不動産投資の手出しが苦しい!損切りをするタイミングは?
- 更新:
- 2023/06/19

不動産投資を始める際には、不動産所得で儲けが出る想定をしている方がほとんどでしょう。しかし、不動産投資にはリスクもあるため、当初の予定通りにはいかず、多額の手出し(持ち出し)が発生してしまう場合もあります。そんな時に覚えておきたいのは、損切りすべきタイミングです。
不動産投資で赤字が出ている場合、そのまま損切りをするのは勇気が必要です。しかし、「いつか状況が改善するかもしれない」と放置を続けていると、取り返しの付かないことになるかもしれません。
参考【2023年】不動産投資の赤字と損益通算、減価償却を分かりやすく解説
ここでは、不動産投資で手出しが発生している赤字の時に、損切りをするタイミングについて解説します。
不動産投資の損切りとは
不動産投資における損切りとは、投資した金額に対して赤字が出ている状態で投資用不動産を売却することを言います。つまり、既に発生している損を、これ以上酷くしないために切り捨てるイメージです。
損をしていると「これから取り返せるかもしれない」という考えから、諦めて切り捨てることを難しく感じる方も少なくありません。実際に、投資用不動産を長く保有することで赤字が利益に転じるケースもあるため、損切りを見極めるタイミングは難しいと言えます。
不動産投資で損切りを検討するタイミング
不動産投資において、いくつかのタイミングで損切りを検討する方が多くなります。ここでは、損切を検討するタイミングごとに、すぐに損切りすべきかどうかを解説します。
ローンが返済できない時
不動産投資の赤字が続いて、契約しているローンが返済できない場合は、なるべく早く損切りに向けて動き出したほうが良いでしょう。
ローン返済を滞納すると、個人の信用情報に傷が付き、その後の新規借り入れやクレジットカード作成などが困難になります。更に滞納が続くと、ローンの一括返済を求められます。
毎月のローンを返済できない状況で一括返済ができる方はほとんどいないため、不動産売却を行って返済に充てるのが一般的です。しかし、何も対策をしなければ、物件は競売によって相場の5割から7割ほどの売値となり、所有者は自己破産を余儀なくされることも珍しくありません。
そうなる前に、ローンの返済ができない時は一刻も早く売却して損切りをすることが大切です。既にローンを滞納しており、通常の売却では難しい場合は任意売却などの特別な手段もあるため、まずは不動産会社に相談してみましょう。
参考ローン返済方法の種類とは!元利均等返済と元金均等返済の違いや不動産投資における指標まで解説します
手出しが負担になっている時
不動産投資では毎月の手出しが発生するケースもあります。節税効果や将来的な資産価値など、様々なメリットを加味して、許容できる範囲での手出しであれば、すぐに損切りをする必要はありません。
しかし、毎月の手出しが重い負担になっている時は、早めの損切りを検討しましょう。損切りをすることで、新しい投資や貯金などに回せる経済的な余裕が生まれる可能性があります。
損切りに踏み切れない時は、手出しから目を背けずに、今損切りした場合のマイナスと、将来的なマイナスを計算して比べてみると良いでしょう。
損益分岐点を下回った時
ここでの損益分岐点とは、不動産投資における利益と損失の境目のことを指します。不動産投資では、毎月のローン返済額の他に、購入にかかった手数料、管理費、リフォーム費用などの出費に対して、家賃収入を比較することが基本となります。
不動産投資を始める多くの方にとっての目的は資産形成であるため、損益分岐点を明らかに下回っている時は損切りを考えるべきタイミングとなります。
参考不動産投資における損益分岐点とは?計算方法や損益分岐点を上回る方法を徹底解説!
不動産投資と株式投資の損切りの違い
損切りについて話題になるのは不動産投資だけではありません。必ず儲かる投資は存在しないため、どのような投資でも損をするおそれはあります。赤字が回収できる見込みがない、または、赤字を切って新しい投資をしたい時には、損切りを決断することになるでしょう。
投資を始める際には損切りについても事前に考えておく必要があります。ここでは、一般的な株式投資との損切りの違いについて解説します。
実際に物があるか
データのやり取りだけで完結する株式投資と違って、不動産投資では不動産を所有します。
現物があることで、自分でも実際に利用可能である事などのメリットがありますが、原状回復やリフォームなどのメンテナンスに経費がかかるというデメリットもあります。現物の不動産があるために災害リスクを考慮する必要もあり、不動産投資では株式投資よりも多くの要素に気を配らなければいけません。
視点を変えれば、不動産投資では実際に物があるからこそ、部分的なリフォームを行うなどの工夫をすることで、利益を上げることも可能です。ただ購入して売却するという単純な流れだけでなく、購入後の運営方法にも利益を左右されるのが不動産投資です。
手出しが発生するか
不動産投資では現物の不動産を扱うため、手出しが多く発生しやすいタイミングがあります。所有する投資用不動産から入居者が退去した後は、原状回復の費用がかかり、定期的に修繕の必要性も生じます。
一般的な株式投資(現物取引)では、株式を購入した後は株式の維持に多くの費用が発生することはありませんが、不動産投資では物件の維持管理に費用が発生するため、より損をしている感覚に陥りやすいかもしれません。
不動産投資を行う場合は、不動産購入後にかかる費用を計算に入れ、手出しがあっても無理なく耐えられるかを判断する必要があります。
収支の見通しが立てやすいか
株式投資は遠い国で起こった事故や事件など、いち株主の力ではどうしようもない要因に対して株価が上下するため、収支の見通しを立てにくいのが特徴です。
