【2024年6月最新版】不動産投資における130万円の壁とは?壁の概要や他の壁との違いをわかりやすく解説!
- 更新:
- 2024/07/26

家族の扶養に入っている場合、130万円・103万円・150万円といった収入の上限額=「壁」が存在します。これらの壁は基本的に給料を受け取っている方に該当。しかし、130万円の壁だけは不動産投資で収入を得ている場合も共通です。
本記事では「130万円の壁」の概要や他の壁との違い、不動産投資との関係について解説します。また、2年間限定で実施される、130万円を超えても社会保険の扶養から外れない制度や130万円を越えてしまった場合の手続きについても解説。本記事を読むことで、「130万円の壁」の概要や不動産投資で気を付けるべきポイントが理解できるでしょう。
130万円の壁について理解したい方、不動産投資との関係が気になる方は、ぜひ最後までお読みください。
- 目次
- 130万円の壁とは社会保険上の扶養から外れる金額
- 130万円の壁により「働き控え」が発生
- 不動産投資と「130万円の壁」
- 不動産投資で130万円の壁を越えた場合の手続き3ステップ
- 不動産投資でも103万円・150万円に近い壁がある
- まとめ
130万円の壁とは社会保険上の扶養から外れる年収の上限
130万円の壁とは、社会保険上の扶養から外れ、自分で国民健康保険や社会保険に入らなければいけない年収の上限額を指します。
社会保険上の扶養とは、一定の収入であれば家族が加入する社会保険に「被扶養者」として加入できる制度です。「一定の収入」とは、2024年6月現在は130万円と106万円。かつては130万円のみであったことから「130万円の壁」と呼ばれています。
社会保険上の扶養は収入額で判定。雇用保険で支給される失業手当や傷病手当金、通勤にかかる交通費も含まれます。給与収入だけで130万円を超えた場合はもちろん、不動産投資の収入と給与収入との合計が130万円を超えても、社会保険の扶養から外れ自分で保険加入することとなります。
条件によっては「106万円の壁」となる
勤務先の規模や契約形態によっては、年収が106万円を超えた時点で社会保険上の扶養から外れる場合もあります。いわゆる「106万円の壁」です。勤務先が次の条件に合致する場合、年収106万円を超えた時点で社会保険上の扶養から外れます。
- 従業員数が101名以上
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 月額賃金が8万8千円以上
- 2ヶ月以上雇用される見込みがある
- 学生ではない
なお、2024年10月1日からは、従業員数51名以上の企業でも106万円の壁が適用となります。
参考年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました(厚生労働省)
フリーランス(個人事業主)の場合はケースバイケース
フリーランス(個人事業主)の場合、加入している社会保険組合により「年収130万円」の定義が変動。保険組合が認めた経費を引いて年収130万円以上、もしくは所得48万円以上など、組合によって条件が異なります。青色申告をしている場合はそもそも扶養に入れない企業もあるので、詳しくは加入している保険組合に問い合わせましょう。
「103万円の壁」「150万円の壁」との違い
103万円と150万円の壁と130万円の壁は、基準となる制度が違います。
103万円と150万円の壁は「税法上の壁」です。社会保険の扶養から外れる「130万円の壁」とは違い、税金や控除が変わる基準となります。
103万円の壁は所得税が加算される金額
「103万円の壁」は所得税が加算される基準で、給与を受け取っている方(給与所得者)が対象です。
給与所得者は、下記の控除を受けられます。
- 基礎控除48万円 + 給与所得控除55万円 = 控除総額103万円
受け取った給与から103万円の控除額を差し引いた所得に対して所得税が加算されるため、「103万円の壁」と呼ばれているのです。
なお、年収が100万円前後ある場合、住民税も加算されます。加算対象額は、自治体によって異なるので、お住まいの自治体に確認しましょう。
150万円の壁は配偶者控除がなくなる金額
「150万円の壁」を超えると、配偶者控除がなくなります。こちらも、給与所得者が対象です。
