世田谷区で不動産投資はアリなのか?世田谷エリアの魅力と留意点を解説
- 更新:
- 2023/12/26

二子玉川や下北沢などの賑やかな商業地区から、等々力渓谷のような豊かな自然まで多様な魅力が広がる世田谷区。
世田谷区は「住みたい街」として幅広い年代から人気も高く不動産投資においても魅力的な街ですが、投資をおこなうにあたってはいくつか留意点もあります。
この記事では、世田谷区を不動産投資の観点から掘り下げて解説します。不動産投資における東京都内でのエリア選定の参考になるのでぜひお読みください。
世田谷区の概要と魅力
面積・人口ともに23区トップクラスの世田谷区。
高級住宅街として有名な成城やオシャレなイメージの二子玉川に代表される「品がある」「お金持ちの住む街」というイメージがある一方で、下北沢や三軒茶屋など有名な商業地区もある多彩なエリアです。
まずは世田谷区の概要と主要なスポットについて紹介します。
世田谷区の概要と人口動態
東京23区の南西部に位置する世田谷区は、大田区に次いで2番目に面積が大きい区です。
区の東側は大田区・目黒区・渋谷区に、北側が杉並区に、西側が三鷹市と調布市に、そして南側の大半が多摩川を境界に神奈川県に接しています。
世田谷区によると2023(令和5)年12月時点で区内に居住しているのは50万世帯弱、人口92万人弱で、世帯数・人口ともに23区のなかで第1位です。
区内は烏山地域・北沢地域・世田谷地域・玉川地域・砧地域の5地域に大きく分かれ、一番人口が多い世田谷地域は一番少ない砧地域の約1.7倍の人口密度となっています。
2023(令和5)年の世田谷区将来人口推計によると、世田谷区の人口は1995(平成7)年以降26年間増加を続け、累計で14万人増加しています。2022(令和4)年・2023(令和5)年と人口が微減しているのは、コロナ禍による外国人転入の減少が要因のひとつです。
世田谷区の人口増加を支えてきた大幅な転入超過は近年転入・転出の差が縮まってきてきたものの、2022(令和4)年時点では転入超過となっています。
世田谷区の交通利便性
世田谷区内は都心から放射状に道路と私鉄各線が延びており、都内間だけでなく横浜をはじめとした神奈川県方面へのアクセスが非常に優れているのが特徴です。
鉄道は東西方向に京王線/京王井の頭線・小田急線・東急田園都市/大井町/目黒線、南北方面に東急世田谷線と多数の路線が走っています。京王線・小田急線ともに新宿まで1本であり、都心部への通勤・通学に重要な役割を果たしています。
世田谷区はJRも地下鉄も路線がない珍しい区です。その分バス路線が充実しており、東急バス・京王バス・小田急バスのほかにもコミュニティバスが10路線運行中です。
車でのアクセスも良く、東西方向では東名高速や、首都高・第三京浜・国道246号、南北方向の環七・環八通りと主要道路だけでも数多くあります。
世田谷区の有名スポットと魅力
世田谷区の魅力は趣のある豊かな自然と賑やかな商業地区のギャップではないでしょうか。
烏山地区にある「蘆花恒春園(ろかこうしゅんえん)」は、明治・大正期の文豪、徳冨蘆花(健次郎)が晴耕雨読の余生を過ごした住居と庭や、墓地を中心とした土地に作られた公園です。
花の丘や広場のほかに、原稿や身の回りの品を収めた記念館や世田谷ゆかりの文学者約55人の貴重な資料が展示された文学館などが楽しめます。
北沢地区にある「豪徳寺」は彦根藩主・井伊家の江戸における菩提寺で、「招き猫伝説」のお寺として人気のスポットです。
引用豪徳寺
藩主が寺の門前にいた猫に手招きされて雷雨から逃れたのをきっかけに、支援を受けた寺が福を招いた猫をまつったのが由来とされており、境内で見られる四季折々の植物も見どころの一つです。
その豪徳寺のすぐ近くを走るのが東京で2箇所しかない路面電車のひとつ、「東急世田谷線」です。
三軒茶屋から下高井戸までの約5kmの10 駅の区間を20分弱で走るのどかでかわいらしい電車からは、オシャレで賑やかなイメージがある三軒茶屋の下町レトロな一面も垣間見えます。
華やかさと豊かな自然が両立しているもう一つの地域が玉川地区です。二子玉川のような大きな商業地区がある一方で、等々力渓谷のような喧騒とは無縁なエリアも残っています。
