市街化調整区域は買わない方がいい?メリット・デメリットや将来性を解説
- 更新:
- 2025/02/24

「市街化調整区域の土地は安いけど、本当に買って大丈夫?」「将来、建て替えや売却はできるの?」
市街化調整区域は価格が安いのが魅力的な一方、建て替えの制限や将来的な資産価値の低下など、注意すべきデメリットも多いです。知らずに購入してしまうと、後々大きな後悔をしてしまうかもしれません。
そこで今回は、市街化調整区域における不動産購入のメリット・デメリットを徹底的に解説。将来性の観点から見た注意点や、よくある疑問についても詳しく説明していきます。これから住宅購入や不動産投資をお考えの方は必見です。
- 目次
- 市街化調整区域とは?市街化区域との違いは?
- 市街化調整区域のデメリット|買わない方がいい理由
- 市街化調整区域のメリット
- 市街化調整区域の物件は買わないほうがいい?後悔する?
- 後悔しない不動産投資は市街化区域で始めよう!
- 市街化区域と市街化調整区域の調べ方
- 市街化調整区域に関するよくある質問
- まとめ
市街化調整区域とは?市街化区域との違いは?
「市街化区域」と「市街化調整区域」は、似た名称ですがまったく異なるものです。都市計画法第7条により、それぞれの区域が明確に区別されています。
ざっくりいうと、市街化区域は「優先的・計画的に市街化していく区域」のこと。市街化調整区域は「市街化を抑制していく区域」のことです。詳しい「市街化区域」と「市街化調整区域」の違いについて見ていきましょう。
市街化区域:すでに街・もしくは10年以内に街にするエリア
市街化区域とは、優先的・計画的に市街化していく区域のこと。より具体的にいうと、「すでに街であるか、もしくは10年以内に街にするエリア」が市街化区域です。市街化区域は下記13種類の「用途地域」に分類されています。
用途地域の種類 | 建てられる建物の例 |
---|---|
第一種低層住居専用地域 | 10 ~ 12mまでの低層住宅 |
第二種低層住居専用地域 | 低層住宅や小規模なコンビニ・飲食店 |
第一種中高層住居専用地域 | 2階建て以内で床面積が500㎡以下の店舗・教育施設・病院 |
第二種中高層住居専用地域 | 2階建て以内で床面積1,500㎡以下の店舗・事務所 |
第一種住居地域 | 床面積3,000㎡までの店舗・事務所・ホテル |
第二種住居地域 | 床面積10,000㎡以下の遊戯施設 |
準住居地域 | 車庫・倉庫・自動車修理工場 |
田園住居地域 | 住宅・高校までの教育施設・図書館・病院 |
近隣商業地域 | 店舗・事務所・映画館(床面積の制限なし) |
商業地域 | 百貨店などの大規模店舗・風俗施設 |
準工業地域 | 小 ~ 中規模工場や工場関連施設 |
準工業地域 | 小 ~ 中規模工場や工場関連施設 住宅・教育施設・娯楽施設も建設可能 |
工業地域 | 規模を問わない工場 住宅・店舗も建設可能 |
工業専用地域 | 工場のみ |
13の用途地域に共通するのは「制限なくなんらかの建物が建てられる」ということ。計画的に市街化を進めるために、市街化区域とその用途地域がしっかりと定められています。なお用途地域については下記の記事で詳しく解説しているので、気になる方は読んでみてください。
参考13種類の用途地域とは?概要と具体的なイメージを徹底解説!
