注目の新路線!?不動産投資のプロが豊住線の全貌を徹底解説!
- 更新:
- 2023/06/20

投資用の不動産を選ぶにあたり、鉄道路線との位置関係は決して無視できないポイントになります。駅近の物件は入居需要が高く、築年数が経過しても家賃を下げずに入居付けできる可能性が高まるため、安定した賃貸経営が見込めます。
また、例えば東急のように鉄道会社と不動産会社が1つの系列グループに属している場合、自社の沿線エリアをブランディングすることで不動産の価値を高める施策を打つケースがあります。ただし、都内には鉄道路線がすでに網の目状に張り巡らされており、東急であれば東横線や田園都市線沿いのエリアは一通りブランド価値が高まったように思えます。
しかし、路線同士を直通させて相互乗り入れを行ったり、既存の路線から枝分かれする形で延伸する開発計画は、2022年現在でも複数見られます。特に注目の路線は、有楽町線を延伸させて豊洲駅と住吉駅を結ぶ「豊住線」です。
そこでこの記事では、まず豊住線とはどういった鉄道路線なのかをご紹介し、豊住線開通後の沿線の不動産価値がどのように変化するかを推察します。これから資産価値が高まるエリアを見定めておくことは、不動産投資で利益を出すための重要なファクターとなります。さっそく詳しく見ていきましょう。
豊住線の特徴について
まずは豊住線の特徴をご紹介します。ポイントとなるのは「なぜ豊住線が開業することになったのか」という背景です。その背景を押さえながら、開業の見通しまで見ていきましょう。
豊住線とは
豊住線とは、東京メトロの有楽町線豊洲駅と半蔵門線住吉駅を結ぶ新しい鉄道路線です。有楽町線から延伸した路線という位置づけで、国土交通省などの公的な表記では「東京8号線」とも呼ばれます。
豊洲駅と住吉駅の間には枝川駅・東陽町駅・千石駅(それぞれ仮称)の3駅が建設予定で、全長は5.2kmと、主要な鉄道路線と比べると短めとなっています。似たような開業事例として、水天宮前駅~押上駅(約6km)を結んだ半蔵門線の延伸が挙げられます。
国土交通省鉄道局は、2019年発表の「東京圏における国際競争力強化に資する鉄道ネットワークに関する調査」において、豊住線のメリットとしてアクセス改善・混雑緩和・豊洲地区の国際競争力の強化などを挙げています。江東区も豊住線の開通には「大変高い整備効果が見込まれる」としており、国と地域が一体となって推し進めている開業計画となっています。
豊住線が開業予定の江東区について
豊住線の開通が強く求められる背景を知るために、まずは江東区という地域の地理的な特色を見てみましょう。江東区のホームページでは、豊洲などの新興開発地域を含む湾岸エリア、区役所のある東陽町駅を含む深川エリア、深川エリアの東部に位置する城東エリアの3つの区域に江東区が分けられています。
湾岸エリアに位置する「ららぽーと豊洲」と城東エリアの「砂町銀座商店街」の雰囲気が大きく異なるように、3つに分けられたエリアは建築物や住民、経済活動に至るまで大幅に異なるのが特徴です。
豊住線の開業が計画されている理由
江東区の特色に触れたところで、周辺地域を含む鉄道路線を見ていきましょう。
路線図から分かるように、特に湾岸(臨海)エリアから深川エリアと城東エリアへのアクセスが難しいことが分かります。都営新宿線や東西線を利用することで東西への移動は容易ですが、南北を結ぶ路線がほぼ存在しないことが要因となっています。