配偶者がいる場合、配偶者の給与収入が150万円を超えるまでは「配偶者控除」と呼ばれる38万円の控除を受けられます。150万円を超えると配偶者控除が「配偶者特別控除」となり、210万円まで控除額は段階的に減少。給与収入が年間150万円までは配偶者控除を満額受けられることから、「150万円の壁」と呼ばれています。
130万円の壁により「働き控え」が発生
130万円の壁を超えると社会保険上の扶養から外れ、社会保険の加入が必須となります。すると、103万円前後で働いている方よりも収入額が減少する「逆転現象」が発生。年収150万円くらいまでは、手取り額が急激に減少してしまいます。
月々の手取額を確保しかつ家庭全体での支出を減らすために、130万円を超えないように勤務を調整する「働き控え」が起こっていることが、近年の大きな問題です。特に扶養内で働く主婦は、年収額を調整するために12月になると勤務を減らすケースがあります。働き控えにより人材が確保できず人手不足が起こっていることも、130万円の壁に起因する問題点です。
106万円の壁についても、同様です。106万円を超えないように働き控えが発生するケースが増えています。
働き控えをなくすため「年収の壁・支援強化パッケージ」が制定
130万円の壁や106万円の壁による当面の働き控えをなくすため、2023年に厚生労働省により「年収の壁・支援強化パッケージ」が制定されました。130万円・106万円の壁=「年収の壁」を意識せずに働く環境づくりを支援し就労意欲を向上させ、人手不足に対処することが目的です。
同パッケージにより、2024年までは収入が130万円・106万円を超えても、社会保険の扶養に入ったまま働き続けることが可能となりました。では、130万円・106万円を超えないために、どのような支援があるのか見ていきましょう。
130万円を超えた場合は事業主の証明により社会保険の加入継続
やむを得ない理由で年収130万円を超えてしまった場合、事業主が「一時的な収入変動である」旨を証明することにより、引き続き社会保険の被扶養者として認定、社会保険の扶養に入ったままでいられます。本制度は2023年10月20日より適用、2024年に検討される年金制度改正にて、同年以降の対応が決まる見込みです。
一時的な収入変動が認められるケースと認められないケースは、以下の通り。
認められるケース | 認められないケース |
---|---|
|
|
なお、「一時的な収入変動」については定めがなく、各企業に判断が委ねられています。また、あくまで一時的な事情であることから、適用は連続2回までが上限です。
証明書は、社会保険の扶養に入る資格(=被扶養者)の認定時、もしくは毎年行われる収入確認の際に、保険組合に提出します。妻が被扶養者・夫が保険加入者である場合、妻の職場にて証明書を取得し、夫の会社に提出する流れです。証明書の様式は、厚生労働省の特設サイトにあります。
106万円の壁を越えた場合は支援金が出る
106万円の壁を超えた場合、賃金が15%(3年目は18%)以上上昇した場合に1名あたり最大50万円が支給されます。6ヶ月ごとに10万円が支給され、期間は最大3年(6か月ごとに1回で、計5回まで)です。労働時間が延長されたことで賃金が増額した場合は、30万円です。
支援金は、社会保険料を算定する際に「収入」とはみなされません。ただし、対象外となるのは、社会保険料の相当額分だけです。社会保険料の相当額以上を受け取っている場合は社会保険料の算定対象となり、収入とみなされます。
130万円の壁は今後下がることが見込まれる
2025年に年金制度が改正される際に、社会保険の扶養に入る条件である「130万円の壁」が下がるのでは、と言われています。
年金制度について議論する「社会保障審議会年金部会」では、社会保険の適用を拡大する方向で議論が進行中です。社会保険の扶養に入っていると国民年金の「第3号被保険者」となり、年金の納付が不要となります。共働き家庭が増加していること、「130万円の壁」により働き控えが起こっていることなどを鑑み、第3号被保険者制度の根本的な見直しを含め、扶養の範囲を130万円から下げることが検討されている状況です。
不動産投資と「130万円の壁」
130万円の壁は、不動産投資にも影響を及ぼします。不動産投資の収入が130万円を超えた場合、もしくは給与収入と不動産収入が合算して130万円となると、社会保険の扶養から外れてしまい、自分で保険に加入しなければならないからです。