「家族ぐるみで楽しめる公園」をテーマに自然の地形を活かして作られた「砧公園」は、地域住民に親しまれるスポットです。
ピクニックに最適な芝生のファミリーパークや運動施設からなる園内には約840本の桜の木があり、春は家族連れで賑わいます。
(砧公園)
運動施設やサイクリングコースのほかに、園内の一角には「世田谷美術館」があり、子どもから大人まで自然やアートが楽しめます。
世田谷区の雰囲気と賃貸ニーズ
ここでは世田谷区各エリアの代表的な街、千歳烏山・下北沢・三軒茶屋・二子玉川・成城学園を中心に世田谷区の雰囲気について見ていきましょう。区全体の賃貸ニーズについても合わせて解説します。
世田谷区の各エリアと雰囲気
世田谷区の北西部にあたる烏山地域の中心的な駅が、京王線「千歳烏山駅」です。
特急停車駅で新宿までは1本、20分足らずでアクセスできる環境にありながら両隣の駅と家賃相場があまり変わらないため、ベッドタウンとしても人気で近年街づくりも進んでいます。
参考HOMES 京王線の家賃相場情報(2023年12月15日時点)
(えるもーる烏山)
駅周辺には商店街「えるもーる烏山」のほかに地元のスーパーから大手チェーンのスーパー、ファーマーズマーケットまで複数揃います。少し歩けば蘆花恒春園や祖師谷公園などの緑も楽しめる暮らしやすいエリアです。
多くの個性的な店が軒を連ね、サブカルチャーの街としても知られる「下北沢駅」は区の北東に位置する北沢地域の中心的な駅です。
近年では2022(令和4)年3月に駅高架下の商業施設「ミカン下北」が開業。「ミカン(未完)」のテーマの通り、下北沢の雑多な魅力を残しながら進化を続ける街でもあります。
引用ミカン下北
「住む街」というより「出かける街」の印象が強い下北沢ですが、買い物環境も充実しており駅から少し離れれば閑静な住宅街が広がっているため意外と住みやすさもある街です。
区の東側中央、世田谷地域の中心「三軒茶屋駅」は新旧入り混じった魅力のある街です。
駅と直結する26階建ての高層ビル「キャロットタワー」は展望ロビー・店舗・オフィス・ホール・行政機能まで揃った複合ビルで、三軒茶屋のランドマーク的存在です。
駅周辺には複数の商店街や夜遅くまで営業しているスーパーがあるほか、昔ながらの個人店も多く便利に買い物を楽しめます。
また、渋谷駅まで電車で約5分、車でも国道246号から環状七号線、あるいは首都高速の三軒茶屋出入口にすぐアクセスでき交通利便性にもあふれています。
区の南東に位置する玉川地域で有名な駅が「二子玉川」です。駅周辺には複数棟からなる駅直結の大型ショッピングセンター「二子玉川ライズ」や高島屋があり、高級感のある華やかな印象の街です。
引用二子玉川ライズ
東急田園都市線・大井町線が乗り入れており、都内全域にアクセスしやすい二子玉川は都会的な街並みと緑豊かで良好な住環境が両立しています。
区の南西部分、神奈川県と接する砧地域にある街が高級住宅街として名高い成城地域です。
成城の玄関口、小田急線「成城学園前駅」は新宿まで急行で約15分。駅から少し離れると目を見張るほどの大邸宅が並ぶ閑静な住宅街が現れます。
(成城6丁目いちょう並木)
生活コストが高そうなイメージの成城エリアですが、隣駅の「祖師ヶ谷大蔵駅」には庶民的な商店街もあり、反対側の隣駅「喜多見駅」は家賃相場も大きく下がります。
参考HOMES 小田急小田原線の家賃相場情報(2023年12月15日時点
区内を流れる「野川」の川沿いを楽しめる「野川緑道」など付近に緑も多く、住環境に優れた街です。
世田谷区の賃貸ニーズ
生活・交通利便性の高さと豊かな緑が両立し、全体的に住環境も良好な世田谷区は住みやすいエリアとして人気です。
大東建託がおこなった「いい部屋ネット住みたいまちランキング(首都圏)」でも2022年度1位、2023年度も2位と人気の高さを示しています。
公園や美術館も多く、自然豊かで良好な住環境でファミリー層が多い世田谷区ですが、生活・交通利便性の高さから単身者のニーズも高いエリアです。
しかしHOMESによると単身者のニーズに対して供給物件が多く、逆に1LDK〜2DKの少人数世帯向けの物件が不足気味とも読み取れます。