実際に、湾岸エリアの豊洲から深川エリアの住吉に移動するには、「豊洲駅→月島駅→森下駅→住吉駅」と2回乗り換えて30分かけて移動する必要があります。「豊洲駅→永田町駅→住吉駅」と1回の乗り換えで済むルートもありますが、こちらは40分かけて大きく迂回するルートになります。豊洲から住吉まで直通すれば、およそ10分での移動が可能となる見込みです。
上の図と比較すると、ほぼ東西にのみ走っていた既存の路線と直行するように、南北に路線が新設されることが分かります。
「そもそも湾岸エリアから深川エリアへの移動自体が珍しいのでは」と思うかもしれませんが、途中の東陽町駅には江東区の区役所が存在します。これが江東区が豊住線の開通を求める大きな理由であり、新興開発地域の豊洲から区役所へのアクセスの利便性を高めることで、地域活性化をさらに促進する狙いが伺えます。
豊住線の開業予定
江東区や国土交通省から開通を期待される豊住線ですが、2022年9月現在での開業予定は2030年代の半ばとなっており、具体的な目標年は明らかとなっていません。理由として考えられるのは、豊住線の開通整備を期待される東京メトロがあまり乗り気ではない点です。
東京メトロ(旧:営団地下鉄)は副都心線を最後に新しい路線の開通計画を取りやめており、延伸を含む新規路線の開業に前向きではない背景があります。豊住線の開通は通勤時の混雑緩和には寄与しますが、同時に東西線をはじめとする既存の路線の減収につながります。つまり、東京メトロにとっては新規の路線整備は工数と予算が掛かる一方で収益的な旨味のない事業となります。
ただし、国や東京都、江東区が豊住線の建設費の一部を負担する意向を示しており、国や自治体が東京メトロを後押しする形で豊住線の開業を推し進める見込みです。
豊住線沿線の不動産投資の見通し
豊住線の開通予定は2030年代とやや先になりますが、中長期的に利益を見込む不動産投資家の目線で、今のうちに動いておきたいと考える方も少なくないと思います。
そこで、豊住線の沿線は具体的にどのような層に需要があり、いつどこのエリアに参入すると勝ち筋があるかを解説します。あくまで2022年の現時点での見通しとなるため、判断材料の一つとしてご覧ください。
ファミリー層の需要に期待
東京23区ごとに家賃相場を比較すると、江東区はワンルームの家賃相場が8.2万円と6番目に高いことが分かります。
一方で2LDK/3K/3DKといったファミリータイプの物件の家賃相場は17.9万円で、11位に位置します。
引用同上
このことから、江東区は他の地区と比べ、ワンルームからファミリータイプへの値上がり幅が小さいことが分かります。つまり、江東区は単身者にとってはやや敷居の高いエリアとなりますが、ファミリー層にとっては手を出しやすいエリアであると言えます。
ただし、家賃相場はあくまで平均価格である点に注意が必要です。先述のように江東区は新興の湾岸エリアと寺社の立ち並ぶ城東エリアの双方を含んでおり、新築と中古、鉄骨造と木造の様々な物件の資産価値を均して数値化されていることを把握しましょう。
すなわち、家賃相場で見るとファミリー層が手を出しやすい江東区ですが、先述の3つのエリアでは物件の種類・入居者層・家賃が大幅に変わります。例えば豊洲エリアは生活の快適さを求める高所得者層、住吉エリアは通勤の利便性を求めるサラリーマン層に大きく分けられます。
いずれにしてもファミリー層にとって魅力のある地域であり、豊住線の開通でその需要が高まる見通しには変わりありません。ただし、「江東区」「豊住線沿線」と大きく括るだけではなく、各駅ごとの特色を押さえながら投資用不動産を選定する必要があります。
特にどの駅の周辺が見込みあり?