市街化調整区域:街にする予定のない農地・森林などのエリア
市街化調整区域は、市街化を抑制していく区域のこと。具体的にいうと、街にする予定のない農地や森林などのエリアが市街化調整区域にあたります。街にする予定がないため、原則として住宅・商業施設を建てるなどの開発行為は禁止です。
ただし完全に禁止となっているわけではなく、自治体に申請し許可が下りれば住宅などを建設できる場合があります。市街化調整区域に建物を建てたいなら、建設基準を示した都市計画法第34条の内容を踏まえつつ、自治体と相談しましょう。
市街化調整区域のデメリット|買わない方がいい理由
市街化調整区域のデメリットは下記の3つです。
「価格が安いから」といって手を出すと後悔しかねません。3つのデメリットを詳しく見ていきましょう。
建て替えや増築ができない可能性がある
市街化調整区域では、開発行為が厳しく制限されています。そのため、建物が古くなった際の建て替えや、家族構成の変化に応じた増築が、原則として認められません。建て替えや増築には市町村長の許可が必要で、許可基準も厳格です。
例えば、既存建物が老朽化していて建て替えが必要な状態であっても、建物の規模や用途によっては許可が下りないケースがあります。将来的な変化への対応が難しく、住宅としての機能を維持しづらいのがデメリットです。
インフラが整備されない可能性がある
市街化調整区域は、そもそも都市開発を抑制する地域として指定されているため、インフラ整備が後回しにされがちです。具体的には以下のような問題が発生する可能性があります。
- 上下水道が未整備
- ガス供給がない
- 電気が通らない
- 道路が未舗装のまま
- インターネット環境が整わない
水道や電気がなければ生活は困難です。不動産投資では「賃貸するつもりだったが、インターネットが通じないから誰も入居してくれない」といった事態になり得ます。また、将来的なインフラ整備の予定も立ちにくく、基本的に改善には期待できないと思ったほうが良いでしょう。
将来性が低い
市街化調整区域は、その性質上、将来的な発展や価値向上が期待できません。具体的には以下のとおり。
- 地価の下落が継続的に進む
- 物件の資産価値が年々低下する
- 周辺の開発が進まず利便性の向上が見込めない
単に土地や建物としての価値が落ちてしまうのはもちろん、周辺の商業施設なども減っていく傾向があるため、利便性の面が徐々に悪化していきます。手放そうと思っても「タダ同然の安価になってしまう」「そもそも買い手がつかない」といったトラブルになりかねません。
将来性の低さから、自分が住む場合も不動産投資に使う場合も、市街化調整区域の物件に手を出すのは避けたほうが良いでしょう。
市街化調整区域のメリット
市街化調整区域のメリットは以下の3つです。
ただし、先述のデメリットの面が強く、メリットだけを見て市街化調整区域の物件購入を決めるべきではありません。詳しく見ていきましょう。
土地・建物の価格が安い
市街化調整区域の最大のメリットは、土地・建物の価格の安さです。開発が抑制されているので、地価や物件価格の相場は下落傾向にあります。そのため土地・建物いずれも安く購入することが可能です。
建物付きの物件でも総額を抑えられ、広い土地も比較的安価に確保することが可能。「使途が完全に決まっているけど、予算の問題で普通の物件を買うのは難しい」というケースでは、市街化調整区域の物件でも検討する余地があるかもしれません。
都市計画税がかからない
市街化調整区域では、市街化区域に課税される都市計画税がかかりません。都市計画税は固定資産税評価額の0.3%程度ですので、この分だけ毎年の固定費を抑えられます。
ただし、市街化調整区域はそもそも地価が安いため、もし都市計画税がかかっていたとしても、さほど大きな金額にはなりません。都市計画税が浮くことによる金銭的なメリットには、あまり期待しないほうが良いでしょう。
隣人トラブルのリスクがほとんどない
市街化調整区域は人口密度が低く、そもそも近隣に住民がほとんど住んでいないケースが多いです。そのため、以下のようなメリットがあります。
- 生活音などのトラブルが発生しにくい
- プライバシーが保たれやすい
- 自由な生活スタイルを維持できる
住宅地で起きがちな隣人トラブルを心配する必要はほとんどないでしょう。電気やガスなどインフラが通っている物件であれば、老後を夫婦で悠々自適に過ごすために買う、といったケースには役立つかもしれません。このようなニーズを偶然つかめれば、不動産投資でも成功する可能性はあります。
市街化調整区域の物件は買わないほうがいい?後悔する?