世田谷区の地価推移と不動産投資における将来性
最後に、世田谷区の地価推移と不動産投資の観点から将来性や留意点について解説します。
世田谷区の地価推移
令和5年の地価公示によると、世田谷区の住宅地の平均価格は1㎡あたり約65.6万円となっています。
また、ここ数年の基準地(住宅地)の標準価格は下の表のような推移となっています。
平均価格(円) | 変動率(%) | |
---|---|---|
令和元年度 | 602,200 | 3.3 |
令和2年度 | 636,200 | 3.5 |
令和3年度 | 633,800 | -0.5 |
令和4年度 | 640,600 | 1.0 |
令和5年度 | 655,800 | 2.3 |
2021(令和3)年度に微減しているものの、その前年・前々年と大きく上昇しており「世田谷区の地価はおおむね上昇を続けている」といえるでしょう。
不動産投資における世田谷区の将来性
世田谷区の将来人口推計(令和5年7月)によると、世田谷区の人口は今後も増加を続けるとしています。
日本全体の人口が減少傾向にあるなかで、幅広い年代からの人気の高さを裏付ける人口増が見込まれる点は不動産投資の観点から見ても魅力的です。世田谷区は住みやすさ・利便性・イメージのよさが揃っており、今後にも期待が持てるエリアです。
また、世田谷区は子育てに力を入れており、フィンランドの取り組みを参考にした妊娠期から就学前までの切れ目のない支援、「世田谷版ネウボラ(相談・アドバイスの場所)」を実施しています。
地域の産前・産後サービスが利用できる「せたがや子育て利用券」を配布しており、今後も若いファミリー層からの人気を集めるのではないでしょうか。
元々地価が比較的高い世田谷区は今後の物価上昇にともなう家賃収入の上昇や、地価の上昇による将来的なキャピタルゲインにも期待できます。
世田谷区で不動産投資をおこなう留意点
不動産投資の観点からも注目したい世田谷区ですが、「人口推移」と「災害リスク」の点で注意が必要です。
世田谷区の人口は今後増加を続ける見込みですが、20年間の増加の後、2042(令和24)年をピークに緩やかな減少に向かうという見通しとなっています。
しかし、区内でもエリアごとに傾向は変わってくるでしょう。将来的に人口が減少局面になった場合に備え、地価下落リスクを考慮したエリア選定と、購入不動産を売却する出口戦略を考えておく必要があります。逆に世田谷区内の物件への不動産投資を検討している場合、時期はなるべく早い方がよいとも考えられるでしょう。
次に災害リスクの問題です。
多摩川やその支流が多く流れる世田谷区は、川沿いの低地付近の河川氾濫や地震時の土砂災害のリスクが上がります。また全体的に地震リスクの低い世田谷区ですが、北沢地域にあたる人口密度・建物密度ともに高い北東側の区境付近の一部エリアの危険度が高い点にも注意が必要です。
いずれにせよ、世田谷区内で不動産投資をおこなう際にはエリア選定を慎重におこなう必要があるといえます。
まとめ
世田谷区は以下の理由から不動産投資の観点で見ても魅力的なエリアです。
- 交通利便性と住環境が良く、住みたい街として人気が高い
- 人口も多く、今後も増加傾向
- 災害リスクが比較的低い
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この記事の執筆: ひらかわまつり
プロフィール:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士資格を有するママさんライター。親族が保有するマンションの管理業務経験を有するなど、理論・実務の両面から不動産分野に高い知見を持つ。また、自身でも日本株・米国株や積立NISAなどを行っていることから、副業や投資系ジャンルの執筆も得意としている。解像度の高い分析力と温かみのある読みやすい文章に定評がある。不動産関連資格以外にも、FP2級、日商簿記検定2級、建築CAD検定3級、TOEIC815点、MOSエキスパートなど多くの専門資格を持つ。
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