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旧耐震物件のピロティ耐震工事に費用補助!その重要性と不動産投資でのメリットを解説

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「最近、地震が多くない……?」「うちのマンション、古いけど大丈夫?」

今後30年で70%の確率で起こる」と言われている首都直下地震。いつ起こってもおかしくないと心配になりますが、個人でできる対策は限られています。

地震による被害の大きな割合を占めるのは、「揺れ」自体ではなくそれに伴う建物倒壊です。ちょうど関東大震災から100年ということもあり、東京都でも首都直下地震への備えとして建物の耐震化事業をさらに進めています。

その一つとして、2023年06月01日に東京都は緊急性の高い「ピロティ耐震工事」に対する一部費用補助の決定をしました。補助の対象は、倒壊の危険性が高いとされている「耐震基準値が低い旧耐震基準のピロティ構造マンション」で、補助額は工事費の2分の1、上限262万5,000円です。

本記事では、ピロティ耐震工事の詳しい解説と工事をおこなわない場合のリスク、耐震工事のメリットについて解説します。

旧耐震物件のピロティ耐震工事、費用補助の概要は?

言われてみれば「あれのことか!」とすぐわかる、街でよく見るピロティ構造の建物。まずは「ピロティ」がどこを指すのか理解した上で、今回の費用補助の内容について把握しましょう。

ピロティって何?

香川県庁舎東館

参考香川県庁舎東館

ピロティとは、「1階が駐車場や通路になっている、壁のない広い空間」のことであり、柱や一部の壁で建物の上部を支えている構造をピロティ構造と呼びます。

壁に囲まれていないピロティは延床面積には含まれず敷地を有効活用できることから、特にオフィスビルやマンションでは駐車場や駐輪場、エントランスの延長のような用途で広く利用されている構造です。

一方、主に柱のみで上階を支えるピロティ構造は強度が不足しやすいということでもあり、東京都でも「上階に働く地震力を柱だけでは支えきれず地震に弱い」という問題点が指摘されています。

ピロティ部分への費用補助の目的と概要

東京都によると、今回の費用補助の目的は「費用や合意形成が課題となり耐震化に取り組めない、特に倒壊の危険性が高いピロティ階を持つ旧耐震基準マンションの大規模地震に対する対策を進めること」です。

実際、NPO耐震総合安全機構の調査によると、耐震改修が進まない理由の1位に「改修費用の負担」が挙げられています。

東京都はピロティ階の補強工事にかかる費用の一部補助により緊急性の高い建物の耐震化を推進したい考えであり、事業の概要は以下の通りです。

対象者 旧耐震基準の分譲マンションの管理組合
対象建物 ピロティ階等(原則、地上1、2階のIs値が0.3未満)を有するマンション
対象費用 ①ピロティ階等の補強設計②ピロティ階等の補強工事 に要する費用
補助金額 ①②それぞれ2分の1(上限は合算で262万5,000円
申請期間 令和5年6月15日 ~ 令和6年1月15日まで

東京都が建物の耐震化を進めてきた結果、地震による建物被害の予測は3 ~ 4割減少しており、さらなる耐震化の推進で死者・全壊棟数を大きく減少できると推計されています。

補助の対象となるマンションと具体的な内容は?

概要を見て疑問に思うのが「Is値が0.3未満」という部分ではないでしょうか。

国土交通省の説明によると、Is値とは「構造耐震指標」、つまり建物の構造的な耐震性能を評価する指標のことです。Is値が大きいほど耐震性が高いことを表し、Is値が0.3未満は「震度6以上の大規模な地震に対して倒壊・崩壊の危険性が高い」と判断されます。

また、募集要項によると、補助を適用するためには以下をはじめとしていくつか要件があり、補助を受けようとしているマンションが要件に当てはまるかどうか確認が必要です。

  • 延べ面積が1,000 ㎡以上であり、かつ、地階を除く階数が原則として3階以上のもの
  • 補強設計は建物全体で Is 値 ≧ 0.3 となるような設計で、完了実績報告書提出までに、指定機関による評定を取得すること
  • 補強工事は建物全体で Is 値 ≧ 0.3 となる設計であることを指定機関により評定を受けた設計に係る工事であること

Is値が0.3未満かどうかを判断するためには耐震診断が必要になりますが、区市で補助が受けられます。

旧耐震物件とはどんな建物?