不動産投資での収入源は、主に家賃収入です。家賃とともに受け取る敷金、礼金、更新料、共益費、保証金も収入に含まれます。130万円は、収入から一定の費用を「経費」として控除した金額により判定。ただし、すべての費用を経費として控除できるわけではありません。
ここからは、不動産投資の収入から控除できる費用とできない費用について解説します。130万円の壁を越えるかどうかシミュレーションする際に、お役立ていただければ幸いです。
不動産投資の収入から控除できる費用
不動産投資では、収入と所得を分けて計算しなければなりません。
- 収入=不動産投資で手元に入る総額
- 所得=収入 - 必要経費
130万円の壁を越えるか否かの判断は、収入で実施。所得の計算では、収入から必要経費を控除できます。税法上、不動産投資の費用で経費にできるのは、次の4種類。不動産投資による収入についても、以下に掲げる一部費用を控除しての計算が可能です。
費目 | 備考 |
---|---|
各種税金 | 固定資産税・登録免許税・不動産取得税・地価税・特別土地保有税・事業所税など |
損害保険料 | 火災保険・傷害保険・盗難保険・損害賠償責任保険など |
修繕費 | 資本的支出にあたる部分は経費計上不可 |
減価償却費 | 建物・自動車などの固定資産に対して計上 |
上記は、あくまで税法上控除できる費用です。収入の判定で控除できる費用は、保険組合によって異なります。詳しくは各組合にお問い合わせください。また「106万円の壁」を超える場合などより詳しいケースについての判断は、税理士や税務署にお問い合わせいただくことをおすすめします。
すべての費用を経費にはできない
不動産投資の収入を計算するにあたっては、経費にできる費用とできない費用があります。所得税と住民税や資本的支出(CAPEX)となる費用は、経費にできません。
不動産を持つ個人にかかる税金である所得税や住民税は、経費計上が不可です。また、「資本的支出(CAPEX)」と呼ばれる一部の修繕費も、資産価値を高めるための経費であることから費用計上ができません。
以下の支出が、資本的支出となります。
- 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
- 用途変更のための模様替えなど、改造または改装に直接要した金額
- 機械の部分品を特に品質または性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうち通常の取替えの金額を超える部分の金額
不動産投資で130万円の壁を越えた場合の手続き3ステップ
不動産投資やパートの収入が130万円を超えてしまった場合、社会保険の扶養を外れて自分で国民健康保険や社会保険に加入する必要があります。ここからは、不動産投資で130万円を超えた場合を想定し、自分で国民健康保険へ加入する際に必要な手続きについて説明します。
ステップ①:「健康保険被扶養者(異動)届」「国民年金第3号被保険者関係届」の提出と国民健康保険加入
不動産投資で130万円を超えた場合、まず加入している保険組合に「被扶養者の削除」を届け出ます。「被扶養者」とは、社会保険加入者の扶養に入り社会保険に加入している方です。被扶養者を削除するには、次の書類を保険組合に提出します。
- 健康保険被扶養者(異動)届</li>
- 国民年金第3号被保険者関係届
次に、国民健康保険と国民年金への加入手続きを行います。手続きは、市区町村役場の窓口で実施。身分証明書と、以下どちらかの書類が必要です。
- 基礎年金番号通知書
- 基礎年金番号がわかる書類(年金手帳など)
加入手続きは、社会保険の扶養から外れることになった日から14日以内に行いましょう。マイナンバーカードがあれば、デジタル庁管轄の「マイナポータル」からの電子申請も可能です。手続きが2年以上遅れた場合は、国民年金の未納期間が発生するため将来の年金額が減少。2年を超えた部分についてはさかのぼっての納付もできなくなるため、加入手続きは速やかに行いましょう。
ステップ②:確定申告
不動産所得が年間20万円以上となる場合は、該当年度の翌年2月16日から3月15日までに確定申告が必要です。e-Taxによる電子申告もしくは紙面で、最寄りの税務署にて申告します。