株式投資では、ある時点で含み損があったとしても、長期保有している間に赤字から黒字に転換することも珍しくありません。手出しの負担が無く、先が読みにくい株式投資では、どの時点で損切りするかの判断が難しいとも言えるでしょう。
それに対して、不動産投資であれば事前に家賃設定や入居率などの綿密なシミュレーションを行うことで、毎月の収支についてある程度の予測を立てることが可能です。逆に言うと、ある時点で損益分岐点を大幅に下回っている場合は、今後も毎月の赤字が黒字転換するのは難しいケースも多いということです。
不動産価格は外的要因により変動するため、不動産市場の高騰を期待して保有し続けることも有効な手段ではありますが、毎月の手出しが負担になっている場合など、悠長に待ち続けられないこともあるでしょう。
不動産投資では、計画的な物件選びと、赤字が出たときに損切りするべきかどうかの判断力が重要となります。
株式と不動産価格の関係性
株式と不動産価格は関係性が高く、株式の値動きから半年ほど遅れて不動産価格が動くと言われています。
以前の株価暴落を例に挙げると、2008年9月15日に起きたリーマンショックから半年ほどかけて、不動産価格はがクンと下がっています。このことからも分かるように、株価や為替の動きと不動産価格は無関係ではありません。
最近の不動産価格のなかでも、特に首都圏のマンション価格は上昇を続けており、「いつか暴落するのではないか」と不安視する声も多く上がっています。しかし、2023年5月時点での株価はバブル期を超える高値を記録していることからも、不動産価格がすぐに暴落するとは考えにくい状況です。円安による割安感などから、外国人投資家たちが日本の株や不動産を購入しやすくなっていると言えるでしょう。
不動産投資の損切りを検討するうえでは、不動産価格との関連性が高い株価や為替の動向を見極めることも重要です。
投資用物件の損切り方法
投資用不動産を所有し続けるかどうか悩んだ時は、慎重な検討を重ねたうえで判断する必要があります。ここでは、損切りするかの判断や、具体的な損切り方法まで解説します。
①収支を詳しく計算する
まずは不動産投資の収支を詳しく計算しましょう。複数の投資用物件を所有している方は、物件をひとつずつ計算する必要があります。毎月の家賃収入や入居率、管理費、修繕費、固定資産税など、不動産投資に関連する収支を全て合わせて検討することが大切です。
赤字からは目を背けたくなるのも自然なことですが、状況を改善するためには、常に正確な収支を把握しておくことが大切です。
②売却金額の査定を受ける
不動産投資で損切りを検討し始めたら、不動産会社に依頼して物件の査定を受けましょう。その時点で、もし購入時よりも高く売却できそうであれば、毎月の手出しがあったとしても利益を出せる可能性があります。
投資用不動産の売却査定は、不動産投資に強い不動産会社に依頼するのがおすすめです。査定は無料で受けられるので、まだ売却を決めていない段階でも気軽に問い合わせてみると良いでしょう。
③最終的な持ち出し金額を計算する
査定により予想売却金額が分かったら、ローン残債と比較しましょう。売却金額がローン残債よりも高ければ、問題なく売却できます。反対に、売却金額がローン残債に足りなかった場合、不足分の金額を用意しなければ売却できません。
ローン完済に足りない分は預貯金などの自己資金から準備するか、親類から借りて支払うケースが一般的です。損切りをしたくてもローン残債に足りない金額を用意できない場合は、そのまま所有し続けるか、任意売却を検討することになります。
④損切りするべきか判断する
現時点での収支や売却予定金額がはっきりしたら、損切りをするべきかどうかの判断を下しましょう。毎月のローン返済が苦しい時は早めに損切りをするのがおすすめですが、そうでなければ、不動産価格の動向を見ながら判断しても良いでしょう。
先述したように、不動産価格は株価とも密接な関わりがあります。更に、不動産のある地域の将来性や、競合物件の動向など、様々な要素を加味して損切りするかどうかを検討する必要があります。
また、不動産投資には節税効果もあります。損が出ていても、それ以上に節税効果があれば不動産投資を続ける価値があるでしょう。
このように、あらゆる面から検討したうえで、本当に損切りするべきかを判断します。不動産投資では毎月の出費も発生するため、本当に損切りが必要であれば早めの判断が求められます。
参考【完全版】マンション投資で失敗しないための5大知識とは!?
まとめ
この記事では、不動産投資における損切りとは何かや、損切りを検討するべきタイミング、損切りの方法などを解説しました。
損切りをするかどうかは、毎月の手出しの金額だけでなく、税金や修繕費などの出費、節税効果などのプラスの影響も加味して検討しましょう。不動産投資では、事前に収支のシミュレーションを綿密に行ったうえで、物件を購入するかどうかを判断することが重要です。
不動産投資における収支の計算は複雑なため、専門家でない限りは把握しにくい部分もあるかもしれません。投資用不動産を損切りするべきかお悩みの方や、これから投資用不動産の購入をお考えの方は、当社コンサルタントまでお気軽にお問い合わせください。

この記事の執筆: 丸岡花
プロフィール:宅地建物取引士・FP検定2級を持つ主婦ライター(2児の母)で、300本以上の不動産関連記事の執筆実績を有する。得意ジャンルは不動産・税金・英語・育児。不動産が大好きで、不動産関連のニュースや法改正、市況のチェックが日課となっている。豊富な知識に裏付けされた独自性の高い切り口と、公的機関や学術論文などの1次情報に基づく正確性の高い文章に定評がある。元バックパッカーで旅行・キャンプをこよなく愛し、過去に20か国以上を訪問した経験を持つ。保有資格は宅建士・FP2級に加え、TOEIC895点(米国居住経験あり)、秘書検定1級、保育士など多岐に亘っている。
ブログ等:シュフリーランス