結論からいうと、市街化調整区域への不動産投資は基本的におすすめしません。その理由や一部のおすすめな人、市街化調整区域の活用方法について見ていきましょう。
エリアの成長が見込めないため資産価値は落ちる一方
市街化区域は開発行為が制限されているため、新たな住宅や商業施設などエリアを発展させる建物が建つことはほとんどありません。そのためエリアの成長は見込めず、もし物件を購入しても資産価値は落ちる一方となるでしょう。
また資産価値が落ちた格安物件ですら、まったく需要がないと売却も難しくなります。基本となる家賃収入も安定して得られず、出口戦略も立てづらい市街化調整区域に手を出すのはあまりおすすめしません。
極小の元手で始めたいならアリ
「とにかく費用を抑えて、不動産投資にチャレンジしてみたい」という方であれば、市街化調整区域の物件を購入してみるのもひとつの手でしょう。市街化調整区域の物件なら、土地込みで数百万円から購入できる場合があります。
まれに市街化調整区域にもかかわらず一定の賃貸需要があるエリアも存在するので、しっかりリサーチしてニーズを押さえられれば思わぬお宝物件にもなり得ます。ただし失敗する確率は非常に高く、元手が小さく済むとはいえ損失を出すケースがほとんどでしょう。
市街化調整区域なら「土地だけ買って太陽光発電投資」がおすすめ
市街化調整区域で低リスクな投資を始めたいなら、「土地だけを購入し、太陽光発電設備を設置する」方法がおすすめです。太陽光発電設備の設置は開発行為にあたらないため、市街化調整区域で行っても問題ありません。日当たりの良い更地に設置できれば、安定した売電収入を得られるでしょう。
ただし太陽光発電設備で発電した電気を定額で買い取る「FIT制度」の買取価格は、年々下がってきています。平成24年時点で34円/kWhだったFIT価格は、令和5年の時点で16円/kWhです。一度も上がったことはなく、太陽光発電の普及に伴いこれからも下がり続けるとみられます。
参考資源エネルギー庁
FIT制度が突然なくなるのは考えづらいですが、買取価格が下がり続けるのはほぼ間違いありません。不確定要素が大きいため、下手に手を出すよりは市街化区域で普通に不動産投資をしたほうが良いでしょう。
後悔しない不動産投資は市街化区域で始めよう!
やはり不動産投資は市街化区域の物件を狙うのが正攻法です。その理由やおすすめの物件を見ていきましょう。
家賃の安定性・売却のしやすさが魅力
市街化区域の物件は、やはり家賃の安定性や売却のしやすさが魅力です。市街化調整区域とは異なり常に賃貸需要があるエリアが多いため、空室発生のリスクは低く安定した家賃収入に期待できます。万が一空室が発生しても、短期間で次の入居者が見つかるケースが大半です。
また安定した市街化区域の物件であれば、欲しがる他の投資家も多くなります。手放したくなったときにも売却先は見つかりやすく、出口戦略に頭を悩ませることは少ないでしょう。
初心者は中古区分マンションからのスタートがおすすめ
不動産投資初心者は、市街化区域の物件の中でも「中古区分マンション」から始めるのをおすすめします。中古区分マンションがおすすめな理由は下記のとおりです。
- 価格が安く手を出しやすい
- ニーズが高い
- 手間がほとんどかからない
中古区分マンションは安いものだと1,000万円以下で購入可能。数千万円するような一戸建て物件やアパートと比較し、圧倒的に手を出しやすいのがポイントです。もちろんローンを使って購入できるので、最小限の負担で始められます。
また区分マンションはワンルーム・1K前後の物件が多いですが、この間取りは単独世帯(1人暮らし)から非常に好まれます。単独世帯数は右肩上がりに増えており、すなわち区分マンションのニーズが高いと分かるでしょう。
さらに中古区分マンションの管理・賃貸募集はほとんど不動産会社に任せられるため、忙しいサラリーマンの方でも負担なく運用可能です。当社では東京23区や大阪など、特に単独世帯が増えており需要の高い物件を多数取り扱っています。興味のある方は、当サイトに無料会員登録して非公開の優良物件情報をチェックしてみましょう。
市街化区域と市街化調整区域の調べ方
市街化区域と市街化調整区域の調べ方は、下記のように調べたい範囲によって異なります。
- 特定の物件について調べたいとき
- 特定の区域について調べたいとき
それぞれ見ていきましょう。
特定の物件について調べたいとき
購入を検討している特定の物件について調べたいときには、その物件の資料に書かれている「用途地域」の項目を確認してください。用途地域が設定されていれば市街化区域で、「市街化調整区域」と記載されていれば文字通り市街化調整区域です。
特定の区域について調べたいとき
特定の区域について調べたいときには、その区域を管轄する市町村の「都市計画課」に問い合わせてみてください。ほとんどの自治体で、都市計画課の担当者が市街化区域かそうでないかすぐに教えてくれます。
なお市町村によっては、「都市計画図」を自治体の公式サイトで公開しています。都市計画図でも市街化区域・市街化調整区域を確認できるので、まずは自治体の公式サイトで公開していないか確認してみると良いでしょう。
市街化調整区域に関するよくある質問
市街化調整区域に関連するよくある質問と、その回答をまとめています。
- 市街化調整区域の固定資産税はいくらくらいになる?
- 市街化調整区域の土地や建物を相続する(される)とき、なにか気を付ける点はある?
