場と、居住環境が混在した地域です。
準工業地域の概要
準工業地域では公害が発生するリスクがあるほどの大規模工場は建てられません。ですが中規模までの工場やマンションを含む住宅、小売店や飲食店、また映画館などの娯楽施設も建築できるため、かなり幅広い用途で活用されます。ただし住宅として活用する場合は、周囲の騒音や日当たりなどをチェックしておくことが大切です。
準工業地域は「何でもあり」のイメージ
引用イクラ不動産
準工業施設は大規模な工場を除くほとんどの施設が建てられるため、かなり多くの施設が混在した何でもありのイメージです。騒音や日当たりなどに注意すれば、かなり快適に生活できる地域と言えるでしょう。
工業系用途地域②:工業地域
工業地域はどんな工場でも建てられる地域です。
工業地域の概要
工業地域は工場の規模に関する制限がなく、どんな規模の工場でも建築できます。住宅や小売店、飲食店なども建てられますが、騒音や粉じんの影響が懸念されるので、住むのに適した環境とは言えません。
また学校や病院などの教育・医療関係の施設は建てられないため、この点でも住居系・商業系用途地域と比較し利便性が劣っています。ただし住環境としてやや難がある分、安価に住めることが多いのは、ある種のメリットと言えるでしょう。
工業地域は工場が並び、住居が点在しているイメージ
工業地域はほぼ全域に工場が立ち並んでいるイメージです。工場が建っていないスペースに、何件か住居が密集していることがあります。住宅は建てられるものの、基本的に居住に向かない地域ということはぜひ押さえておきましょう。
工業系用途地域③:工業専用地域
工業専用地域は、基本的に工場専用に整備された地域です。
工業専用地域の概要
工業専用地域では工場や倉庫と簡易的な診療所や保育施設、会社の事務所が建築できます。住宅や店舗、教育施設などは一切建てられません。まさに工場のための地域となっており、公害のリスクもあるため居住はできないよう制限されています。
工業専用地域は「工業団地」のイメージ
引用おすすめ工場求人
工業専用地域は住宅や店舗などほとんどの施設が建築できないので、基本的には工場ばかりが並んだ「工業団地」のようなイメージになります。工場勤めの方には、非常に馴染みのある風景でしょう。
まとめ
13種類の用途地域のうち、どれが設定されているかによって建てられる建物が変わってきます。そのため不動産を購入する場合には、用途地域の基本は押さえておく必要があるでしょう。
例えば駅に近い商業地域に建てられた区分マンションは利便性が高いため、アパートや戸建てが立ち並ぶ住宅街よりも賃貸ニーズが高くなる傾向があります。用途地域によって空室リスクなどが変動することも十分考えられます。用途地域に関してご不明な点がございましたら、是非当社コンサルタントまでご相談ください。
この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
ブログ等:はやてのブログ