【2023】不動産投資のNOI!プロも重視する指標を徹底解説!
- 更新:
- 2023/01/24
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不動産投資におけるNOI(Net Operating Income)という言葉をご存知でしょうか?NOIは営業純利益のことを指し、不動産投資の利回りを計算する上で必要不可欠な指標といえます。
実は業界内でもあまり使用されることのない表現ですが、不動産投資の成功の鍵を握っているNOI。NOIを正しく理解し、活用することは投資用物件を購入する上で非常に重要な意味を持ちます。そこで今回は言葉の基本的な意味から役立つ情報まで徹底解説致します。
不動産投資の利回りについて
まずはNOIの説明をする前に前提となる不動産投資の利回りについてご説明しましょう。投資(不動産投資)とは利益を得る為に資金を投入するのが基本的な仕組みです。当然利益をしっかりと追う必要があります。
また、それぞれの投資における利回りの計算方法や利回りの出し方というのは全く違います。投資対象に関わる税制などが大きな変動要素になるのですが、不動産投資の利回りとは物件購入や建築など、不動産購入時にかかった費用に対する、年間収益の割合を指しています。
参考利回りの目安は何%?不動産投資の平均利回り相場や計算について
粗利回り
粗利回りとは、今後投資する物件の収益力を把握する為にまず最初に把握する、大まかな利回りのことです。計算方法は非常にシンプルで「年間賃料収入 ÷ 物件価格」で算出します。
物件の収益性の目安として、この粗利回りと純利回りを参考にしますが、不動産業界でいう利回りは、この「粗利回り」を指しています。これらはグロス利回り・表面利回り・取引利回りと呼ぶこともあるので気をつけてください。
純利回り
純利回りは不動産投資を行う上で、基礎となる利回りです。粗利回りから税金や経費を引いた収益を基に、利回りを計算します。
計算方法は以下の通りです。
- 年間総収入 - 年間総支出 ÷ 総投資額 ✕ 100
実質利回り・ネット利回り・NOI利回りと呼ぶこともあります。
ただし、詳細は後述しますが、NOI利回りの場合には以下のものを含んでいます。
- 減価償却費
- 金融費用(収支利息など個人的なもの)
- 資本支出(物件修繕費など)
これらを差し引かないと正式な純利回りは算出できませんので、注意しましょう。
投下資本収益率
投下資本収益率の計算方法は以下の通りです。
※年間総支出には減価償却費を含む
- 年間総収入 - 年間総支出 ÷ 総投資額 ✕ 100
ここで出る利回りは、投資額の回収を一番に考えた利回りです。
計算式に出てくる減価償却費は、投資額を所定の期間内に回収した額になります。
以上のことから、減価償却費を引いて手元に残るお金は、本来の収益とはいえません。
また、減価償却費を経費に足すと、経年劣化による価値の低下を相殺することになります。つまり、NOIから減価償却費を引くと「物件の収益力 = 営業利益」という公式が成り立ちます。
NOIについて
ここから本題に入ります。NOIとは営業純利益・純利益のことです。不動産投資は物件を購入し賃料を得て、そこから運営費を差し引いて残った純粋な利益を取っていく投資法です。この純利益(NOI)の算出方を把握することは、不動産投資用の物件を購入する指針として非常に重要な役割を果たします。
NOIを算出する為に使う「運営費」とは、不動産投資にかかる年間のランニングコストのことです。(税金・管理費・水道光熱費・掃除・メンテナンス・保険・維持費など)
NOI利回りの重要性
収益物件を購入する際は、利回りに注目すべきだと思いますが、販売業者側はより販売効率を上げる為にNOI利回りではなく表面利回りを提示することがあります。
表面利回りだけを見るとお得な物件でも、実際NOI利回りで見ると微妙だった…という例もよくあるので、提示された数字に惑わされないようにしましょう。物件購入に関して賢く適正に判断する為に、NOI利回りを使うべきなのです。
NOI利回りの注意点
NOI利回りを活用する上で気をつけるべきなのは、NOI利回りを算出する際に使うデータの分析をどれだけ細かく実施できるかの一点につきます。
例えば中古物件における1年間の空室率や、満室時の家賃収入は、オーナーからデータをもらうことができますが、新築物件においてはあくまでも予想した数字になってしまいます。不動産投資に置いて予想はつきものですが、より正式な数字を出す為にあらゆる想定をしたり、細かい数字を出す為にリサーチしたりとかなりの手間がかかる為「想定値も含まれる」とあらかじめ頭に入れておきましょう。