- 市街化調整区域の物件を買って後悔した人の例を教えて。
- 市街化調整区域の物件を買える人は?購入に条件があるの?
- 市街化調整区域の物件は将来なかなか売れない?
- 市街化調整区域が市街化区域になることはある?
気になる疑問があれば確認しておきましょう。
市街化調整区域の固定資産税はいくらくらいになる?
通常の市街化区域と同じく、市街化調整区域の固定資産税は、土地・建物の評価額に対して1.4%が基本税率となります。ただし、以下の点から固定資産税は相場の半分以下となるケースが多いです。
- 土地の評価額自体が低いため、支払額も少なくなる
- 都市計画税(0.3%)がかからない
- 農地として利用している場合は、さらなる軽減措置がある
具体的な金額はケースにより異なります。購入を検討している土地・物件の固定資産税額が気になるものの、自分で計算できず悩んでいる方は、当社のコンサルタントへお気軽にご相談ください。
市街化調整区域の土地や建物を相続する(される)とき、なにか気を付ける点はある?
市街化調整区域の土地や建物を相続する(される)ときの注意点は以下の3つです。
- 建て替えの制限は相続後も継続される
- 相続後の売却が困難な可能性がある
- 維持管理に費用負担がかかる
もっとも注意すべきは売却が困難になる可能性です。用途の見込めないエリアの土地や建物は、そもそも買い手がつかないリスクがあります。市街化調整区域は時間が経つほど売却が難しくなるので、相続の可能性があるなら早めに対策を考えておきましょう。
市街化調整区域の物件を買って後悔した人の例を教えて。
よくある後悔の事例は以下のとおりです。
- 建物の老朽化に伴う建て替えが許可されず、住み続けられなくなった
- 買ってから子育て世帯になったが、学校や病院が遠く不便
- インフラ整備の遅れにより、生活に支障が出ている
- 投資用物件として買ったが誰も借りてくれず、売却しようとしても買い手が見つからない
自分が住む場合の利便性が低いのはもちろん、投資用物件として購入したものの誰も住まず、負債だけを残してしまうケースが後を絶ちません。市街化調整区域の物件を使った不動産投資を考えている人は、本当に勝算があるのか複数の専門家に相談しましょう。当社でも不動産投資コンサルタントが無料相談に対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
市街化調整区域の物件を買える人は?購入に条件があるの?
市街化調整区域の物件購入には特に条件がないため、購入自体は誰でも可能です。ただし用途が制限されるため、購入したからといって自由にできるわけではありません。
市街化調整区域の物件は将来なかなか売れない?
以下の理由で、市街化調整区域の物件は一般的に将来売るのが困難です。
- 担保価値が低くローンがほぼ通らない
- 将来的な資産価値の低下が予想される
- 商業施設の減少で利便性がより下がっていく
- 建築制限により活用方法が限られる
時間が経つほど市街化調整区域の利便性や資産価値は下がっていき、売却が難しくなっていきます。すでに市街化調整区域の土地や物件を持っているなら、早めに売却方法を考え始めるのが得策です。
市街化調整区域が市街化区域になることはある?
市街化調整区域が市街化区域になることはありますが、非常にまれです。昨今は人口が減少傾向にあり開発が抑制されているため、新たに市街化区域が指定されるケースも減ってきています。「市街化区域のすぐそばだから、将来市街化区域になる可能性もあるだろう」と期待するのはあまりおすすめしません。
まとめ
市街化調整区域は自治体の許可なしにはほとんどの開発行為ができません。土地や建物が安く手に入るのがメリットではあるものの、利便性の低さや資産価値の維持しにくさが大きなデメリットです。これから住んだり不動産投資したりするなら、成長性がある市街化区域の物件購入をおすすめします。
当社では市街化区域の中でも特に需要の高い「東京23区」「大阪」の物件を中心にご紹介できます。当社ならあなたの増やしたい手取りや、将来の資産形成計画に合った最適なご提案が可能です。ぜひ一度お気軽にご相談ください。

この記事の執筆: 及川颯
プロフィール:不動産・副業・IT・買取など、幅広いジャンルを得意とする専業Webライター。大谷翔平と同じ岩手県奥州市出身。累計900本以上の執筆実績を誇り、大手クラウドソーシングサイトでは契約金額で個人ライターTOPを記録するなど、著しい活躍を見せる大人気ライター。元IT企業の営業マンという経歴から来るユーザー目線の執筆力と、綿密なリサーチ力に定評がある。保有資格はMOS Specialist、ビジネス英語検定など。
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