確定申告をしないと、延滞税や無申告加算税といった追徴課税が課されます。不動産所得が年間20万円を超える場合は、必ず確定申告を行いましょう。
ステップ③:住民税・所得税の納付
確定申告により住民税・所得税の支払いが発生する場合があります。税額が確定すると、自宅に通知が来ます。住民税は年4回の支払いです。所得税は、確定申告を済ませた後、3月15日までに支払います。
支払い方法は、現金納付の他に口座引き落としができる場合もあります。2023年4月1日からは、地方税統一QRコード「eL-QR (エル キューアール) 」が採用され、クレジットカードやインターネットバンキング、各種電子マネーでも支払いが可能となりました。どの方法でも、納付を忘れることがないように気を付けましょう。
不動産投資でも103万円・150万円に近い壁がある
「103万円の壁」「150万円の壁」は、給与所得者が税法上の扶養から外れる条件となる壁です。これに近い壁が不動産投資にもあります。
不動産投資では、不動産所得が48万円を超えると、超えた所得に対し所得税が課税。所得が133万円を超えると、配偶者特別控除がなくなります。ここからは、不動産所得の計算方法や、不動産所得が48万円、133万円を超えた場合について詳しく解説します。
所得48万円以上:所得税の支払いが必要となる
不動産投資では、「不動産所得」が48万円以上になると、48万円を超えた所得に対して所得税がかかります。「不動産所得」は、不動産投資の収入から基礎控除額の48万円と必要経費を引いた額です。
- 不動産所得 = 不動産収入 - (基礎控除48万円 + 必要経費)
不動産投資のみで収入を得ている場合は、収入103万円ではなく所得48万円以上から所得税がかかる点に注意しましょう。
給与収入がある場合 | 103万円以上の収入 |
---|---|
不動産投資の収入がある場合 | 48万円以上の所得 |
パート収入と不動産投資の収入がある場合
パート収入と不動産投資の収入がある場合、48万円以上の所得に対して所得税が課せられます。下記の順番で所得を計算しましょう。
- 給与所得を計算する(給与収入-給与所得控除55万円)
- 不動産所得を計算する(不動産収入-(基礎控除48万円+必要経費))
- 給与所得と不動産所得を合算し、総所得を出す
給与所得が10万円で不動産所得が40万円だった場合、総所得は50万円となります。この場合、所得48万円を超えた分の2万円が、所得税の課税対象額です。
所得133万円以上:配偶者特別控除の対象から外れる
不動産投資の所得が133万円以上になると、配偶者特別控除の対象から外れます。配偶者控除特別控除は、不動産投資の収入から費用を引いた不動産所得が48万円以上133万円以下が対象です。配偶者特別控除は所得額が増えるにつれて減少し、所得が133万円以上になるとなくなります。
不動産所得133万円までの配偶者特別控除額は、下表の通り。不動産所得が133万円を超えた時点で、配偶者特別控除がなくなります。
まとめ
130万円の壁は、不動産投資にも大いに関係してきます。不動産投資だけで130万円を超えてしまった場合、扶養から外れて自分で国民保険に加入しなければなりません。特に社会保険の扶養に入ったまま不動産投資を行いたい場合は、収入が130万円を超えないよう調整が必須です。
不動産投資において、収入から控除できる費用は複雑でわかりづらい側面があります。控除できる費用については、当社でも適切なアドバイスが可能です。130万円の壁を超えることで不動産投資を踏みとどまっている場合は、ぜひ無料相談を活用していただけましたら幸いです。
当社は常に最新情報を追い、有効な節税対策に関するアドバイスも提供しています。不動産投資で130万円の壁を超えることに関して不安な点がございましたら、ぜひ当社の無料相談をご活用ください。

この記事の執筆: 堀乃けいか
プロフィール:法律・ビジネスジャンルを得意とする元教員ライター。現役作家noteの構成・原案の担当や、長野県木曽おんたけ観光局認定「#キソリポーター」として現地の魅力を発信するなど、その活躍は多岐に亘る。大学および大学院で法律や経営学を専攻した経験(経済学部経営法学科出身)から、根拠に基づいた正確性の高いライティングと、ユーザーのニーズに的確に応えるきめ細やかさを強みとしている。保有資格は日商簿記検定2級、日商ワープロ検定(日本語文書処理技能検定)1級、FP2級など。
ブログ等:堀乃けいか