投資先として多くの投資家に魅力的に映るのは、やはり豊洲駅周辺ではないでしょうか。一方で、約10年前には坪単価約170万円だった豊洲地区は現在約300万円の坪単価となっており、今から購入することにリスクを感じる方もいるはずです。
一方で、新築プレミアムが上乗せされた高価格の物件が、数年を経て値下がりした築浅の物件として売り出されている事例が豊洲地区でも見られます。新築のマンションよりも高い利回りで運用することが可能となるため、むしろ数年前よりも手が出しやすいとも言えるでしょう。
ただし、現時点で坪単価や物件価格が高水準の地域のため、豊住線の開通による恩恵がどこまで得られるかは不透明ではあります。豊洲駅近辺は、「豊住線の開通は魅力ではあるが、既に充分魅力的な地域」であると言えます。
対照的に、現時点で駅が存在しない枝川駅(仮称)・千石駅(仮称)近辺は、豊住線開業で大きなメリットを得られるでしょう。ただし、入居需要の増加はあくまで鉄道開通後に見込まれる点に注意が必要です。現時点でこれら2駅近辺の物件を押さえたとしても、最寄り駅が整備される予定の2030年半ばまでは入居付けにやや難儀するかもしれません。
枝川駅・千石駅近辺は、「豊住線の開通の恩恵を大きく得られるが、現時点での参入は早すぎる地域」と言えるでしょう。ただし、枝川駅周辺の一部では、撤退した中小企業の倉庫跡を建て替えてマンションを建設するエリアもあり、現時点でも入居需要が増加傾向にあります。「駅近辺」という括りをさらに細分化し、「区画」として見るとまた別の特色が浮き彫りになるエリアでもあります。
両者の中間の特徴をもつ駅が、既に乗り換え需要のある住吉駅と、区役所や運転免許試験場のある東陽町駅です。両者とも既に駅が存在し(正確には東陽町駅は新設予定)、豊住線開業前から入居需要のあるエリアであり、豊住線開業後にはさらなる需要の増加が見込めます。そのため、「豊住線の開通の恩恵を大きく得られる上、現時点でも入居付けが可能な地域」と言えます。
そのため結論としては、特に区役所をはじめ主要な施設を備える東陽町駅周辺が、不動産投資として魅力的な地域と言えます。ただし、あくまで豊住線についての現時点での情報を基にした推察であり、今後の動向によって購入すべきエリアが変わりうる点に注意しましょう。
いつ頃不動産投資を行うべき?
ここまで触れたように、物件の入居付けのしやすさや想定される入居需要の上がり幅は駅ごとに異なります。その上、豊住線の整備の進捗状況によっても参入すべきタイミングが変わってくるでしょう。国や自治体の資金援助があってもなお東京メトロが整備に後ろ向きな可能性があり、反対に開業が前倒しになる可能性もあります。
こうした交通インフラの新設に照準を合わせた不動産投資全般に言えることではありますが、特に開業への姿勢が官民で一枚岩ではない豊住線沿線においては、投資への参入が早いほどハイリスク・ハイリターンであると言えるでしょう。
一方で、開業間際になれば沿線に新築のマンションが建ち並び、入居需要も格段に増加しますが、その分投資家による物件の買付競争も激化することが想定されます。そのため、参入が遅すぎると不動産を購入したくてもできない状況になることが考えられます。リスクとリターン及びご自身の資産状況を加味しながら、適切な参入タイミングとエリアを検討するようにしましょう。
参考いつがいい!?不動産投資を始めるベストタイミングとは!?
まとめ
今回の記事では、豊住線についてのご紹介と不動産投資としての周辺エリアの魅力について解説しました。3つのエリアで特色が大きく変化し、東西と南北の移動のしやすさに大きな差がある江東区は、地理的な面でも投資家の目線でも読み解きがいのある地域なのではないでしょうか。
この記事で触れてきたように、豊住線自体が魅力的な路線であっても、一口に「今が不動産投資の参入タイミングです!」とは言い切れないのが現状です。繰り返しにはなりますが、リスク・リターンの許容度合い、そしてご自身の資産状況によって適切なタイミングや投資対象が異なります。また、豊住線近辺のエリアへの不動産投資に興味がある方は、引き続き豊住線の整備情報を定期的にチェックすることをオススメします。
豊住線近辺のみでなく、今後地価が上がりそうなエリアを読み解くには情報のアップデートや専門家の知見が大きく役立ちます。都内での不動産投資に興味のある方は、弊社コンサルタントまでお気軽にお問い合わせください。