都が費用補助をしてまで耐震化を急ぐ「旧耐震基準」の建物とはどのようなもので、新耐震基準の建物とどこが違うのでしょうか。

旧耐震物件の基準

1981年6月1日に建築基準法が改正され、同時に耐震基準も大きく改正されました。

つまり建築前に建物が建築基準法などに適合しているか確認する「建築確認」が1981年6月1日以前に下りていれば「旧耐震基準」の建物、改正以降に建築確認が下りていれば新耐震基準で審査されている「新耐震基準」の建物です。

NPO法人耐震総合安全機構によると、旧耐震基準と比較した新耐震基準の特徴は以下の2点です。

  1. 想定する地震力:新耐震では、震度6強以上の地震でも倒壊しないように検討されている
  2. 地震時の建物の揺れ:新耐震では、実際に地震力が加わった時の建物のねじれの特性を検討し、建物全体を検証している

(詳細は新耐震ってなに!?旧耐震との違いや見分け方を徹底解説で解説しています)

旧耐震物件はなぜ危険?

耐震基準が変わったのは、建物の全半壊4,385戸・一部損壊86,010戸という甚大な被害を出した1978年の宮城県沖地震がきっかけです。震度5の地震でこれだけの被害が出たことにより、耐震基準見直しの必要性が明らかとなりました。

特に建物の下部が柱だけのピロティ構造の建物は地震力に対してねじれやすいという特徴があり、ねじれの特性が考慮されていない旧耐震基準では安全とはいえません。

実際に、1995年の兵庫県南部地震では、一般建物と比較してピロティ構造の建物は倒壊の割合が約4倍となっています。

旧耐震物件のピロティ部分、工事をしないとどうなる?!

「危険だとは言っても、今問題がないのに費用も手続きも大変な耐震工事なんてする余裕がない」と思うマンションオーナーもいるでしょう。実際、東京都の旧耐震分譲マンションの耐震改修の実施率2011年8月時点で5.9%にとどまっています。

ここでは、過去の地震による被害事例と工事をしない場合に考えられるリスクについて解説します。

過去の地震による被害事例

上の写真は、2016年に起きた熊本地震でのピロティ構造の共同住宅での被害状況です。この建物は新耐震基準と推測されており、被害はピロティ部分にとどまり建物自体の崩壊は免れています。

しかし、上図の旧耐震基準の共同住宅では、柱が完全に折れ、上階ごと建物が崩壊しています。

また、1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)で被害が集中したのは、1980年以前の旧建築基準法で建てられた建物、特に1階部分が駐車スペースとなっていた消防署などでした。

内閣府によると「全体的にピロティ構造と壁の配置の悪い構造の建築に崩壊したものが多く、これらの中には現行法に適合している建物もあった」としており、ピロティ構造の地震被害は旧耐震基準の建物に限らないことがわかります。

耐震工事をしなかった場合に考えられるリスク

耐震工事をおこなわないまま大地震が起こった場合の一つ目のリスクが、建物の損傷や落階、倒壊です。家賃収入の喪失や、多大な修繕・建て替え費用の発生が考えられます。

二つ目が、倒壊や損傷した建物が周辺の建物に被害を与えるリスクです。周辺住民や建物オーナーから賠償を請求される可能性もあるでしょう。

三つ目が、住民やテナント利用者へ被害を与えるリスクです。怪我や生命に関わる事態が発生した場合の法的責任はもちろん、人的被害がなくても仮住まいや退去費用の負担が必要となる可能性もあります。

このため、旧耐震基準の建物の耐震化は重要です。先ほど紹介した平成28年熊本地震による鉄筋コンクリート造等建築物被害でも、「1981年以前に設計され、耐震改修が行われた建築物では、倒壊・崩壊した事例は確認されず、耐震改修の効果は適切に発揮されていたと考えられる」としています。

旧耐震物件の修繕・建て替えはどうやっておこなう?

旧耐震基準の建物の耐震改修をおこなう場合、どのような要件や工事内容が必要なのでしょうか。

修繕・建て替えの要件と最近の動向

マンションの建て替えには所有者の5分の4、個人が専有する部分を含む改修には所有者全員の同意が必要です。

下図は先ほどのNPO耐震総合安全機構による調査結果のグラフですが、改修・移転費用の負担以外にも、合意形成の難しさが耐震化進展の妨げになっていることがわかります。

また、同調査の中では「テナントの理解が得られない」「一住民が反対していて話が進まない」といった意見も挙げられていました。

同意形成が支障となり老朽化したマンションの建て替えが進まないため、政府は2024年度にも区分所有法を改正し、個人が専有する部分を含む改修に必要な同意を「5分の4以下」にする案を検討しています。