このように、実質利益であるはずのNOIは、物件によっては「想定利回り」になるという矛盾点をしっかり覚えておくことが大切です。
NOI利回りと共に空室リスクもチェック
NOI利回りがより高い物件を見つけることは大切ですが、収益化の為には「空室リスク」も正確に見分ける必要があります。
不動産物件を持つと、税金やローンなどの継続支払いが発生する為、家賃収入がないとたちまち赤字になってしまいます。利回りのみで決めるのではなく、空室リスクも見極めて、バランス良く安定的に収益を得られる物件を見つけていきましょう。
NOI利回りの計算方法
では、ここからはNOI利回りの計算方法を見ていきましょう。NOI利回りの計算方法は「表面利回り ✕ NOI率」で出すことが可能です。この計算方法は概算利回りを出すものなので、より正確な利回りを出したい場合は以下の計算方法を試してみてください。
- 年間賃料収益 - 諸経費 ÷ 最終的な物件購入額
ここでいう諸経費とは固定資産税・火災保険・管理費・修繕費等のことです。最終的な物件購入額とは、不動産所得税・業者への手数料等を差します。
NOI率とは
NOI率とは営業純利益率のことです。仮に空室になった場合、収益化が見込めない分を控除して、満室家賃との比較をするものです。
NOI率の計算方法は「満室想定の家賃収入 -(空室率:10% + 運営費率:40%)」で出せますが、NOI率は専門家がデータをまとめて公表しているので、そちらを参考にしましょう。
自身が狙っている物件に近いNOI率がわかれば、NOI利回りを想定することができます。
NOI利回りの計算例
具体的な数字を元にした計算例を見てみましょう。
ここではとても分かりやすいサイトがあったので、こちらを使って計算例を見ていきます。
例えば、総投資額1億円(物件価格 + 諸費用)、年間賃料収入(満室時)800万円、保有時諸経費288万円、減価償却費1,000万円のような物件があったとして、実際にNOI利回りを求めてみる。
- NOI利回り =(800万円 - 288万円)÷ 1億円 ✕ 100 = 5.12% ……(A)
従来から用いられている表面利回りを求めると、表面利回り = 800万円 ÷ 1億円 ✕ 100 = 8%となり、諸経費を考慮していないため、数値自体はよく見える。また、年間賃料収入に空室率を考慮する場合もある。空室率10%、年間賃料収入(満室想定)に対する運営に係る諸経費の割合である運営費率が36%の場合、次のような計算をすることもできる。
- NOI率 = 100% -(空室率:10% + 運営費率:36%)= 54%
NOI率は、空室があった場合の賃料未収入分と運営費などを控除した収入の割合である。NOI率を用いることにより、対象物件の価値をより現実的な数値で比較することができるようになる。
NOI率をもとにさらに精度の高い収益性を表す指標を求めることができる。NOI利回り=表面利回り×NOI率で計算すると、
- (800万円 ÷ 1億円 ✕ 100)✕ 54% = 4.32%……(B)
となり、前述の(A)は空室率を考慮しない数値だったが、空室率を考慮し、収入を10%減の720万円として計算すると、
- NOI利回り =(720万円 - 288万円)÷ 1億円 ✕ 100 = 4.32%
となり、(B)と同じになることがわかる。(B)ではNOI率を使えば、表面利回りから実質利回りを導き出せることになる。
これを見れば分かるように、NOI率を使うことで、実質利回りを簡単に導き出すことが可能です。
より正確なNOI利回りを算出するコツ
NOI利回りの精度を高める為のポイントは2点です。- ①家賃相場
- ②諸経費の把握と予想
家賃相場
家賃相場を見る際は、物件の築年数にも注目してください。
年数ごとに価値は下がるので、経年による損失分も加味したNOI利回りをシミレーションしてみましょう。可能ならば複数の専門家から情報を得ることもおすすめです。多面的な相場のシュミレーションを行うことでよりロジカルな思考で考えることが可能になります。
諸経費の把握と予想
②の諸経費は、あらかじめ調べることもできますが、修繕費や広告費は予想するしかありません。
修繕費の内訳は大きく分けて以下の3つです。
- 物件の老朽化やリフォーム
- 新設備導入など大規模修繕
- 退去後の現状回復費
入居者の回転率や状況によって変わるので、建築会社に相談しながら予測していきましょう。広告費は空室リスクを避ける為に打つ手で、大きく分けて2つあります。
- 賃貸ポータルサイト利用にかかる広告費
- 不動産屋で紹介してもらう広告費