そのほかにも、所在不明の所有者を決議の母数から除外することを検討中としています。

ピロティ耐震工事の方法

ピロティ部分の耐震工事には、以下の4つの方法があります。

壁の増設 力を分散させ、柱にかかる負荷を下げるように壁を作る
塞がれてしまうためピロティ部分の利用状態によっては設置が難しい
開口部の閉塞 構造上耐力とならない壁(間仕切り壁のようなもの)を耐震壁に変更する
完全に塞がなくても窓を小さくするといった方法もある
鉄骨ブレース設置 柱と柱の間に斜め方向に鉄骨を入れ、耐震性を高める
柱巻等の補強 鋼板や炭素繊維などの補強材を柱の周りに取り付け、柱を強化する
ピロティ部分の構造に影響を与えずに済む

今回の事業の目的はマンションのIs値を0.3以上にすることですが、0.3以上になっても建物の倒壊・崩壊の危険性があるため、引き続きの耐震化が必要です。

NPO耐震総合安全機構の調査でも、改修費用の観点からも、住民やテナントが退去した部分や最低限必要な緊急性の高い補強から改修をおこなう「段階的改修」を提案しています。

旧耐震建物の耐震工事によってもたらされる不動産投資への影響

耐震改修には多額の費用がかかりますが、家賃上昇効果や売却のしやすさから長期的に見ればプラスになると考えられます。

家賃の上昇効果

賃貸成約データを基にした岡野大志氏の論文によると「シングル・ファミリータイプともに建物倒壊危険度が大きいほど(= 危険度の高い地域ほど)、耐震改修による賃料上昇の効果が大きくなっている」としています。

参考岡野大志. "既存建築物における耐震改修が家賃・価格に与える影響について." 都市住宅学 2019.104 (2019): 203-212.

同論文の中で、岡野氏は「共同住宅のオーナーが耐震改修を行わないと判断するのは、耐震改修の費用対効果が低い場合」と考察しています。「借り手はマンションの耐震性を重視しており、耐震工事により家賃上昇効果がある」という本研究の結果は、耐震工事のメリットの根拠となるものではないでしょうか。

購入時・売却時の負担軽減

耐震工事の有無は、マンションの購入・売却時にも関係します。

耐震基準が緩く資産価値が低くなりがちな旧耐震基準の建物は資金の回収リスクが高いため、一般的に金融機関のローン審査が通りにくい・取り扱いがない・融資可能額が低いという傾向があります。

耐震工事がされていないマンションは将来的に修繕や建て替えの費用がかかる上にローンが組みにくいため、売却する際にも購入者が付きにくくなります。

したがって、旧耐震基準の建物に耐震工事を施すことは、家賃の上昇効果だけでなく、建物の市場価値が高まり有効な出口戦略を確立する効果ももたらします。

まとめ

合意の条件が緩和される方向性とはいえ、マンションの建て替えは合意と費用の面で大きな労力を伴うため、まずは耐震化に着手すべきといえます。今回の東京都の補助をきっかけに、旧耐震基準マンションの耐震対策が進むことが期待されます。

旧耐震基準のマンションの価格の安さにとらわれず、不動産投資にあたってはマンションの耐震対策についても気をつけておきたいところです。しかし旧耐震基準であっても、しっかり耐震対策がおこなわれ「耐震基準適合証明書」が発行された物件であれば安心であり、古い = 危険とも限りません。

不動産投資と地震リスクの関係性について疑問や心配がございましたら、ぜひ当社コンサルタントにご相談ください。

この記事の執筆: ひらかわまつり

プロフィール:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士資格を有するママさんライター。親族が保有するマンションの管理業務経験を有するなど、理論・実務の両面から不動産分野に高い知見を持つ。また、自身でも日本株・米国株や積立NISAなどを行っていることから、副業や投資系ジャンルの執筆も得意としている。解像度の高い分析力と温かみのある読みやすい文章に定評がある。不動産関連資格以外にも、FP2級、日商簿記検定2級、建築CAD検定3級、TOEIC815点、MOSエキスパートなど多くの専門資格を持つ。

ブログ等:ひらかわまつり

この記事の監修: 不動産投資コンサルタント 釜田晃利

老舗不動産投資会社にて投資用区分マンションの営業マンとして約10年間従事したのち、2015年にストレイトライド株式会社にて不動産事業をスタートしました。現在は取締役として会社経営に携わりながら、コンサルタントとしてもお客様へ最適な投資プランの提案をしています。過去の経験と実績をもとに、お客様としっかりと向き合い、ご希望以上の提案が出来るよう心がけています。

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不動産投資で成功するためのアドバイスですので、お客様のご状況によっては不動産投資をあきらめていただくようおすすめする場合もございます。あらかじめご了承ください。

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