こちらも空室になるペースや、空室が埋まるまでのタイムラグによってかかる費用が変わるので、完璧に予想するのは難しいでしょう。賃貸に詳しい専門家に相談することや、自身の物件の入居者属性から居住期間を把握することで予想できます。以上の2点を詳しく調べた上で算出するNOI利回りは、より具体的な信頼性のあるデータといえるでしょう。
NOIの賢い活用方法
NOIを活用することは、不動産投資における費用対効果を把握する上で非常に有効ですが、利回りばかりに捉われないことが大切です。
利回りが高い = 不動産投資に適した良い物件とは限りません。
以下の3点は、高利回り物件にありがちな落とし穴なので、覚えておいてください。
①ランニングコストについて
ランニングコストは適正価格ですか?もちろん物件のタイプや築年数によっても変わってきますが、必要不可欠な経費だからこそ、適正価格であることが大切です。購入時から年数を重ねるごとに、ランニングコストは上がっていくものと覚えておきましょう。
参考不動産投資における運用コストに注目!「ランニングコスト」も計算すべし
②空室リスクについて
高利回りだからといって、空室対策が万全だとは限りません。
購入してからは、自身の戦略で運営していくものなので、空室リスクについては事前に見極めておきましょう。
③賃料の適正化について
物件の質に対しての賃料の適正化だけでなく、地域の他物件と比較して賃料は適正か、事前に確認しておきましょう。相場より高い賃料設定で出された利回りは、あまり参考になりません。想定収益が高すぎると、後に現実とのギャップに苦しむことになります。
以上のことを踏まえると、利回りはあくまで不動産価格の目安を表すものだとわかります。自身でもリサーチしたり、適正価格を見極める力を養っておくことが大切なのです。
不動産投資の利回り平均
日本不動産研究所が公表している「期待利回り」の平均値をご紹介します。
期待利回りとは、投資家が期待している利回りのことです。
種別 | 参考利回り |
---|---|
東京ワンルーム | 4.2% |
東京ファミリー向け | 4.5% |
仙台ワンルーム | 5.5% |
仙台ファミリー向け | 5.7% |
広島ワンルーム | 5.7% |
広島ファミリー向け | 5.9% |
オフィスビル
種別 | 参考利回り |
---|---|
東京(丸の内・大手町) | 3.5% |
東京(六本木) | 3.9% |
大阪(梅田) | 4.5% |
仙台 | 5.9% |
広島 | 5.8% |
賃貸住宅の方が期待利回りは高く、土地だけで見ると地方よりも大都市の方が期待利回りは高いこともわかります。しかし、期待利回りが高い物件が実際に買われているわけではありません。つまり、あくまで期待値であり、収益性とはイコールではないということも理解しておく必要があります。
利回りが高い物件に潜むリスク
ここで、利回りが高い物件に潜むリスクについても紹介します。利回りが高い物件には意外なリスクが潜んでいる点を忘れてはいけません。
- 立地が悪い(駅から遠い等)
- 築年数が古い(修繕のリスク大)
- 定期的なメンテナンスがされていない
- テナント、入居者の入れ替わりが激しい
- 住み心地が悪く賃料相場が下降気味
- 売却できない物件(違法建築等)
こうしたリスクをすぐに見抜くことが可能なので、投資家は安易に高利回り物件には飛びつきません。物件購入の際には、「なぜ高利回りなのか?」数字の裏側に隠れた根拠を探っていくと、正しい判断に結びつけることができます。
気をつけるべき事例
NOI利回りを最優先にし、リッチや建物の魅力を無視することだけは避けたいものです。不動産投資は、あくまで家賃収入を得てこそ成り立つものです。運用を始める前の空き物件時に出た利回りは、あくまで予想であることを忘れないで下さい。
また、不動産投資は長期戦なので、後々空室リスクが増える可能性を秘めた物件も回避したいものです。NOI利回りはもちろん、立地や物件の魅力等、総合的にみて決めることが最も大切です。
空室対策を制する者は不動産投資を制す
国土交通省のデータによると、全国の賃貸物件は5年連続で増加しています。人口が減る中、こうして物件が増えているということは、将来的に供給過多になる恐れがあるということです。
だからこそ、より魅力的な物件に人が集まり、空室対策を怠っている物件は売れ残っていくでしょう。自身の利益だけを追い求めず、入居者ファーストで考えることが不動産投資成功のポイントになります。
まとめ
不動産投資で満足いく利益を得たければ、NOIの活用は有効と言えるでしょう。その為にデータ収集をしたりと、事前準備に時間はかかりますが、物件購入時にすでに勝敗が決まるとなれば、より勝算を上げて臨みたいものです。不動産投資成功の要であるNOIをしっかり理解し、活用していきましょう。